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トップインタビュー久住昌之 - これぞ原作者によるリアル『孤独のグルメ』! 己の勘だけを頼りにのれんをくぐり飲食する、抱腹絶倒の"ジャケ食い"顛末記!

これぞ原作者によるリアル『孤独のグルメ』! 己の勘だけを頼りにのれんをくぐり飲食する、抱腹絶倒の“ジャケ食い”顛末記!

2021.02.19

『孤独のグルメ』の原作者としても知られる久住昌之が、最新エッセイ集『面食い』(ジャケぐい)を昨年末に上梓した。初めて訪れる飲食店の佇まいをじっと観察し、グルメサイトの情報などには一切頼らず、己の勘だけでのれんをくぐり勝負する──それが"ジャケ食い"だ。レコードショップで見かけたパッケージデザインから受けた好印象を購入動機とする"ジャケ買い"に相通ずる、久住ならではのお店選び。一期一会の真剣勝負に懸けるその姿は、『孤独のグルメ』の主人公・井之頭五郎そのものだ。レコードも飲食店も名は体を表してしまう不思議、忘れがたいレコードジャケットの数々、"ジャケ食い"に際して気に留めていることなど、洒脱なユーモアセンスと鋭い観察眼を持つ久住に話を聞いた。[interview:椎名宗之/Qusumi photo:角田慎太郎(Gran)]

初めてのジャケ買いはレイ・ブライアントのライブ盤

──“ジャケ食い”という言葉はレコードの“ジャケ買い”から来ているそうですが、これまでのジャケ買いで一番の当たりだったアルバムとはどんなものですか。

久住:何だろう……。レイ・ブライアントの『Alone At Montreux』というピアノソロのライブ盤かな。高校1年のときに初めて買ったジャズのレコード。当時はジャズのことなんてまるっきり分からないし、ジャズという大海原の前に立ってるようでどこから手をつけていいのか分からない。それで友達のお兄さんがジャズ好きだったので、お勧めのアルバムを訊いてみたんですよ。ボクはニール・ヤングやボブ・ディラン、ブルースっぽいのが好きだと言ったら、「レイ・ブライアントというモダン・ジャズのピアニストが分かりやすいと思うよ」と言われて。で、千歳烏山のレコード屋さんに学校の帰りに行って、レイ・ブライアントのレコードを探したら『Alone At Montreux』があった。両手を開いて顔にかざしたモノクロのジャケットを見て、あ、これはいいんじゃないかと直感で思ったんです。買って聴いてみたらジャズにしては珍しく1曲が短くて分かりやすいし、「Greensleeves」みたいにポピュラーな曲もあってすごく良かった。こういうのがジャズならボクもジャズが好きだと思ったし、あれは忘れられない思い出ですよね。

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──久住さんは未開拓のジャンルを聴こうとするときにベスト盤から入るのを良しとしないタイプですか。

久住:今なら「入門編はこれだよ」とか便利なコンピやベストがあるだろうけど、当時はそういうのもなかったですから。ベスト盤といえば、友達がサイモン&ガーファンクルのベスト盤を持っていて、それを借りて全曲いいなと思いましたね。ただ全曲が良すぎるあまり、オリジナルを買うのは良くないのかな? なんて思ったりもして。でも初めて買ったLPはニール・ヤングの『Harvest』で、オリジナルでも全曲良かったので忘れられないジャケットになりましたね。それはジャケ買いしたわけじゃないけど。アーティストの写真もなく、アルバムタイトルとニール・ヤングの名前があるだけのジャケットなのにすごく良かった。

──シングルの『Heart of Gold』を買った後に『Harvest』を買ったんですか。

久住:うん、先にシングルを買ってました。ボクが中1の頃にボブ・ディラン派とニール・ヤング派がいて、ボクは圧倒的にニール・ヤング派だったんですよ。ニール・ヤングは自分でリードギターを弾くけど、ボブ・ディランは他の人に任せて自分じゃ弾かないので。それに『Harvest』は曲によってストリングスが入っていたり、バリエーションがあって良かったんですよね。

──ニール・ヤングはその後ゲフィン・レコードへ移籍して、『Trans』でエレクトロニクス・サウンドを大胆に導入したり、かと思えば『Everybody's Rockin'』ではロカビリーに特化したりと異色作を連発した時期がありましたが、ああいう変遷にはついていけましたか。

久住:あのときは一体どうしちゃったんだろう!? と思ったけど、ずっとニール・ヤングを聴かない時期があったんですよ。ロックよりもジャズやブルースを好んで聴くようになってね。その後、ニール・ヤングが人民帽みたいなのを被って生ギターを抱えたジャケットの『Freedom』がレコード屋でかかってて、それがものすごく格好良くてまた聴くようになったんですけど。それ以降は一時の迷走から抜け出して大復活を遂げるわけだけど、『Unplugged』では「Transformer Man」という『Trans』に入ってた曲をやってるんですよね。それがまたすごくいい曲で。聞けば息子さんが脳性小児麻痺に罹ってしまって、会話ができない息子さんとのコミュニケーションのために『Trans』みたいなアルバムを作ったらしくて。その事実を知って、なんて正直な人なんだろうと思いましたね。だから迷走していたと言われる時期にもいい曲はあるし、そこがすごくいいなと思ってまた好きになりました。あまり聴かないアルバムもあるけど、今もずっと好きですね。忘れた頃にいいアルバムを出すし(笑)。

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──ジャケ買いして大失敗したアルバムもけっこうあるんじゃないかと思いますが、いかがですか。

久住:大失敗というか、ボクが大学生のときに高中正義が『TAKANAKA』というアルバムを出して大ヒットしたんですよ。ボクはサディスティックスがすごい好きだったので高中のソロも熱心に聴いていたんです。その後に高中ブームが来て、『SUPER TAKANAKA LIVE!』というライブアルバムが出たんです。ジャケットは良くないけど買ってみたものの、すぐに飽きましたね。ジャケットが良くないのはやっぱり中身もあまり良くないんだなと思って。

 

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面食い

著者:久住昌之
発売:光文社
発売日:2020年12月23日(水)
定価:本体1,500円+税
判型:四六判ソフトカバー

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【主な内容】
●勝負の店
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05 青森県・弘前市「ままごとジョッキで乾杯!」の店
06 熊本県・熊本市「失敗が小さく小さく逆転していく店」
07 島根県・松江市「出会い頭に普通過ぎる店」
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