Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューBEYONDS - 新曲を構築する楽しさの裏にある難しさに挑み続けた9年間の紆余曲折

新曲を構築する楽しさの裏にある難しさに挑み続けた9年間の紆余曲折

2021.08.31

9年もかかったけど完成できてよかった

──ちなみに、後からつけられた「Serpentine」という言葉は、どこから出てきたのでしょう?

谷口:正確に覚えてないんですけど、何かの歌詞を読んでいたときに見つけた言葉で、響きがいいなと思って。蛇の道というか、蛇の紋様みたいな意味も、この曲にピッタリじゃないかと。僕は当初ずっと、歌をどう乗せていいかわからなかったんです。でも、ボーカルなので、やっぱり乗せなきゃいけないというか、くそ、絶対に乗せたい! という気持ちが湧いて。この「Serpentine~」というのを思いついたときにはもう、よく乗ったなあと(笑)。

──蛇って神話的な意味合いも強い生き物で、それこそアダムとイヴの話にも関連して、“Serpentine”には「狡猾」とか、そういう意味もあるんですよね。

谷口:そう、意味を調べてみて、すごく曲に合っていると思ったんです。

──歌詞全体からは、現代社会について歌っているような印象を受けました。

谷口:あの歌詞は2012年からあったんですが、当時あんまり好きになれなかったかったんですよ。宗教的な意味合いとか、自然の驚異といったものは、僕の昔からの命題で……ただ、言葉のノリとかが、あんまり好きじゃなかった。結局ほとんどそのまま使いましたけど(笑)。だけど、まあ何回もやってると気に入ってくるもんですね。

──長い時間をかけて完成させてみて、どんな気持ちですか?

谷口:いやあ、よくメンバー全員が納得する形にまで、みんなよくやったなと思います(笑)。

──最初に演奏してた頃は、もっとバンド内に齟齬があったんですか?

谷口:齟齬もあるし、混沌としていたので、僕自身は「もうちょっとゆっくり考えようね」みたいな感じで、何なら1回、反故にしてもいいかと思ってた。メロディの符割がわかりやすくならないから、どうにも気持ち悪い気持ち悪いっていうのを、2012年からずっと出してたんです。それでもアケオくんは、『ヘイセイムク』直後に出来たこの曲だけは、せめて形にしたいという思いがあったみたいで、それで「ここはこういうメロディでいけませんかね?」みたいなやりとりを、スタジオで2年くらい、ずっとやってきたんですよ。でも、いろんな音楽を参考に聴いたりしながら、なんとかダンサブルにするとか、僕なりの味付けで宗教的なイメージを付け加えたりできないかとか、みんなで構成を考えて、こんなにもブランクが空いたけれど、どうにか形にできました。同時に、そこまで気を衒うとか、あまり熟考しすぎた感じにするのも……もともと僕はそういうの好きじゃないんで、つまり「緻密に計算されたロック」みたいなのが嫌なので。だからリズムとか変拍子とかも、みんな感覚的に作りましたね。

234425415_204821814951454_3911294210724982673_n.jpg

──なるほど。結果、ずっと進化を続けているBEYONDSが、また新たな次元を切り開いたという感じを象徴するような曲になったのではないでしょうか。

谷口:まあ、自分としては試行錯誤というか、この曲が出来たばかりの頃にライブでやったときとか、お客さんも「何やってんだ?」って、口ポカーンって印象でしたよ。ただ、考えてみりゃあ、fOULにしても、僕がやってきたバンドはずっとそうだったし(笑)。しかし、9年前ですか……時間かかりましたね。それでも、おかげさまで、それなりに新鮮な気持ちで聴いてもらえたようで、完成させてよかったと思います。去年「絶対、年内にはレコーディングするんだ」って決めてよかった。

──「Unite Catholic」と「Hellow Naru I love you」は、いつ頃に書かれた曲ですか?

谷口:さっき言った、僕が「もう、しばらくはいいかな」っていう感じになって、BEYONDSが止まってる間、1人で弾き語りをやってたんですが、そのときに書いた曲です。それをブッシュバッシュで演奏したら、アケオくんが密かに録音していて。彼が「谷口さんが弾き語りでやっていたあの曲、ちゃんと録ってあるので、あれをバンドとして形にしたい」って言ってきたんですよ。それが、この2曲ですね。

──いい話じゃないですか! 「Unite Catholic」は、タイトルがカトリックだし、歌詞の中にも「修道院」が出てきますね。

谷口:カトリックは最も古いキリスト教のひとつで、同性愛や中絶を認めなかったり、少年を性的に略取するような事件が世界中で多々あったりしたわけじゃないですか。それに対しての揶揄というか、そういうことを歌ったりしたかったというのもあります。ただ、僕自身はカトリックとして育ちながら、自分ではそれに懐疑的で、社会に出たらそれとは相反する生き方をしたいとずっと思ってきたはずなのに、結局ドストエフスキーが、ギリシャ正教に対して「否」と言いながらも是とせざるを得ない、そんな感覚を自分でも覚えるようになって。自分の娘も、いつの間にかミッション系の学校に行かせてたりしたし。ある日、娘が別に意識しているわけじゃなく、単に流行ってるからという感じでカレッジ系のトレーナーを着てて、それに「Unite Catholic」って書いてあったんですよ。それを見て「なんだそれは! 超カッコいいじゃん」って思って(笑)。

キリスト教に対して揶揄はするけど全否定はしない

──歌詞を読んで感じるのは、海外のアンチ・クライストなパンクとは違う独特の距離感ですよね。

谷口:そこを感じていただいて嬉しいです。ああいうアンチ・クライストにはなれないし、実存主義者がそういう話をしていると、逆に反駁したくなってしまう。僕は今でも、キリスト教の愛、家族愛とか世界平和の愛とか、知らない人に対する愛といったものは、昔も今もこれからも自分の中にずっとあると思うんです。だから、キリスト教に対して揶揄はするけど全否定はしない。教会を時には小馬鹿にしながら、その傘の中に自分はいるという意識があるから、「修道院」とか「祈る」とか「奇跡を信じる」とか、そういう言葉をこれからも使っちゃうでしょうね。それを卑下したり馬鹿にする者は許さんぞ、だったら、それに代わる君の信じるものを見せてくれ、っていう気持ちがある。今となっては、そんなふうに育ったことを親に感謝していますよ。おかげで、聖書の世界とか、キリスト教に関係する純文学の意味とか、そういう世界を知ることができた。結局、サルトルとかを読んでも必ず宗教的な命題が出てくるし、そういうことの理解が早かった気がする。

──そのキリスト教と、先ほど「Serpentine」に乗せたいと思った「宗教的なイメージ」というものとでは、また違うものですよね?

谷口:違いますね。「Serpentine」のほうでは、どちらかというとイスラム教とかヒンズー教の礼拝などを表現したかったんです。そういうものには、僕らが接することは普段ないじゃないですか。モスクも身近にはないし、せいぜいテレビのドキュメンタリー番組とかでしか触れる機会はない。とは言っても、地球上にはイスラム教やヒンズー教の人たちがいっぱいいて、そういう人々の……例えばイスラム教の1日5回の礼拝で流れるお経とか、音楽的に捉えるとすごく面白いし。それは、敬虔なイスラム教徒の人たちからすれば失礼かもしれないですけどね。あと、ヒンズー教の何百万人も集まって何日間もやるお祭りとかも、僕は行ってみたいんです。今はコロナで難しいでしょうけど。そういう場所で、自分の健康や祝福を願う人々の雰囲気を「Serpentine」では出したかったし、けっこう出せたんじゃないかな。

──3曲目「Accomplice」も、2012年にあった曲ですが、これもパンチのある曲で、あらためて最高だと思いました。

谷口:「Accomplice」では、暴力的な匂いをつけたくて、自分の性的な欲望とか暴力性を歌詞に打ち出せたのがよかったなと思ってます。7インチのフィジカルには収録できなかったけれど、本当は歌詞だけでも乗せたかったんですけどね。でも、BEYONDSらしいパンク・チューンというか、バイオレンス性があって、自分自身ではすげえ気に入ってますよ。僕のことを昔から知ってる友達からすると、「Accomplice」の歌詞は、さすがにお前らしくないぞと言われたりもしたんですけども、他人の身体を蹂躙してやりたい、みたいな残忍な言葉って、歌詞だからこそ書けるわけであって。よほどの聖人君子でもない限り、普通の人間の中には、特にイライラしていたり、仕事のことや家族のことでのっぴきならない状況にいるとき、自分の大事なものが汚されたときなんかは、誰でも暴力性や殺意って涌いてくるものだと思いませんか?

──間違いなく、ありますよね。

谷口:すごい昔、渋谷の繁華街で、やっと見つけて手に入れたレコードを持って歩いていたら……レコードって1枚だけ持つと、こうペラペラしてるじゃないですか。それを向こうから自転車に乗ってきた、なんかやさぐれた男が、そのレコードにバーンとぶつかってきたことがあったんですよ。僕は普段、そんなに激昂したり人を殴ったりとかするようなことはないんですけど、そのときは、きっと何かいろいろモヤモヤしていたんでしょうね。もちろんレコードも、とても大事なものだったし。それで、手こそ出さなかったですが、もう渋谷中に響き渡るような大声で「オラオラオラ~!」って怒鳴っていて、そうしながら、僕は自分が怖かった。そういう恐ろしさはみんな抱えているんじゃないですかね。だから自分の中にもそういうものはあるし、みんなにあると思うので、「Accomplice」ではそういうのを出したかった。まだ出し切れてないんじゃないか? って思うくらい。『ヘイセイムク』の「at the chime」でも、政治的・宗教的な怒りを出してますが、「Accomplice」ではもっと根源的な怒りを出してます。

──なるほど。

谷口:そういう、実は多くの人にあるんじゃないかと思う感情を、この「Accomplice」では、バンドで緊張感を持ってうまく出せているのが嬉しいし、ライブでやると、自分の中でもアドレナリンが噴出しますね。“Accomplice”=共犯者っていうクライム的な言葉は最初からあったんですが、それをテッキンがベース弾きながら叫ぶ姿もすごく印象的で。後半ちょっとテンポダウンして、ノリノリになるところもすごくBEYONDSらしくて気に入ってますし、またそこからビートっぽく戻って収斂(しゅうれん)していくのもいいなと思います。この曲も7インチに入れたかったですよ。本当は、7インチ盤に2曲ずつ入れて2枚組にしたかったんです。それはあまりにも贅沢すぎてダメでした(笑)。

このアーティストの関連記事

Serpentine

2021年6月16日発売
KiliKiliVilla KKV117VL(7インチ+DLコード)
限定300枚プレス
◉90年代の初頭のパンク・シーンにまったく新しい感覚を持ち込み、アンダーグラウンドからオーバーグラウンドまでその後のシーンに多大な影響を与えてきたBEYONDS。2019年、名作『UNLUCKY』『The World, Changed Into Sunday Afternoon』という90年代の2タイトルのキリキリヴィラによる再発に続き、9年ぶりの新曲が待望のリリース。

【収録曲】
Side-A:Serpentine
Side-B:Unite Catholic
【DLコード収録曲】
1. Serpentine
2. Unite Catholic
3. Accomplice
4. Hellow Naru I love you

LIVE INFOライブ情報

9月6日(月)新宿アンチノック
9月18日(土)名古屋STIFF SLACK
10月2日(土)下北沢シェルター
6th
ロフトチャンネル
平野悠
ロフトオリジナルコーヒー
どうぶつ
休刊のおしらせ
ロフトアーカイブス
復刻