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INTERVIEW

トップインタビュー吉村界人(俳優)-「ミッドナイトスワン」"自ら選んで一人になる、自ら選ぶ"というのがいつもある気がします。

“自ら選んで一人になる、自ら選ぶ”というのがいつもある気がします。

2020.08.17

 心の葛藤を抱えながら出会い、街の片隅で寄り添う凪沙と一果の二人。トランスジェンダー・ネグレクトといった問題に対峙しながらも孤高に生きる人々を強く・美しく描いた内田英治監督の最新作『ミッドナイトスワン』について、今作に彩をそえた吉村界人さんにお話を伺いました。
[interview:柏木 聡(LOFT/PLUS ONE)]

最初の想像とは違った作品

――内田(英治)監督とは以前にもご一緒されていますが、今作に参加された経緯を伺えますか。

吉村:内田監督から新作映画をやるから出て欲しいと連絡があったのがきっかけです。

――LGBTQや児童虐待といった社会問題に切り込んだ作品ですが、実際に脚本を読まれていかがでしたか。

吉村:実は最初に頂いた脚本は、実際に出来上がったものとは少し違っていたんです。もっと分かり易い人間ドラマと言いますか、少女が成長していく物語でした。もう少しエンタメ要素が今より強いものだったんです。

――吉村さんもトランスジェンダーの役柄ですが、実際に演じてみていかがでしたか。

吉村:女性は凄い生き物で、同じ人間でも私生活の過ごし方や見た目へのこだわり方が男性と大きく違うんだなと改めて思いました。演じたことで女性の気持ちもわかるようになったと容易に言えないくらい、違いを再認識しました。

――今作で演じられた役は心と体が違ってくるのでとても難しい役柄になりますね。

吉村:さらに今回はバレエにもチャレンジしたので難しかったです。バレエシーンでは、運動量も多く大変でした。僕はダンスの経験もなく、最初は苦手意識があったのでついていくのが大変でしたが、皆さんと練習をしていく中で、少しずつ楽しみながらやれるようになりました。僕らの演じた役はプロのバレリーナではなく、目指しているわけでもないので、日ごろから踊っているという部分を意識するのが特に大変でした。

――パーフォーマンスを見てもらってお金をもらうという意味では、プロとなりますから。クオリティーは出さなければいけないですからね。

吉村:そうなんです。だからこそ、作中で描かれていない演じた役の裏側にある部分を自分の中でも作っていきました。

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二人の掛け合いを見ていて心が揺さぶられました

――今作では草彅(剛)さんをはじめ役者巧者のみなさんと共演されていますが、みなさんとの思い出を伺えますか。

吉村:僕は本来あまり共演者と話すタイプではないですが、今回の現場では草彅さんと話をする機会が多かったです。撮影時は26歳だったので、草彅さん自身が25・26歳だった時の話や役者について・この世界に対する気持ちなど熱い話を聞かせて頂きました。

――兄貴肌な方なんですね。

吉村:僕は可愛がられるタイプではないので、こんなに話しているのが自分でも珍しかったです。本当にお芝居に対して凄く熱を持った方でした。

――そんな名優がそろう中、(桜田)一果役の服部(樹咲)さんは新人で初めての映画出演ですがどのような方でしたか。

吉村:役者として素晴らしく、素直に凄いと思いました。芝居をしてやろうという邪念が無く自然体な姿が印象的でしたし、草彅さんとの掛け合いのシーンはとてもドラマチックで見ていて心が揺さぶられました。

――二人をはじめみんなそれぞれ秘密・闇を抱えていて、そこと不器用ながらも向き合っていく姿がよかったです。ドラマを見ると同時に “あなたならどうしますか”という問いの投げかけもあって、そこは映画だから出来ることで、そういった映画ならではの力を感じた作品でもありました。

吉村:僕も同じようなことを感じました。少し前に内田監督とドラマでご一緒もしましたが、改めて内田さんは映画監督なんだなと感じました。

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否定も肯定もしない感じ

――内田監督はどのような方なんですか。

吉村:繊細で優しい方です。でも、わかりにくい面もありますね。話をしていても言葉の裏には何か隠れているように感じることがよくあります。

――この作品では変化していく中、決断していくうえでみんな無くしていくものがあるという事を強く押し出していると感じました。私は時にはドキッとさせられることもありましたが、吉村さんは一緒に作品をつくられている中でどのように感じられましたか。

吉村:今作はトランスジェンダーだからこその描き方だった部分もあると思うんですけど。なかなか、言葉で表現するのは難しいですね。終わり方も想像の余地を残す形だったので。内田監督がどこかニヒルな人だからというのもあると思うんですけど、僕も共感します。ストーリー的にもそうですし、画の表現としても好きです。社会的な問題を「がんばろうぜ」と無理に前向きにするのが僕は好きじゃなく、これはこうだと正義を振りかざすのも違うと思うんです。なので、否定も肯定もしない感じが僕は好きでした。

――つらい選択をせざるを得ないなかでも進んでいくのは本当に強いですね。

吉村:強いですね。いま話していて思い出したんですけど、6年前に内田監督とお会いした時に「界人、孤高になれ。俺は孤独より、孤高が好きだ。」と仰ったんです。「孤高は自ら一人になるが、孤独は一人になってしまった」そういう意味で大きく違うと思うんですけど、内田監督の作品には “自ら選んで一人になる”“自ら選ぶ”というのがいつもある気がします。

――改めて作品を見られた感想を伺えますか。

吉村:間違いなくこの映画はダントツで面白いと思います。評価されていくと思える程、素晴らしい作品になっています。

――本当に作品に引き込まれてしまいました。

吉村:ありがとうございます。今は映像の持つ力が改めて見直されている時期だと思います。「ココが見どころです」というのを言葉にしにくい作品ですが、見るべき作品だと思います。絶対に響く作品です。社会的な問題を提起してもいますが、アートとしても優れた作品なので、そういった面でも見てもらえるといいかなと思います。

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©2020 Midnight Swan Film Partners
 
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「ミッドナイトスワン」
内田英治(著)

価格:700円+税  発行:文藝春秋

LIVE INFOライブ情報

ミッドナイトスワン

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9月25日より全国劇場にて公開!
 
-staff-
監督・脚本:内田英治
音楽:渋谷慶一郎
製作:CULEN
制作:プロダクション:アットムービー
 
-Cast-
凪沙:草彅剛
桜田一果:服部樹咲
桜田早織:水川あさみ
洋子ママ:田口トモロヲ
片平実花:真飛聖
瑞貴:田中俊介
キャンディ:吉村界人
アキナ:真田怜臣
桑田りん:上野鈴華
桑田真祐美:佐藤江梨子
桑田正二:平山祐介
武田和子:根岸季衣 ほか
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