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INTERVIEW

トップインタビュー内山雄人(映画『パンケーキを毒見する』監督) - テレビではできない政治風刺、縮こまった表現から脱出して面白がらせてやろうぜ!

テレビではできない政治風刺、縮こまった表現から脱出して面白がらせてやろうぜ!

2021.07.22

モノを言うニュースキャスターがいなくなった

──新しい元号を発表する一方で、パンケーキを好きな男性をかわいいと思うことへの時代錯誤感を、メディアがもてはやしたことについてどんな気持ちで見ていましたか?

内山:特にテレビに対しては、彼が今までどんな発言をしてどんな人間だったかは描かないのに、なぜまんまとパンケーキ大好きおじさんキャラには乗るのだろう思いました。そのあとの学術会議問題はさすがに問題視をしていましたけど、新聞も含めてメディアの距離がおかしいですよ。菅さんにインタビューをするアナウンサーが、菅さんの言葉を補強したり気を使った聞き方をしたりと、擦り寄っている感じの気持ち悪さですよね。

──テレビで政治に関する追求がしにくくなった、などの変化は感じますか。

内山:それはもう、極端に変わったと思います。ニュースの構造が変わってきて、モノを言うニュースキャスターがいなくなっちゃったんです。これまでは、ジャーナリストからあがってきた筑紫哲也さんがいて、元アナウンサーでも意見を言える久米宏さんや古舘伊知郎さんがいました。今は、古賀(茂明)さんいわく、「テレビは飼い慣らされているコメンテイターしかいない」っていう構図になっているのは6〜7年前くらいからですね。ニュースに限らずお笑いもそうですが、スポンサーに対してや、視聴者が投稿するSNSに対して忖度があるのか、疑問があっても踏み込むことができなくて表現が縮こまっている感じがします。

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──映画で古賀さんが、「報ステ幹部に抗議が来た」とおっしゃっていました。菅さんはヤバいなって国民が気がつきはじめたのもその頃ですよね。『報道ステーション』『ウオッチ9』『クローズアップ現代』のように、菅政権が直接テレビ番組に圧力をかけて妨害をする。

内山:古賀さんや前川(喜平)さんみたいに、ちゃんと実名をあげて腰の強い人が言ってくれないことには事実が伝わらないんですよ。左遷されたりクビになった人からも、カメラの前では無理って断られました。今回、答えてくれた人って結局フリーの方々ばかりなんですよね。たとえ新聞記者であろうが組織の側です、新聞社が取材を断ってくることもありました。組織のなかにいるのはなんて弱いんだろう、と感じました。

──菅さんのある意味のすごさは、答弁書の原稿がなくてしどろもどろ回答する姿を見てもなお情がわかないところだなと。普通はそういう弱さが垣間見えるとなにかしら思うところがあるものですが、菅さんの場合はまったくそれがない。映画を制作しているなかで、菅さんまたは与党への印象の変化はありましたか。

内山:どんどん怒りがたまるばかりでしたね。たしかに最初のころの菅さんって、まだなんとか質問に答えようとしている場面もあったんです。ただ、あくまで推測ですが、今年に入ってからまわりの人が「もう喋らないほうがいいですよ」って言ったんだと思います。ある時期からはもう決まった答弁書しか答えないし、なにを聞かれてもいけしゃあしゃあと同じことしか言わないし、困った様子すら出さない。会話のキャッチボールにもなっていない。もっとタチが悪くなっているのでがっかりします。

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──そこは安倍政権よりもこわいですよね。安倍さんは、「こんな人たちに負けるわけにはいかない」とかポロっと本音が出ますが、菅さんはそういうところが全然なくて。

内山:官房長官時代も結局は決まった答弁書を話すか、「それは該当に当らない」と切り捨てる印象でした。総理ならばこんな非常事態に「国民に伝えるべき言葉」があってしかるべきですが…ないんですよ。安倍さんは、俺が俺が!というタイプだし、良いか悪いかは別にして「憲法を変えてこういう日本にしたい」っていうビジョンがあった。菅さんはそれが「全く無い」って多くの取材者が揃って語ります。なにがしたいとかどういう国にしたいとかではなくて、目先の人気回復用の政策で取り繕って、ただ自分の権力を守りたい人という印象です。それで合理性のない判断をしてしまうから辻褄が合わなくて、国会でもなにも答えられない。安倍さんと菅さんは人間のタイプが全く違いますよね。

──botのような返答しかしない国会を見ていると国民は諦め待ちをされているのだなと感じますが、上西(充子)教授の答弁へのツッコミが字幕で出ることで気が滅入らず見ることができました。ブラックコメディタッチにするというのは最初から予定されていたのでしょうか。

内山:僕はバラエティー出身だから、たくさんの人に見てもらうために多少なりとも笑える箇所を用意したかったんです。ガチガチの政治ドキュメンタリーというお堅い感じにはしたくなかった。上西さんとも、「笑える部分を探しましょう!」と打ち合わせをしたんですよ。政治でも笑えることを伝えられれば、見方や興味の持ち方が変わるわけですから。例えば国会質疑のヤジって、NHKの国会中継だと全然聞こえないんですよ、だからかなりボリュームをあげて、テロップでの補強や、上西さんの解説のおかげで「これは言っちゃダメだろ〜」って笑えたんです。あとは、アニメをはさむことで閑話休題じゃないですけど気持ちを切り替えられるかなと。

──いわゆる『サウスパーク』的な風刺アニメを日本では見かけないなと思っていたので興奮しました。

内山:風刺をするっていうこと自体がテレビにはなくなってきたから、この映画で表現したかったんです。僕は宮武外骨の「滑稽新聞」やモンティ・パイソンが好きなので、そういう要素を入れかったんです(笑)。あと僕自身が、「記憶にござません」とか、「個別の案件にはお答えできません」って先生にシレッという生意気なガキだったので、今の子供たちにも、「大人にこんな迷惑かけてみたら面白いぞって」けしかけたくて(笑)。

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LIVE INFOライブ情報

映画『パンケーキを毒見する』

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7/30(金)より新宿ピカデリー全国公開
 
企画・製作・エグゼクティブプロデューサー:河村光庸 
監督:内山雄人 
音楽:三浦良明 大山純(ストレイテナー) 
アニメーション:べんぴねこ 
ナレーター:古 寛治
2021年/日本映画/104分/カラー/ビスタ/ステレオ 
制作:テレビマンユニオン 配給:スターサンズ 配給協力:KADOKAWA  
©2021『パンケーキを毒見する』製作委員会

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