Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューNo Lie-Sense 鈴木慶一&KERA(Rooftop2016年5月号)

高度成長期の日本をモチーフにした、すちゃらかで破天荒な問題作

2016.05.02

 鈴木慶一とKERAのスーパー・ユニット、No Lie-Senseの2年半ぶりとなる新作のタイトルは『Japan's Period』。なんとも意味深なと思いきや、実はこれ、"高度成長期"の英訳なのである。2020年の東京オリンピックに向けて日本が変なことになっている今、戦後〜昭和40年代の日本に目を向けたのはいかなる理由によるものか。考えてみれば、この時代は街の開発だけでなく、芸術においても、"無茶なことをしまくっていた時代"だ。その無茶な部分(と、そこから生まれる影の部分)を音楽で実践したのが本作なのではないか。二人に話を聞いた。(インタビュー・構成:小暮秀夫)

聴けば聴くほど面白くも恐ろしいアルバム

──アルバムは、「君も出世が出来る」という曲で幕を開けます。この曲はフランキー堺主演の同名映画のテーマ曲のカバーですね。この曲を取り上げたのは、どのような経緯からでしょうか?
KERA:(2ndアルバムの)レコーディングの2日目とか3日目とか、わりとすぐにですね。
慶一:その時は「ちょっとこれ、難しすぎない?」って。作曲が黛敏郎だし、ややこしいんですね。けっこうメロディがね、クラシックの人が作ったメロディなんだよね。階段状に上がったり下がったりする。
KERA:赤ん坊の時に観たんですけど、ずうっと心に引っかかっていて。でもこんな曲をやる機会はないじゃないですか? それで、この曲ともう1曲をきっかけに高度成長期の日本をモチーフにやりたいと。
慶一:それはKERAのアイデア。64年なら任せてくれ、俺は東京オリンピックを観た(笑)。
──KERAさんが高度成長の日本をモチーフにしようと思った理由は?
KERA:う〜ん、なんですかね。慶一さんと共有できるキーワードが何かないと作りづらいだろうなっていう。ま、僕もそうですけど。(2013年は)東京オリンピックが決まって、もうちょっと騒いでた時期なんだよね。
慶一:まだシンボルマークができてない時だ(笑)。
KERA:(いろいろな問題が勃発する)前ですね。まだ、大喜びしてた頃。
──『First Suicide Note』にもメタな昭和感がありましたが、その延長線にあるというわけではない?
KERA:あのアルバムは、別に僕ら的には昭和にしようっていうのは、そんなになかったです。そして出来上がってみると、変テコなんだけど、その変テコさを分かりやすく出そうとしてた感じはあると思うんですよ。今回それは皆無だから(笑)。分かりやすく出そうとかはないですね。もっと得体の知れない、つかみどころのないものになっている。聴けば聴くほど面白いと言うか、恐ろしいと言うか、そういうアルバムになったと思います。
──東京オリンピックに騒いでいた60年代の日本を描くことで、今の日本の姿を浮かび上がらせようという思いはありましたか?
KERA:あんまり今を風刺するとかは…。聴く人が勝手にそう考えてくれればいい。
 

エネルギッシュだけどダークだった1964年

──『Japan's Period』ってアルバム・タイトルも意味深ですよね。
KERA:慶一さんが『Japan's Period』って言葉を持ってきたんですよ。高度成長期を“Japan's Period”とも言うらしいんですね。
慶一:高度経済成長って言葉を検索したら、なんか一個あったんだよ。ピリオドというのは面白かったね。(Japan's Periodって言葉を聞くと)普通の人は“日本の終わり”って感じじゃない? でも実は高度成長期をそう言うんだよ。
──確かに“ピリオド”って“終止符”の他に、“期間”とか“時期”って意味もありますしね。
慶一:(特色を持った)ある時代ってことね。
KERA:日本が先頭切ってガッて行ってた時代。
──制作に際し、KERAさんも昭和39年に関していろいろと調べたのでしょうか?
KERA:調べるっていうほどでもないですけど、芝居でもその時代をよく取り上げているんですよ。また来年もやるんですけど、昭和39年、好きなんですね。エネルギッシュで、でも実は全然健全じゃないっていう。
慶一:エネルギッシュで破壊的で、おもてみは明るいんだけど、ダーク。
──オリンピックなどで街が華やかになればなるほど、その裏側には影の部分もできるわけですよね。
慶一:1964年に私は中学に入学するので、ものすごく環境が変わった年で、ビートルズとベンチャーズとエレキブームが来る。すげぇ学校行くのが嫌でさ(笑)。64年にオリンピックやるっていうのは相当おおごとなんだね。モノレールが秋ぐらいにやっと出来上がるんだよ。俺、羽田で中学だからさ。校庭から工事してるのが見えた。
──大規模な開発を目撃していたわけですね。
KERA:しかもかなりの無茶をしていたわけでしょ? でも今みたいに世論は力を持ってないわけですよ。政治家がすごい偉そうだもんね、当時のドキュメンタリーとか観ると。全部、上から物を言ってる。
──KERAさんにも街が変わっていくのを眺めていた記憶はありますか?
KERA:記憶にはないですけど、後付けで、疑似記憶みたいな。あたかも自分の記憶にあるかのような。
慶一:もっと前に生まれてんじゃないかというようなことだよ。
KERA:そういう疑念もあるんですよ。小林信彦が書いた渥美清の評伝『おかしな男 渥美清』とか読むと。当時、渥美清が住んでた表参道のアパートの一室で2人が、オリンピックであの辺はどう変わるかっていう話をしてる描写があって、すごく生々しく感じるんですよね。東京オリンピックにしても、選手たちとかスターじゃなくて、水面下で土地開発をして儲けようとしている人たちとかさ。
慶一:結局、土建屋が儲かったんだよ。
KERA:その開発によっていろいろ餌食になっていった人たちがいる。そういう人たちを唄ってるわけじゃないけど、そういうほうが興味があるし。
 

戦後20年間のネガティヴなものをぶち込んだ

──東京オリンピックによって、街だけでなく家庭も変わっていきましたよね。テレビが普及し始めたり。「ようこそテレヴィジョン」ではその頃のことを唄っていますね。家族揃ってテレビを観ていた時代。
慶一:『私は貝になりたい』とプロレスをみんなで観てるんだもんね。家族だけじゃなく近所の人がテレビの前に集まって。50年代の終わりには。
KERA:80年にウォークマンができるまで、電話でもなんでもそうでしたよね。テレビもみんなで観てね。家族で共有していた。今みたいに小学生が携帯電話を持ってる時代とは、やっぱり全然違う。そこの不自由さっていうのも一つのキーかもしれないですね。
慶一:60年代は、集団生活だもんな。隣近所に気を遣い。
──集団就職してきた若者が工場で働く。「ミュータント集団就職(突然変異でこの世は一回り)」なんて曲もありますね。
慶一:私は、集団就職のシーンは見たことあるんだよ。アグネス・チャンのバックやってる時にまだあったね。75年。釜石行ってライブやったら、客が学生服ばっかなの。翌日電車に乗ったら、その子たちがみんな乗ってくるのね。それで上野駅に行くわけだ。ま、集団就職の最後のほうだろうけど。家族の別れだよ。子どものほうはそんなに深刻でない感じにはなってたけどね。時代としては。『日本一のワルノリ男』以降だしね。
──「労働者たち」ではインダストリアルな労働者の姿が描写されていますが、『マニア・マニエラ』のプロレタリアな労働者感とはまた違っていますよね。『マニア・マニエラ』には、昼休みにみんなでお弁当を食べるような雰囲気がまだ残っていましたけど。
慶一:この労働者なる景色は、昼飯もないんじゃないかなっていう。
KERA:「オペラ 山下高橋(悲しき靴音 いや、ゆゆしき死の音)」なんて、“あさからなんにもたべてないんだ”ですからね(笑)。
慶一:血を売ったりするし(笑)。つげ忠男の漫画の世界だね。だからこのアルバムは、戦後20年のあいだのネガティヴなものをどんどんぶち込んである。高度成長と言いながらね(笑)。
 
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No Lie-Sense
「Japan's Period」

【価格】3,000円+税
【品番】CDSOL-1635
【発売日】2016年4月20日(水)
【発売・販売】ナゴムレコード/ウルトラ・ヴァイヴ

amazonで購入

【収録曲】
01. 君も出世が出来る
02. ようこそテレヴィジョン
03. 塔と戯れる男二人
04. ミュータント集団就職(突然変異でこの世は一回り)
05. 労働者たち
06. 困ったの花
07. オペラ 山下高橋(悲しき靴音 いや、ゆゆしき死の音)
08. 大東京は大食堂
09. ウルトラペイン
10. 未来人街
11. チョイナン海岸の運び屋

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