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INTERVIEW

トップインタビュー【Brain Police Road to 50th Anniversary PANTA(頭脳警察)暴走対談LOFT編】第7回 町山智浩(映画評論家)×切通理作(評論家)【前編】 - PANTA、「元祖オタク」に認定! 衝撃のアフター6の壮絶なアフタートーク!

PANTA、「元祖オタク」に認定! 衝撃のアフター6の壮絶なアフタートーク!

2019.04.10

「世界夫人」がもしも「浮き世夫人」だったら…

町山:今日はPANTAさんに訊きたいことがいっぱいあるんです。PANTAさんは今までドイツのことをたくさん唄ってらっしゃいますけど、ドイツに行ったことはないんですよね?

PANTA:いきなりそこに行きます?(笑) 行ったことはないね。

町山:ドイツ語でも唄ってましたよね?

PANTA:いい加減なドイツ語でね(笑)。

町山:なんでそんなにドイツが好きだったんですか?

PANTA:好きだったと言うか、『クリスタルナハト』の世界を描くためにはどうしてもそっち方面に行かなきゃならないし、ヨーゼフ・ゲッベルスのことも出てくるし…。

町山:頭脳警察の頃からそうじゃないですか? 「赤軍兵士の詩」はブレヒト、「さようなら世界夫人よ」はヘッセの詩に曲を付けて。

PANTA:ああ、言われてみればそうだね。俺はずっとフランス・ギャルが好きだったから、ドイツとはあまり縁がないと思っていたんだけど。

町山:「赤軍兵士の詩」はブレヒトがバイエルン革命のことを書いた詩ですよね。『ザ・ヤクザ』や『タクシードライバー』のシナリオを書いたことで知られるポール・シュレイダー監督の新作が『魂のゆくえ』という作品で、イーサン・ホークが信仰心の揺らぐ牧師を演じているんです。公開前なので詳しくは言えないんですが、その映画のテーマが完全に「最終指令“自爆せよ”」なんですよ(笑)。イーサン・ホーク演じる牧師の名前がエルンスト・トラーと言って、バイエルン革命の指導者と同じ名前なんですね。このあいだポール・シュレイダーに電話インタビューをした時にそのことを尋ねたら、「もちろんバイエルン革命のエルンスト・トラーから取っている」と。「僕はバイエルン革命にロマンを抱いているからだ」と言うんです。それを聞いて「『赤軍兵士の詩』だ! 頭脳警察だ!」と僕のなかでつながったんですよ。

PANTA:なるほどね。俺は逆に、町山君の番組を聴いていつも勉強させてもらってるんだけど(笑)。

町山:ブレヒトのことは「赤軍兵士の詩」で知って、後で『戦争のはらわた』を観たら最後にブレヒトの言葉が出てきて、「あ! 『赤軍兵士の詩』のブレヒトだ!」と気づいたんですよ。『アルトゥロ・ウイの興隆』という、ヒトラーがドイツを制圧していく様をシカゴのギャングの世界に置き換えたブレヒトの戯曲があるんです。そこから引用した「諸君、あの男の敗北を喜ぶな。世界は立ち上がり奴を阻止した。だが奴を生んだメス犬がまた発情している」という言葉が『戦争のはらわた』の最後に出てくるんです。「あの男」とはヒトラーのことなんですね。ブレヒトのことなんて全然知らなかったのに、PANTAさんの曲を聴いていたおかげで後になってわかることがいっぱいあるんですよ。

切通:PANTAさんの書いた歌詞が後で映画とかに出てくることがよくありますよね。

町山:ヘルマン・ヘッセだって『車輪の下』くらいは読んでいたけど、勉強ができる子っていうのも大変だなと思っただけで(笑)。だけど「さようなら世界夫人よ」は頭脳警察を聴いて読んでみようと思ったんです。そしたら、世に出回っている訳はPANTAさんの訳とけっこう違うんですよね。

PANTA:いろんな人の訳があるからね。「ごきげんよう、浮き世夫人よ」というタイトルの訳もあるしさ。先に「浮き世夫人」を読んでいたら曲を書く気にはならなかっただろうな(笑)。

町山:「浮き世夫人」って、歌麿みたいなイメージですもんね(笑)。バットマンとスーパーマンがワンダーウーマンと戦う『ジャスティス・リーグ』という映画があって、宇宙から来た敵の名前がステッペンウルフって言うんですよ。「ステッペン」は「草原」とか「荒野」という意味で、そもそも宇宙に草原や荒野があるのか!? って話なんです(笑)。でもその名前はヘルマン・ヘッセの長編小説『荒野のおおかみ』(Der Steppenwolf)から取っているんですよね。

PANTA:「Born to Be Wild」で有名なステッペンウルフはそこから取ってるしね。

町山:そうですね。だからヘッセひとつを取ってもいろいろとつながるんです、PANTAさんの曲を聴いていると。

PANTA:このあいだ亡くなってしまった橋本治にある時、「『マーラーズ・パーラー』の『マーラー』って何?」と訊かれたことがあってね。俺が「グスタフ・マーラーのことだよ」と言ったら「いや、違う!」って言うわけ。作者本人に訊いていながら「違う!」だなんて、すごい男だなと思ってさ(笑)。

──『秘本世界生玉子』によると、橋本さんの「マーラーズ・パーラー」の解釈は「それまで眺めていた全世界がチキガイ病院だったということがわかった曲」らしいですね(笑)。

PANTA:そういういろんな解釈があっていいんだよ、歌なんだから。

町山:「マーラーズ・パーラー」にはアインシュタイン、マルコムX、李太白といったものすごい数の固有名詞が出てきますよね。僕はああいうのをひとつひとつ調べましたよ。

中編に続く(こちらをクリック)

*本稿は2019年2月17日(日)にLOFT9 Shibuyaで開催された『ZK Monthly Talk Session「暴走対談LOFT編」VOL.5 〜衝撃の一夜のアフター6…奇跡の3人が語り尽くす!〜』を採録したものです。

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