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INTERVIEW

トップインタビュー根岸孝旨×クロダセイイチ(Genius P.J's)- 音楽だけを目標にしていると煮詰まってしまう、自分が感動するものを作りたい

音楽だけを目標にしていると煮詰まってしまう、自分が感動するものを作りたい

2021.09.13

 Genius P.J'sのトラックメーカー・クロダセイイチが、業界の第一線で活躍をしてきた先輩たちと対談をする連続企画。クロダが影響を受けた作品やコロナ禍での表現方法についてそれぞれの視点をうかがい、各シーンの若い世代に自分たちができることはなにかを考えていく。第三回目はベーシスト、アレンジャー、音楽プロデューサーとして活躍する根岸孝旨氏が登場。(photo:朝岡英輔/構成:成宮アイコ)

30歳のときに、就職をしようか迷った

クロダ:コロナ禍で音楽を続けることについていろいろ考えるようになり、自分が影響を受けた曲や場所を作ってくれた方々に改めてお話しをうかがいたいと思い、今回は根岸孝旨さんにお越しいいただきました。根岸さんに初めてお会いしたのは3、4年前です。僕が所属しているバンド・Genius P.J'sを気にかけてくれている事務所のマネージャーさんが、バンドの音源を根岸さんに渡してくれたことがきっかけで、興味を持ってくださり飲みに行ったんですよね。

根岸:音源が単純にかっこよかったんだよね。当時、日本のラップはまだディスりあいが多かったんですよ。でもGenius P.J'sは、政治的な内容でも露骨すぎないリリックだったし、なんて理性的で頭のいいラップをする人たちなんだろうと思いました。クロダくんが作るトラックはロック感が強いし、他のDJとは目の付け所が違うな、と。

クロダ:ありがとうございます、光栄です。まずは根岸さんのルーツをお聞きしたいんですけど、大学時代は細野晴臣さんと高橋幸宏さんが主宰されていたYENレーベルでバイトをされていたんですよね。

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根岸:そうです。池袋にYAMAHA東ショップというのがあって、そこにのちに仲良くなる人が集まっていたんです。当時、僕の大学の先輩がやっていたタンゴ・ヨーロッパというバンドがアルファレコードからデビューしたんですけど、僕はローディーをしていたんですよ。そしたらアルファレコードの人が、「あいつはよく働くぞ」って思ってくれたようで(笑)。ゲルニカのディレクターの方が、「これから新しくYENレーベルっていうレーベルを立ち上げるんだけど、ゲルニカのスタッフがいないから手伝ってくれないか」って声をかけてくれたんです。新宿の「ツバキハウス」とかで幸宏さんがライブをやるときに、僕はローディーとして現場に行ってたんですよ。それが1980〜81年のころですね。

クロダ:ゲルニカの制作現場って想像が全然つかないです。ああいった楽曲はどうやって制作や演奏をするんですか。

根岸:僕が行った頃はもう楽曲ができていました。当時はPCもない時代だったから、ライブ現場には上野(耕路)さんがレコーディングに使った2トラックのオープンリールテープを持って行ってました。それに合わせてキーボードを弾いて、戸川純ちゃんが歌うっていうスタイルです。それこそロフトに出演していましたね。

クロダ:昔、高橋さんと細野さんが司会で、池袋サンシャイン60でゲルニカがライブをするっていう夕方番組があって印象に残っているんですけど、今思えば、おふたりはゲルニカのバックアップをされていたからなんですね。

根岸:そんな番組があったんだ! ゲルニカのプロデューサーは細野さんですからね。

クロダ:それも含めて、今になって考えると、根岸さんの関わっている音楽に触れていることが多かったんだな、と。91年にリリースされた小泉今日子さんの『あなたに会えてよかった』では根岸さんがベースを弾かれていますが、作曲の小林武史さんはサザンオールスターズのプロデューサーをされていたんですよね。

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根岸:そうそう、ちょうどその1年くらい前まで、桑田佳祐さんが監督の映画『稲村ジェーン』のサントラを小林さんと桑田さんが作ってたんですよ。そこに僕は「東京サリーちゃん」っていう曲で呼ばれていてベースを弾いて、そこで桑田さんに目をかけてもらったんです。実は、そのころの僕はもうスタジオミュージシャンはやめようと思っていました。ビクターに就職をしないかと声をかけてもらって、悩んでいたんですよ。

クロダ:根岸さんの音楽人生で大きなターニングポイントですね。

根岸:もう30歳になるのに、俺はこんなことでいいのかなって思い始めたんです。ちょうど岡村靖幸くんが『家庭教師』を出した頃、当時、岡村くんでドラムを叩いていた伊藤真視くんが結婚をしてドラムを辞めたんです。それを目の当たりにして、俺も人生を考えなきゃって。こんなフラフラしてていいのか不安になったんですよ。その話しが、当時のスピードスターの高垣健さんの耳に入って、「ちょうどビクターの社員がやめて大変なんだよ」って声をかけてくれました。だけど、僕はサザンでベースを弾いてしまったから、「もうちょっと音楽をやってみよう」と決めました。「東京サリーちゃん」で、小林さんと桑田さんに出会っていなければ僕はビクターの社員になっていたと思います。でも、ビクターの社員をやりながらサザンでベースを弾いてもかっこよかったよね(笑)。

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ニューシングル「ゆらぎの庭」
(クロダセイイチ Recording・Masteringにて参加)

2021年9月9日リリース
作詞・作曲:しずくだうみ
編曲・ミックス:杏
レコーディング・マスタリング:
クロダセイイチ(Genius P.J’s)
レーベル:そわそわRECORDS
配信リンクはこちら

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