Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューbloodthirsty butchers(Rooftop2014年11月号)

まさかの完全未発表曲も収録!
ブッチャーズのオリジナル・アルバム未収録音源を厳選したコンピレーション盤が2枚同時発売!

2014.11.01

 今年もまた11月14日がやって来る。ブラッドサースティ・ブッチャーズを愛する人には今さら説明するまでもないが、彼らが1986年に札幌のキャンパス21で初めてライブを行なった記念日である。
 
 日本のロック史における屈指の名作『kocorono』を“完全盤”として再び世に問うたこと、バンドの赤裸々な現状に肉薄したドキュメンタリー映画『kocorono』の公開、結成25周年+1年を記念してオリジナル・アルバムを網羅したBOXセット『血に飢えた四半世紀』の発売と、晩年の吉村秀樹は自身の人生を総括していたかのようだと評する人もいる。「人は死んだらここから消えてどこへ行くんだろう」と唄われる「レクイエム」なる楽曲を収録したアルバム『youth(青春)』を生前に完成させていたという出来すぎた話まであるのだから、そう考えるのも無理はない。
 
 だが、僕はそんなふうには思えない。吉村は常に未来に向けた創作活動にしか興味のないバンドマンだったし、事実、石井岳龍による映画のプロジェクトの準備を死の直前まで進めていた。その映画とシンクロナイズした『youth(青春)』の発表はまだだいぶ先になるから、もう次の次のアルバムを作ろうと思っていると本人からも聞いた。
 そして今でもよく覚えているのは、『血に飢えた四半世紀』にオリジナル・アルバムの未収録曲をまとめたCDを入れたいというメーカーの提案に対し、吉村がNGを出したことだ。その理由は、「そこまで完全なBOXにしちゃったら、まるで俺が死んじゃうみたいじゃないか」ということだった。リスナー思いの人ではあったが、必要以上に親切なことはやらないという吉村独自の美学があったのだろう。
 
 けれどもご承知の通り、吉村はある日突然、シャボン玉のようにパチンとはじけてどこかへ消えてしまった。
 
 あれから『youth(青春)』が予定よりも早く陽の目を見ることになり、ブッチャーズを敬愛してやまないバンド/ミュージシャンによる4枚にも及ぶトリビュート・アルバムが発売されるなど、今またブッチャーズに対する再評価の気運が高まっているなか、『血に飢えた四半世紀』、『youth(青春)』に続き、3年連続で今年も11月14日という記念日にリリースされる必携のアイテムがある。それが『血に飢えた non-album songs』≪Independent Recordings≫、同≪Universal Recordings≫と題された2枚のコンピレーション盤だ。オリジナル作品には未収録だったシングル盤や各種コンピレーション盤収録曲、別テイク、未発表などの音源を可能な限り集めたものである。ブッチャーズの灯を絶やすなというのがメンバーを始めマネージメントやメーカーの暗黙の総意であるし、次世代の新たなリスナーにブッチャーズの音楽を受け継ぐ意味でも歓迎すべき作品と言えるだろう。それに、今なら吉村本人もこうしたアイテムを納得するのではないか。と言うより、僕にはこのリリースが遠い空から吉村が指示しているもののように思える。ブッチャーズのことを、俺のことを忘れんなよ! と吉村が言いたげな気がしてならないのだ。
 
 ≪Independent Recordings≫は、90年代初期のインディーズ音源を中心に構成。最新にして細心のマスタリングが施されているからこそ、凶暴すぎる轟音と音圧、粒子感のあるノイズがさらに際立っている。『i'm standing nowhere』に慣れ親しんだ耳には「KARASU」や「ROOM」のシングル・テイクの重厚感と先鋭さが新鮮であり、「Mother Fucker」や「MODULATOR」などは蒼の時代特有のステゴロ感が眩しい。複雑な構成ながら巧みなアンサンブルを聴かせる「I HATE YOU」には息を呑むスリリングさがあるし、初期の名曲「水」や「プールサイド」の源流とも言うべき「untitled」には吉村のメロディ・メーカーとしての早熟な才能の片鱗を感じずにはいられない。また、まさかの完全未発表曲「ヨモヤマ」は『ギタリストを殺さないで』の頃のブッチャーズらしさがよく出た曲で、思わずほくそ笑んでしまう。
 
 一方、≪Universal Recordings≫にはスリーピース編成としての創造性が頂点に達したユニバーサル〜EMI時代の音源が多数収録されている。ライブの終盤によく披露されていた人気曲「時は終わる」、正調版「no future」、イースタンユースの『極東最前線』のために書き下ろした「さよなら文鳥」のリメイクなど、ブッチャーズを語る上で不可欠な名曲が目白押しだ。また、EL-MALOや浅野忠信とコラボレートしたHMV、タワーレコード限定のシングル曲、自主企画『official bootleg』でカセットテープ限定で販売された音源が復刻されたのは個人的にも嬉しい。とりわけ、54-71との“backstreet boyz”名義で発表された「Hi?」はカセットテープだけに埋もれさせておくにはもったいない名曲だったので、こうして日常的に聴けるようになったのは実に喜ばしい。
 
 この2枚でオリジナル作品の未収録曲を網羅できているわけではないし、権利関係の都合であえなく収録を見合わせた曲は多々ある。あの曲もこの曲も入っていないじゃないかと熱心なファンほど重箱の隅をつつきたくなるだろうが、こうしたアイテムが大切な記念日に発表されること自体を素直に喜びたい。ある程度のセールスが見込めれば今後新たな秘蔵アイテムが企画されることもあるかもしれないし、これからブッチャーズという大きな頂を登り詰めようとしている人にとって、この『血に飢えた non-album songs』は格好のサブテキストになり得る。
 
 この先、恐らくどんどん伝説になっていくであろう吉村秀樹を、ブッチャーズを、このまま神格化してはならない。ブッチャーズの音楽は日常的に僕らの生活に寄り添うものであり、抜き差しならぬ日々の生活とぎこちなくも格闘する術としてあのささくれ立った轟音とぶっきらぼうな歌があったはずだ。ブッチャーズを伝説などという狭い檻のなかに閉じ込めても意味がない。音楽は聴かれなければ意味がない。かき鳴らされる魔法のコードと真っ直ぐすぎるあの歌声は、あれから1年半が経ってもなお僕の“kocorono”糧である。(text:椎名宗之)
 
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血に飢えた non-album songs
≪Independent Recordings≫

2014年11月14日(金)発売
キングレコード株式会社
KICS-3124
定価:2,500円+税

amazonで購入

【収録曲】
01. KARASU(1991年発表『KARASU』EPより)
02. Mother Fucker(1991年発表『KARASU』EPより)
03. 水(1991年発表『KARASU』EPより)
04. korekaradoushiyou?(1992年発表コンピ『TVVA』より)
05. SHE'S BREAK(1992年発表コンピ『RED ZONE DISC』より)
06. MODULATOR(1992年発表コンピ『RED ZONE DISC』より)
07. ROOM(1993年発表シングル『ROOM』より)
08. I HATE YOU(1993年発表シングル『ROOM』より)
09. alligator(1994年発表スプリット『ROCKET FROM THE CRYPT / bloodthirsty butchers』より)
10. SILENCER(1994年発表スプリット『bloodthirsty butchers & COPASS GRINDERZ』より)
11. I HATE YOU(1994年発表コンピ『Periscope Another Yoyo Compilation』より)
12. AWAY FROM ME(1995年発表コンピ『SANTA V.A.』より)
13. untitled(1996年発表 米国編集盤『bloodthirsty butchers』より)
14. ヨモヤマ(2007年レコーディング未発表曲)
15. walk on by(2010年発表特典CDより)

血に飢えた non-album songs
≪Universal Recordings≫

2014年11月14日(金)発売
ユニバーサル ミュージック合同会社
UPCY-6941
定価:2,500円

amazonで購入

【収録曲】
01. DRIWING(w/ EL-MALO)(1999年発表『DRIWING』HMV Limited Versionより)
02. ファウスト(w/ 浅野忠信)(1999年発表『ファウスト』TOWER RECORDS Limited Versionより)
03. 「△」サンカク(1999年発表シングル『「△」サンカク』より)
04. ピンチ(1999年発表シングル『「△」サンカク』より)
05. 時は終わる(1999年発表シングル『「△」サンカク』より)
06. 名も知らぬ星(w/ 浅野忠信)(1999年発表『「△」サンカク+2』より)
07. nagisanite(2001年発表シングル『nagisanite』より)
08. no future(2001年発表シングル『nagisanite』より)
09. happy end(2001年発表シングル『happy end』より)
10. 地獄のロッカー(2001年発表シングル『happy end』より)
11. 言葉に鳴らない〜さよなら文鳥(2001年発表シングル『happy end』より)
12. dorama(2002年発表『official bootleg vol1 btb15 4/26カセット』より)
13. サラバ世界君主(2002年発表『official bootleg vol1 btb15 4/26カセット』より)
14. Hi?(backstreet boyz)(2002年発表『official bootleg vol.002 1〜5 btb×54-71 カセット』より)

ブッチャーズ初の公式読本
『bloodthirsty butchers/Rooftop Anthology 1999〜2014』

Rooftop編集部・編
定価:2,500円+税
B5判並製/272頁
発行:ロフトブックス
全国の書店、Amazon等で絶賛発売中

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