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トップレビュー『Yukio Mishima: The Death of a Man』- 三島由紀夫が自決直前まで篠山紀信に撮らせた「死」の場面写真集...アメリカ版をAmazonで入手!

『Yukio Mishima: The Death of a Man』- 三島由紀夫が自決直前まで篠山紀信に撮らせた「死」の場面写真集...アメリカ版をAmazonで入手!

2020.11.24   CULTURE | CD

『Yukio Mishima: The Death of a Man』(モノクロ写真集)
被写体・三島由紀夫、横尾忠則、楯の会
撮影・篠山紀信

日本語表記の三島由紀夫による篠山紀信評論と、横尾忠則のコメント付き
Rizzoli; Bilingual 出版

Amazonで本稿執筆時(2020/11/21)に新刊で10,085円。
日本円での価格・配送状況は流動的。中古市場も既に動いている。

三島由紀夫が自決直前まで篠山紀信に撮らせた「死」の場面写真集…アメリカ版をAmazonで入手、見てみた

 作家の三島由紀夫が1970年11月25日に自らが率いる民兵組織「楯の会」の隊員と陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地で憲法改正を訴え決起を呼びかけ、受け入れられず割腹自殺を遂げてから今年2020年で50年。様々な関連書籍や映像が立て続けに出ている。
 
 中でも三島が自らを被写体とし、写真家の篠山紀信に撮影させていたものの、自決事件によりお蔵入りとなっていた写真集の日本版が『OTOKO NO SHI』として、超大判金箔貼り50万円(税抜)、初版50部で命日に販売されることが2020年11月半ばに報じられ、大きな話題となった。事実上、一般庶民は見ることが不可能そうに思える作品だが、実はAmazonでアメリカ版をもう入手できる。
 
 中身を覗き見ると、悪夢的な光景の数々に正直うならされる。多くを占める写真はタイトルのとおり、「死」へのオブセッション(強迫観念、妄執)に満ち満ちており、鍛え上げた肉体を晒した男が様々な死体となった様が並んでいる。
 
 多くの写真は、色々な職業や属性、シチュエーションの男に扮した今でいえば「コスプレ」ものであり、ゲイ雑誌などに発表されるエロティック・アートやゲイファンタジーに通じるもののように見受けられる(それらの作品群は田亀源五郎が『日本のゲイ・エロティック・アート』シリーズで紹介しているので参照することが可能)。
 
 腹に包丁を突き立てた魚屋、吊り輪にぶら下がる体操選手、倒れたバイク乗り、貴族的なフェンシング扮装、死化粧を分厚く施したデスマスク……様々な男たちの死に様を演じている三島由紀夫。足の不調で入院中だったという若き横尾忠則も引きずり出して巻き込んだ「死」や「苦痛」の場面がずらりと陳列されている。
 
 後半の写真は現実に起きたことを考えるとさらに不穏さが増す。制服もパリッと整った楯の会1周年パレードと、スタイリッシュだが顔に影差し不吉な雰囲気も漂わせる隊員の記念写真を挟み、突如チープで頭から浮き気味のまげカツラの三島が現れる。かなり生々しい特殊メイクでの割腹表現や首筋に刃を当て流血する姿……一目見ただけで悪酔いしそうに安っぽく、まがい物感がアリアリと前面に出ていると言わざるを得ない。
 
 横尾忠則は自決事件の3日前までこの撮影について三島に呼び出されていたといい、早くに発表されていたら三島由紀夫という作家の評価に何かしらの影響を与えただろう。
 
 日本版が50万円・初版50部ということはコアなファン・研究者層以外に広めないためかと想像する。今回入手したのはアメリカ刊行版なのに、生前に書かれた、篠山紀信作品の「危機のロマンティシズム」をたたえる三島由紀夫の評論と、「篠山は『三島座』の座付き写真家として起用された」と、撮影の経緯などを綴る2020年現在の横尾の言葉は日本語で印刷されている点も、色々な意味で「広がりすぎない」ための配慮が感じられる。なお、本稿執筆時点で撮影者の篠山紀信はコメントを出していない。
 
 Amazon在庫有り無しで新刊・中古とも価格にかなり変動が見られるようだ。本稿筆者は、アメリカ版の発売が発表された10月後半、すぐ購入ボタンを押したが、日本到着までひと月半かかった。Amazonは覗くたび状況が変わっており、配送にかかる日数も動くかもしれない。三島の自決への軌道を辿る一端となる貴重な一冊だが、「なぜ、このような写真を……」と絶句する思いに駆られた。(澤水月)
 

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・文豪 三島由紀夫が企画・出演し篠山紀信が撮った幻の写真集『男の死』を再構成した超大型版写真集発売!
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