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INTERVIEW

トップインタビュー堀潤(「わたしは分断を許さない」監督)-なぜここまで、誰がこの分断を生んだのか? 報道人・堀潤が世界各地の孤立させられた人達に出会い、寄り添い、伝える、最新ドキュメンタリー映画

なぜここまで、誰がこの分断を生んだのか? 報道人・堀潤が世界各地の孤立させられた人達に出会い、寄り添い、伝える、最新ドキュメンタリー映画

2020.03.27

 かつてNHKのキャスターとして報道番組を担当していた堀潤は、3.11後、日米の原発メルトダウン事故の実態に迫ったドキュメンタリー映画「変身- Metamorphosis」を自主制作したり、市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げるなど、独自の活動を展開していたが、そうした活動が会社から問題視されたことを契機にNHKを退職、以降は、独立したフリージャーナリストとして国内外の様々な現場を精力的に取材している。そして、このほど7年ぶりのドキュメンタリー映画を完成させた。テーマは「分断された世界」。堀が5年の歳月をかけて取材に奔走した福島、シリア、パレスチナ、朝鮮半島、香港、沖縄など、様々な場所で感じた分断の深まり、それはやがて、人々の心に癒しがたい猜疑と恐怖を生み、瞬く間に差別や排斥を叫ぶ動きへと加速していく。一体、なぜこうした分断は生まれるのか? 私たちは誰に分断されているのか? 公開を前に堀監督にお話を伺った。(Interview:加藤梅造)

「忘却」から「分断」へ

──2013年に発表した自主映画「変身- Metamorphosis」から7年が経ちましたが、いままた映画を撮ろうと思った動機をお聞かせ下さい。

堀潤:1作目のテーマは「忘却」でした。震災からまだ2、3年しか経ってないのに、社会の課題が次々と別の現場に移っていって、過去の事故の検証さえきちんとされないまま、次の選択をしようとしている。その現状を描いたのが前作だったんですが、あの時感じていた「忘却」は、時間が経つにつれて「分断」に変わったことを感じました。忘却は事実を知っていて忘れることですが、分断は事実さえ知らず、そこに問題があることさえ気づかない。10年近く被災地を訪れていますが、そこで感じる温度差はどんどん大きくなっている。2020年の東京オリンピックは「復興五輪」だって言うけれど、それは名ばかりじゃないかという気持ちがあります。もちろん復興に向けてたいへんな努力を重ね、その結果、見事に復興を遂げた地域もある。その一方で、いくら現状を訴えても「なかった」ことにされている人達もいる。そうした小さな声を伝えたいという思いで、今回この映画を作りました。個人の力ではどうにもならない大きなシステムの中で孤立させられている現場があちこちにあり、それらひとつひとつを俯瞰して並べてみることで見えてくるものがあるんじゃないかと。それで今作では、国内だけでなく海外の現場も取材して1つの作品にすることにしました。

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──堀さんが「分断」という言葉を最初に意識したのは、「生業を返せ、地域を返せ!福島県原発訴訟」(以下「生業訴訟」)の原告団への取材がきっかけだったそうですね。

堀潤:生業訴訟は地裁の段階からずっと傍聴と取材を続けてきたので、当初はそれだけで一本撮ろうと思っていました。裁判を傍聴していると、原告の住民の方たちが意見陳述を20分から30分程されるのですが、それぞれの原告が自分の人生のすべてを語り尽くすんです。それがどれも胸に迫るもので、時には裁判官すらも心を揺さぶられるような証言がたくさんある。これは是非もっと多くの人に知って欲しいと思い、劇場の人や配給の人に相談した所、是非やりましょうと。その一方で「いま、震災とか原発の映画はお客さんが来ない」とも言われてしまって。でも、それはテレビの現場も同じなので、最初からわかっていました。じゃあ、僕たちの足下で起きていることをちゃんと見てもらうにはどうしたらいいのかを考えた時、福島で起きていること、沖縄で起きていることは、他の様々な場所からも辿り着けるテーマで、それこそが、いま至るところで起きている「分断」なのではないか? 私が知らない所で、どれだけ分断が深くなってしまっているのか? その視点で世界中を見渡すことで、逆に、福島で被災された当事者たちの思いに共感できるような作品が作れるんじゃないかと思ったんです。「ああ、原発の話でしょ」とか「ああ、沖縄の基地の話ね。だいたい知ってるよ」と簡単に流されてしまうような話ではなく、100人いれば100通りの状況があるということを表現したかった。

──確かに、それぞれの問題はつながってますよね。映画の中で、生業訴訟をしていた久保田さんが、移住先の沖縄で基地反対に関わるようになったのは象徴的だと思いました。

堀潤:原発事故が起こって、沖縄に自主避難した久保田さんは、事故前は「反対する人はなんでも反対したい人だと思っていた」と告白しています。でも彼女は、そこに何か理由があるんじゃないかと思って、実際に抗議の現場に足を運ぶようになった。彼女のそういった経過を取材で追っていたので、僕自身もすごく発見がありました。

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──一方、原発から20キロ圏内の富岡町から強制避難した深谷さんは、同じ生業訴訟の原告でも久保田さんとはかなり事情が異なりますよね。

堀潤:生業訴訟が掲げる大きなテーマが「分断の解消」なんです。原発事故後、警戒区域、計画的避難区域など、国が線引きをした。あなたは避難すべきだ、あなたは避難しなくてもいいと。事故を起こした側が被災地を区分したことで、残念なことに自主避難者という言葉が生まれ、社会から「あなたたちは勝手に避難したんでしょ」と言われてしまった。それこそが分断の象徴ですよね。

──深谷さんが「賠償金が妬み、そねみの原因だった。お金なんからいらないから元に戻して欲しい」と訴えていますが、被災者が賠償金のことであれこれ言われるのは、見ていて本当に悲しくなります。

堀潤:本来、避難された方はどんな状況であれ事故の被害者なのに、それを「あなたは賠償の対象です」「あなたは対象外です」と分類されてしまうのはどうなんだと思うし、生業訴訟はそれこそが大きなテーマだったので、必然的に分断という言葉がキーワードになるんです。法廷の戦略とか見ていると、国側の弁護士は法廷の場で深谷さんに対して「あなたは賠償金をいくらもらってますか?」という質問をわざわざするんです。そうすると原告側の中で「ああ、深谷さんはそれだけもらってるんだ」ってなりますよね。それは明らかに国側の分断工作なんです。本当にひどいなと思うんですが、そういうのは法廷の外にはなかなか伝わらないですよね。

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わたしは分断を許さない 香港、朝鮮半島、シリア、パレスチナ、福島、沖縄。「ファクトなき固定観念」は何を奪うのか?

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LIVE INFOライブ情報

わたしは分断を許さない
 
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ポレポレ東中野ほか全国順次公開中
 
監督・撮影・編集・ナレーション:堀 潤
プロデューサー:馬奈木厳太郎
脚本:きたむらけんじ
音楽:青木健
編集:高橋昌志
コピー・タイトル原案:阿部広太郎
スチール提供:Orangeparfait
取材協力:JVC・日本国際ボランティアセンター、KnK・国境なき子どもたち
配給・宣伝:太秦株式会社
映倫:G122279
2020|日本|カラー|DCP|5.1ch|105分|
 
公式サイト:www.bundan2020.com
 
(C)8bitNews
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