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INTERVIEW

トップインタビューJAGATARA(OTO、南流石)【完全版】- 虹色のファンファーレが聞こえるかい

虹色のファンファーレが聞こえるかい

2020.01.10

朝焼けを待ちながら 終わりのないダンスはつづく

──Jagatara2020の始動で、30年ぶりの新曲が生まれましたね。

OTO:アケミの30回忌を前に、新曲もあった方がいいんじゃないかという話になり、今回2曲作りました。僕が作ったというよりも、僕は器として曲の骨組みだけを作って、さっき言ったアケミの言葉が降りてくるじゃないけど、その中にいろんなものが入ることでみんなの曲になっていくのを楽しんだ。この2曲ができたことで、僕が今の暮らしの中で待ちわびていた曲に出会えたことが一番嬉しいですね。

──『みんなたちのファンファーレ』は南さんが作詞してますが、どんなふうにできあがったんでしょうか。

 

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南流石+江戸アケミ(撮影:松原研二)

南:OTOからデモテープをもらって詞を書くことになったんだけど、その時、アケミの元にみんなが足踏みしながら集まってくるようなイメージが浮かんできて「123イエス!」って歌詞を新たに足して、OTOにフレーズを付けてもらった。

OTO:ソイソースのライブで南はセンターで歌ったんだけど、お客さんとバンドの真ん中に南がいる姿が、曲を書く時にイメージとして浮かんでいた。その景色を想像しながらこの曲を書きました。

南:その時、私もお客さんとバンドを繋ぐ存在になりたいなと思ってた。

OTO:1983年に出た『家族百景』のB面に『日本株式会社』という曲があるんだけど、曲の最後の方でアケミがフリースタイルで歌っていて、「虹色のファンファーレが聞こえるかい それがゴキゲンの合図だ」というフレーズがある。僕はこの言葉が、新しいビジョンのコールのような気がしていて、アケミが亡くなってしばらく経ってから、この言葉が一番最後のタイトルだと思っていた。『夢の海』という曲の中には「太陽は口を開き 時の声をあげる」ってフレーズがあるんだけど、アケミの中ではずっと新しい時代の到来がテーマで、みんなでそれを迎えるために歌っているんだよね。「暗黒大陸じゃがたら」の暗黒は80年代の日本そのもので、『みちくさ』の中では「闇から闇へと葬り去られる時代」から「WAKE UP、起きろよBaby」と歌われるし、『都市生活者の夜』では「午前四時少し前」という一番闇の深い時間に「朝焼けを待ちながら 終わりのないダンスはつづく」と歌われる。無明の世界の中で光を求めるというのがアケミの中のテーマであり、生き方なんだよね。以前の僕はそういう認識がなさ過ぎて、アケミが抱いていた深刻さとか、危機意識には及びもつかなかった。アケミはよく地球と一つになったことがあると言っていて、それはさっき言ったヴェーダーンタ哲学では非二元論を経験したってことなんだけど、アケミは80年代の時点で、彼の言葉でいう所の「宇宙的レベル」でそれ感じていたわけで、まさに30年後の今の時代に向けてメッセージを発していたんだと思う。

──80年代のバブル絶頂期にそういう危機感を持っていた人は本当に少なかったでしょうね。

OTO:そうだね。それでも鋭い人達は、言葉で説明はつかなくても、JAGATARAのライブでその危機感のすごいエネルギーを感じながら踊っていたんだと思う。ソイソース2019で驚いたのは、お客さんが、もちろんみんな踊っているんだけど、それに加えてみんなでかい声で歌ってたんです。アケミの言葉がこんなに残っていたのかとすごく感激した。僕はこの30年間、アケミのメッセージがあまり伝わらずに素通りされてしまうのかなあと思っていたんだけど、そんな心配はいらないとソイソースの時にお客さんに教えられた。

 

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Jagatara2020(2019年 撮影:池田敬太)

いじけるな、ガッツで乗り切れ

南:OTOが言ったようにソイソースでお客さんがみんな歌っているという現象を見て、自分が歌う歌を書くんじゃなくて、30年間待っていてくれた人達が歌う歌を書こうと思った。JAGATARAを好きな人が会場で歌っているイメージですね。

──『みんなたちのファンファーレ』はOTOさんが一旦音楽を辞めるという過程を経て生まれた、まさに新しい音楽だと思いますが、南さん個人にとってこの曲はどういう意味を持ちますか。

南:私とOTOは住んでいる場所もやってることも違うんだけど、似たような状況がありました。この曲を作る前に、私の中でずっとやってきた芸能の仕事に区切りを付けたんです。それを誰かに宣言したわけではなく、自分の中で自分と約束しただけなんだけど。芸能界で生きてきた自分とJAGATARAをやってきた自分が今まで平行していたけど、区切りを付けようという答えを出した時にこの曲ができた。もともと南流石という芸名は桑田佳祐さんが付けてくれたんだけど、「南流石」っていうのはJAGATARAに入ってから生まれたと思っているから。私のダサい所はそれを堂々と言わない所だね(笑)

──でも以前、テレビ番組でめっちゃ語ってましたよ。「本当の意味で私が生まれたのはJAGATARAからだ」って。

南:あ、言ってるね(笑)

──南さんは障害者施設で踊りを教えたり、ヨルダンの難民キャンプを訪れてシリア難民の子供達とダンスワークショップを開くなどの活動をされてますが、それは今回のJagatara2020とすごく繋がっているなと思います。

南:その通りで、JAGATARAがなければ、自分がこういう方向に行く道標はなかったと思うんだよね。もちろんOTOの今の活動にも影響を受けているし、全部リンクしている。私がいつも頭にあるのは、アケミの「いじけるな。ガッツで乗り切れ」。この2つの言葉で芸能界を生き抜こうとしていた。でも、それに疑問を持ち始めたのは、やっぱり3・11の震災以降ですね。ガッツで乗り切ろうとしていたことが、果たして本当に自分にとって価値があることなのか?と。そんな時にOTOのいる熊本に行ったんだよね。

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2014年、アンナプルナ農園のOTOを訪ねた南流石

OTO:そうかあ。「いじけるな」はかなり大事だからねえ。

南:生きてく中で哲学が救いになるということをOTOから教えてもらって、その影響も大きい。新曲の詞でもそれを言いたかった。なるべく簡単な言葉を使って書いているんだけど、実は、アケミの詩集の中にある「すべての宗教を否定するところから始まる」という言葉がテーマとして私の中にあった。

OTO:アケミは『それから』を出してその一年後ぐらいに逝っちゃうんだけど、その間のインタビューで「リズムで救われたいんだよ。でも宗教は嫌なんだ」って言っている。そこはすごく核心だと思っていて、やっぱりこの世の中は生きていく上で大変なことが多すぎる。明るい人間関係さえできればいいじゃないかって思うんだけど、それが厳しいのは、人間が生み出している厳しさがたくさんあって、それこそ戦争や原発もそうだし、人が人の自由を奪うような醜い状況が山ほどある。それがここ何年かで急速に加速していて、南米や香港だけじゃなく、世界中でたくさんの悲鳴が上がっている。そういう状況でサバイブしていくには方法を持たなければいけなくて、それは人任せにはできないし、自分の力で見つけて生きていくしかない。だからこそ、これまで長い間、人類が多くの苦しみを乗り越えてきた歴代の人達が考えた知恵が哲学として集約されているんだと思う。残念ながら人間は、苦しすぎると別の人に危害を与えるようになってしまうし、それを受けた人もまた苦しくなるという悪循環が起こる。ハラスメントが連鎖して自分たちの命の源である地球環境を汚しまくってしまった。アケミが生きていた頃と比べてもそれはどうしようもなくエスカレートしているんだけど、それでもできる限り元気に楽しく生きていきたいから、やっぱり素敵な友達が必要なんだと思う。

──今のひどい社会の中で絶望しないためには、いっそ鈍感になるしかないと思うんだけど、JAGATARAみたいな音楽が好きな人はそうはなれない。でも僕は東京ソイソース2019やJagatara2020に希望を感じるんです。このままいじけてる場合じゃないぞと。

南:「いじけちゃいけない」って凄い言葉だよね。だから今はJAGATARAメンバーの救済の時期だと思っていて、1月のライブに向けて、自分自身がまずアケミやJAGATARAからもらったものに感謝して救済される。その心でお客さんの前に立つ(笑)。今OTOが明るい人間関係って言ったけど、私にとっても一番大事なことは明るいってことなんだよね。明るく生きるのが一番大切。

OTO:『都市生活者の夜』の中に「子供達の明るいざわめきが街じゅうに響きわたるその日まで オレは決して忘れはしないあの日のすべての出来事を」って歌詞があるけど、その言葉につきると思う。明るいビジョンってそういうことだなと。明るくなるにはガッツがいるんだよ。許せないことも許すしかない状況が山ほどあるから。ハラスメントの連鎖をその都度切っていくのは大変なことだと思う。智慧に目覚めないと無理だと思うもん。頭でわかってもなかなかそこまで悟ったようにはふるまえない。アケミの言っていた「業をとれ」の課題です。アケミは「頭の中を掃除するんだ」というメッセージもたくさん出していた。これから先の人類に一番必要なメッセージだよ。そんなメッセージを出していた歌手は世界的なレベルで見ても数少ないんだよ。なんだろ?僕はレナード・コーエンくらいしか思い当たらない。余談だけどアケミやこだま(和文)さんや篠田(昌己)くんの音楽に共通するのは謙虚さだと思う。謙虚な音楽は少ないよ。

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LIVE INFOライブ情報

​Jagatara2020「虹色のファンファーレ」

2020/1/27(月)
渋谷CLUB QUATTRO
​Jagatara2020:Oto(G)/ EBBY(G)/ 中村ていゆう(Dr)/ 南流石(うた)
ヤヒロトモヒロ(Per)/ エマーソン北村(Key)/ 吉田哲治(Tp)/ 村田陽一(Tb)/ 
宮田岳(B)/ 関根真理(Per)/ ko2rock(Sax)/ 北陽一郎(Tp)/ 西内徹(Sax)/
西岡ヒデロー(Tp)
Guest Artist:鮎川誠(SHEENA&THE ROKKETS)/ 近田春夫(活躍中/LUNASUN)/ こだま和文/ 田口トモロヲ/ 不破大輔(渋さ知らズ)/ いとうせいこう/ 町田康/ Nobutaka Kuwabara(DEEPCOUNT)/ 高田エージ(SUPER BAD)/ 吹越満/ 大槻ケンヂ(筋肉少女帯)/ 向井秀徳/ 永山愛樹(TURTLE ISLAND)/ 七尾旅人/ 折坂悠太
 

「Jagatara2020ナンのこっちゃい生サロン」-トーク&ミニライブ ・レア映像 ・Jagatara生カラオケ大会 など-

2020/1/28(火)
LOFT9 Shibuya
出演:Oto / EBBY / 中村ていゆう / 南流石 / 宮田岳 / and more *Guestあり
 
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