Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー頭脳警察(Rooftop2015年5月号)

“無冠の帝王”の45年にわたる反逆の軌跡を凝縮したドキュメントDVDをめぐって

2015.05.01

 昨年末、上野にある小劇場「ストアハウス」で1週間近くにわたり敢行された頭脳警察&PANTAのライブは、「銃をとれ」、「ふざけるんじゃねえよ」、「マーラーズ・パーラー」、「マラッカ」といった自身の代表曲を惜しげもなく披露することで45年に及ぶキャリアを総括しつつ、"次の一頁"を提示する意欲的な試みだった。そんなプレミアム・ライブの模様をPANTAのスペシャル・インタビューを挟みながらダイジェストでまとめ上げたのが『歴史からとびだせ〜結成45周年記念ドキュメントDVD〜』と題された映像作品である。1975年の解散時のメンバーが39年ぶりに集結した頭脳警察、花田裕之と秋間経夫をゲストに迎えたUX-BAND、ソロの弾き語りという多彩な編成から浮き彫りになるのはPANTAの傑出したソングライティングの才であり、飽くなき創作意欲が彼の中で今なお迸っているのが本稿からも窺えるだろう。万物流転をモットーとする"無冠の帝王"に終着点はない。ただ通過点の連続があるだけだ。(interview:椎名宗之)

演劇の小劇場をステージに選んだ意図

──結成45周年の節目にソロ時代を含めたキャリアを総括するようなライブをやる構想は以前からあったんですか。
P:もう40年ほど前の話になるけど、花之木哲(PANTAのソロ楽曲に詞を提供していたこともある、元「UNHAPPYな私達」主宰)と一緒にやっていた『エキスキューズ・ユー』や『コルト '76』というロック・ミュージカルがあってね。そこから「三文役者」や「EXCUSE YOU」、「ガラスの都会」や「あやつり人形」といった曲が生まれたりした。それと、寺山修司さんの詩に曲を付けた「時代はサーカスの象にのって」を発表したり、寺山さんに捧げた『暗転』というアルバムを作った頭脳警察としては、舞台と音楽を融合させたライブをやりたい、舞台の中で曲を聴かせたいと最初は考えていたんだよ。それで上野にあるストアハウスという演劇の会場を使わせてもらうことにしたんだけど、キャストの問題とか諸事情があって、芝居は芝居で今後しっかりしたものをやろうということになった。
──だから花之木さんのバンド「三文役者」がライブ共演を果たして、DVDにも収録された「悪たれ小僧」では花之木さんがゲスト・ボーカルとして参加しているんですね。
P:うん。いろんな経緯があって、結果的には1週間にわたるイベントの中で45年間の音楽をダイジェスト的にお披露目することになったんだけどね。'75年に解散した時のメンバーによる演奏も入れたのは、舞台と音楽が密接につながっていた当時の空気を再現してみたい意向があったから。ストアハウスはもともと江古田にあって、そこは『Shall we ダンス?』の舞台にもなったダンス教室なんだよ。本来はそういう音楽をやる場所じゃないから音響の面でいろいろと問題があったけど、ドキュメントDVDとしてはとてもいい仕上がりになったんじゃないかな。ソロ、UX-BAND、頭脳警察2days、またソロと趣向が連日違うから、最初はDVD3枚組になるかなと思ったけど、上手いこと2枚組にまとまったしさ。俺のインタビューの部分は、自分でもよく喋るなぁと思うけど(笑)。
──ファンとしてはやはり、勝呂和夫さん(g)、石井正夫さん(b)というバンド解散時に在籍していたメンバーとの再演が俄然興味を引くところですけれども。
P:『悪たれ小僧』('74年11月)の頃だよね。「戦慄のプレリュード」はベースが悲露詩で、ドラムのTOSHI、ギターの俺の3人でビクターのでっかいスタジオの片隅に固まってレコーディングしたのを覚えてる(笑)。
──当時のメンバーと頭脳警察の曲を再現するのは、力の入り方も違うものなんですか。
P:実際にはそうでもなかったかな(笑)。ただ、'90年にTOSHIと15年ぶりに頭脳警察を再結成した時もそうだったんだけど、昔の仲間と数十年ぶりに会っても、感覚としてはつい先週も会ったばかりみたいな感じなんだよ。音を合わせるのも特に説明するまでもなく全部分かってくれてるし、そういうところはラクだったね。
──ドキュメントDVDとして客観的に見るとどうですか。
P:ちょっと粗い演奏だったかなと自分では思っていたんだけど、ちゃんと鑑賞に耐えるものになったんじゃないかな。やっぱり、TOSHIのプレイが抜群に格好いいね。いつもはパーカッションだから、ドラマーとしての佇まいが新鮮でさ。今回のDVDには入ってないけど、TOSHIのカウントで始まる曲に客が凄く感激してて、そういうのもレアだったしね。あいつもある程度の歳だからドラムは体力的にもキツかっただろうけど、あのプレイは凄いと思うよ。
──「前衛劇団“モーター・プール”」に絶大な影響を受けたという非常階段のJOJO広重さんの客演も素晴らしいですね。PANTAさんが当初目論んだ演劇と音楽のクロスオーバーを体現するような曲でもあり。
P:「前衛劇団“モーター・プール”」の合間に寸劇や舞踏を入れてみるのも面白いかもしれない。いつかやってみたいね。いっそのこと、“モーター・プール”っていう劇団を作ってみるのもいいだろうし。
──菊池琢己さん(g)がバンマスのUX-BANDによる“Solo Number Best Collection”はソリッドなアンサンブルが存分に楽しめるセクションで、HAL時代を含めた選曲の妙も相まって、個人的には一番見応えがありましたね。いきなりヘヴィな「429 STREET」で幕を開ける構成も粋だったし、秋間さんのパートでHALの定番曲をしっかり聴かせる意図も窺えました。
P:花田(裕之)と秋間(経夫)というゲスト・ギタリストが光るパートだね。花田のプレイは相変わらずいいし、リフ一発で醸し出す秋間の存在感も凄い。腕の立つミュージシャン同士の化学反応が生まれたライブだったと思う。
 

PANTA独自のJ-POPに対する眼差し

──演奏の合間に挟まれるインタビューで、花田さんのプレイに大いに刺激を受けたと仰っていましたね。
P:あのレスポール・ジュニアの音が凄くいいなと思ってね。昔はシングル・コイルのギブソン系のギターを持ってなかったし、頭脳警察の初代ギターだったグレコのレスポール・モデルはハムバッカーでさ。だから『P.I.S.S.』で花田と共演した時にギブソンの音が凄く新鮮だったんだよ。それで当時、神田商会でジュニア・タイプのギターを作ることになって悦に入ってたんだけど、材質をフルメイプルにしたら重くて重くて(笑)。思わず言っちゃったからね、「サブで使うのはメイプルトップにしてくれる?」って(笑)。
──(笑)色はどうしたんですか。
P:ポルシェのマーブルグレー。曇り空になると綺麗な白に、晴れの日には綺麗なグレーになるんだよ。ところがその色が神田商会にはなくて、見本としてマツダのカタログをいきなり持ってこられてさ(笑)。結局、ボディの塗装はちゃんとマーブルグレーにしてもらったんだけど、ギターって面積が小さいから、ちょっと色が濃くなっちゃったんだよ。だけど照明が当たると白く映えたりして、意外と自分の読み通りの発色になったんだよね。それが'90年に再結成した時の頭脳警察のメイン・ギター。みんな白だと思ってるけど、実はグレーなんだよ。
──そうだったんですね。今回のDVDにはボーナストラックとして、杏里さんに提供した「白いヨット」のセルフカバーが収録されていますよね。インタビューでも話していましたが、そういう提供楽曲を集めたアルバムを是非聴いてみたいですね。
P:「白いヨット」は自分でも大好きな曲なんだよ。昔、フライングドッグのプロデューサーだった平田国二郎に「誰かに曲を書く時は海をテーマにしよう」って言われたことがあってさ。そうすれば、いつか提供した曲を集めれば海をテーマにしたアルバムが作れるからね。だから石川セリには「ムーンライト・サーファー」、岩崎良美には「VACANCE」、桑江知子には「カヌーボーイ」や「ISLAND WOMAN」、杏里には「白いヨット」といった曲を提供したわけ。
──PANTAさんがアイドルに提供した楽曲はアイドル歌謡の範疇に埋もれさせておくにはもったいない、クオリティの高いものが多いですよね。今みたいにオーディエンスが一緒に踊れるようなリズム重視の曲ではなく、一貫して楽曲至上主義に徹していると言うか。
P:今のアイドルはダンスがメインだし、踊れる曲じゃなくちゃいけないという強迫観念みたいなものがあるけど、アイドルの曲は別に踊れなくてもいいだろうって昔から俺は思ってたんだよ。ちょっと振りがあるくらいでいいし、それより重要なのは楽曲だよね。アイドルの曲だってちゃんと聴けるのがいいしさ。そういうのもマイケル・ジャクソンの『Thriller』以降、MTVの隆盛で“見る音楽”が主流になってしまった弊害なのかもしれない。ただ皮肉だなと思うのが、ラジオを聴いていると三代目J Soul Brothersみたいなダンス・グループが今一番ちゃんと日本語の歌を唄ってるのが分かる。発音も含めてちゃんと唄ってるし、歌詞の内容もよく聴き取れるしね。英語っぽい発音で唄うロック・バンドやヒップホップの連中よりも真っ当に日本語で唄っているから驚くよ。そうやってつい分析してしまうのは性なんだろうけどね。
──なるほど。今回のDVDを見ると、解散時の顔ぶれで新たにアルバムを作るのも面白いんじゃないかと思ったんです。「頭脳警察 '75」みたいな感じで、TOSHIさんにドラムを叩いてもらって。
P:そういうのもできるだろうし、今はとにかく新しい曲をどんどん書きたいんだよ。もうあれだね、勝手に曲を書いちゃって、それを欲しがる人にバンバン配給しちゃおうかな?(笑)
──(笑)50年近いキャリアを積んでもなお創作意欲が盛んというのが如何にもPANTAさんらしいですね。
P:モチベーションは尽きないね。楽曲提供ということであれば、自分のキャラクターや頭脳警察のことを意識せずに自由に書けるじゃない? 普段なら絶対に書けない青春恋愛ものだって書けるし(笑)、その日の気分で何だって書けるよ。パソコンという最強のツールがある以上、どこにどんどん新曲を溜めていってもいいよね。Logic Pro 9やGarageBandみたいな音楽ソフトを使うのは本職に任せておいて、俺はギターとリズムを入れて、メロディと歌詞が分かりさえすればいい。そんなふうに曲をどんどん書きたいね。
──PANTAさんも今や曲作りはDTMがメインなんですか。
P:まだWindows 95、98の時代にオケを録り溜めていたんだけど、ハードディスクが飛んじゃってからは使ってない。ホントに素晴らしいオーケストラが出来ていたのに、跡形もなく消えちゃってさ。あれはもったいないことをしたなと思ってる。でもパソコンでアレンジを構築するのは凄く面白くて、「このヴァイオリンの音をもう少し下げたい」とか時間を忘れるほどハマってたんだけど、俺の仕事はそういうことじゃないなと考え直してね。あくまで詞と曲を書き上げることが自分の本分であって、アレンジは本職に任せればいいんだから。
 
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歴史からとびだせ
〜結成45周年記念ドキュメントDVD〜

テイチクエンタテインメント TEBN-72056〜57
定価:6,667円+税/2015年4月22日(水)発売

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【DISC-1】
01. オープニング
02. リハーサル1
03. 風の旅団
04. 彼女は革命家
05. J
06. PANTA スペシャル・インタビュー#01
07. 螢転〜そして第二景〜
08. つれなのふりや
09. PANTA スペシャル・インタビュー#02
10. 429 STREET
11. Geard
12. 夜と霧の中で
13. PANTA スペシャル・インタビュー#03
14. 反逆の軌跡
15. PANTA スペシャル・インタビュー#04
16. R☆E☆D
17. マーラーズ・パーラー
18. PANTA スペシャル・インタビュー#05
19. TAMBOURINE
20. P.I.S.S.
21. PANTA スペシャル・インタビュー#06
22. IDカード
23. つれなのふりや
24. ルイーズ
25. マラッカ
26. PANTA スペシャル・インタビュー#07
27. 人間もどき
28. 13号埋め立地から
29. PANTA スペシャル・インタビュー#08
30. 波紋の上の球体
31. PANTA スペシャル・インタビュー#09
《ボーナス・トラック1》
32. 七月のムスターファ
33. 時代はサーカスの象にのって

【DISC-2】
01. リハーサル2
02. 少年は南へ
03. スホーイの後に
04. 銃をとれ
05. PANTA スペシャル・インタビュー#10
06. 嵐が待っている
07. パラシュート革命
08. 時々吠えることがある
09. PANTA スペシャル・インタビュー#11
10. 歴史から飛びだせ
11. 前衛劇団“モーター・プール” 〜PANTA スペシャル・インタビュー#12 〜前衛劇団“モーター・プール”
12. それでも私は
13. PANTA スペシャル・インタビュー#13
14. ふざけるんじゃねえよ
15. 間違いだらけの歌
16. PANTA スペシャル・インタビュー#14
17. 風の旅団
18. People
19. PANTA スペシャル・インタビュー#15
20. 銃をとれ
21. サラブレット
22. PANTA スペシャル・インタビュー#16
23. 時代はサーカスの象にのって
24. 落ち葉のささやき
25. 真夜中のマリア〜転換のテーマ〜
26. 夜明けまで離さない
27. PANTA スペシャル・インタビュー#17
28. 万物流転
29. コミック雑誌なんか要らない
30. 悪たれ小僧
31. PANTA スペシャル・インタビュー#18
《ボーナス・トラック2》
32. 白いヨット
33. J〜エンディング

LIVE INFOライブ情報

交感ひろば@SPACE ZERO Part17
伝説のロッカーたちの祭典
〜スーパー・レジェンド・フェス 2015〜
2015年6月28日(日)全労済ホール/スペース・ゼロ
OPEN 16:30/START 17:00
出演:頭脳警察/外道/めんたんぴん/THE 卍(ROLLY、佐藤研二、高橋ロジャー和久)/三文役者
全席指定 前売6,000円/当日6,500円
*チケットぴあ(Pコード:260-648)、ローソンチケット(Lコード:75798)、e+(イープラス)、スペース・ゼロ チケットデスク、CNプレイガイド、アイノアでチケット発売中。
問い合わせ:アイノア(03-3561-8751/平日9:30〜18:30)、スペース・ゼロ(03-3375-8741/平日10:00〜18:00)
 
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