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INTERVIEW

トップインタビューKamome(ライブハウス「立川ハートビート」オーナー)

ライブハウスに縛られない『BeatISM(ビートイズム)』から4組目・5組目のメジャーデビューを作りたい

2018.03.15

 ミュージシャンとしての活動経験や豊富な音楽知識をもとに、三多摩地区有数のライブハウス「立川ハートビート」オーナーとして3組のメジャーデビューバンドを育て上げた、立川にその人ありと知られるkamome氏。一見コワモテだが多くのバンドマンに父のように慕われる彼が今、危機感を抱いている。オーナーだからこそ感じた"ライブハウスの限界"とは何か。そしてその限界を突破するために仕掛ける新たなる一手とは何なのか。彼の経営する東京・立川の音楽スタジオで話を聞いた。[インタビュー・文・構成:清水りょういち / 写真:清水葉子(ゲッカヨ編集室)]【2018年2月9日(金)、サウンドスタジオブルームーン 立川店にて】

 

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もっと良い音楽を生み出すために、あえてライブハウスの枠組みを超えていく

kamome:まず最初に言っておきたいのは、ライブというのは音楽表現の一つだということ。全てではない。音楽の三大要素であるリズム、メロディー、ハーモニーを備えた音楽が生まれ、それが形になる。ジャンルや方向性によっては、メインイベントがライブ中心ということはあるかもしれないが、決してライブだけが音楽そのものではない。今はネットの世の中だから発表の仕方もいろいろあるし、MVを熱心に制作するのもありだとは思う。でもね、今までたくさんのプロを夢見るバンドマンをライブの現場で育ててきて、どうしても限界を感じることが多くなった。古臭いやり方で、今では周りにあまりいないけれど、"ライブハウスの気難しいオヤジ"として僕はずっと12年間やってきた。時には誤解されながらも、全力で夢を叶えるために知恵を絞ってきた。それでたどり着いた結論がこのBeatISM (ビートイズム)というアーティスト支援プログラムなんです。

──誤解されるというと、例えば?

kamome:「立川ハートビート」は閉鎖的で"囲い込み"をするってね、よく言われる(笑)。確かに僕を信じてついて来たバンドには、ハートビートを中心に活動するように指導してきましたよ。でもそれは、きちんとこの店で他人様に聴かせられるレベルまで音楽を高めてから、外へ出て行けと言っていたんです。この場所で僕が責任をもって育成しているからこそ、言える言葉なんですよ。今どきこういうやり方をしている店自体が少ないんで、誤解されてしまうのかもしれないんだけれど。

──親心、ですか?

kamome:そうですね。自分の知識の限界はあるかもしれないけれど、ずっと音楽をやってきてわかったことは数多くある。こうすればうまくいく、失敗しないためのこともわかっている。ここでメジャーデビューまで育ったバンドの例も知っているし、僕の周りにはクリエイターとして音楽に関わっている人間や、レコード会社、事務所の人間などもたくさんいる。その環境下でできるアドバイスは惜しまずにしています。そしてそのノウハウを今までの発信方法だけではなく、拡大したくなった。だからBeatISM というシステムを作った。ライブだけではなく、音楽全体をサポートできるための仕組み。より良い音楽を生み出すための育成システムなんですよ。

──ライブ力だけでは夢を叶えることはできないと?

kamome:"あのバンドはライブがいいよね"と言われるバンドはたくさんいると思います。そのためにライブハウスとしてバックアップするのも必要だと思います。でも、それだけで満足できるのか、そこをもう少し考えるべきなんです。もしプロを夢見るならば、ライブ力だけでは圧倒的に足りない。必要なのは"音源力"なんです。
 

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ライブで伝えるための"音楽"がそもそも良いものであるかどうかが問題

kamome:プロを目指しているミュージシャンなら、きっと心のどこかで「僕の音楽はこれで正しいんだろうか?」という疑問は持っていると思うんです。プロを目指すためにうちの門を叩くアマチュアバンドやアーティストはたくさんいます。でもライブハウスの中で、プロになるためには何が必要で、どんな価値観を持つべきかという事は、なかなか店の中で教授するのは難しい。だってそこはライブハウスです。「ライブだけが音楽じゃない」とはなかなか言えない(笑)。でもこの先の世紀に良い音楽を残していくためにはライブだけではない、音源力を持つことが必要なんです。

ビートルズが流行して軽音楽が世の中に広まってから、わずかまだ60 年ちょっとですよ。歴史の教科書を見ればわかると思うけれど、5〜60年だけの流行は歴史に残ると思いますか? もしかしたら遠い将来に消えてしまうかもしれない。僕は今まで音楽に夢を見させてもらって、勇気をもらい、時には慰めてもらってきた。でもそうした音楽が22世紀には消えてなくなっているかもしれない。これは非常にさみしいこと。音楽を愛し続けてきた自分にとっては、やはり後世に伝わる良い音楽を残したい。そのためにも自分の目の黒いうちに何かしなきゃってね(笑)。

──音楽の力を信じていらっしゃるんですね、本当に。

kamome:もちろん。信じてますよ。

──愛してらっしゃるんですね、音楽を。

kamome:それはもう…。だから悩めるアマチュア・ミュージシャンたちのアイデンティティーを確立するための手助けはずっとしていきたい。そもそも自分たちが何をしたいのか、それさえわかってないバンドが大半です。そんな中で活動していくための一つの選択肢としてあるのが、一つのライブハウス、そこのオッチャンについていくこと。もちろんオッチャンそれぞれの経験値も違うので一概には言えないですが、しっかりそこに食いついていくことで見えてくるものもあると思うんですね。そしてそれを自分は現場で実践してきた。まあ、そこが閉鎖的とか言われて誤解も生むのでしょうが、バンド自身のアイデンティティーが未成熟のうちに、ただ経験値の為の放任主義指導スタイルは僕に言わせれば無責任です。それで芯が固まらず、常に迷い、猜疑心や嫉妬心ばかりが育っていってダメになるバンドをいっぱい見てきましたよ。

──それって親心ですよね。

kamome:よく、ハートビートは学校のようだと言われますが、ノウハウ含めて責任を持って育成するということになると、その意味においては正しく学校ですね。バンドの専門学校に近いのかもしれない。結果として12年間で3組のメジャーデビューバンドを生み出すこともできた。そしてその勝因は何よりも"音源力"に着目したからだと思っているんです。

誰でも最初に音楽を好きになったきっかけって、ラジオだったり、友達から借りたCDだったり、音源始まりだったと思うんですよね。それでそのアーティストが好きになって、そのあとにライブに行く、という順序があった。つまり原点には良い曲・良い音楽があったと思うんです。つまり良い音楽を作れない限り、少なくともプロとしては通用しないんです。

ライブがどんなに盛り上がろうとも、良い音楽がなければその先はないんですよ。だから"今日のライブ、最高に熱かったよ!"という言葉に惑わされてはいけないんです。本当に伝えたい歌詞やメロディーが伝わったかどうか、それを判断基準にしなくてはならない。時には反感も買います、そういうことを言っていると。だってライブハウス業界に居ながら、ライブを否定するようにも聞こえる言葉ですからね。でもライブを否定している訳じゃない。僕も嫌いだったらやってない(笑)、必要なものはライブだけではないよ! と言っているんです。そしてこれは誰かが言わなければならないんです。

──メジャー業界の求めている価値観は?

kamome:そうですね。これはライブハウス現場の価値観と相当ずれていると思います。ライブが良いとか集客力があることなどのライブハウスも大切にしている価値観は、業界との共通価値観だと思いますが、こと音楽そのものの核である音源力のことになると、ライブハウスの現場の価値観は低いと思います。音楽(音源力)はバンドの物だからライブハウスは口を出さない。みたいな感じですよ。でも、メジャー業界のトップの方たちに会うと、話が違うんですよね。僕が言っているように伝えるべき良い音楽、音源(音源力)がそこにあるかどうかの勝負だと、みんなきちんと考えているんですよ。
 

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