Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー阪本順治(映画監督)(Rooftop2016年5月号)

狂に入って作った喜劇

2016.05.02

いいおっさん・おばはんがロックやっているのを新鮮に感じてほしい

 
――斎藤さんの演じる真城は全く予想できませんでした。異邦人でもある彼が、一般家庭の中に入ってきたことの違和感のなさもすごかったです。
阪本:大阪には変わった人が多いので、受け入れられるかなと(笑)。オリジナルは自分の根っこを晒すということなので。自分が面白く楽しめることを引きずり出してきたということです。
――真城のあのセリフはその根っこを晒した部分なんですね。
阪本:そこが物語の中心として浮かんだことですね。子供のころからの疑問が、真城を生みました。
――ドラマが起きるきっかけにもなってますね。
阪本:極端な設定ですけどね。
――現実ともリンクしつつの不思議な世界観でした。
阪本:要は、空想と妄想ですね。子供のころに感じたものは怯えもないですし、大人の論理に毒されてないですから。
――そこがあるので、どこか懐かしさも感じました。
阪本:ノスタルジックな要素も売りかもしれないですけど、いいおっさん・おばはんがロックやっているのを新鮮に感じて欲しいなとも思います(笑)。
――そこもしっかり伝わってきました。最後の大楠さんのセリフにはとても感動しました。
阪本:大楠さんには「あのセリフがあるから出たのよ」と言われました。大楠さんは、最初に台本読んだ時は心配したらしくて、怖くて直接電話ができないから岸部さんに相談したそうです。その相談を受けた岸部さんから「大楠さんが心配してるよ、俺もだけど。本当にやるの」って電話がありました(笑)。
――それだけ距離が近い仲というのはいいですね。
阪本:そうですね。最初に「藤山さんと映画やるんですけど、今度は喜劇にしようと思うんです」と大楠さんに言ったら、「あなた、藤山さんと喜劇ってどれだけのことかわかってんの、負けるわよ」って言われました(笑)。
――竹槍で戦闘機に突っ込んでいく覚悟ですね。
阪本:そうですね。
――共演された皆さんも、藤山さんと喜劇を演じるというのはプレッシャーだった、ということなんでしょうか。
阪本:そうかもしれないですね。僕は物語性で笑わせるというより、その人の持つおかしさで笑わせるというのが喜劇だと思っています。「団地」は、自分がちょっと世間離れしているおかしみを持っていることに気づいてない人たちのお話でもあります。
――それが大阪らしい喜劇ということなのかもしれないですね。
阪本:大阪の人はみんな、それぞれ自分のステージを持って歩いているみたいなもんですからね。他人との違いをアピールしたがりますから。
――キャラを立てないといけないというのがあるんでしょうね。
阪本:逆に言うと、孤立を恐れているのもあるんだと思います。それに大阪は噂話がすごいんです。それが嫌で大阪を出ようと思ったくらいです。
――嫌で出てきたのに、今回は原点回帰ともいえる大阪の噂話の風景を撮ることにしたのは、なぜなんですか。
阪本:もうそろそろ許したろかなって(笑)。年を取ってくると、噂話の延長上に面倒見の良さもあったのかなと思えるようになってくるんです。若い時はほっといてくれって思っていました。
――大阪に限らず、田舎の人にはそういうところがありますね。
阪本:そうですね。ロケハンで助監督が大阪の団地を見て回っている時に、サンバイザーをしてビールケースを逆さにして腰掛けて話し込んでいるおばちゃんたちもいたらしくて、それはアイデアとしていただきました。
――そういう日常風景も、切り取ると喜劇になるんですね。劇中の噂話にも家庭の事情がちらほら出て来ていて、どうなるのかなと思っていると、最後に向けてどんどん解決していくので、その爽快感がすごかったです。
阪本:もともと、僕は作り込まれたケレン味のある作品が好きなんです。人の感情とか心情を細やかに描いて、そこで空気感を作るよりは、映画でしかできないケレンというのを望むんです。
――それは長回しのカットが多いというのにも繋がっているんですか。自分がその場所で実際に見ている感覚になって、物語にすごく入っていけました。
阪本:ここに興味を持って見てください、という強制をするのがあまり好きじゃないんです。僕の作品はテンポが遅いと言われることがあるので、テンポを速くしようと思ってカットを増やしたりすることもあるんですけど、最後の編集では結局、そうはならないんです。ワイドで長回しをすると、例えば2人で会話をしているシーンであれば話している人でも、聞いている人でもどっちを見てもらってもいいんです。
――確かに引き画で長回しも多いので、自分がより感情移入できる方に入っていきます。
阪本:テンポが必要な場面ならノリを作ってそういう演出もしますけどね。
――「団地」のような日常生活を中心にした作品だと今回の演出方法は合っていると思います。
阪本:私の考える喜劇の要素である、その人のおかしみで笑ってもらおうとすると、間合いは編集で作るんじゃなくて、役者のみなさんで作ってもらうのが一番面白いので、細かく切らない方がいいんです。
――そこが舞台のような雰囲気にも感じました。16年ぶりの藤山さんとの映画はいかがでしたか。
阪本:距離を置いたからこそ撮れた作品だとも思います。お互い16年の間で似たような経験をしたり、もの作りの環境も変わってきたり、そこに今回オリジナルをできるチャンスをもらえたので、狂に入れたんだと思います。
――今作で狂に入って気持ちよかったですか。
阪本:やっぱり、気持ちいいです。出てた役者の皆さんには「大丈夫?」って心配されたので、ちょっとやりすぎたかなとも思いましたけど(笑)。
――僕は観ていて楽しかったです。団地団メンバーの皆さんも絶賛されていました。
阪本:団地マニアだからじゃないですか(笑)。
――団地マニアにもうけるということです。
阪本:風景の力もあります。撮影場所にここを選んだのも1棟1棟が規則正しく並んでなかったり、不思議なフォルムの給水塔があったり、外階段のあり方など、このビジュアルがあっての作品でしたから。「団地」は現代劇ではあるけどノスタルジックな面もあるので。
――阪本さんは団地マニア的にもレベルが高いですね。
阪本:本当はあのグルグル回すバランス釜を使った、お風呂のシーンも映画に入れたかったんですよ。
――そこは次回作に期待してます。
阪本:次も団地が舞台とは限らないですよ(笑)。ただ、先程も言いましたけど「団地」は気持ちよく作れた作品です。今は若い監督もいっぱい出てきていて、従来のもの作りのセオリーを壊しながら、よりパーソナルに徹した作品を発表できる自由度もあるんですけど、片一方でリスクの被り方など、別の意味での不自由さも感じているように思えます。上から目線になっちゃいますが、こんな60前のおっさんが狂っている姿を見て、どう思う?って感想を聞いてみたいです。
――頼もしいと思ってますよ。
阪本:そうだと嬉しいです。
 
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LIVE INFOライブ情報

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映画『団地』
脚本・監督:阪本順治   出演:藤山直美、岸部一徳、大楠道代、石橋蓮司、斎藤工ほか
6/4(土)より全国劇場にて上映開始
 
イベント
6/12(日)
団地団夜 阪本順治監督  最新作「団地」を語る
 
【出演】
佐藤大(脚本家)/大山顕(写真家)/速水健朗(ライター)
今井哲也(漫画家)/久保寺健彦(作家)
山内マリコ(作家)/稲田豊史(ライター) ほか
 
【ゲスト】
阪本順治(映画監督)
 
OPEN 18:00 / START 19:00
前売¥1,900/当日¥2,200(共に飲食代別)
※前売券はイープラスにて「5/7(土)10時より」発売開始!
※映画「団地」半券を持参の人は1ドリンクサービス!!
会場:Asagaya/Loft A
 
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