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トップレビュー映画『くれなずめ』- 放課後みたいなダラダラは、奇跡を終わらせたくない! という彼らの思いだ

映画『くれなずめ』- 放課後みたいなダラダラは、奇跡を終わらせたくない! という彼らの思いだ

2021.05.12    | CD

映画『くれなずめ』

【監督・脚本】松居大悟
【出演】成田 凌 若葉竜也 浜野謙太 藤原季節 目次立樹 / 飯豊まりえ
    内田理央 小林喜日 都築拓紀(四千頭身)/ 城田 優 前田敦子 / 滝藤賢一
    近藤芳正 岩松 了 / 高良健吾
【主題歌】ウルフルズ「ゾウはネズミ色」(Getting Better / Victor Entertainment)
【配給・宣伝】東京テアトル
【制作プロダクション】UNITED PRODUCTIONS
【特別協力】エレファントハウス
【製作】「くれなずめ」製作委員会
©︎2020「くれなずめ」製作委員会
2021年5月12日(水)から、テアトル新宿ほかにて公開
【ストーリー】
優柔不断だが心優しい吉尾は、欽一、明石、ソース、大成、ネジと友人の結婚式で久しぶりの再会を果たす。赤いフンドシで踊るダンスを余興で披露した彼らだったが、周囲は興ざめ。気まずい状況の中で2次会を控えていた6人は、道中で学生時代の記憶に思いを馳せる。

放課後みたいなダラダラは、奇跡を終わらせたくない! という彼らの思いだ

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 新型コロナウイルス感染拡大状況を鑑みて公開延期となっていた松居大悟監督の『くれなずめ』が、5月12日からいよいよ公開。松居監督といえば若手俳優からイキイキとした存在感を引き出した作品が顕著だが、本作もまさしく。若手俳優がイキイキと、まるで本当に高校時代からの友人たちのようだ。
 

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 高校時代、帰宅部だった男子6人が、友人の結婚式のため久し振りに集まる。披露宴での余興の赤い褌で踊る“赤ふんダンス”の打ち合わせの時と、披露宴が終わり二次会までの数時間に起こった奇跡の物語。
 

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 ウルフルズの「それが答えだ!」で踊る赤ふんダンスは、もともと高校時代の文化祭の彼ら帰宅部の出し物。その時から現在までのいくつかの出来事が、二次会までの短い時間に去来する。6人がとても魅力的。カッコイイという意味での魅力的ではなく、同じクラスにこういう人いたな、でも名前なんだっけ? っていうリアリティという意味で魅力的。クラスの中ではきっと目立たないタイプの6人だが、それぞれ実に個性的。高校の文化祭から12年経って30才近くなってもノリは10代のよう。中でも成田凌。最近は老け役もこなす成田凌だが、所在無いような仕草の長い手足とか時折見せるきょどった表情とか、本当に高校生のようで、「吉尾さん(成田凌の役名)、ホント変わんないっすね」とハマケン(浜野謙太)演じるソースに言われる。
 二次会までの数時間、6人は、はしゃいだり、じゃれ合ったり、グダグダダラダラして過ごす。まるで高校生の放課後のよう。まるで現実社会から逃避しているよう。そこに現れたミキエ。真面目で気が強くて、高校時代はきょどる吉尾を叱り飛ばしていたミキエ。その性格は変わらず、しっかり真面目に現実社会で幸せを掴んでいる。男6人とは正反対。
 本当に正反対か?
 6人は二次会までの奇跡のような時間を手放したくなかった。ミキエは奇跡から逃れたかった。正反対なのだけど、同じ奇跡を過ごしていた。同じ奇跡を共有していた。
 ミキエを演じる前田敦子が、またいい。
 
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 高校時代から12年。その間に起きた友人の死。果たして大人になるってことは、成長していくってことは、死を受け入れて奇跡を信じないことなのか? この世からいなくなった友人に、ずっとそばにいてもらってはいけないのか?
 奇跡など忘れるのが大人になることで成長というのなら、成長なんてつまらないのではないか?
 

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 本作は松居監督が作・演出を務める劇団『ゴジゲン』が、2017年に上演した舞台が原型。なるほど6人の会話の流れは映画でもリアルだが、舞台ではより濃密なのだろう。
 『くれなずめ』というタイトルは、“日が暮れそうでなかなか暮れないでいる状態、転じて、前へ進もうとしても障害があってうまく進めないでいる状態を指す「暮れなずむ」を命令形にした造語”(パンフレットより)。
 映画はラストに向かって行く頃、壮大なバカバカしさから、シリアスだったりセンチメンタルだったりする感情の動きまでを、暮れなずんでいく景色が包む。スリリングに、しかし同時にダラダラとラストへ向かう。このダラダラが泣ける。放課後みたいなダラダラは、奇跡を終わらせたくない! っていう彼らの思いだ。
 

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 「それが答えだ!って歌ってるくせに、何も答えを出してないとこが最高」っていうことを吉尾は言う。そうかもしれない。答えは自分の胸にしかないのかもしれない。そしてウルフルズの書下ろしの新曲「ゾウはネズミ色」も、またいい。(text:遠藤妙子)
 

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