Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー西村純二(アニメーション監督)(Rooftop2016年6月号)

原作の魅力を真っ直ぐに表現

2016.06.01

 一見して「美少女+バイク」の日常系アニメに見え、原作者おりもとみまなが持つ深すぎるバイク愛からの斜に構えた視点と、散りばめられたネタのオンパレードで熱い支持を集める「ばくおん!!」が待望のアニメ化。危険なネタもある中、真っ向から制作された熱い作品はどのように作られているのか、西村純二監督に伺いました。
(interview:柏木 聡 / Asagaya/Loft A)

緩くならないように気をつけました

 
――西村(純二)さんもバイク乗りですが監督を引き受けられた経緯を教えてください。
西村:昨年の中頃に、先に決まっていた音響監督の高寺(たけし)さんへプロデューサーから「バイクを知っている監督を誰か知らないか」という話があったらしく、高寺さんが1人知っているということで名前を挙げていただいて、声がかかったという流れです。高寺さんとは昔からの知り合いで、お互いにバイク乗りでそういう話もしていたので、それもあったんだと思います。一読したら原作が面白く、すぐにお受けしました。
――原作のどういった点が響いたのですか。
西村:おりもと(みまな)先生の、斜に構えたところがいい感じに出ているからです。直接、お話もさせていただいたんですけど、とても頭が切れる方で面白かったです。他の作品も気になって読んでみたんですけど、どの作品も面白かったです。
――作中にバイクdisは多々あるんですけど、絶対好きだよな、というのが伝わってくる内容ですよね。
西村:好きでちゃんと知ってないと描けないだろ、っていうことがいっぱい出てきます。おそらく、先生の立ちゴケの経験が物語の始まりにあり、何でバイクは倒れたがるんだ! という思い。そこが作品の世界観として貫かれているんだと思っています。
――確かに走っているシーンも印象的ですけど、よくコケますね。
西村:毎回よくコケるので、見てる方にはこんなんやって大丈夫なのかって心配されています(笑)。
――普通はコケるシーンは出さないでくれってなりますから、多くのメーカー協力もある中、そういうところも面白いと思っています。
西村:そこが魅力の1つなので、緩くならないように気をつけました。おっしゃっている通り、危険な香りはぷんぷんしますよね。
――TVシリーズは原作の雰囲気をそのまま表現されていますよね。これOK出たんだ、と思いながら見てます。愛があるから許されている感じですよね。
西村:5本くらいO.Aできないんじゃないかってネタがあったんですが、とりあえず今まではできてます(笑)。そこが作品の魅力の一つなので、わりと挑戦している(汗)つもりではあります。
――日本のバイク業界の現状もうまく表現されているなと思っています。
西村:世界の4大メーカーが1つの国の中にあるのに、駐車場を見つけるのも大変、という脇に追いやられている感じが原作にもあって、そこもすごく気に入ったところだったので大事にしようとは思っています。また、せっかくバイクに乗っている監督を、と選んでもらえているので、私のバイク体験も入っています。
――それはどういったところですか。
西村:羽音が初めてバイクに乗ったシーンは特にそうですね。私も、初めてバイクに乗った時に感じた魔法の絨毯に乗ったような感覚は忘れられないです。
――分かります。私もバイクに乗っていたんですけど、初めて乗った時の自転車とは違ったバイクが進んでいく感覚は忘れられないです。コケるかも知れないとドキドキするところや風を受けるところもうまく表現されているなと見ています。
西村:そのニュアンスは大事にしたいと思っています。
 

描き手の愛が伝わります

 
――その点を表現するためにスタッフにもバイク乗りが集まっているのですか。
西村:実は、バイクに乗っているからというので選ばれたのは私だけなんです。
――そうなんですか。キャラクターデザインの杉本(功)さんは別作品でバイク作画監督もされていたので、そういう方を選ばれたのかと思っていました。
西村:まったくの偶然なんです。実は乗ってました・乗ってますという人が集まって、不思議な感じになっています。
――メカ作品に強い方が集まっているので、どんなロボットものを作るんだ、とも思ってしまいました。
西村:全カットを手描きで作るのは無理なので3Dが基本ですが、決めのカットは手描きにしてもらっています。3Dのリアリティと手書きの味、両方の良いとこ取りです。
――バイクにこだわっていますが、キャラクターの魅力も全く負けていないのが凄いなと思います。
西村:杉本さんのデザインが素晴らしいですよね。あの無垢な感じが、作品の中の悪態をうまく和らげていると思うんです。原作もバランス感覚が優れているんだと思います。
――原作のもつテンポも損なわれずにアニメ化されていて、ファンとしても嬉しいです。
西村:ありがとうございます。そこはキャストの皆さんの力も大きいと思います。特にメインの皆さんの演技は素晴らしく、非常に気に入っています。
――西村さんから見た皆さんはどんな感じですか。
西村:主人公の羽音はいつも我が道を全速で突っ走ってるキャラ(笑)。上田(麗奈)さんはうまく表現してくれています。1/4くらいはコチラの想定外の芝居をしているのですが、そこがキャラに合っています。
――羽音は無垢な感じもしますよね。
西村:漠然と天然というだけではなく、辛辣なことも平気で口にします。上田さんは最初、バイクのことを何もご存じなくて、番組予告の時の口バイク、つまりエンジン音を口で表現するわけですが、これがなかなか大変でした(汗)。で、他のメインキャストも含めて、4人に実際にバイクに触ってもらうことにしました。引き起こしから、エンジンをかけて、後ろに乗って走ってもらいました。それを経験してから4人ともガラッと変わりましたね。
――キャストの方でバイクに乗っている方はいなかったんですか。
西村:男性陣はバイク屋の息子だったり、何かしらすごいんですけど(笑)。女性は1人もいなかったです。
――羽音はバイクを全く知らないところから始まっているので、逆にバイクを知らない上田さんは作品にあっていたということかもしれないですね。
西村:そうですね。ほかのキャラに関して言うと、東山(奈央)さんの凜は無敵キャラ! 私のルックスと声に文句ある奴はチョット来い! って奴ですかね(大笑)
――凜は自信満々なキャラですからね。
西村:それなのにスズキに乗っていてボロクソに言われて、でも全く負けていないところがいいですね。聖は山口(立花子)さんによって、より魅力的になったと思っています。声が乗ることによって距離が近くなり、可愛らしくなっているなと思います。恩紗は日常の苦悩(!)を一番背負って体現しているキャラだと思っています。そこが非常に愛おしいと思っていて、内山(夕実)さんによってさらに深みが増したように感じています。実は恩紗が一番好きという人が結構いるので、みんな日々の暮らし…大変なんだなと(笑)。
――ちなみに西村さんが一番気に入っているキャラは誰ですか。
西村:私は最初から来夢がお気に入りです。
――喋らないキャラじゃないですか(笑)。
西村:OADの頃から来夢だけ格好良いとみんなからツッコミを受けるくらい、贔屓されてます。グラビアも素晴らしかったですね。最初は大丈夫かなと不安だったんですけど、老婆心でした(笑)。
――確かに女の子らしくて可愛いですよね。
西村:来夢は全体の中で一番悪意を感じないキャラですね。正体は原作でも明かされないですが、そういった謎やいろんな元ネタを持ってきてまとめる先生の才能はすごいです。
 

これならいけると思いました

 
――確かにマニアな視点で元ネタを考察するのも楽しい作品ですね。
西村:実は、私も軽いネタを仕込んだ場所があったんですが、誰も気づいてくれなくてガッカリしています(笑)。小さい頃の凜が作文を書くシーンなのですが…。
――ネタが多すぎて追いきれてないというのもあると思いますよ。
西村:ネタで言うと、原作から来ている「キリン」は漫画を買って読みました。元ネタを知ってから見返すと面白さ10倍ですね。
――いろんなバイク漫画をリスペクトしていますよね。そこかしこに小ネタが満載で、それを追いかけるのも楽しいです。
西村:先生ご自身も面白い方なんです。本読みの時にお招きして、最初にお話をとお願いしたら、1時間位の独演会になりました。
――すごいですね。何をお話されてたんですか。
西村:シリーズ化するにあたって、思っていることを話していただきました。むちゃくちゃ面白かったです。
――プレッシャーになりそうですけどね。
西村:お話の内容は、何故バイクは倒れるのか、それは休みたいから! バイクの起源は古代ギリシャ神話! 等々、波瀾万丈抱腹絶倒といった内容で、いわゆる濃密な時間を過ごさせていただきました(笑)。これなら、いける!と思いました。逆に、バイクの楽しさと少女達のかわいらしさを…みたいなことだと大変だなと思っていました。
――制作する側としてはありがたいですね。その時に作品の方針が見えてきたということですか。
西村:まじめな話、シリーズ化にあたってのこちらの気分にかなり近いお話もあって、嬉しかったですね。
――これからの放送も期待しています。最後にファンの方にメッセージをお願いします。
西村:いくらでも緩く作れるところを頑張ったスタッフと、製作委員会の気概に感謝しています。その男気を見てもらえるといいなと思っています。その分面白くなっているので、楽しんでバカ笑いしていただけるのが一番です。また「ばくおん!!」きっかけでバイク業界が盛り上がればさらに嬉しいです。
 
 

ばくおん!! 第1巻 

6月21日(火)発売予定
[Blu-ray]<初回限定版> GNXA-1781 6,800円+税
[DVD]<初回限定版> GNBA-2441 5,800円+税

amazonで購入

LIVE INFOライブ情報

■放送情報
TVアニメ「ばくおん!!」
毎週月曜 24:00~/TOKYO MX/サンテレビ/BS 11にて放送中
毎週水曜 22:00~/アニマックスにて放送中
 
■配信情報
毎週月曜 24:30 /Amazon・プライムビデオ
 
■原作コミック
「ばくおん!!」第1巻~第7巻 /【最新刊】第8巻が7月20日発売予定
おりもとみまな(著)  定価:552円+税  発行:秋田書店
 
■楽曲
オープニングテーマ 「FEEL×ALIVE」
アーティスト:佐咲紗花
アーティスト盤:LACM-14472 ¥1,800円+税
アニメ盤:LACM-14473 ¥1,200円+税
 
エンディングテーマ 「ぶぉん!ぶぉん!らいど・おん!」
アーティスト:
佐倉羽音(CV.上田麗奈)、鈴乃木凜(CV.東山奈央)、
天野恩紗(CV.内山夕実)、三ノ輪聖(CV.山口立花子)
品番・価格:LACM-14474 ¥1,200(税抜)
 
6th
ロフトチャンネル
平野悠
keep the rooftop
どうぶつ
休刊のおしらせ
ロフトアーカイブス
復刻