Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー哀悼 森田童子(Rooftop1976年12月号再録)

森田童子セカンド・アルバム『マザー・スカイ =きみは悲しみの青い空をひとりで飛べるか=』のこと

2018.06.12

1975年10月、シングル『さよなら ぼくの ともだち』でデビュー、1983年12月の新宿ロフトでのライブを最後に活動を休止したシンガー・ソングライター、森田童子。
1993年にはテレビドラマ『高校教師』の主題歌として1976年発表の2ndシングル『ぼくたちの失敗』が起用されて100万枚に迫るヒットを記録、活動当時を知らない若い世代を含めたリバイバル・ブームを巻き起こした。
その森田童子が、さる4月24日に心不全で死去していたことが日本音楽著作権協会(JASRAC)の会報で判明した。享年65歳。こうした形で訃報が伝えられるのは、引退後に表舞台に出るのを頑なに拒んだ彼女らしいともいえる。
本誌では謹んで哀悼の意を表すとともに、1976年12月号に掲載された彼女の貴重なインタビューをここに再録する(インタビュアーは五業昌晶)。

私はとてもあしたを、語る言葉をもたない

五業:ファースト・アルバム『グッド・バイ』からちょうど1年経ちますが、今回の『マザー・スカイ』に収められている曲は、『グッド・バイ』の頃からすでに作っていた曲ですか。

森田:半分はそうです。『グッド・バイ』以降作った詩は、「ぼくたちの失敗」とか、「今日は奇蹟の朝です」などがあります。

 一番初めのLPの中で「さよなら ぼくの ともだち」がシングル・カットされ、ひとつの私の世界と思われる部分がありますが、私が一番こだわっているのは「地平線」なわけです。

 私は現在の歌を作る上で、私たちの世代の皮フ感覚みたいなものを、かなり強く意識しています。たとえば「地下のジャズ喫茶 変れないぼくたちがいた 悪い夢のように時がぼくたちをなぜてゆく」

 私たちの世代が明確なものを発見できないとしたなら、私たちの日常の真情とか皮フ感覚だけでもはっきりさせるしかないと思う。そんなことぐらいだと思う。

 地平線は私の皮フ感覚みたいなもので、私たちの「はるかなる、あした」を語るとしたら、何も言えないわけよネ、つまり地平線なわけです。

 あまりにもあざやかな時代の朝明けの前に、または、あまりにも深い暗黒の地平の前で、私はとてもあしたを、語る言葉をもたない。

 結局、私たちは自己の中にもどる以外にない。はるか地平の前に立つ時、無意識だった私の自虐性との対置が、初めて原点になるような気がする。確実にあしたを語ることができないわけ。

 2枚目の『マザー・スカイ』は、そういったわけで、水色のアサギ色に似た、地平線は母のおもかげ、または、地平線──私ではなく、私──母親にまで、逆転してしまったわけです。

五業:その中で、1枚目と2枚目のつながりはどこにあるわけですか。

森田:「さよなら ぼくの ともだち」から2枚目のアルバム(に収録されている)「ぼくたちの失敗」につづくわけだけれども、私たちの世代の"やさしさ"への否定という形で......とってもやさしい否定のしかたで、やりたかったわけです。

私と都市は一体になって、だめになっていく

五業:その延長線上で3枚目以降を考えてみると、どういった歌が出てくるのか、唄っていくのか知りたいところです。

森田:「さよなら ぼくの ともだち」、2枚目の「ぼくたちの失敗」と「ぼく」シリーズは、長期のシリーズで考えていきたいと思っているんです。

 映画のマイク・ニコラズの『卒業』から『愛の狩人』を観て、『卒業』がもっとよくわかったみたいなことがあって......とっても興味のある人ですネ。

 私たちの世代をも含めて確実に破滅の方向に向かっているとしたら、めめしく、ぐつぐつ日常の中で、語っていくしかないわけね。

 それが、私たちの皮フ感覚だし......。

 東京っていう未来に向かうわけのわからない化けものに、とってもならされてしまっている......。むしろ、それが心地よくなってしまっている私があるわけ......。

 私たちと都市のフェティシズムといった関係は、もはや、性悪の母親との絆なわけです......。

 私と都市は一体になって、だめになっていく。つまりそれは、巨大な心中を試みるわけですよね。

 だめになる......私たちはだめになる世代なわけで、次の世代を無理に語るとするなら、いい願望で語るとするなら、あっけらかんとしたレビューのホリゾントみたいにあまりにも淡い幕あけを想像するけど......。

五業:考えてみると、そこに目を向けて歌を作った人っていうのは、実はあんまりいないですね。知らず知らずにそれが出ている歌っていうのは、まさしくその人がそういう時期だった時にいくつかあるだろうけれど。(了)

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マザー・スカイ -きみは悲しみの青い空をひとりで飛べるか-【SHM-CD】

Universal Music UPCY-7155
¥2,484(税込)
2016年7月20日発売
代表曲「ぼくたちの失敗」を収録した2ndアルバム。柔らかな狂気と甘美なアルペジオは、今も変わらぬ魅力を放ち続ける(オリジナル発売日:1976年11月21日)。
★2016年最新リマスター音源
★SHM-CD仕様

【収録曲】
01. ぼくたちの失敗
02. ぼくと観光バスに乗ってみませんか
03. 伝書鳩
04. 逆光線
05. ピラビタール
06. 海を見たいと思った
07. 男のくせに泣いてくれた
08. ニューヨークからの手紙
09. 春爛漫
10. 今日は奇蹟の朝です

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