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トップレポートWILKO JOHNSON TOKYO SESSION 2013(Rooftop2013年2月号)

WILKO JOHNSON TOKYO SESSION 2013(Rooftop2013年2月号)

2013.02.04

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EXCLUSIVE LIVE REPORT
WILKO JOHNSON TOKYO SESSION 2013
2013年1月10日(木)南青山 RED SHOES

出演:ウィルコ・ジョンソン、ベンジャミン・テホヴァル、シーナ&ロケッツ(鮎川誠、シーナ、奈良敏博、川嶋一秀)、花田裕之、チバユウスケ、浅井健一、延原達治、市川“JAMES”洋二、石橋勲

取材・文:椎名宗之
写真提供:レッドシューズ

俊英が一堂に会した一夜限りの規格外セッション

年末に末期のすい臓がんの宣告を受け、その翌日に「最後にどうしても日本へ行きたい」と30年来の付き合いである鮎川誠に連絡したことで急遽実現したというウィルコ・ジョンソンの来日公演。

化学療法は拒否、余命10ヶ月という公式のアナウンスがライブ当日に駆け巡ったため、80人も入れば満杯になる会場内にはトータルで300人近いファンが詰めかけるという鮨詰め状態。会場に入れなかった約200人のために、店外にモニターとスピーカーが用意されたほどだった。

ドクター・フィールグッドの映像が流れるなか連射されるDJのロックンロール・クラシックスでフロアが程良く温められた後、ウィルコの親友であるベンジャミン・テホヴァルがドラムを織り交ぜたハートフルな弾き語りを披露。ウィルコに捧げた「Like A Rolling Stone」では観客もサビを合唱、今日この場にいることの意義を実感している演者と聴衆の共振・共鳴を強く感じた。「How does it feel?」──言うまでもない。最高に決まってるじゃないか。

その後、客席後方のVIPエリアからウィルコとシーナ&ロケッツの面々が観客を掻き分けてステージへ。遂に怒濤のロックンロール・セッションへ突入だ。赤いカールコードでアンプにつながれた、赤いピックガードに黒いボディのフェンダー・テレキャスター。ドクター・フィールグッド時代から変わらぬ一蓮托生のギターを携え、勢い良く掻き鳴らされたのは「I Can Tell」。ガリガリと武骨なリフに一気に引き込まれる。ロケッツとの息もぴったりで、ウィルコの調子がすこぶる良いのはキレのある溌剌としたパフォーマンスからも窺えた。病魔に冒されているなんてとても思えない。否応にも煽情させられる「Sneakin' Suspicion」、レゲエ調の「Dr. Dupree」を挟み、シーナが「Fujiyama Mama」を、鮎川が「Be-Bop-A-Lula」と「Roxette」をそれぞれ唄い上げる。この辺りからゲストが入れ替わり立ち替わり飛び入りし、一夜限りの規格外のセッションはますます賑々しい宴の様相を呈していく。

花田裕之はロックンロール・ジプシーズのライブでもお馴染みの「Little Queenie」を滋味に富んだ歌声で披露、チバユウスケがルースターズの「Do The Boogie」で突出した存在感をアピールして以降は「Walking The Dog」、「I'm Talking 'Bout You」とドクター・フィールグッドのレパートリーとしても知られる不朽の楽曲が続く。さらに、延原達治をフィーチャーした「I'm A King Bee」、浅井健一や市川“JAMES”洋二が加わった「Route 66」と一撃必殺のスタンダード・ナンバーがいずれも精鋭揃いの面子でプレイされるのだからたまらない。唸るスライドが心地好い「Back In The Night」、そしてフロアから一際歓声が上がった問答無用のキラー・チューン「She Does It Right」でライブ本編は締められた。

絢爛とした宴はもちろんこれで終わるはずもなく、鳴り止まぬアンコールの歓声に応えて披露されたのは、ウィルコのライブでいつも最後に唄われる「Bye Bye Johnny」だった。サビのフレーズをわざわざ「Bye Bye Wilko」とウィルコ自ら唄ったり、「I've got cancer. I'm gonna die.」(僕はがんになったんだ。もうすぐ死んでしまうんだよ)というMCを聞いてやり切れない気持ちになったが、それも病魔と対峙していく揺るぎない覚悟の表れだったのだろう。これで最後になるかもしれないウィルコとのセッションを、出演者全員が純真な思いで楽しんでいるのがよく伝わってくる。

奇をてらったことは何ひとつやっていない。極限までシンプルで、踊れて、酔わせてくれるロックンロール。それをひとたび全身で浴びれば、誰もが多幸感に包まれる。ウィルコとその仲間たちが奏でるロックンロールは、そんな魔法のような音楽だ。演る側にも見る側にもウィルコとロックンロールへの愛情がひしひしと感じられたこのセッション自体、まるで魔法のようだった。余命10ヶ月? これが最後の来日公演? 冗談じゃない。ウィルコは最高の“Mojo Hand”を持った魔法使いだ。魔法使いは奇跡を起こす。「ロックンロールには凄い力がある。ロックンロールが起こす奇跡を信じよう!」という鮎川の言葉通り、40年以上ものあいだ世界中で至福のロックンロールを奏でてきた男に奇跡が起こらぬわけがない。この日のライブの90万円近い全収益を東北の被災者へ寄付することにした硬骨漢に、音楽の女神は必ずや微笑んでくれるはずだ。

だから、さよならは言わない。その代わり、ありったけのありがとうを言おう。奇跡の一夜をありがとう、ウィルコ。またいつでも日本に来てくれよな。

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