Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー平野悠(ロフト席亭)×東健太郎(ロックカフェロフト店長)×加藤梅造(ロフトプロジェクト代表取締役社長)『ROCK CAFE LOFT is your room』オープン記念鼎談(Rooftop2018年3月号)

ロフト創始者が吠える! 「ロックをタダで聴くいまの時代に挑戦状を叩きつけたい!」
ロフトプロジェクトが新たに挑む「ロックを聴きながら語り合う」音楽空間がついに今月末、歌舞伎町にオープン!

2018.03.01

 1971年3月に烏山ロフトをオープンさせてから実に47年もの歳月を経た今春、新宿歌舞伎町の旧ミラノ座横に『ROCK CAFE LOFT is your room』がオープンする。数々のライブハウスとトークライブハウスを立ち上げながら音楽とトーク文化の発展に努めてきたロフトが手がける空間としては13番目となるこの店は、「ロックをただ聴くのではなく語り合う」ことがテーマのロック喫茶&居酒屋。なぜいまロック喫茶なのか。なぜロックを語ることに重きを置くのか。立ち上げの主要人物であるロフト席亭の平野悠、店長に抜擢された東健太郎、ロフトプロジェクト社長の加藤梅造に新店の構想を聞いた。(interview:椎名宗之)

ピースボートのジャズ講座でひらめいた

──なぜいまロック喫茶なのか、まずその辺りから聞かせてください。

平野:去年の春、なぜか突然ロックを真剣に聴きたくなってさ。それでルーフトップの編集部の連中を連れて歌舞伎町のロック・バーを3軒ほど回ったんだけど、どの店もろくでもないんだよ。ただジャニス・ジョプリンのビデオを流してるだけで、大したおつまみも何も出ないのに一人2,000円くらい取られてさ。こんなくだらない店ばかりなら、いっそのこと自分で店をつくっちゃおうと思ったんだ。社長の梅造さんに相談したら、梅造さんも乗り気でね。俺は8月からまた世界一周の船旅に出て11月まで帰ってこないけど、店づくりは梅造さんたちに任せることにしてさ。それから物件を探してみたら、場所が軽く決まっちゃったんだよ。

東:軽くじゃないですよ(笑)。僕は悠さんが船に乗る前に新店の構想を聞いて、「お前が店長をやれ、まずはとにかく物件を探してこい」と言われたんです。なんなら自分が船に乗ってる間に開店してもいいからって。

平野:俺はもう73歳で店づくりの能力もないと思ってるから、若い奴らに「お前らの好きなようにつくってみろ」って言ったわけ。だけどね、俺は船のなかでめちゃくちゃロックを聴いてたんだよ。船のなかは映画はやってるけどテレビはないし、読書をする、誰かと話す、音楽を聴くくらいしかやることがないからね。それでいままでちゃんと聴いたことのなかったドアーズや初期のツェッペリン、ピンク・フロイドとかにハマっちゃってさ。その体験が今回の店づくりあたっては大きかった。あと、梅造さんの勧めでApple Musicに登録したのも大きかったな。月々980円でいろんな新譜も聴き放題だし、また熱心に音楽を聴くようになったんだよ。

──それでロックを大音量で聴ける空間がほしいと思い立ったと。

平野:いつもの通り、俺の勝手な思いつきなんだけどね(笑)。でもね、もう俺くらいの歳になると『レコード・コレクターズ』とかその手の専門書を買ってレコードを聴くのが煩わしい。だからその筋の専門家の話を聞きながらロックを聴いてみたいと思ったんだよ。そうすればもっとロックを楽しめるはずだと思ってさ。ひとつのきっかけになったのは、俺が船のなかでジャズ講座をやったことなんだ。ちょうどニューヨークを出た次の日で、季節はもう秋でさ。それで俺はエラ・フィッツジェラルドとルイ・アームストロングのデュエット曲「オータム・イン・ニューヨーク」をかけたんだ。「これは『ラプソディ・イン・ブルー』で知られるジョージ・ガーシュウィンの弟子、ヴァーノン・デュークによって1934年に書かれた曲です」なんてエラそうに解説しながらさ。それがすごくウケたんだよ。聴きに来る人が100人くらいになっちゃって、ピースボートのスタッフもびっくりしてたよ。そのジャズ講座をやってみて、これだ! と思ったわけ。曲が生まれた時代背景とか、その曲についての説明を交えながらレコードをかけるというね。それをやりながら「こういう店がほしいな」と思ったんだ。で、船旅を終えて帰国したら店はまだできてなくてさ。梅造さんによると消防署との話し合いがまだ解決してなくて、工事にも入れないという。じゃあここは俺が頑張るしかないなということで、梅造さんたちが準備していた図面をひっくり返しちゃったわけ(笑)。

東:図面もメニューも全部ひっくり返されました(笑)。

 

お前らロックをなめんなよ!

──平野さんのなかでは烏山ロフトへの原点回帰みたいな部分もあったんですか。

平野:どうなんだろう。俺は烏山ロフトでロックの勉強ができたからね。お客さんが持ってくるロックのレコードを聴きながら、そのお客さんのうんちくを聞くわけだよ。当時のレコードは本当に貴重でさ、一枚2,000円くらいしたんだ。大卒の初任給が30,000円くらいの時代だよ? 洋盤なんて高くて手が出なかったし、俺たちにしてみれば宝石みたいなものだった。それを烏山ロフトでありがたがって聴くわけだ。浅川マキとか友部正人、ツェッペリンとかディープ・パープル、そういうのをお客さんが俺に教えてくれてさ。それまで俺はジャズしか聴いてこなかったけど、烏山ロフトでロックの面白さに目覚めるんだ。俺にとってはお客さんがロックの先生だったんだよ。それはさておき、今度の店も単なる俺の個人的な発想なんだけどね。大音量でロックも聴きたいし、誰かの能書きも聞きたいという。あのサエキけんぞうさんが10年以上前に「ロックは語る時代になった」と話していたのがすごく印象深くてさ。

東:ロフトプラスワンの10周年記念パンフレットで悠さんがサエキさんとした対談でそう話してましたよね。「ロックは情報がもはや膨大に集積してきてしまっている。演奏することも大事なんだけど、話で決着をつけなきゃいけない部分もすごく出てきている」って。

平野:ちょうどそのころ、いまはなきコマ劇場でクイーンのミュージカルをやってたんだよ。サエキさんはクイーンについて語りたいことがいっぱいあると。クイーンがあの時代に残したものは何だったのか、あの当時のロックに何があって、いまは何が足りないのかとか、話しだしたら止まらないと。ロックが誕生して60年以上経つし、それはもう立派な歴史だよね。そういうロックの歴史も語れる場所としてロフトプラスワンというトークライブハウスができたことは革命的だったとサエキさんは言ってくれたんだ。それがずっと俺の頭にあって、そうだ、ロックはもう語るものなんだと思ったわけ。ライブハウスに行けばロックのライブはいつでも見れるけど、ロックを語る場所はどこにもない。だからロックが聴けてロックを語れる店をつくりたいと思ったんだよ。それがひとつの動機だった。

──トークライブハウスでロックについて語るイベントとは違う、ロックを語る専門の店がほしかったわけですね。

平野:トークライブハウスとは違うね。まだどうなるかわからないけど、今度の店ではトークライブハウスみたいなチャージを取りたくないんだ。1,000円でビールとおつまみがついておつりが返ってくるのがいい。

加藤:開店当時のロフトプラスワンのキャッチフレーズですよね。

平野:そうだね。いまのロフトプラスワンは1,500円とか2,000円くらいのチャージを取るじゃない? ロックを聴きに来るにしてはそれじゃ高い。俺はせいぜいチャージは400円くらいだと思ってる。それなら高校生だって払えるし、ロックを聴きながらコーヒーも飲めるでしょ? そういう世界をつくらなくちゃ日本のロックはダメになると思うわけ。もうひとつのコンセプトはレコードの復権なんだ。さっきも言ったように、むかしのレコードは宝石みたいに輝いていた。ところがいまの若い連中は無料ダウンロードで音楽を聴くのが当たり前で、音楽にお金を払う価値なんてないと思ってる。そうなるとレコードづくりの現場の苦労なんてはなから理解しようとしないし、どんな背景のもとにこのレコードが生まれたのかなんて考えるわけもない。単なる流し聴きしておしまいだよ。こういう状況に対して俺は挑戦したい。お前らロックをなめんなよ! って言いたい。

 

烏山ロフトと初期ロフトプラスワンへの原点回帰

──ずいぶんと威勢がいいですね(笑)。

平野:ロックとは一人で部屋に閉じこもってヘッドフォンで聴くんじゃなくて、全身で受け止めて聴くものなんだ。だからレコードだって身体で聴けと。そうやって俺は音楽をタダで聴いてる若い連中に挑戦状を叩きつけたいんだよ。

──なるほど。具体的にどんな営業形態をしていくのですか。

平野:基本的に昼はロック喫茶。ちょうどいまレコードのストックを増やしているところでどれだけ集まるかわからないけど、お客さんからリクエストを募る。リクエストを募るロック喫茶っていまやほとんどないと思うんだよ。そして夜はロック居酒屋。週末には音楽好きが集まって、この音楽について語りたいんだという人にレコードをかけながら語ってもらう。ミュージシャンでも音楽評論家でもレコード会社の人でも誰でもいいけど、プロのDJ(ナビゲーター)じゃないのがいいんだ。3月20日のオープニングにはPANTAに出てもらうけど、彼もプロのDJじゃないでしょ? PANTAが頭脳警察からフランス・ギャルまでいろんなレコードをかけながら喋るわけだ。「『マラッカ』のレコーディングでは実はこんなことがあったんだよ」みたいにさ。そういう話を聞けば、その楽曲にもっと深く入り込めるよね。そんな店はどこにもない。世界的にもないんじゃない? レコードを聴きながらロックを語るなんてさ。誰もやってないからこそやるんだよ。

──ロフトがこれまで取り組んだことのない店ですが、勝算があるからこそオープンに踏み切ったわけですよね。

加藤:もちろん。悠さんはそう考えていないかもしれないけど、ロックカフェロフトは烏山ロフトへの原点回帰だと僕は思うんです。音楽評論家の能地祐子さんが『ロフトラジオ』に出たときに実は予言していたんですよ。「悠さんはたぶんこの先、烏山ロフトみたいな店をまたやりますよ」って。あと、ロフトプラスワンへの原点回帰でもあると思う。ビールを飲んで1,000円でおつりが来るようにしたり、居酒屋のなかで面白い席にマイクを置いてみる発想はまさに初期のロフトプラスワンですから。それはロフトから見た側面なんだけど、いまの状況から見ると別の意味づけもできる。悠さんが言うようにいまの若い人たちは無料ダウンロードが当たり前だし、CDのセールスは壊滅的状況ですよね。アメリカではもはやCDをつくってもいないし、Apple MusicやSpotifyといったストリーミング・サービスのほうが売上は大きい。だけどその一方で、アナログレコードを再評価するブームが世界的に来ているんです。若い人にもそのブームは浸透していて、盤としてほしがる人が増えている。アナログを聴かせる店も増えてきたし、アーティストもあえてレコードを出す人が多くなった。そういう時代の流れと今度の店のコンセプトが符合しているのが面白いんですよ。そこは悠さんの商売人としての嗅覚だと思うし、だから勝算もあるんじゃないですかね(笑)。

平野:あるよね。ひょっとしたらこういう店が全国に広がるんじゃないかと俺は思ってるしさ。

──東さんを店長に抜擢したのはどんな理由で?

平野:たまたまこいつが余ってたから。

東:ひどい言われようですね(笑)。

平野:まぁそれは冗談だけど、東はもともと『BANDやろうぜ』の編集をやってたし、ロックに対する心得はあるだろうと踏んだわけ。それと以前、彼は誰かと組んで居酒屋をやり始めたわけだよ。そこをクビになってスポイルされちゃったんだけど、居酒屋スタイルも理解してるからさ。だから今度の店には最適だと思ったんだよ。いつまでもロフトプラスワンのNo.2じゃしょうがないだろう、そろそろ自分の好きなように店をつくってみてごらん、っていう思いもあったね。

 

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