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INTERVIEW

トップインタビュー【Brain Police Road to 50th Anniversary PANTA(頭脳警察)暴走対談LOFT編】第5回 井上淳一(脚本家・映画監督)×山本直樹(漫画家)×伊東潤(小説家)-「時代の転換期と呼ばれる1969年を総括する」

時代の転換期と呼ばれる1969年を総括する

2019.02.14

 今年の12月に結成50周年を迎える頭脳警察。PANTAと縁の深い面々をゲストにお招きし、頭脳警察とPANTAの知られざるエピソードを明らかにする連載対談の第5回は、若松プロ復活第1弾作品『止められるか、俺たちを』のシナリオを手がけた脚本家・映画監督の井上淳一、若き革命家たちの青春群像劇『レッド』を完結させた漫画家の山本直樹、現代史の闇に迫る公安エンターテイメント『ライト マイ ファイア』を上梓した小説家の伊東潤が登場。図らずも60年代末期から70年代初頭を物語のテーマに選んだ三者と共に、あの激動の時代とは何だったのかを縦横無尽に語り尽くします。(構成:椎名宗之)

1969年は変革の年ではなく終息の年!?

──アポロ11号による人類初の月面有人着陸、東大安田講堂攻防戦で頂点に達した大学紛争、『ウッドストック・フェスティバル』の開催など、社会的にも文化的にも大きな転換期を迎えた1969年が今回のテーマなのですが……。

PANTA:無難では済まないテーマだね。本当は山本さんに「どこの女子校の制服が好き?」とか無関係な話を訊きたいんだけど(笑)。

──1969年といえば、PANTAさんは弱冠19歳でした。

PANTA:そう、頭脳警察を結成した年だね。

山本:僕は1960年生まれなので当時は9歳、小学4年生でした。

井上:僕は1965年生まれで4歳だったので、当時の記憶はほとんどありませんね。

──井上さんは『止められるか、俺たちを』(白石和彌監督)という1969年から1971年に至る若松プロダクションを舞台とした青春映画でシナリオを書かれていて、山本さんは『レッド』という連合赤軍およびその母体となった新左翼団体をモデルにした漫画を描かれていて、お二人とも60年代末から70年代初頭にかけて実在した物語をテーマに作品づくりをしたという共通項があります。あれから50年近く経った今、1969年がこうしてまた見直されているのが興味深いですね。

PANTA:俺はずっと1969年は変革の年だと思っていたんだけど、本当の意味で変革の年だったのは1967年だったんだよね。アメリカでサマー・オブ・ラブという社会現象が巻き起こり、ビートルズが『サージェント・ペパーズ』を発表してロックをアートの域まで高めた頃。1969年はむしろ終息の年だった。1月に安田講堂陥落、12月にはオルタモントの悲劇が起こっているし、この年に公開された『イージー・ライダー』でも主人公が最後に殺されてしまう。8月の『ウッドストック』は〈愛と平和と音楽の祭典〉なんて呼ばれたけど、ロックがメインの大規模な野外コンサートという意味では1967年に『モントレー・ポップ・フェスティバル』がすでに開催されている。そういうことをいろいろと考えると、俺には1969年が終息の年に思えてならないんだよね。

山本:たしかにそうかもしれませんね。僕の『レッド』は1969年から1972年までの話だけど、いろいろ調べてみると安田講堂落城で一区切りついた感があるし、『レッド』はその後の学生運動の話なんです。1970年3月によど号ハイジャック事件が起きて、1972年2月にあさま山荘事件が起きて。

井上:『止められるか、俺たちを』は1969年3月から1971年9月までの話で、門脇麦さんが演じた実在の助監督・吉積めぐみさんの目を通して、若松孝二監督や若松プロダクションの面々を描いた群像劇です。僕は当時を熱い時代だと当たり前のように思っていたんですが、取材を進めていく中で若松プロOBのガイラさんこと小水一男さんが「当時は今とまったく同じ閉塞感に満ちた時代だった」と話してくれたんです。全共闘の敗北後、どう足掻いても、何も変わらないように思えた時代だったと。「ああ、今と変わらないんだ」と、そこで初めて脚本を書き出せたところがありますね。それと先日、テアトル新宿のトークショーで芸術家のクマさんこと篠原勝之さんと舞踏家の麿赤兒さんに登壇してもらったんですが、そこでクマさんが時代の閉塞感に関してすごく象徴的なことを話していたんです。「当時は肌に空気がピタッとまとわりついてきて、そのまとわりついた空気を貧乏ゆすりをしながら何とか払いのけて少しでも隙間をつくろうとしていた時代だった」と。だから当時だって決して熱い時代だったわけじゃなくて、現状を打開できずにもがき続けていた時代だったのかなと。

IMG_5059_web.jpeg──この時代になぜ『止められるか、俺たちを』のような映画をつくろうと思い立ったんですか。

井上:1968年から50年が経って…とか言えればいいんですけど、たまたまだったんですよ。ご承知の通り、若松さんが6年前(2012年)にタクシーにはねられて不慮の死を遂げて、僕ら弟子たちと若松さんとの時間も中途半端なまま止まってしまった。それが、2年半前に若松さんの生誕80周年を記念した特集上映をポレポレ東中野でやった時に、僕らがレジェンドと呼んでいる若松プロの先輩方に集まってもらってトークをしたら、当時のエピソードがもう抱腹絶倒で、それを聞いた白石和彌が「あの時代の若松プロを映画にしたら面白いんじゃないか」「それを撮ることで、止まった時間がまた動き出すんじゃないか」と言い出して。ただし若松さんを主人公にしたらただの偉人伝になってしまうので、助監督だっためぐみさんを主人公にしようと。そうすることで、何者かになろうとして懸命にもがく若者たちの普遍的な青春映画になるはずだと。それから取材を始めて去年(2017年)の夏に撮影して、今年公開になった。だから偶然が重なっただけなんですよ。

──でも、時代に呼ばれた感じもありますよね。

井上:うーん、そう思いたいことは思いたいですけどねぇ。レジェンドたちの記憶も薄れていくだろうし、劇中に出てくるオバケこと秋山道男さんは今年の9月に亡くなってしまいましたし、もし撮影が1年遅れていたらこういう形では映画をつくれなかっただろうし、いろんな意味でこのタイミングしかなかったのかという気はします。

山本:僕も観に行かせてもらって、若松さん、足立正生さん、荒井晴彦さんといった会ったことのある人たちの若い頃の話だから自然と引き込まれて、とても面白かったですよ。

 

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PANTA暴走対談LOFT編 VOL.5
PANTA×町山智浩×切通理作
『衝撃の一夜のアフター6…奇跡の3人が語り尽くす!』

2019年2月17日(日)LOFT9 Shibuya
OPEN 18:00 / START 18:30
前売¥3,000 / 当日¥3,500(いずれもドリンク代別途)
※全席自由 / 入場整理番号付 / 当日1オーダー500円以上
※FC先行予約有り / プレイガイドにて前売有り
※前売券はイープラスにて発売中
※入場順は、FC先行→イープラス→当日となります
主催:ロフトプロジェクト
企画 / 制作:ロケットパンチ
協力:GRATEFUL
後援:テイチクエンタテインメント
問い合わせ:LOFT9 03-5784-1239

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