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トップレポート追悼・遠藤賢司(Rooftop2018年1月号)

追悼・遠藤賢司(Rooftop2018年1月号)

2018.01.04

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文:サミー前田(『遠藤賢司実況録音大全』シリーズ・プロデューサー)
 
 「天下御免の純音楽家」「史上最長寿のロックンローラー」「不滅の男」として親しまれてきたエンケンこと遠藤賢司が2017年10月25日に70歳で逝去した。彼がどれだけ偉大な芸術家であり、約50年間の音楽活動が残した影響力などは、追悼本をはじめとする多くの媒体で語られていくだろうからここでは触れない。
 
 1968年頃から50年近くに及び、常にライブ活動を休むこと無く続けてきたエンケンさんのライブスケジュールが更新されなくなったのは2016年春のこと。すぐに癌による闘病中であるということを公式サイトが発表した。詳しい病状は不明なまま、9月21日渋谷クラブクアトロにてライブが開催された。71年の傑作アルバム『満足できるかな』のデラックス版のリリースを記念して、サニーデイ・サービスをバックにしたステージだった。この日会場にいた人全員がエンケンさんの体調を心配していたに違いない。しかし、全く病人とは思えない凄まじく完成度の高いライブを繰り広げ、最後に「エンケン頑張れって言ってくれ!」と叫び客席に降り練り歩いた。ライブ終了後にサイン会も行なった。皆、「元気で良かった」と思ったことだろう。
 
 この日の模様は2枚組ライブ・アルバム『感動実況録音盤〜45年目の満足できるかな』になっている。客席には、かぐや姫の南こうせつさんが観に来ていた。こうせつさんはエンケンさんを強く支持していて自分のコンサートにも度々ゲストで呼んでいるのだが、最後にエンケンさんがアンプを寝かせてギターで強姦する轟音フィードバック・ノイズ(10分以上に及ぶ)を嬉しそうに観ていたのが印象的だった。その後も数は減ったがライブやテレビやラジオの出演もこなしていた。
 
 2017年5月、ピアノだけのインスト・アルバム『けんちゃんのピアノ画』(結果的にこれが遺作となった)をリリースした後、6月29日に渋谷クラブクアトロで<遠藤賢司ソロライブ 猫と君と僕>を開催した。こちらも前回同様、今、目の前で歌っている人が闘病中であることを忘れてしまうような素晴らしいステージだった。ただエンケンさんは随分痩せてしまっていた。石塚俊明(ds)、湯川トーベン(b)、湯川潮音(vo)が友情出演した。いつもは最後に歌われる「夢よ叫べ」が終わった途端、エレキに持ち替えて新曲「GOD SAVE THE BAKATIN」を披露し驚かされたが、これは未完成の状態だったという。そして「この曲をタイトルにしたパンクなアルバムを作る」と宣言した。
 
 その後、アルバムの構想を練って制作の準備をしていたのだが、病状悪化のため録音スケジュールは何度かキャンセルされ、実際に発表できるようなスタジオ録音は残せなかった。最後のステージは8月8日に開催された新宿ディスクユニオンduesでのトーク&サイン会で、1曲だけ「続・東京ワッショイ」をやった。
 
 逝去する直前も、映画「愛しのノラ〜幸せのめぐり逢い〜」の主題歌に「カレーライス」が決まったり、香取慎吾が自分の心境と重ね合わせるかのように「不滅の男」をラジオでOA(その後AbemaTVで歌唱)したり、「東京ワッショイ」「続・東京ワッショイ」のアナログ7インチ2枚が再発、米国リリースの日本の70年代フォーク/ロックのコンピレーションアルバム『Even A Tree Can Shed Tears: Japanese Folk & Rock 1969-1973』に「カレーライス」が収録などなど、常にエンケンさんの話題は活発だった。この米国盤アルバムにあわせて取材を「The New York Times」から受けており、死の直後に掲載/配信され、生前最後のインタビューとなった。「僕の次のアルバムはハードなパンク・アルバムだ。ボブ・ディランにはそんなことできないだろう?」(意訳)というエンケンさんの頼もしい発言が掲載されている。
 
 70歳の日本人ロックンローラーによるハード・パンク・アルバム『GOD SAVE THE BAKATIN』はエンケンさんの脳内から放出されないまま永遠の幻となってしまった。前述の2017年6月のクアトロのライブを全編収めた2枚組アルバム『ラストライブ 猫と僕と君』が1月27日にリリースされる。ここに収められた未完成の「GOD SAVE THE BAKATIN」を聴いて、残された我々は想像するしかないのだ。
 
 1974年のこと、エンケンさんはツアー先での夜、突然見知らぬ集団に襲撃され骨折するほどの大けがで入院したことがある。当時のライブではそうとう過激な発言もあったがそれが原因かどうかはわからない。その直後に大阪で開催された「春一番」に入院先から抜け出して熱演、松葉杖で客席を走り回り、再び入院したという逸話がある(この時の音源「踊ろよベイビー」が残されている)。つい何年か前も40度近い高熱がありながらも、観客にはそれを知られたくないため、ステージでは一言も体調のことは言わずアンコールまで歌いきったこともある。病状が悪化し、10月19日の大阪公演をキャンセルしたことがいかに悔しかったか、本人のブログにも残っている。絶対に言い訳はしない。最後までそういう人だった。
 
 そして1月31日には渋谷クラブクアトロにて<生誕71年 エンケン祭り 〜追悼・遠藤賢司>が開催される。前売券は既に完売しているが、公演のチケットが無くても入場可能な祭壇、展示、物販などのコーナーが設置されるとのこと。
 
 今からでも遅くはない。遠藤賢司の大河のような純音楽に触れてほしい。これが日本の宝だ。
 
 
 
 
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ラストライブ“猫と僕と君” 
3,900yen / FUJI / 1.24 IN STORES
解説:湯浅学 
 
 
 
 
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感動実況録音盤 「45年目の満足できるかな」
3,900yen / FUJI / IN STORES NOW
 
 
 
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けんちゃんのピアノ画
3,024yen / FUJI / IN STORES NOW
 
※パンク/ニューウェイヴ期の2大超名盤『東京ワッショイ』('79)と『宇宙防衛軍』(’80)がニューマスタリングにて、2月21日キングレコードよりリリース決定! 解説は湯浅学。
 
 

Live Info.

<生誕71年 エンケン祭り 〜追悼・遠藤賢司〜>
2018年1月31日(水)18:00 開場 / 19:00 開演
渋谷クラブクアトロ
【出演】
細野晴臣・鈴木茂・鈴木慶一・あがた森魚・ PANTA・石塚俊明・
湯川トーベン・遠藤ミチロウ・大友良英・山本恭司・佐野史郎・原マスミ・
大槻ケンヂ・曽我部恵一・フラワーカンパニーズ・湯川潮音・森信行
 
※当日、チケットはないけど献花したいという方や、スタンディングでのイベント参加が困難な方のために、19時〜終演までの時間、会場ロビーに自由に入れる祭壇スペースを設け、あわせて展示や物販も行います。
 
【問い合わせ】渋谷クラブクアトロ TEL.03-3477-8750
 
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