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INTERVIEW

トップインタビュー佐古忠彦(監督)『米軍(アメリカ)が最も恐れた男 カメジロー不屈の生涯』- 「この沖縄の大地は、再び戦場となることを拒否する!」沖縄と共に生きた男の不屈の人生を描いた渾身のドキュメンタリー

「この沖縄の大地は、再び戦場となることを拒否する!」沖縄と共に生きた男の不屈の人生を描いた渾身のドキュメンタリー

2019.09.10

 戦後の米軍統治下の沖縄で、占領軍の暴政に対して毅然と闘い続けた一人の男がいた。その名は瀬長亀次郎。「カメジロー」「カメさん」と親しまれ、演説会を開けば数万人の人々が集まり熱狂したという。

「この沖縄の大地は、再び戦場となることを拒否する!基地となることを拒否する!」
──民衆の圧倒的な支持を集めるカメジローを危険視したアメリカ軍は、カメジローに対し、不当な罪をでっち上げて投獄したり、選挙に出られないように選挙権を剥奪するなど、あからさまな妨害を加えた。しかし、決して弾圧に屈せず、生きる権利を求めて闘い続けたカメジローの姿は、圧政に苦しむ沖縄の人々に勇気を与え、沖縄の不屈の精神を体現するものとなったのだ。

 瀬長亀次郎とは一体何者なのか?

 『筑紫哲也NEWS23』でキャスターを務め、『報道の魂』『ザ・フォーカス』の番組制作を手がけてきた佐古忠彦が、瀬長亀次郎の在りし日の姿を追ったドキュメンタリー映画『米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー』は、2017年に公開されると全国で大ヒットを記録し、一大カメジローブームを巻き起こした。特に沖縄では映画館に連日長蛇の列が並び、桜坂劇場の連続上映記録を作るほどの熱狂だった。

 そして2019年、再びカメジローがスクリーンに帰って来る。新作『米軍(アメリカ)が最も恐れた男 カメジロー不屈の生涯』では、瀬長が残した230冊を超える日記を丹念に読み解き、政治家としての顔だけでなく、家庭での姿、両親との関係など、様々な角度からカメジローに光を当てることで、あの不屈の精神がどこからやってきたのかを浮かび上がらせている。いまだに基地問題に揺れ続ける沖縄を理解する上で、このドキュメンタリー作品は非常に重要な視点を私達に与えてくれるはずだ。監督の佐古忠彦にお話を伺った。(TEXT:加藤梅造)

まともなジャーナリストだったら、沖縄で起きていることを見て問題意識を持たないはずがない

──前作は予想を超える大ヒットを記録しましたが、一般的に瀬長亀次郎はそれほど有名な人ではないですよね?

佐古:沖縄ではある一定の年代の人には特別な存在ですが、40代より下になると名前は知っていても実際に何をやったのかよく知らない人も多いそうです。

──そうなんですね。ただ本土の人はあまり知らないでしょうし、佐古さん自身も沖縄出身ではありませんが、なぜ沖縄をテーマに映画を作ることになったんですか?

佐古:私が沖縄の問題に関わるようになったのは、筑紫哲也さんの存在が大きいのですが、実際に筑紫さんからあれしろ、これしろと言われたことはありません。ただ「まともなジャーナリストだったら、沖縄で起きていることを見て問題意識を持たないはずがない」と言っていて、(NEWS23の)番組のスタッフたちはいつしか自分からテーマを見つけて沖縄に取材に行ってました。私もそのうちの1人ですね。

──佐古さんが手がけたテレビ番組『報道の魂』や『ザ・フォーカス』でも定期的に沖縄をテーマにした回が放送されていますね。

佐古:はい。全部ではないですが、私もいくつかディレクターとして作っています。

★米軍が最も恐れた男 カメジロー不屈の生涯_メイン.jpg

──佐古さんが『報道の魂』で瀬長亀次郎を特集したのが2016年ですが、ちょうど辺野古の問題がテレビでも取り上げられるようになった頃ですよね。

佐古:翁長知事が2014年に沖縄県知事に就任して、翌年から国との裁判が始まり、2016年にはその裁判の結果が出たり、辺野古だけではなく高江のヘリパッド建設の問題が激化したりと、県と国が対立する構図がより鮮明になった年でしたね。

──沖縄の基地問題がメディアで取り上げられる時によく言われるのは、沖縄と本土の温度差ですよね。

佐古:辺野古や高江の映像がメディアに出る度に、沖縄に対する理解のない批判の声が本土側から上がるんですが、こうした状況は、戦後の沖縄で何が起きていたのかを知っているかどうかでだいぶ変わると思うんです。戦後、日本が平和な民主国家になり、経済復興を遂げていく一方、沖縄で何があったのか? そこには沖縄の軍事占領と引き換えという現実があるわけで、そういう事実に思いを致せるかどうか。だから、すっぽり抜け落ちている戦後史をもう一度提示することで、本土と沖縄の溝を埋めていくことができるんじゃないかと。カメジローを通して沖縄の戦後史を辿ることで、いま沖縄で何が起こっているのかが見えてくると思うんです。

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暴動ではなく抵抗

──今作では残されたカメジローの日記が重要な題材になっていますね。

佐古:前作では歴史に沿った中で彼が日記で残している言葉を選びましたが、今回は逆に、彼の日記をもう一度読み込んで、そこから彼の残した言葉を抽出して一本のストーリーを組み立てました。まさに映画の根幹に日記がある感じですね。

──前作は時間の都合で入れられなかった部分もあったようですが。

佐古:それもあります。1作目はカメジローが那覇市長を追放される所までをわりと詳しく描きましたが、その後は駆け足だったので、その部分を埋めたいというのと、あと、1作目を観た人から、実際のカメジローはどんな人だったのか、どのようにしてあの不屈の精神を持てたのか、もっと素顔の部分、「人間カメジロー」を知りたいという声をたくさんいただいて、そういう目線で日記を読むと、政治家としての顔だけでない、よりパーソナルな部分が見えてきて、そこに光を当てることでまた違った映画が作れるなと。

──奥さんに対するラブレターのような描写とか非常に興味深かったです。

佐古:カメジローもすごいけど、本当にすごかったのは奥さんのフミさんなんだって言う人がいるんですが、それは日記からも伺えますね。

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──監督自身、前作の取材で「あの時代からずっと線が引けて、1本の線がつながって今に至る」と言ってましたが、カメジローの闘いから現在の問題がクリアーに見えてきます。投獄中に起きた囚人の反乱を「暴動ではなく抵抗」「基本的人権の問題」だと言ってますが、今起きている香港のデモにも通じる言葉だと思いました。

佐古:1970年に起きたコザの事件も「コザ暴動」と言われることがありますが、映画の中では「コザ騒動」にしています。カメジローが言うのは、人権がいかに軽んじられてきたか、ということです。カメジローは出所する時に、刑務官の待遇を改善することを提言しているんですね。非常にカメジローらしいエピソードで、自分たちのことだけではなく、より広い視点での人間の権利を考えていたことがわかります。

──表向きは反カメジローだった人が実は裏で支援していたというエピソードも出てきますが、右左どちらからも支持されていたんですね。

佐古:本土の政治的価値観で見ると沖縄を見誤ることがあって、カメジローは、右も左もない、保守も革新もない、いろんなものを超越した所にいたからこそ多くの人に支持されたんだと思います。翁長さんの演説にもそういう所があって、例えば「イデオロギーよりもアイデンティティ」という言葉もそうですが、なんとなくカメジローの時代と似ているなと。翁長知事とカメジローは政治的な立ち位置は大きく違いますが、なぜこの二人を囲む風景が重なって見えるのか、それはどこか超越したものがあるんだろうなと。それは「小異を捨てずに大同につく」という言葉だったり、その後の「オール沖縄」に通ずるものが当時から沖縄にはあったんだと思います。それは占領下で主権を奪われたことでいろんな思いをしたことが大きいんだろうなと。

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LIVE INFOライブ情報

米軍(アメリカ)が最も恐れた男
カメジロー不屈の生涯
 
キービジュアル.png
 
2019年8月17日(土)沖縄・桜坂劇場先行公開
2019年8月24日(土)ユーロスペースほか全国順次公開
 
監督:佐古忠彦 
語り:山根基世 役所広司
2019年/日本/日本語/カラー(一部モノクロ)/ビスタ/ステレオ/128分
 
配給:彩プロ
© TBSテレビ
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