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冷たい熱帯魚 / 園子温(監督)

2011.01.29   CULTURE | MOVIE

監督・脚本:園子温
出演:吹越満、でんでん、黒沢あすか、神楽坂恵、梶原ひかり、渡辺哲
テアトル新宿、他 2011年1月29日より全国順次ロードショー
(C)NIKKATSU

奇才・園子温が人間の奥底に潜む本質をえぐり出した問題作


 作品を発表する度に国内はもちろん海外でも物議を醸す園子温監督の最新作がいよいよ公開される。監督によるとタイトルの『冷たい熱帯魚(コールド・フィッシュ)』はジョン・レノンの曲『コールド・ターキー』をもじったそうだが、曲と同じく映画の方も極限状況での人間を描いている。

 物語は郊外で小さな熱帯魚店を営む主人公・社本(吹越満)の食卓から始まる。妻(神楽坂恵)と娘(梶原ひかり)の3人家族だが、関係は冷え切っている。その娘が万引き事件を起こした時、それを助けてくれたのが同業者の村田(でんでん)。地味な社本と違い、陽気で仕事もできる村田は社本に高級熱帯魚の輸入で一山当てようと持ちかける。嫌々ながらも強引に村田に巻き込まれていく社本。それは社本の家族を巻き込んだ狂気の世界への入り口だった…。
 実際に起こった埼玉の愛犬家殺人事件を下敷きにしているが(有名な「ボディを透明にする」死体解体作業など)、他の猟奇事件など様々な要素が取り入れられている。『愛のむきだし』も実際の出来事から着想を得て映画にしたものだが、終末へのカタルシスは現実を遙かに凌駕し、最後は観る者を別の次元へ突き落とす。
 園が常にこだわるテーマである「家族」が今作でも描かれるが、狂気と暴力に飲み込まれていくこの家族は、劇中で切り刻まれる死体と同様、解体されていくばかりだ。家族の絆を描いた前作『ちゃんと伝える』との落差がすごいが、その大きな振り幅こそが園子温流のジェットコースタームービーなのかもしれない。観客は気の弱い社本に同情を覚えるかもしれないが、その社本が覚醒した瞬間、あなたは何を感じるか? 是非劇場で体験して欲しい。(加藤梅造)

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