Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー日下一郎 (漫画家)(Rooftop2015年11月号)

ファミコンに対する落とし前

2015.11.02

 全編ドット絵という今までにない表現で注目を集める『ファイナルリクエスト』。絵としての目新しさだけでなく、練り上げられたストーリーから漫画ファン、ゲームファンから熱狂的な支持を得ている今作。懐かしくもあり新しい今作はどのように生まれたのかを、作者である日下一郎に熱く語ってもらいました。[interview:柏木 聡(Asagaya/Loft A)]

レトロゲームに改めて光が当たり出した

──最初に『ファイナルリクエスト』(以下、FRQ)を描かれる経緯を伺えますか。
日下:大学在学中に一度、講談社でデビューさせていただいたんですが、ゲーム業界に進んで20年くらいゲームを作っていました。漫画家に戻った理由はふたつあります。ひとつは私の好きだったゲームと今のゲームが離れてきてしまったのと、もうひとつはまた漫画を描きたいなという思いが出てきたからです。
──ゲーム業界にいた頃はどのようなお仕事をされていたんですか。
日下:ひと通りやりましたけど、アーケード部門に長くいました。私にとってのゲームはドラゴンクエスト(以下、DQ)のようなものだったんですけど、当時のアーケードゲームにそんな作品はなくて(笑)。FRQはもともとコンシューマーゲームをやりたかった思いが出てきたところもあるんだと思います。
──FRQの企画が動き始めたのはいつ頃なんですか。
日下:2012年の後半だったと思います。最初はダメなんじゃないかという空気も出かけたんですけど、『シュガーラッシュ』が公開され、レトロゲームというものに改めて光が当たり出したおかげでいいんじゃないかなという空気に変わった感じがありました。
──FRQの大きな特徴と言えばドット絵ですが、この表現に至った経緯を伺えますか。
日下:私がデビューしたのは20年前ということもあって、絵柄が古いんじゃないかという話も出てきたんです。どうしようかとなった時に、編集の方から「元ゲーム屋ならドット絵にしてみるのはどうか?」という話をもらったんです。それを受けて逆にいけるんじゃないかと感じて、ドット絵で描くことになりました。FRQで取り入れている表現は自分にとっては畑違いだったファミコン(以下、FC)のものになるんですが、アーケード時代とは違うFCの絵のパレットや音源をいじってみるのは本当に新鮮です。
──ドット絵は日下さんのアイデアじゃなかったんですね。アーケードのものではなくFCの表現方法を採用したのはなぜなんですか。
日下:みんなにとって一番馴染みのあるドット絵は何だろう? と考えた時に、FCかなと。あとは締切に間に合うように、というのもあります。そこで初めてFCのスペックを勉強し始めました。悔しいけどよくできています。私もドット絵が好きだったので、今はその知識を詰め込んでいる感じです。
──FCのフォーマットをということですが、実際にここまでの表現がFCでできるのですか。
日下:できますよ。皆さんFCをちゃちなものと思われてますが、末期は凄いですよ。ゾクッとくるようなドット絵です。また制限があるから燃えるというところもありますし、ドット絵だからできる良さというものがあります。
──お話を伺っていると、漫画というよりもゲーム制作になってますね。
日下:本当にそうなってしまいました。さらにまずいことに迫力が足りないからってどんどん大きなサイズのキャラも作ってしまってるんです。一番大きいものだと格闘ゲームのキャラくらいの大きさになってしまっていて、こんなんじゃいつまで経っても締め切りまで原稿が終わらないよって(笑)。でも、お客さんが喜んでくれるので、できるだけ頑張ろうと思っています。
──制限という部分ですと、音に関してもあると思いますがいかがですか。
日下:もちろん音楽にも制限があります。これも初めて挑戦してみて自分のスタイルをやってやろうというのができつつあります。ただ、音楽に関してはプロではないので、その点は大目に見てもらえると助かります(笑)。
 
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特殊すぎて無理でした(笑)

──FRQはWEB配信もされていますが、最初から考えていらしたのですか。
日下:最初はネメシスでの連載に向けて動いていました。それが企画を揉んでいくうちにニコニコ静画にしたほうがいいんじゃないかという流れになりました。まさかここまでのものになるとは私自身も思ってなかったです(笑)。大元を言ってしまうと、今のようなネームでもなかったんです。本当にゲーム画面を写したようなものを連続してみようという案もあったんですけど、それだと漫画じゃないなということで、その案はボツになりました。
──コミックにした際はコマ割りが必要になりますが、ニコニコ静画からはどのように落とし込んでいるのですか。
日下:先に漫画があります。映像や音があるからというので動画を優先にしてしまうのは漫画としては違うので、そこは編集の方にしっかり見ていただいています。逆に誌面だからできる見開きのような表現がニコニコ静画ではできないので、そこは工夫しています。
──話を伺っていると、自分から苦労をしょってしまっている感じですね。
日下:何度か他の方に発注をかけてみたんですけど、特殊すぎて無理でした(笑)。最盛期のドット絵をできる人だと偉くなってしまってお願いするのが難しいんです(笑)。凝り性なのが災いしているのかもしれないですね。
──確かに今の現場の方ですと経験がないのかもしれないですね。
日下:この企画は昔だと成立しないので、今だからこそできるものだとも思っています。フルカラーでこれだけ綺麗なものを刷っていただけているので、手も抜けないです。インクや紙もゲーム画面の光っている雰囲気が出るように工夫していただけています。
 

ゲームは物語を持っているもの

──確かにコミックもブラウン管の雰囲気が出ています。最近はニコニコ静画での枚数もどんどん増えているので、ファンも盛り上がっています。
日下:ニコニコ静画での盛り上がりはシロテのおかげもあります。最初シロテは、かっこいいお姉さんをイメージしていたのですが、編集の小笠原さんから「ちびっこにしよう」という意見をもらって変更しました。最初は「何を言ってるんだ」と思いましたが、でき上がると瞬間にいけるかもと思いました。おかげでこの漫画ならではの色が出せた感じがします。ここまでシロテが輝くとは思ってなかったです。
──今だと出るたびにシロテコールが起きるくらいの人気になってますから、大正解ですね(笑)。
日下:これが成熟した女性で同じことをやってたら怖いだけだったと思うんですけど、ちびっこが無茶苦茶なことをやるのが面白いんだと思います。
──どこか抜けている感じが可愛いですよね。
日下:アソンテとリカトクは、DQ4のライアン・トルネコで元のキャラをこう変えましたよっていうだけで収まっていたのがシロテに該当するキャラクターというのはいないので、それがお客さんにも受け入れてもらえたというのは有り難いです。5話くらいまではDQに対するラブレターのようなところもありましたが、そこから抜け出せたのも良かったです。
──私が最初にクリアーしたRPGはDQ4で特に思い入れがあるので、この世界感に凄くハマってるんです。FCのDQ4はAIが馬鹿なのが逆にキャラとして立っているのが良かったので、FRQのキャラクターからもその雰囲気を感じることができます。
日下:ゲームは物語を持っているものだと思うんです。今は要素のひとつになっていますが、FCだと物語を入れるだけでいっぱいだったので濃密でした。ドット絵のキャラも人形ですけど自分の感情を投影していて、それが実写ではできない胸を打つということもあるので、それはアニメやゲームが逆に教えてくれたことだと思います。
──そこが「ファミコンに対する落とし前」ということなんですか。
日下:そうですね。本当はゲーム全般に対する落とし前ですね。みんなの一番馴染みがあるものがFCだろうということで、そう言っています。これは僕らの世代ではピンとくる絵だけども、若い世代だとよく分からないビジュアルかもしれないですね。
──若い人にはこういった世界が逆に新鮮なのかもしれないですね。ドットキャラクターなんかも今受けているものに近いように感じます。
日下:そうかもしれません。うまくいったらパイロットフィルムみたいなものを作ろうという話もあるんです。けっこうビジュアルのインパクトがあるんじゃないかなと思っています。
──パイロットフィルムということですと、ニコニコ静画の形でのDVD化が熱望されていますが、そちらに関してはいかがですか。
日下:今は連載が忙しいので進んでないですが、人手が増えて手が回れば可能性もあるので応援してください。映像化するとなれば、いろいろとやりたいことが出てくると思うのでまた大変になりますね(笑)。
──あとはFRQのゲーム化も実現して欲しいです。
日下:そこは今やるとネタバレになっちゃうので、物語が完結を迎えてからですね。新しいものだとLINEスタンプが出ているので、そちらを楽しんでいただければ有り難いです。
──いろんな展開ができますね。まだストーリーも序盤ですから、これからが楽しみです。
日下:実は完結の形はもう決まっているので、何とかやり切りたいです。
──いろいろな布石が散りばめられているので、これから他の展開がますます気になります。まだ出てきていないキャラクターもいるので、さらに話が広がりますね。
日下:ここからが分かれ目でもあると思うので、うまく描いていってちゃんとしたものを作りたいです。手を抜いてしまうと、そのしわ寄せはお客さんに来てしまいますから、そんなことにならないように頑張ります。
 
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Final Re:Quest ファイナルリクエスト②

著:日下一郎
協力:株式会社ヒューガ
出版社:講談社
発売予定:2015年11月9日(月)
価格:1,050円+税

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LIVE INFOライブ情報

『ファイナルリクエスト』第2巻 出版記念イベント
勇者タケルたちの集い 〜第2章〜
出演:日下一郎(漫画家)、まがりひろあき(漫画家)、小笠原(月刊少年シリウス編集部)
2015年11月30日(月)Asagaya/Loft A
OPEN 18:00/START 19:00
前売 1,500円/当日 1,800円(共に飲食代別)
*前売はe+にて発売中!!
 
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