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INTERVIEW

トップインタビュー十日草輔(とおかそうすけ・漫画家)-『王様ランキング』 誰かとつながっているなと感じられる場所

『王様ランキング』誰かとつながっているなと感じられる場所

2019.02.11

 WEB連載で大注目される『王様ランキング』が待望の単行本化。WEB発の作品でありながら、どこか懐かしさも併せ持つこの話題作はどのように作られているのか。作者の十日草輔さんに連載秘話の一部を伺いました。[interview:柏木聡(LOFT/PLUS ONE)]

最初は絵本にしようと思っていた

──もともとは社会人として働かれていたとのことですが、漫画を描くことになった経緯を伺えますか。

十日:20代の頃、漫画家を目指していたんですがうまくいかず、それでも絵で食べる道を模索していました。そんな中で絵本作家を目指した時期もあって、実は大賞をもらって本にもなったんです。ただ、そのあとが続かず、一度あきらめて就職したんですけど、40歳になっても物足りなさを感じていて何かのきっかけがあればと思っていました。

──夢をあきらめきれなかったんですね。

十日:そんな中できっかけになったのはWacomの液晶タブレットを買ったことです。本当に紙で描くのと変わらなくてびっくりして。もう一度最後にやってみようかなと思って、会社を辞めました。実際にはいろいろな要因があると思いますが、きっかけになったのは間違いないですね。

──すごい勢いですね。

十日:40歳過ぎて悔いは残したくないと、チャンスはこの1年。それでうまくいかなかったら夢は忘れると覚悟しました。でも本当の意味で悲壮感はなかったです。ワクワクしてました。

──描きたいものがあったんですか。

十日:アイデアは貯めていました。先ほど絵本作家を目指していた時期もあると言いましたが、実は『王様ランキング』は絵本のアイデアを漫画にしたんです。

──そこで絵本に…とはならなかったのですか。

十日:はじめは絵本でしたけど、なかなかいろんな敷居が高くて。それに絵本だとキャラの性格や背景などを詳しく描けないかなと。

──雑誌に投稿しようという考えもなかったんですね。最初からWEBで。

十日:全くなかったです。雑誌は一度挫折して、全く良いイメージがなかったんです。漫画にしようと思ったのもWEB漫画があったからです。絵本で考えていたタイトルは『針の王子様』でした。

──だから、ボッジの剣は針なんですね。

十日:そうなんです。絵本ではバトルメインではなかったんですけど、漫画の華といえばバトルシーンなので戦いを取り入れました。同じように安易な設定が多くありますが、Web漫画を続けるにあたって、無理しない、気張らないを心がけていました。続けることを第一の目標に置いていましたので。

──『王様ランキング』は物語もそうですけど、各キャラクターの魅力も大きいと思っています。設定はどれくらい練りこまれているのですか。

十日:実はあまり細かいキャラ設定はしないんです。服などは忘れないように設定をつくりますけど。基本的には今までに影響を受けた作品のキャラをもとに作っていて、それを思い浮かべながら描いてます。意識せずに描いていて、コメントの指摘で気づいたというキャラもいます。

──具体的にモデルに関して伺ってもいいですか。

十日:例えば、ベビンはハリーポッターのスネイプ先生。デスパーは則巻千兵衛を意識しています。そこはニコニコ静画でも指摘されて、よくわかったなと思いました(笑)。

──『王様ランキング』は主人公のボッジが耳が聞こえなくて力も弱い、魔神の呪いからのハンディキャップがありますが、そんな中でも物語が暗くならずに進んでいるのもいいなと。

十日:私は基本的にコメディが大好きなんです。『男はつらいよ』が大好きなんですが、悲しい場面や感動させる場面がほとんどない。でも何気ない笑いにほろりと来る。ああいうのに憧れます。

──Web漫画を始めて良かったことは?

十日:恥ずかしいんですけど、マンガ描くのって孤独じゃないんだと思いました。作品を読んでくれた方からコメントをいただいて、ものすごく勇気をもらうのと同時に、安心感を強く覚えました。現実世界の私は他人に厳しい人間で、人とうまく付き合えませんが、マンガを通してうまくコミュニケーションが取れた。その発見も面白かった。

──いい話ですね。ただ、WEBですといわゆるディス、ネガティブなコメントもあると思うんですけど、そこは大丈夫ですか。

十日:もちろん、ネガティブな内容もありますけど、事前に心の中でそういうものはあるんだと準備した上で見ているので大丈夫です。むしろ無視されなかったとポジティブに考えるようにしています。

──アンチがいないことは逆に良くないですからね。ネガティブな内容でもそれを投稿させてしまうだけのパワーがあるということですから、その考え方はいいと思います。

十日:作品を作っている人は孤独と不安の中で必死に戦って作ったものを、勇気を振り絞って世に出していると思います。僕は現在43歳なので攻撃的な反応に思考の逃げ道を用意していますが、情熱を持った若い人はやはりつらいですよね。

コメントからアイデアをいただくことも

──連載はタブレットでかなり解消されているとはいえ、一人で作業されているということですけど、大変じゃないですか。

十日:正直に言うと大変ですね(笑)。

──アイデアは貯めていたものもあるということですけど、ネタが尽きる・詰まるということはないですか。

十日:アイデアはまだ大丈夫ですね。

──とはいえ連載ペースを崩さずに続けているのは凄いなと思います。

十日:ありがとうございます。そこは読んでくれる方がいるからですね。ペースが止まって離れていってしまうのが怖いので、うまく発破をかけてます。

──物語はどういった形でどこまで考えられているんですか。

十日:よく聞かれるんですけど、気になりますか。

──もちろんです。

十日:僕の場合はポイントごとのゴールは決めていますけど、そこに至るまでの道は決めてないですね。

──ライブ感のある形で作られているんですね。

十日:コメントからアイデアをいただくこともありますよ。

──ほんとですか!

十日:自分で気づいていないことや、思いつかないことも出てくるので、いろんなインスピレーションがそこから広がるんです。あのキャラがこんな動きをしたらどうなるんだろうとか、一人ワクワクします。

読者との距離が近い媒体

──自然と物語が繋がっていく感じなんですね。今回、待望の単行本化ですが、いかがですか。

十日:怖いです。だって単行本は発売して二週間の売れ行きで、その漫画家の将来が決まってしまうんですよ! でも出さなきゃ始まらないんですよね…。

──大丈夫ですよ。僕は絶対に買います。

十日:ありがとうございます。怖いとは言いましが、やはり嬉しさと感謝も大きいです。40過ぎたおじさんが会社を辞めて一大決心した作品を、星の数ほどあるWEB漫画の中から見つけてくれた。しかもコメントまで書いてくれて、本当に奇跡みたいなものです。Web漫画だからこそここまでやれた。雑誌だったら間違いなくダメだったでしょう。

──なるほど。Web漫画に愛を感じますね

十日:WEB漫画は読者との距離が近い媒体だと感じています。読んでいる方は好きな作品には是非コメントを書いてほしいですね。どれだけその作家に勇気を与えることになるか、想像もつかないほど大きなことなんです。自分の応援メッセージで、孤独な誰かを成功に導くそんな素晴らしい世界なんです。自分はそう強く感じました。

──本日は、本当に真摯に答えていただきありがとうございました。

 

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