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MASS OF THE FERMENTING DREGS『ゼロコンマ、色とりどりの世界』ツアー・ファイナル・レポート

2010.12.14

MASS OF THE FERMENTING DREGS 1st FULL ALBUM RELEASE TOUR『ゼロコンマ、色とりどりの世界』
2010年12月11日(土)渋谷CLUB QUATTRO
文:石川 愛(web Rooftop)
写真:三吉ツカサ

_Y9I2664.jpg12月11日(土)、渋谷。
12月に入り、外を歩けばどこもかしこもビカビカとクリスマス電飾が光っている。飛行機から見下ろせばさぞかし綺麗なのだろうが、道路が人で埋め尽くされる土曜の夕方の渋谷は苦手だ。思った速度で歩けない窮屈さを覚える時がある。
その喧噪、得意な人のほうが少ないのか、私個人がおもちゃ箱をひっくり返した状況を楽しめないほうの、暗い人間なのかは判断しかねる。
とにかくQUATTROへ行かなくちゃと思い、もどかしいながらも足早に坂を登った。

10月28日の神戸HELLUVA LOUNGEを皮切りに、全国ワンマン・ツアーを行って来たMASS OF THE FERMENTING DREGS(マス・オブ・ザ・ファーメンティング・ドレッグス、以下マスドレ)のツアー・ファイナル。
今回のツアーを最後に、石本知恵美(g, cho)の脱退も決定していた。

当日、会場に着くと、既に臨戦態勢のお客さんがフロアを埋め尽くしていた。同じ「たくさんの人」でも、渋谷の喧噪のそれと決定的に違うのは、そこにいる皆一様同じことを求め、同じ方向を向いていることである。
私もその中に混じりたいと思い、少しドキドキしながら開演を待った。

間もなくしてステージに現れた3人。
赤、緑、青、白、様々な照明がごちゃ混ぜになってぐるぐるとステージをかきまぜた。
パッと切り替わり、宮本菜津子(b, vo)が「皆さん今晩はMASS OF THE FERMENTING DREGSです。今日はほんまにどうもありがとう」と一息に放った一言で、会場は一色になった。

会場の一番後ろに居た私にも聴こえた、宮本の生声「いくで…せーっの!!」。
腹の底から絞り出したかけ声で『She is inside, He is outside』からのスタート。
2曲目、3曲目、4曲目と、マスドレの放つ裸足のリズムは止まらない。
一方向に突き上げた拳、自然と揺れる身体。
話す言葉よりも歌で、メロディで、宮本、石本、吉野の3人でしか出せない音を聴いて欲しい。そう感じた私は、マスドレの思うツボだったのだろうか。

_Y9I2187.jpg時に、往年のトゥイギー・ラミレズよろしく激しいベース・プレイを見せる宮本。
ラストではダブル・カスタネット・ソロを披露。
抜群の安定感、吉野のドラムは今日も迷いがない。
伸びやかな音と、踊る六弦を操る石本。マスドレのギターとしての彼女を見るのは今日が最後だと思うと寂しい気持ちになるが、今彼女が目の前でパァンと消えたわけでもあるじゃなし。
『ゼロコンマ、色とりどりの世界』で石本がグィンと身体全体仰け反り、ギター・ソロを見せつけてくれた。
「カッコヨ!」と声が出た。
それと同時に、なんだか視界がぼやけてしまった。
なんでも頑張ってやり遂げるっていうのは大変なんだよ、とか、言葉になりにくい気持ちがぐちゃぐちゃになって、泣きそうな、でも泣いたらダメだよ、もったいないよ、と思い、目頭を押さえた。

ワンマン・ツアーのセットリストって、豪華で、楽しくて、終わって欲しくないなんて勝手なことを思ったりしがちである。

客電が点く。
宮本が「元気?」と問うと、会場の半数以上のお客さんが「元気!」と答えた。
それを聞いて「良かった」。
ライブ中でなければ、それは少し変わった会話かもしれないが、大事な人とは毎日でも交わしたい言葉だ。
宮本のMCは、普段そういう気持ちを隠しがちな我々に「こう言ったら嬉しいよ、こうしたら気持ち良いよ」と、改めて気付かせてくれる。

数年前、同じような時期に見たマスドレのライブのことを思い出した。
その時も宮本は、小さなライブハウスのフロアに降りて来て、生声で「楽しいな! なぁ、楽しいやんな!」とベースをかき鳴らしていた。
変わらない良さがここにあると思った。
くるりのカバー曲『飴色の部屋』にまつわる話。
『終わりのはじまり』『エンドロール』は、ライブのど真ん中で演奏された。

最後だから、とか、今日で終わりだから、というような、なんだか薄っぺらい気持ちがいつの間にか消えていた。
確かにこの日を最後に石本は脱退し、マスドレは今後かたちを変えて活動することを余儀なくされたわけだが、そもそもバンドは人間が作っているナマモノであるからして、万が一解散するような日が来たとて、彼女たちの作った音楽を好いている、または過去好いたことがある人が各々の日常に取り入れていたら、マスドレや石本そのものが「なくなる」ことは不可能なのだ。

全22曲をガツン!と演奏し終え、「本日の公演は、すべて終了しました」のアナウンスが2回流れても、皆、帰ろうとしなかった。
客席の明かりが点いて尚、拍手は鳴り止まなかった。
帰り道も人の減らない週末深夜の渋谷なのに、やけに清々しく、思った速度で歩けるの楽しんだことは、内緒にしておこう。

ライブ後、運の良いことに、今回のツアーについて直接メンバーに訊く機会を得たので、ここに改めてお伝えしたい。

“ちえぽん”こと石本知恵美。
「地域それぞれのお客さんの毛色というか、県民性というか、バラバラ。バラバラなりに各々で濃厚な時間を一緒に作れました。こんだけ沢山の人に支えられとったんやなっていうのと、そのお客さんと対峙している!という感覚があるからこそ、やり遂げられたと思っています。いろんなことを実感するのにはもうちょっと時間がかかると思うし、これから別々にはなりますけど、二人を応援しながら自分も音楽を続けて行きます」

“なつこん”こと宮本菜津子。
「(ツアーは)あっという間でした。私も正直ツアー・ファイナルを迎えるまで自分でもわからんくて。最初の神戸で“この3人のラストや”っていう気持ちがあったから、若干の煩悶もあったけど…。
本数を重ねて行く毎に“この、今のマスドレとしてベストのツアーを作る”共通意識を強くしていく実感がありました。ほんまありがとう」

“いさこん”こと吉野 功。
「(ファイナルが一番感情的になってもいいはずなのに何故か)神戸がエモかった」

12月24日正午に、今後の活動について発表があるとのこと。
マスドレの今後が気になる、この先もずっと応援しようという人は、HPをチェックしてみるといいかもしれません。

_Y9I3244.jpg------ MASS OF THE FERMENTING DREGS play list-----
01. She is inside, He is outside
02. かくいうもの
03. ひきずるビート
04. このスピードの先へ
05. I F A SURFER
06. 青い、濃い、橙色の日
07. 終わりのはじまり
08. ONEDAY
09. サイダーと君
10 ズレる
11 エンドロール
12. 飴色の部屋
13. なんなん
14. まで。
15. delusionalism
16. ワールドイズユアーズ
17. skaberry
18. さんざめく
19. RAT
20. ゼロコンマ、色とりどりの世界
21. ハイライト
22. ベアーズ

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