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INTERVIEW

トップインタビューシークエンスはやとも - いま注目の霊視芸人が語る霊とのポップな付き合い方

シークエンスはやとも いま注目の霊視芸人が語る霊とのポップな付き合い方

2020.10.27

「友達は永遠に友達だ」という発想が嫌い

──自分に自信満々の人には自分の霊がついているという話が本の中にありましたけど、見ず知らずのうちに自分の分身を発しているイメージですか?

はやとも:その場合もあるんですけど、本当にたまに生き霊なのに姿形があるときがあるんですよ。たとえば本の中では僕のファンだった女の子が実は生きていたという話を載せましたが、あれは生き霊なのに姿形があったんです。でもほとんどの場合、芸能人の方とかをお仕事で見たりするとすごく小さい砂鉄みたいなものがスーっと動いているだけで、それがくっついたり離れたりその辺にボワンとしていたりというだけなので、お化けがドンと来るみたいなことはあんまりないんですよ。それと同じで、自分に自分の霊がついているのは結構すごいことで、人間は主観を逸脱することができないと僕は思っているんです。

──また哲学的な話に(笑)。

はやとも:人間はどれだけ考えても主観でしかないと思っているんですけど、自分のことが好きで自分自身に生き霊をつけることができている人は自分のことを客観視できているんですよね。自分は好きなように生きている、やりたいようにやっている、そんな自分は周りから見られたときにどんな人間かと俯瞰している。トータルで考えて、「自分はこんな人間だ。客観的に見てこんなにイイ男を嫌いになる奴はいないだろう」とか思いながら客観的に見た自分が好きだとグルグル回っているみたいな感じになっていて、それは純粋にすごいことだと僕は思っているんです。ただただ自己中な人に自分の霊はつかないので。自信満々で自分に対して霊がついている人っていうのは小さい気持ちの砂鉄みたいなものが外に出て浮遊した後に自分に返ってきてくっつくみたいな感じになっていて、そんな人を僕はすごいなと思います。自分には一生かけてもできないことなので格好いいですね。

──本の中で「お笑いはチームプレーだ」と書いてありましたが、私もそう思うんです。全員で作り上げて、楽屋のノリなどを持ってきてお客さんの前で出すときなどに霊が見えていると仲が良い、悪いなどを考慮してやれるというのがとてもすごいと思いました。

はやとも:そのチームプレーもその時々のものですけどね。また哲学的な話になりますが、「友達は永遠に友達だ」みたいな発想が僕はすごく嫌いなんですよ。そんなの来年どうなるか分からないだろって思うし。いろんな人と出会ったり、いろんな人と仕事したりしても、人間って1年後にはほぼ違う人になっているし、それは相手も同じじゃないですか。だからウマの合った人同士がまた仲良くなれるなんて分かりませんよね。仲良くなる可能性もあるし、もう全然気が合わなくなっている可能性もあるし、「友達=永遠」みたいな考えが枷としてあるから友達ができづらいと思うんですよ。僕はそのとき一緒に楽しめている人がそのときの友達ってことでいいんじゃないかと思っているし、それは芸人のチームプレイも同じで、その時々でその人の思考や考え方や生き方が自分に合うことがあるんです。なので、その人のこの部分を繋ぎ合わせるといい感じになるだろうとか、そんなことを考えながらチームプレーをしています。これはお笑いに限らず、どんな仕事でもそうだと思うんですけど、コンサルみたいなことですよね。精神的なコンサルみたいな。「今はお互いにこの部分で相性がいいと思いますよ」とは伝えますけど、それが一生ものかどうかは分からないですし、だからこそ何十年も芸歴を重ねてコンビとしてずっと面白いままであり続けている人たちはやっぱりすごいし、奇跡に近いですよね。裏ではもちろん相当な努力をしているんでしょうけど。

──オフとオンの切り替えができる以前はずっと霊が見えたままの生活をしていたのがすごいですよね。すごく疲れそうじゃないですか。

はやとも:相当疲れましたね。今はもう慣れましたけど、芸人になってからも人間としての感情が死んでいました。ドアを開けたら突然誰かがいたり、家のお風呂やトイレにも誰かがいたり、車を運転していたら突然人が現れたり、バスや電車に乗っていてもそんな状態だったので。学校で授業を受けたりとか身動きを取らないときはラクなんですけど、動かなきゃいけないときはストレスフルな状態で、それに対して僕は切り替えるというより慣れようと思っちゃったので、人間としての喜怒哀楽をほぼ殺した状態だったんですよ。笑うのも泣くのも怒るのも全部演技になっちゃって。だから僕は人との距離が縮まりにくいんですよね。ずっと一定距離のままになっちゃうのがほとんどで、仕事の人でも友人でもあまり距離感が変わらないんです。それは全面的に僕の責任で、自分がどういう人間なのかが分からなかったからなんですよ。感情を全部閉じた状態じゃないとストレスに耐えられなかったので。

──今はどうですか。

はやとも:言葉の信憑性が上がっている気はしますね。一つ遠い距離感で喋っているので。霊が見えるだなんて、そんなの本当か嘘か分からないじゃないですか? もちろん本当のことを話していますし、自分が見たことそのまましか言ってませんし、本にも本当のことしか書いていませんけど、客観的に考えると本当のことなのかどうか分からないと思うんですね。だけどある一定層の人たちがそれを信じて面白く見てくれているのは、僕自身が見えるものに対して一拍距離を置いているからだと思うんです。良くも悪くも対象と距離を置いているから。

笑いを交えながら心霊のことを語っていきたい

──お父様も見える方なんですよね。血筋なんでしょうか?

_03_3703.JPGはやとも:血筋らしいです。僕は全然覚えてないんですけど、ひいおばあちゃんがユタだったらしいんですよ。うちのおばあちゃんは沖縄生まれで多人数兄弟で、その中でお父さんが生まれて、兄弟同士みんなで面倒を見るくらい一生懸命生きてきたらしくて。僕が見えるようになってから聞いたんですけど、おばあちゃんもお化けが見えたらしいんですよ。僕はおばあちゃんとそんな話をした思い出があまりないので意外だったんですけど。ちなみにお父さんが見えるようになったのが32歳のときなんです。

──途中から見えるケースもあるんですね。

はやとも:両親が結婚してすぐくらいのときに恵比寿の結構良い家に引っ越したら、夜にずっと怪奇現象が起きたりしたそうです。女の人がノックして全部屋を回っている音がして、自分の部屋の前に来たときに中に入ってきたらしくて。それが血みどろのお化けって感じじゃなくて、明らかに人が1人ズーンと自分の中へ入ってきてビックリしたらしいんですけど、それがきっかけで見えるようになったと言っていましたね。

──とういうことは、はやともさんがご結婚されて子どもが生まれたら、そのお子さんも見える可能性が高そうですね。

はやとも:そうですね、あるかもしれません。僕は今付き合っている人と結婚したいと思っているんですけど、彼女も若干見えるようになっていますし。全部僕のせいなんですけどね。

──はやともさんのお母様も見えるようになったんですか?

はやとも:いや、見えるようにはなってないですね。お母さんの家系は霊感がないんですよ。そんなこと知るか! みたいな感じで(笑)。ただ僕と父親と一緒に住んでいることによって否が応にも怪奇現象が起こるし、ラップ現象が起きたり、地震速報も鳴っていないのに部屋が揺れたり、そういうことが平気で起こるんですけど、母親はすっかり慣れましたね。部屋で何か起きてもゲラゲラ笑って韓国ドラマを見ているので(笑)。

──先ほど話に出た筋トレに近いですね(笑)。

はやとも:そうです(笑)。今付き合ってる相手はもともとちょっと体験していた人なんですよ。たとえば何回買っても時計が壊れたりして。朝早い仕事だったので目覚ましをかけて、1時間に5分おきにセットしたのに全部鳴らなかったり、寝ぼけているだけなのかと思ったらそんなことなかったんですよ。僕が部屋に行ったときにも鳴らなかったので。それと誰もいない部屋なのにゴンという音がしたり、そんなことが小さい頃から何回もあったので、僕と付き合ったことによって余計に見えるようになっちゃって(笑)。

──他人との距離が縮まりにくいから結婚に踏み込めないところはありますか。

はやとも:結婚したいと思ったのは今の彼女が初めてなんです。本に書いた子もすごく素敵な人で、ずっと幸せな思い出ばかり作らせてもらって本当に感謝しかないんですけど、結婚したいとは一度も思わなかったんですよ。結婚したいなと気持ちの距離をいつか縮められるだろうなって感じが全くしなかった。ヘンな話ですけど、僕はその子の前で一回も泣いたことがなかったんですよ。泣いたことも怒ったこともなかったし、ずっと普通の状態でした。おかげさまで霊視芸人としてちょっとお金も入りましたし、美味しいご飯に連れていったり、良いホテルに泊まりに行ったり、ちょっと良いプレゼントをしてみたりしたんですけど、相手の顔を見ていると昔に戻りたくなっちゃったんですよ。それは向こうもそうだったんですけどね。お互いバイトして休みを合わせてどこかに出かけていた頃に戻りたいなあとか思っちゃって、それがすごいイヤだったんです。僕は仕事が一番したいはずだと思って、そのまま別れて…っていう感じで。不思議なことに、今の彼女は初めて会ったときからこの人と結婚したいと思ったんですよ。向こうは初対面だから何言ってんの? って感じだったんですけど、結局、地方から東京に越してきて一緒に暮らせることになりました。

──前の彼女は一緒にいると芸人として後退するような感じだったけど、今の彼女ははやともさんが芸人でいることを第一に考えていると?

はやとも:そうなんですけど、客観的に見ると自分が芸人とは言いづらくなってきてますからね。宮崎駿さんの言葉に「自分の才能に気づいたときが人生の呪いの始まりだ」というのがあって、僕はその言葉が昔から好きで、いつか僕も自分に合ったお笑いをやっていくときにやりたいお笑いじゃなくなるのかなと思っていたんです。でも今の状況はそれよりも茨の道なんですよね。芸ではなく霊視に注目されているわけだから。なるほど、これは芸人じゃなくなるってことなのか…とも思ったけど、それでも霊視体験を語ることはこれからもやり続けたいことですし、できればよしもとで一緒に苦楽を共にした芸人たちと笑いを交えながら心霊のことを語っていきたいんです。今は誰も正解を知らない道を歩もうとしているので、それに対して乗っかってくれる人かどうかがパートナーとしては大事だったのかなと思いますね。

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四六判 / 並製 / 208頁
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