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トップインタビュー中山加奈子 - 詩(poetry)と詞(lyrics)を織り交ぜた『詩詞集』に見る、不器用に転がり続ける誠実な生き方

詩(poetry)と詞(lyrics)を織り交ぜた『詩詞集』に見る、不器用に転がり続ける誠実な生き方

2020.11.30

詩集は自分を出した解放感がすごくある

──個人的に一番好きなのは「さえずり」(P.161)という詩なんですが、さえずり=tweet、Twitterの語源ですよね。つまりむやみにつぶやく人たちへの風刺と言うか、SNSを万能だと思っていたら足元をすくわれるぞという警告のようにも感じたんですよね。

中山:ああ、なるほど。今まで気がつかなかった。その解釈、いいですね。そういうことにしておきましょう(笑)。

──「カメラ」(P.168)もまた、何でもかんでもスマホで写真を撮って実物を見ない現代人への風刺に思えたのですが。

中山:それもそういうことにしておきましょう(笑)。自分ではそこまで考えていなかったけど、そんなふうに読まれるなら大歓迎だし、そこまで深読みされるのは幸せなことですよ。読み間違えた解釈をする人もいるでしょうけど、それでも全然構わないし、こっちがあえて正解を出すつもりもないですし。私としてはちょっとでも共感してくれる詩なり詞があれば出した甲斐があるし、幸せだなと思います。たった一行でも分かってもらえるところがあれば嬉しいです。

── 一行どころか、死が身近なものになりつつある中山さんと同世代の人は「Heaven's Gig」(P.90)や「汲もう」(P.92)といった亡くなった人へ想いを馳せる詞と詩に深い共感を覚えると思うんです。個人的な話で恐縮ですが、ぼくも7年前に公私ともにお世話になっていたミュージシャンが急逝して、「Heaven's Gig」と同じようなことを考えることが日頃から多くて。

中山:死は年々身近に感じますね。コロナで亡くなった友人もいますし。だから生きているうちにやれることをやるしかないし、この『詩詞集』も生きているうちに出したかった。明日のことは誰にも分かりませんから。私の場合、10歳の頃から死に関心があったんです。死ぬことの怖さもあったけど、それと同時に死への憧れもありました。本当に死にたいわけじゃないんだけど、ブライアン・ジョーンズやジミ・ヘンドリックス、ジャニス・ジョプリンとかが揃って27歳で死んだじゃないですか。ああいう幻想に憧れていたと言うか、その程度の青くさいものですよ。怖いけどその世界をちょっと覗いてみたいっていう。なんて言うか、有名な人が死ぬとみんな大騒ぎするでしょう? 別に親しくなくても。あれにすごく違和感があるんですよ。こぞって“R.I.P.”を連発したり、もしかしてこのアクシデントを楽しんでない? みたいな。もちろん悪気もなく故人を偲んでいるのは分かるんだけど。私は身近な人が亡くなっても、その人がこれまでと変わらずそばにいるように感じるんです。ただ会えないだけで。

──なるほど。ところで、本書のカバーには人形の写真が使われていますが、これはどんな意図があったんですか。

中山:自分の顔写真を使おうかと思ったときもあったんだけど、顔のアップは生々しくしてどうかなと思って。中身が生々しいのに表紙まで生々しいのはイヤだなと。不要不急の外出もできないから撮影に行くこともままならないし、これは影武者を出すしかないと思ったんですよ。それでデザイナーの吉田圭子さんに影武者を送り、うつむかせたポーズを指定して撮影してもらったんです。ちなみにこの人形は“Kanako doll”と言いまして、PostPetのアートディレクターの方が“momoko DOLL”というバービーみたいな人形をプロデュースしていて、ラフォーレで展示会(『DOLLHEAD EXIBITION 2001』)をやったときにhitomi69さんという方に“Kanako doll”を作ってもらったんです。それを今回新たに用意した衣装に着替えさせて影武者にしました(笑)。

──何から何まで中山さんのこだわりが詰め込まれた一冊なんですね。企画、編集、制作、選定からイラストまで自身で手がけるなんて、アルバムの制作でもそこまでできませんよね。

中山:それはもう吉田圭子さんのおかげです。「加奈ちゃんは優秀な編集者だよ」と母のように姉のように優しく受け止めてくれて(笑)。ずっと二人三脚で作業を進めて、何度もやり取りしながらやっと完成させることができました。ただ、どれだけ校正しても誤字・脱字が出てくる恐ろしさを知りましたし、編集と校正の大変さが身に染みましたね。吉田さんに「いいよ、また誤植があったらいつでも言って」と励まされながら何とか切り抜けましたけど。

──640編から漏れた詩が少なくともあと570編あるわけですから、この『詩詞集』をシリーズ化することもできますよね。

中山:そうなんです。吉田さんにも「あと5冊は出そうね」と言われてます(笑)。

──こうした『詩詞集』を刊行するのは、アルバムを発表するのとはまた別の喜びがあるのでは?

中山:ありますね。音楽だともうちょっとうまく唄えたなとか、もっと違うアレンジにすれば良かったとか発表した途端に後悔が始まるんだけど、詩集にはそれがないんです。詩集のほうが自分を出した解放感がすごくある。実際、この『詩詞集』の作業はすごく楽しかったですし。実は作業の途中で何度も「この詩を載せるのはやめたほうがいいかな?」と吉田さんに訊きたくなったんだけど、それは違うなと思って。これは全部自分で決めなくちゃいけないと思ったんです。そうやって自己完結できるのが詩集のいいところですよね。今後はプロの編集の方にお願いすることがあるかもしれないけど、まず最初はこの『詩詞集』を全部自分の意志で作らなくちゃと思ったんです。

──ストックばかりではなく、生きてさえすればまた新たな詩が生まれるでしょうし、それを発表する機会を作らないのはもったいないですよね。

中山:そうですね。その前にまずは実家のトランクにあるノートの詩の打ち込みを済ませて、それをビリビリに破かないと。あれを残して死ぬわけにはいかないので(笑)。

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中山加奈子の詩と歌詞を100編収録した詩詞集。
昨年発表したソロ・アルバム『ROLLING LIFE』に続き、ギターとペンを握りしめ転がり続けてきた女性ロッカー、中山加奈子のペンの部分「言葉の世界」を深く味わえる一冊。縦書きで読むプリンセス プリンセスの代表作や、自身のバンドVooDoo Hawaiiansの歌詞、そして今まで明かされることなく大量にノートに書き溜められてきた言葉の数々を「詩」と「歌詞」で隔てることなく収録。企画、編集、制作、選定からイラストまで自身で手がけた、保存版の一冊。

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【収録曲】
01. ブライアンのように
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