Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー新海誠(アニメーション映画監督)(Rooftop2016年8月号)

「君の名は。」
観た人をワクワクさせる、夏のエンタメ映画にしたい

2016.08.01

 瑞々しく美しい世界の中で繰り広げられる、男女の切ない"距離"を描き、多くの映画ファンを魅了してきたアニメーション映画監督"新海誠"。2年ぶりとなる新作が今夏上映!! 待望の新作『君の名は。』はどのように生まれたのか。監督自身に作品の魅力を語っていただきました。(interview:柏木 聡[Asagaya/Loft A])

運命の相手がいるんだよ、ということを描きたい

 
――新作『君の名は。』は、原案となるアイデアがあったのでしょうか。
新海:昔から温めていた作品というわけではなく、2年前の7月に東宝のプロデューサーである川村元気さんからお声かけいただいて動き始めた作品になります。ただ、テーマ的には自分がやってきたことを変えられないというか、思春期の子達や思春期を引きずっている大人達に向けた物語にしたいというのはずっとあることで、今回もそういった部分が出ていると思います。
――確かに今までの作品にも共通する“男女の切ない距離”がより前面に出ているなと感じました。今作は、住む場所の違う男女が夢の中で“入れ替わる”という物語ですが、どうしてお互いを知らない二人の距離を物理的にあけようと思ったのですか。
新海:運命の相手がいるんだよ、ということを描きたいと一番最初に思いました。運命の相手と言ってしまうと決定論めいてしまいますが、今はまだ会ったことがないけれど出会うべき人がいるんじゃないかと、観客が人生の可能性を信じられるような話にしたいというのがあったんです。そういう物語を語ろうとしたときに、お互いの存在を知らない、さらに住んでいるところも全く違うふたりの物語にしようと思いました。その、まだ会ったことがない二人をクロスさせたいと考えた時に出てきた仕掛けとして“入れ替わり”というのを思いつきました。
――ラブストーリーでは王道のテーマになりますね。
新海:今作は思春期ラブコメでもあるので、王道ですよね。ただ、少しひねらないと新鮮味に欠けるし、観た人に響かないだろうなと思ったときに、“夢の中で入れ替わる”という物語に固まっていきました。
――今時の高校生が主人公なのに携帯やSNSで連絡を取り合わないのも不思議に感じたのですが、なぜですか。
新海:二人はあくまで夢を見ているだけだから記憶が判然としないところがあるというのが、語りの一つのキモでもあるんです。繰り返し見る夢なので、名前も覚えているしお馴染みのものでもあるんですけど、目覚めた時100%クリアーなわけではないんです。それを一つの仕掛けとして、お互いの素性がはっきりとはわからないようにはしています。
――主人公である(立花)瀧と(宮水)三葉は今までの作品に比べて活発キャラクターですが、どのように作り上げていったのですか。
新海:今回の作品に限らずですが、僕はシチュエーション・状況から物語を作り上げていって、そこからキャラクターや世界観ができてくるという作り方なんです。今回“入れ替わり”や“ラブコメ要素”を取り入れるにあたり、そのテイストに合うキャラクターとして瀧と三葉が生まれました。それと今回はポップでカラフルな作品にしたいという思いもあったので、快活な二人になっていったんだと思います。
――等身大の高校生たちも楽しめる作品を目指したということですね。
新海:そうなんです。とにかく楽しいし美しいしワクワクするような作品だと誰にでも自信をもって言えるようなエンタメ映画にしたいということに心を砕きました。その上で、観終わった後には少し世界が違って見えて、自分たちを取り囲む世界や自分の足元を見つめ直すようなものを残せればと。
――そうなんですね。それは凄く体力のいる作業になりますね。
新海:テンポ・絵・音楽・声をとにかく積み上げていって、誰もが楽しめる作品になるように力を注ぎました。
――ヒロインである三葉が「来世は、東京のイケメン男子にしてくださーい!」と叫ぶのは面白かったです(笑)。
新海:あれはあんまり深い意味はないんですけどね(笑)。三葉は直前まで地域の古い風習の儀式をやらされていて、そこをクラスメートにも目撃されてしまって、私はもうちょっとキラキラしたところで今とは違う青春を過ごしたいんだと衝動的に叫んでしまうシーンなので本当に男の子になりたいと思っていたかどうかはわからないです(笑)。
――そんな前半のコメディ要素があるからこそ、ラストに向けた展開がより一層際立っていて楽しかったです。
新海:それぞれの場面でテイストや込めているものも変えていて、いろんな受け止められ方をしてもらえるように意図的にしています。
 

作品を象徴するような人

 
――キャストの皆さんは色々な業界の方が集まっていますが、どのようにして選ばれたのですか。
新海:そうですね。子役の方もいらして、初めて会った方も多かったと思います。第一にキャラクターのイメージに合う方を選ばせていただきました。上白石(萌音)さんはオーディションであった瞬間に三葉だと思いました。それでいうと、瀧を選ぶ際は迷いもありました。ただ、メインのキャストには作品を象徴するような人が欲しいということも考えていましたし、男女入れ替わりの作品で中身が女の子になった役もやらなければならないので、中性的な魅力を表現出来る人が必要でした。神木さんの声を聞き、やはり神木さんが一番! ということで、瀧を演じていただきました。
――キャラクターを象徴する演技をしていただけたということですね。
新海:期待以上のものをいただけました。主演の二人以外の方ですと(勅使河原)克彦役の成田凌さんは声優初挑戦だったと思うんです。今だから言えますが実は選ぶのに一番勇気が要りました。
――モデル出身の役者の方で、田舎のオカルトオタクの高校生という役からも遠い位置にいますよね。
新海:そうですね(笑)。色々な方にオーディションに参加していただき、みなさん素晴らしかったのですが、どうしても田舎の純朴の高校生ではなくて、どこか洗練されているところや大人びた雰囲気が出てしまっていたんです。
――演技っぽさが出てしまうということですね。
新海:成田さんはその部分が絶妙で、きっと観た皆さんは驚くんじゃないかと思っています。アニメーションではあまり見たことがない芝居・声だと思います。素晴らしかった。
 

映画のメッセージの一部

 
――音の面ではRADWIMPSの音楽も素敵でした。新海さんが好きなバンドと伺いましたが。
新海:誰が好きなのかと聞かれた時にRADWIMPSと答えたところ、今回思いがけず音楽を担当してもらえることになりました。僕が好きだったというのはもちろんあるんですけど、映画に自分たちの1年半を捧げてくれる人たちだったというのが大きかったです。
――それは、ありがたいですね。
新海:脚本の初稿ができた段階から参加していただけて、本当に一緒に作っていきました。最初の脚本を(野田)洋次郎さんに読んでいただいて、どこにあててということではなくイメージで曲を作っていただいたんです。それを聞いて、こんな曲を作っていただけたのなら、音楽がかかる瞬間をピークに演出しなければならないという気持ちになりました。逆に、映像に合わせたいという思いをRADWIMPSさんに反映していただいたりもしました。今回は瀧と三葉の物語なので、音としては神木さんと上白石さんの演技はもちろんですが、もうひとつの大きな要素としてRADWIMPSの声・音楽があります。映画のメッセージの一部です。
――先日、アメリカでのAnime Expoで上映されましたが、現地の皆さんの反応はいかがでしたか。
新海:すごく反応がよくてビビットでした。日本のアニメーションが好きな方々に集まっていただいているので、もともとの熱量が違うというのがありますよね(笑)。上映中もキャラクターたちを応援しているような雰囲気で、日本でも最近流行っている応援上映はこんな感じなのかなと思いました。袖で涙を拭って見ていただけて、すごく幸せでした。
――これから日本のファンの方にも観ていただける形になりますが。
新海:本当に日本を代表するような才能を持った方たちに集まっていただけました。今だから作れた作品だと思いますし、自信をもって観て損はない作品だと言えると思っています。僕の願望も込めてになりますが(笑)。
――川村元気プロデューサーの言葉を借りると「新海誠最高傑作」ということですね。
新海:そうですね(笑)。僕の名前を知らない人が見てもアニメーションってこんな素晴らしいんだ、こんなに強いメディアなんだと実感してもらえるようになっていると思いますので、多くの方に観ていただきたいです。
 
©2016「君の名は。」製作委員会
 
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LIVE INFOライブ情報

映画『君の名は。』
2016年8月26日より全国劇場にて上映開始
 
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