Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー遠藤ミチロウ(Rooftop2016年3月号)

前進していく終わらない旅、終わらない音楽

2016.03.01

 2015年は4月にソロアルバム『FUKUSHIMA』を、12月にTHE END『0』(全曲ドアーズのカバー)、羊歯明神『羊歯明神』と2つのバンドを始動させアルバムを同時リリースした遠藤ミチロウ。今年、自らの姿を自らが追った初監督映画『お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました』が公開。2011年1月、大阪での、亡くなったザ・スターリンのギタリストであるタムへの追悼の思いも込めた、ザ・スターリン復活ライブから始まる本作は、当初、還暦の年に各地を弾き語りで廻る姿を映すドキュメンタリー映画になる予定だった。しかし、東日本大震災と原発事故により、プロジェクトFUKUSHIMAを立ち上げ、故郷である福島と対峙し、自分自身と対峙する姿が、音楽の旅をする姿を背景に、濃密に描き出されていく。そして浮かび上がっているのは様々な矛盾と葛藤。
 この映画は2011年1月から9月までを追ったものだが、遠藤ミチロウが歌い始めてから、いやそれ以前からの彼の思いや背景までも描き出されている。その背景とは?根源とは?
 様々な葛藤を赤裸々に、またナチュラルに曝け出し、そして前進していく終わらない旅の映画であり、遠藤ミチロウの音楽も終わらないのだ。(INTERVIEW:遠藤妙子)

羊歯明神は自我に目覚める前の自分だよね

――まず先日のAPIA40でのライブを見て、ミチロウさんの歌の強さに改めて驚いて。ミチロウさんの歌には核があるんだけど、核を覆っているもの、歌の背景だったり歌の中の主人公のむせかえる感情だったりがあって、それがあるからこそ核が迫ってくる。
遠藤:うん。
――私はパンクやハードコアも好きだしストレートな歌も好きなんですけど、それだけじゃ伝わらないものがミチロウさんの歌にはある。
遠藤:歌いたいことはストレートなメッセージってとこじゃないからね。そこから抜け落ちちゃうっていうものを、一番歌いたいんですよ。
――私、昔、スターリンのライブを見て、ライブハウスでウワーッて高揚するんですけど、終わった後、家に帰ってシーンとした時に迫るものがあって。それが大事なんだなって思っていて。
遠藤:歌ってやっぱり凄く個人的なものだと思うのね。社会のことを歌いたいんじゃなく、社会に対して何か思う時、そこで感じるいろんな矛盾、そういう部分をちゃんと拾いたいなっていうのがあって。正しい間違ってるじゃなく、それじゃ掬えないものを一番歌いたい。どうしてもメッセージ的な部分で評価されちゃうみたいなとこがあるけど、どうでもいいんだよね。だからこう、自分の歌の中でも矛盾してるっていうか。自分の歌の中で自分が言ってることが、凄い矛盾してることはよくあって。でも両方自分なんだよね。
――あの、私は若い頃、背伸びをしていたせいか、スターリンの歌は政治的なことを言ってるんだって思っていたんですが、政治に対して何もわからなかったし、政治に対して何を歌っているのかもわからなかった。でも政治や世の中が変わっていってもミチロウさんの歌はずっと響く。ずっと残っている。終わらないんだなって思って。
遠藤:終わらないよね。
――だから政治の歌じゃなくて人間の歌なんだって。
遠藤:うん。そういう意味での普遍性は持ちたいというか。
――でね、APIA40のライブで羊歯明神の曲もやりましたが、めちゃめちゃ楽しそうでしたよね(笑)。
遠藤:羊歯明神は盆踊りをやるために作ったバンドなんですよ。みんなで踊るために作ったバンドだからね。それで民謡に特化して。
――これまでと真逆ですよね。歌詞もストレートに政権批判なども歌っているし。
遠藤:真逆だよね。世の中のことを歌えちゃう楽しさっていうか。それに目覚めちゃった(笑)。あそこで個人的な感情を歌うよりも、一人の市民…、市民の立場で、「こんなこと思ってるよ、世の中ってこんなことになってるよ」って歌って、それってみんなが思っていることだろうし、みんなが歌える。スターリンでは「コレは俺にしか歌えない」っていう気持ちが多少あって。でも民謡はそうじゃない。誰でも歌えるじゃんっていう。歌を共有できる感じ、それが面白い。
――羊歯明神の結成のきっかけは?
遠藤:プロジェクトFUKUSHIMAで浪江の人たちと関わるようになって、浪江音楽祭をやることになった時、浪江の人たちから「盆踊りをやってくれ」って言われて。その時はまだ歌ってないんですけど….。
――歌ってないけど一緒に踊った?
遠藤:一緒に踊った(笑)。凄い照れ臭かったんだけど(笑)。その時に、民謡が鳴ってる力、生活に密着した唄っていうことを凄い感じて。自分も盆踊りの唄を歌ってみようかなって。ただ、民謡って今の僕らには近くには感じられないじゃない?その理由って唄の中身なんじゃないかなと。唄の内容が遠い。そこを変えれば今の生活に密着した民謡ができるんじゃないかって、歌詞を変えちゃって。やったらスゲェ面白くて。
――さっきの「抜け落ちたもの」にこじつけるわけじゃないんですけど、生活に密着した唄である民謡って、世の中の歌の世界から抜け落ちていったものなのかなって。だからミチロウさんが民謡に惹かれたのは意外なようで、実は繋がってるんだなって。
遠藤:繋がってるんですよね。例えばさ、THE ENDと羊歯明神は対照的でしょ。THE ENDは俺が歌い始めた頃の、「自分が歌う」っていうとこで、やりたかったことをそのままやってる内容だし音なの。
――羊歯明神と同時リリースしたTHE ENDの『0』はドアーズのカバーが収録されてますが、ドアーズはミチロウさんが最初に好きになったロックなんですよね。
遠藤:そう。ドアーズからロックに入った。自分がロックに対して込めたいろんな思いっていうものの、ある意味典型的な形がTHE END。羊歯明神はそれとは真逆なんだけど、考えてみたら一緒なんだよね。
――両方ともミチロウさんの原点で。
遠藤:そう。自分にとって、「ロックとは、歌とはなんなんだろう?」ってことがTHE ENDで、羊歯明神はもっと遡って、一番最初に歌っていうものに出会った頃のもので。俺、子どもの頃、三橋美智也が大好きだったんですよ。流行ってたんだよね。だから、福島は嫌だな、家を出たいなってことを思う前の自分、自我に目覚める前の自分だよね、羊歯明神は。
――ライブで羊歯明神の曲をやった時、子どもみたいな顔してましたもんね(笑)。
遠藤:どうしてもね、子どもみたいになっちゃうよね(笑)。
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故郷を否定して離れた自分と故郷を思って戻った自分

――なんか凄く映画と繋がるな。『お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました』も、矛盾や葛藤を抱えたミチロウさんがいて。そもそも映画の制作はどういう経緯で?
遠藤:制作会社(シマフィルム)からドキュメントリー映画を撮りたいって話があって。監督は決まってないって言うから、自分で撮ってみようかなと。俺はずっとツアーをやっているからロード・ムーヴィーを頭に描いていたんだけど、途中、震災と原発事故があって福島に向かう形になって。自分にとって福島に向かうってことは、家族とか故郷とか、そこで育った自分自身に向き合うってことになっていくわけで。だから福島に特化した映画ではないなと。
――福島は軸の一つではあるけど、そこだけを描きたいわけじゃない。
遠藤:うん。だから震災の後って家族の絆が大事っていうテーマの映像作品がいっぱいあったけど、そういうものじゃないよね。感動モノとは程遠い(笑)。
――でも家族との関わり方が凄くわかる。最初のほうの実家に帰る場面で、ミチロウさんは玄関から家の中に中々入らないじゃないですか。「ただいま」とも言わないし。そこで家族や家に対する思いが伝わって。あの居心地の悪さみたいな感じは、家から離れて暮らしたことがある人はグッとくると思います。
遠藤:なんかね、「だたいま」じゃないんだよね。俺は福島にいることが、実家で暮らすことが、家族といることが嫌で。それで家を出て旅を続けていたから。
――でもお母さまは明るくてお若いし。
遠藤:肩透かしだと思うよ(笑)。家族の中でいろいろ問題があって家が嫌なんだろうなって思うのが普通じゃないですか。俺にはそれが、全然ないってわけじゃないけど、特別な問題はない家で。それでも葛藤があるっていうのを表現するのは難しいんだけど….。例えば、沖縄に暮らしてる人たちって家族を大事にしていて。俺はそこに感動するんだけど、俺自身はそれが嫌で一人になって旅をして。家族を作りたいとは今も思ってなくて。人を見て感動するんだけど、自分もそうなりたいとは思わないんだよね。
――わかります。わかりますって言うのは軽いけど、私も平凡な家庭で育ち、でも結婚したいと強く思ったことはないし。なんか、家族が集団に感じるっていうと大袈裟だけど…。
遠藤:例えば極端だけど、仏陀が家族を捨てて修行する。家族が悟りを開くには一番邪魔だっていう。ある意味ではそれが凄くわかるっていうか。悟りを開きたいわけじゃないんだけど(笑)。なんか家族って居心地が悪いんだよね。
――実家の玄関に佇むミチロウさんから、その居心地の悪さが微笑ましく伝わってきます(笑)。震災の後、最初に福島に行かれたのが….?
遠藤:4月。1ヶ月ぐらい経ってから。その頃って、福島に対して差別的なことが出てきた時期で。福島以外の人たちからは食べ物の放射能のことでいろいろ言われ、福島の中でも避難して行った人、残る人、各々の立場でいろいろな違いが出てきて。いろいろな差別が日本にはあるけど、新しい形の差別っていうか….、どうやって差別が生まれてしまうのかってことを如実に感じて。
――各々の立場が分断させられてしまって起きた差別…。
遠藤:各々の立場でね。福島でいろいろな人と話して、みんなの話の中でもそういう話題が多くて。例えば、福島の女の子と結婚すると放射能の影響があるから婚約解消されたっていう話がいっぱいあって。でも、ある女の子が、自分は婚約解消される側の立場だけど、もし自分が相手の母親だったら福島の人とは結婚させたくないだろなって。自分は差別されているんだけど、立場が変わったら自分も差別する側になってしまうっていう…。その矛盾っていうか。
――重いですね。
遠藤:瓦礫の問題もあったじゃないですか。被災地を支援したいって言いながら、自分のとこに瓦礫がくるのは嫌だ。その矛盾。だから福島だけの問題じゃないよね。どこの地方にも当てはまること。しかもその矛盾って、まるっきり自分が抱えてる矛盾と同じなんだよね。故郷を否定して離れた自分と故郷を思って戻った自分。その矛盾ってなんなんだろうなってことが、映画の一番のテーマで。
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映画「お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました」より ©2015 SHIMAFILMS

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監督:遠藤ミチロウ
製作・配給:シマフィルム株式会社
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