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加藤千恵「そして旅にいる」- 心の節目にそっと寄り添ってくれる8つの旅の物語

2019.06.13   CULTURE | CD

幻冬舎
1,400yen+tax

心の節目にそっと寄り添ってくれる8つの旅の物語
 
 個人的に、私が加藤千恵の小説を読むのが好きなのは、主人公に感情移入しやすいからなんだと思う。主に女性の主人公が多いが、男性の私でもすんなりと共感することが多い。旅をテーマにしたこの短編集では、ハワイ、香港、北海道、大阪など、いろいろな場所に読者を誘ってくれる。片思いの同級生との小旅行、卒業旅行、一人旅、傷心旅行、そして亡き父親の憧れの国への巡礼など、旅のきっかけは様々だが、どの主人公もちょっとした問題を抱えて旅立ち、旅先で心を癒し、ある種の決断をすることになる。そもそも人生というのはそういうものだが、旅はそうした心の節目にそっと寄り添ってくれる。とりわけ印象的だったのは第5話「神様に会いに行く(大坂)」、第8話「優しい国(ミャンマー)」。特に、第6話「パノラマパーク パノラマガール(伊豆)」は、私も大好きなマンガ(岡崎京子作品)へのオマージュでもあるのだが、2人の少女の揺れ動く心情を繊細に描いており、読後、とても切ない気持ちになってしまった。間違いなく著者のマスターピースの1つだと思う。(加藤梅造)
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