Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー山崎春美(Rooftop2015年11月号)

日本のオルタナティブミュージック・シーン黎明期に伝説を残した「TACO」「ガセネタ」が新宿ロフトで本格的に再始動!

2015.11.02

 80年代前半に不定形バンド、TACOを率い、『天国注射の昼』『自殺未遂ライブ』などで日本の初期オルタナティブミュージック・シーンに伝説を残した山崎春美。30余年を経た2015年のいま、彼はいったい何を再び企んでいるのだろうか?
 大里俊晴の七回忌・11月17日に、ガセネタ、TACO、A-Musikを大集結させて、新宿ロフトでのイベント『SHINDACO〜死んだ子の齢だけは数えておかねばならない』を標榜する山崎春美に、『SHINDACO』というタイトルに込めた死者と生者への想いを訊いた。
 果たして「新TACO」は...山崎春美は...再生するのか? いったい何回再生したら気が済むのか? はたまたこれは"ガセネタ"か?(interview:渡辺まお)

『AA』は大里俊晴が遺した「最上の仕事」

──ハルミさんがTACOで活発に活動して、『TACO』1stのレコードを出されたのが'83年。いまとでは32年間の開きがあります。往時と現在とでは何がどのように違っていますか? 今日は、当時のエピソードを交えて、今回のイベントへの意気込みをお聞きしようと…。[敬称は適宜、飛ばします。お許しを!]
山崎春美(以下、春美):そういうことならまず、関連企画である『AA』上映会のことから時間を巻き戻そう。ふたつのイベントを、まず大里(俊晴)の本当の命日である17日(火)にライブを演った後、その週の20日(金)深夜零時ってことは、正しくは21日(土)零時から朝8時半くらいまで上映する。DVD化されてないし、する予定もないので運悪く未見の方は必見。2005年公開だから10周年記念だしね。三連休のヒトなら、のっけから充実して無駄なく過ごせる。
──一介のジャズ評論家にとどまらず、デレク・ベイリーらを招聘しては故・阿部薫らと共演させたり、セリーヌのレコードを制作販売したり、はたまたジャニス・ジョプリン『チープ・スリル』のライナーが『POPEYE』誌でベスト・ライナーに選ばれたりと、才人ぶりを見せつけながら弱冠32歳の若さで亡くなった間章(あいだ・あきら)についての映画なんですね?
春美:そう! アルバート・アイラーでもアインシュタインでも浅田彰でもない。彼は'78年に急逝するんだけど、それから4、5年して村上龍にインタビューしたら間章の話になって、実に惜しい人を亡くした、と。でも、なぜこの映画が今回の『SHINDACO』でレア企画としてでき得たかと言うと、この映画の中身は、灰野(敬二)さんが三度、大友(良英)さんが一度、ソロ演奏してる箇所を除けば、清水俊彦、副島輝人のおふたりが故人になり(今年の春!)はしたが、灰野、大友の両氏に加え近藤等則、竹田賢一、佐々木敦、高橋巌、平井玄、湯浅学、それに新潟のバンド、ベガーズバンケットの本間、亀田のふたり…これら10人以上の人々の発言が、テーマごとにぶつ切りにされていきなり部分だけが出て、そらぁ、編集は大変やろけど、飽きずに観られる…ただしこれらの人々に「本音」を話させることは相当に難しい。斯くも至難の業であるインタビュアー役を果たせたのはおそらく、大里以外にはいなかったろう。すなわち彼の遺した「最上の仕事」だろうから、これが最後になるやもしれぬ大里七回忌にぶつけた、という次第。例によって黒子に徹して(大里の)顔は出ないし、極力、質問の声も外しているけどね。
──ハルミさんは(間章と)交遊があったんですね?
春美:うん。通夜も葬式も出てる。って言うか大里だって一度だけだけど渋谷(にあった山崎春美宅)で会ってる。でもその話はまた。それより、これらを「初心者でも愉しめる『AA』」にするため、取材される側の彼らのひとり、平井玄さんをゲストにお迎えして、僕とトークしていただく。
──えっ! 7時間半上映後にトークするんですか!?
春美:まさか。上映前にやるよ。先だって、今年の9月9日の阿部薫の命日に新宿ピットインで、追悼ライブ&トークがあって、大谷(能生)君が仕切ってたけど、大友、竹田の両氏も出演して話して…。大友さんなんか『解体的交感』で(阿部薫と共演した)高柳さんがその時使ったギターで演奏してた…。
 

気の触れたような残酷劇がやりたい

──そろそろ、肝心の17日のライブの話がしたいのですが、果たしてどんなステージになるんでしょうか?
春美:どんな? どんなんもこんなんもあるかいな。そりゃあもう、身の毛もよだつように暗くて、気の触れたような残酷劇がやりたいに決まっとろうが…。
──…なんです? 残酷劇…? てっきり音楽のライブだとばかり…。
春美:音楽ねぇ…うん音楽も使いますよ、音楽も。必ずしも悪いものではないのだから…。
──…それはそうでしょうよ!
春美:いまはね。世間にもやや認知された。が…、まずはでも昔話を片づけちまおう。《32年の開き》だなんて、煽るように威すように小声でわざと仰るが、'83年の頭に発売したんだから作ったのは'82年なのよ。教授(坂本龍一)のレコーディングが7月の頭で、それを最後にするつもりが最初になっちゃった。憶えてるのは1日でレコーディングした費用が、エンジニアまで含めてたったの20万円! すべてスタジオ代。最初に詩を送ったら、生ピアノで適当に鼻歌で唄ってるのが返ってきて…、それから今度は歌手だってんで、候補を決めなくちゃならない。ちょうどSONYで郷ひろみを録ってるとこに、女の子をぞろぞろ連れてって…高橋幸宏が、何事だ! みたいな顔でこっちを見てた…。その中には後にメルツバウの東玲子までいて…もちろん曲とか詩とかを作ったりとかがあったわけだから、構想まで含めると、'82年の1年間近く掛かっているわけで、いかにも、のろい。まったく遅い!
 けどこれには訳があって、ひとつはレコードの制作費を、何十万やったか忘れたけど、親に借りてた。僕はもちろん、なるべく売れたほうが嬉しいわけやけど、誰ひとりとして売れるなんて考えてないし、だからその金は返さんでもええ、その代わり大阪に帰れ、と約束した。こういうの、借りたとは言わないな、普通。正確には僕が買われたんだ。つまり金なんか返そうが返すまいが、どっちゃでも構へん。とにかくそのレコードかなんか知らんけど、みたいなんが、出来上がったら大阪に帰らないといけない。その時点での親は、いまの僕より歳下やから50代前半。逆に言うと、とにかくレコードが出来るまでは東京にいれる。まだ終われへんといってモラトリアムしてたわけ。
 実際、その最中に『ロックマガジン内HEAVEN』を3号ぶん作ったし、『プレイヤー』誌のインタビューで教授と知り合って1曲作ってもらえた。徳間(書店)とかゴマ(書房)で主に宗教系のゴーストもしていたし、例の『自殺未遂ギグ』は'82年9月1日。翌日が誕生日だから、もし未遂に失敗してほんとに死んだら享年は23だったのにね。大宮のストリップ劇場で(工藤)冬里と半月交代にゴリラの着ぐるみ着て出演しながら編集もしてたし。それ(ストリップの仕事)を斡旋してくれてたのが「ぎゃてぃ」というライブハウスのオーナーだった生方恵子さんで、「桃色の血を吐いて」(冬里の言)前世紀中に死んだらしいけど。
──桃色の血、ですか…。
春美:いっそ、さっさと新作つくったらどうなんだ、と言うヒトは、でもいまどきは滅多といない。その理由はとてもはっきりしている。目新しさは必要だし、丁寧な作り込みなんかはそれなりに評価されたりもするけど、結局はね。予感に震えながら身を投じてまで求めるような、全く真新しい考え方や別の生き方を見つけに、劇場やライブや本屋、レコード屋に行く奴なんかいないし、第一、そんなもの、あるわけないしね。
 だからこそ、さらに問題なのはみんなが全員が、それどころじゃないってこと。いちいち話すまでもないけど、実にひどい世の中になったよ。本当に心の底から。いまの世の中はひどい!
──そんなに、ひどいかなぁ。ハルミさんには堪え難いですか?
春美:俺? 俺なんかどうしようもない。反知性主義もへったくれもない! ただのヤンキーやないか。真剣なぶんだけ、何もかにもが、ちゃんちゃら可笑しいだけやし。
 
 
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写真:すずき大すけ
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LIVE INFOライブ情報

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SHINDACO〜死んだ子の齢だけは数えておかねばならない
2015年11月17日(火)新宿ロフト
OPEN 18:00/START 19:00
前売 3,500円/当日 4,000円(共にドリンク代別)
*チケットはぴあ(Pコード:278-185)、ローソン(Lコード:76998)、e+、新宿ロフト店頭にて発売中
【出演】
TACO/ガセネタ(山崎春美、遠藤ミチロウ、戸川純、佐藤薫、遠藤晶美、工藤冬里、松村正人、久下恵生、向島ゆり子、後飯塚僚、BANANA-UG、野々村文宏、香山リカ、長門洋平、渡邊未帆 ほか)
A-MUSIK(竹田賢一、大熊ワタル、千野秀一、小山哲人、中尾勘二)
問い合わせ:新宿ロフト 03-5272-0382
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