Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューSION(Rooftop2015年3月号)

何処に逃げ、何処に隠れたって、俺の空は此処にある

2015.03.02

 1985年9月1日に自主制作盤『新宿の片隅で』で鮮烈なデビューを果たしてから今年で30周年の節目を迎えるSION。通算25作目のオリジナル・アルバムとなる『俺の空は此処にある』は、THE MOGAMI、The Cat Scratch Combo(以下、CSC)といういつもながらの鉄壁の布陣と共に作り上げた、いつもながらに骨太で聴き応えのある会心作なのだが、本作はアコースティカルな音色のミディアム・ナンバーが大半を占めていることもあり、いい具合に力の抜けた寛いだ雰囲気が通底しているのが特徴と言えるだろう。
 乾いた心を潤す一服の清涼剤として、ここぞという時に気持ちを奮い立たせるカンフル剤として、SIONの歌は効く。歌以外に生きる糧を知らない男の歌に懸ける意志には一点の曇りもない。それはまるで澄み切った空のようで、広大で果てしない魅力がある。空には曇天の日や雨曝しの日もあるだろう。だがいつの日も太陽は僕らを照らし続ける。砂を噛む夜を臆せず、希望の朝が来るのを愚直に信じる男の歌は、いつだって太陽のように光り輝くのだ。(interview:椎名宗之)

好きな仲間たちとレコーディングできる幸せ

──プライベート録音の『Naked Tracks』の収録曲をMOGAMIやCSCのメンバーと磨き上げる手法がすっかり定着しましたね。
S:そうだね。ホントは『Naked Tracks』の曲じゃなく、全く新しい曲を入れたほうが喜ばれるのかもしれないけど、そうはいかんぞっていう(笑)。自分一人で録った曲を(藤井)一彦なり井上(富雄)なり(細海)魚なりに任せた時の楽しみがあるんだよね。
──前作『不揃いのステップ』の時は『Naked Tracks』をそのお三方に渡して、その中からアレンジできそうな曲を選んでもらったんですよね。
S:うん。不思議なことに3人とも曲が全然被らなくてね。今回はこちらから曲を決めて依頼してみた。この曲はちょいとジャジーでお洒落な感じでと井上にお願いしましょ、とか(笑)。井上には前からアルバムの中で1曲とか時折アレンジを頼んでたんだけど、3曲お願いした前回のアルバムでアレンジの趣向が掴めたので、「この曲は井上らしい感じでお願いしよう」みたいな発想があらかじめあった。まぁ、みんな何でもできるんだけどね。
──井上さんの本格的な店長(アレンジャーのこと)デビューは前作からでしたっけ?
S:それまでにも「通報されるくらいに」や「夏の終わり」とか、もっと前からもやってもらってたよ。
──今回の『俺の空は此処にある』はいい塩梅で力の抜けた、アコースティックな音色を基調としたオーガニックな風合いが強い作品ですよね。
S:確かにそんな曲が多いね。特に意図したことではなかったんだけど、上がってきた音はアコースティックな音色が多かった。
──グルーヴィーなオルガンが絶妙な隠し味の「唄えよ讃えよ」、気怠くブルージーな「jabujabu」、陽気なカントリー・スタイルの「けちってる陽だまり」、ピアノの優しい旋律が耳に残る「水色のクレヨン」、ハープとピアノとアコギのみというシンプルの極みをいく「いつでもどこでも会いたい」、軽快なリズムが心地好い「休みたい」など、割とゆったりとしたテンポの穏やかな表情を湛えた曲が多いと思うんですよ。
S:言われてみればそうだね。録ってる時はいつものような感じだったんだけど、今回はみんながそういう気分だったのかもしれない。
──それにしても、鍵盤楽器を巧みに使い分けて各楽曲の持ち味を引き出す魚さんの演奏力はやはり凄いですね。
S:魚とのやり取りは凄く面白い。彼が録った音を送ってきて、それに俺が歌を入れて送り返すんだけど、「お、こう来たか」といつも感心させられるから。あの力量は凄いよね。びっくりする。笑われるかもしれないけど、レコーディングは歌も同録だから録りはいつもドキドキするんだよ。最後に入れた「諦めを覚える前の子供みたいに」は井上のウッドベースと魚のフェンダーローズの演奏だけで特にドキドキしたけど、それがまた楽しい。彼らに限らず、好きな仲間と一緒にこうしてレコーディングができて幸せだなぁ…とブースの中で思う瞬間が何回もあるんだ。
──しっとりとした雰囲気の「諦めを覚える前の子供みたいに」は掛け値なしの名曲ですね。ベースと鍵盤だけのアレンジは井上さんのアイディアだったんですか。
S:あれは俺がリクエストした。ベースと鍵盤だけでも面白いかなと思って。そしたら井上がウッドベースとフェンダーローズでと。さすがだったね。
──年末恒例のアコースティック・ツアーは一昨年から一彦さん、魚さんと回るようになりましたが、そこでの経験が本作に反映された部分もありますか。
S:魚とのライブ回数が増えたのは大きいね。それまでは年に1回、MOGAMIでしか一緒に演奏することがなかったから。アコースティック・ライブでの魚も凄いよ。アコーディオンを弾きながら飛び回ってるんだから(笑)。
 

青い空と川の流れを欲することが多かった

──「いつでもどこでも会いたい」もドラムレスの曲だし、今回は池畑(潤二)さんの出番が若干控え気味なんですね。
S:そうだね。面白い話があってさ。池畑さんの録りが終わって、「もう『よいお年を』かもね。どうもありがとう」って見送った後にスタジオのiMacを見たら、オークションサイトに出てるチェーンソーが映ってて。一彦が「アニキ、これは誰が見てたんですかね?」って言うから、「そりゃ一人しかおらんやろう」って答えておいた(笑)。「チェーンソー 排気量40cc プロ仕様」とか書いてあって、でもあの人に武器はいらんやろ! って(笑)。
──さすが“鋼鉄男”ですね(笑)。ちなみに、池畑さんが店長を務めることはないんですか?
S:一度、「流星群」って曲でやってもらったことがある。どんなアレンジで来るんだろう? と思ってたら、イントロがカリンバでびっくりした(笑)。その頃はまだネット環境が整ってなくて、みんな音を入れたMDをバイク便で送ってくれてたんだけど、池畑さんだけは夜中の3時くらいに俺の家まで持ってきてくれた(笑)。「ごめんね、遅うなって」って。
──「ONBORO」や「人様」のように切れ味のあるギターが際立つアレンジは一彦さんの得意とするところですが、井上さんに求めるのは洗練されたニュアンスといったところでしょうか。
S:弱くなく、スッと入り込むような感じかな。
──「水色のクレヨン」はまさにそんな感じですね。子供の頃に「水色のクレヨンで水色のクレヨンの絵を描いた」という歌詞は実話なんですか。
S:うん。絵日記とは別だったか、1枚の絵を描かなきゃいけない夏休みの宿題があってね。普通に空や山を描けばいいのに、当たり前の景色すぎたのか見えんかった(笑)。それで水色のクレヨンで水色のクレヨンの絵を描いたことがあった。親は「この子、大丈夫かな?」ってちょっと心配になったかもしれないけど(笑)。
──“水色”という言葉は「jabujabu」の歌詞にも出てきますが、お好きな色なんでしょうか。
S:去年は特に、青い空と川の流れを欲することが多かったのかな。誰に急かされてるわけでもないんだけど、なんか追い詰められてるような気持ちになったり、明日のことなんて分からないのに、すべて分かったような気になって落ち込んだりすることがいつもより多かったのかな。そんな時には空や川がいいんだよ(笑)。
──「水色のクレヨン」の歌詞にある通り、「まるっと喜べない/なんだか底が抜けそう」な時期だったと。
S:せっかくの喜べる機会なのに、なんか素直に喜べない時がある。誰かに悪いような、バチが当たるような気がして。
──昔からそんな性分だったんですか。
S:ちっちゃい頃からそんな性格だったと思う。小学校に上がったくらいからかな。まだ言葉にも色にも形にも表現できない頃だったけど、なんという心細さなのかと感じる瞬間があってね。せっかくの晴れ渡った空に黒い雲が覆い被さると言うか、胸がギューって痛くて苦しくなるやつで。
──タイトルトラックの「俺の空は此処にある」にも「目より先にかすんだ心には 青い空と川の流れを」という歌詞がありますね。
S:やっぱりそういうのを求める時期だったんだろうね。もう子供じゃない、かと言ってまだ年寄りじゃない、微妙な年頃だからさ(笑)。この歳なりに考えることがいろいろとあるし、それでも自分を信じないとやってられない時もあるし。
──そんな歌詞とは裏腹に、サウンドは晴れ晴れとした青い空を連想させるような朗らかさがありますよね。
S:淡々とした感じもあってね。ギュッと詰まった感じじゃなく、ふわっと開けた感じのアレンジになったのは井上のお陰だね。
 
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俺の空は此処にある

初回限定盤【CD+DVD】TECI-1443/定価:4,630円+税
通常盤【CD】TECI-1444/定価:2,778円+税
2015年3月4日(水)発売

amazonで購入

【収録曲】
01. ONBORO
02. 唄えよ讃えよ
03. jabujabu
04. けちってる陽だまり
05. 水色のクレヨン
06. いつでもどこでも会いたい
07. 休みたい
08. 人様
09. 俺の空は此処にある
10. 諦めを覚える前の子供みたいに
【限定盤DVD収録曲】
2014年8月16日に行なわれた日比谷野外大音楽堂ライブより8曲収録(撮影監督:宮本敬文/編集監督:藤森圭太郎)。
《SION-YAON 2014 with THE MOGAMI(2014.8.16)》
01. バラックな日々
02. 休みたい
03. ウイスキーを1杯
04. 通報されるくらいに
05. どけ、終わりの足音なら
06. 新宿の片隅から
07. 長い間
08. 月が一番近づいた夜

LIVE INFOライブ情報

「SION-YAON 2015 with THE MOGAMI」
2015年6月14日(日)日比谷野外大音楽堂
出演:SION with THE MOGAMI(池畑潤二/井上富雄/細海 魚/藤井一彦)
OPEN 17:00/START 18:00
前売 6,480円(税込)/当日 7,020円(税込)
*学割:高校生までは当日学生証提出で1,500円返金
【プレイガイド】
先行発売:2015年2月27日〜3月6日
一般発売:2015年3月21日
◎チケットぴあ:0570-02-9999
◎ローソンチケット:0570-084-003
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