Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー音速ライン(Rooftop2013年10月号)

「世代の橋渡しがしたかった」
自身のルーツを詰め込んだ意欲作『from shoegaze to nowhere』リリース

2013.10.01

 音速ラインが2012年2月にリリースした『Alternative』以来、約1年8ヶ月ぶりとなるオリジナルアルバム『from shoegaze to nowhere』を10月9日にリリースする。タイトルを見て、「音速ラインがシューゲイズ!」という驚きがあったが、インタビュー中に藤井敬之が何度も「自分たちが影響を受けた素晴らしい音楽を下の世代に伝えていく時なんじゃないか」と言っていた通り、今作は作詞・作曲を手掛ける藤井がルーツや影響を受けた音楽を"わかりやすく"提示したアルバムで、アルバムタイトルにもなっているシューゲイザーもそのひとつなのだそう。曲を聴いてルーツがわかった人にはニヤリとして欲しいし、若い世代の人はさかのぼって上の世代の音楽を聴いて欲しいという、音速ラインの音楽愛がたっぷりと詰まった全12曲。音速ラインのルーツを探る旅のはじまり。(interview:やまだともこ/Rooftop編集部)

ルーツを詰め込んだ集大成的作品

── ニューアルバム『from shoegaze to nowhere』は、1年8ヶ月振りの作品だそうですが、アコースティックミニアルバム『Grateful A.C.』やタワーレコード限定シングル『ありがとね』のリリースもありましたし、ライブも精力的にされてましたし、アルバムのリリースが1年以上なかったというのは意外な感じもありますね。

大久保剛(ベース):昨年いろいろやってたからね。アコースティックのツアーを2本やってますし。

藤井敬之(ボーカル・ギター):ゆっくり制作させてもらったなという感じはするけど、個人的にもバンド的にも1年8ヶ月あいたという感じはないですね。でも震災があって時間の流れ方は変わりましたね。ガムシャラに動くしかねぇっていう時期があって、最近ようやく時間の流れ方が戻ってきたかなというのがあるんです。だから、1年8ヶ月ぶりって言われてもそんなに実感がないんですよね。作り込んだ感はすごくあるけど。

大久保:昨年から録りが始まっていたから、制作に初めてこんなに長い時間をかけさせてもらったんですよ。

── 『Alternative』をリリースしてすぐ取り掛かったんですか?

大久保:リリースと同じぐらいのタイミングだと思います。

藤井:一番最初に取り掛かったのは『Lost』(M-5)だっけ?

大久保:そうだね。

── 『Lost』はストリングスを使用し、別れてしまった人のことを思い出すような切ない曲ですね。歌詞を読むと震災がひとつのきっかけになっているような印象を受けましたが。

藤井:震災と言うよりは、年を取ったからなのかもしれないけれど、誰にでも忘れられない人っているわけで、昔の知り合いが何してるかなって思った時があったんだよね。そこから歌詞が出来ていって。

── 『Lost』が最初に出来て、そこからアルバムを作り始めていったんですか?

藤井:でも『Lost』が引っぱっていったアルバムというよりは、『Alternative』が感情を爆発させたアルバムで、その次の『Grateful A.C.』が震災後の自分のモヤモヤ感を出し切った作品だったんです。それで、これから音楽で何をやっていきたいかを考えた時に楽しいものをやりたいと思って、どんなテーマの曲でも聴いた後にスカッとするというか、ライブで盛り上がって楽しい思いのまま帰りたいという部分が軸になったんです。

── バラエティに富んだ曲がたくさん入っていますし。

藤井:今回いろんなバンドの影響を受けて来ましたというのを素直に出してたんですよ。

── その中のひとつにシューゲイザーがあるんですね。藤井さんがシューゲイザー好きだというのは意外でした。

藤井:でしょ? 俺のことを「日本のバンドしか聴いてないんじゃね?」って思ってる人がいっぱいいると思うんです。マイブラ(My Bloody Valentine)とかそういう音楽に影響を受けているということはリスナーに届いてないというのを感じていて。

── なので、アルバムタイトルが『from shoegaze to nowhere』というのも驚いたんです。

藤井:最初、アルバムタイトルは『日常と花』にしようと思ったんですけど、それじゃあ面白くねぇなって。

── 『日常と花』はしっくり来ますね。

藤井:そうそう。でも、そこを変えたかったんです。英語が並んでる感じ、かつ、自分らのことを説明出来るタイトルにしよう、しかも伝わってないところをと考えて。

 

ルーツを詰め込んだ集大成的作品

── でもこのタイトルを見た人は「音速ラインがシューゲイズって!」と思うでしょうね。

藤井:「この人! へぇ!」ってところを出したかったんです。俺も昔はかっこつけてる時期があったんですよ。意外かもしれないけれど、音速ラインのインディーズの作品はボーカルを前面に出してないんです。

大久保:ロフトのレーベルから出していた『青い世界』(2004年10月リリース)ですね。

藤井:この作品を作る時に、大久保と一番大きいケンカをしたんです。俺はノイズの海の中にかすかにボーカルが聴こえる良いメロディーの音楽をやりたかったんだけど、大久保に「藤井さんボーカル聴こえないよ」って言われて、「ボーカルも楽器の一部だからいいだろ」って結局俺が押し通したんだけど、その後有線で流れているのを聴いたらボーカルが一切聴こえなくて(笑)。大久保の言うことを聞いておけば良かったっていうのがボーカルを上げるきっかけ。それと、もともと俺はライブが苦手だったんだけど、ライブ嫌いの宅録好きを大久保は外に連れ出してくれて、ライブをやっていくうちにお客さんに伝わらないと意味がないと思って歌詞もどんどん変わっていったし、ボーカルを上げないと伝わらないっていうのもわかったし、そういう経緯があって今があるんです。変化した一番の理由は、俺らとリスナーが音楽を聴いて良い気分になりたいということで。でも、いろいろな経緯があって今のようなスタイルになって、影響を受けたバンドってたくさんいるし、素直に影響を受けたバンドの香りをみんなが感じ取れるような曲にした集大成が今回のアルバムだと思う。

── だから『Paint[]』(M-3)の音はこれまでに比べて珍しいと感じるザラザラした手触りがあったり、『Bye Bye Blackbird』(M-10)ではホーンを用いたりしているんですね。

藤井:ホーンは渋谷系を意識してますね。あの時代ってメロディーもアレンジもすごく良いんだけど、それを今の若者は知らないと思うから、思いっきり渋谷系の雰囲気を出したんです。

── 90年代とかの音楽シーンってジャンル関係なく音楽が溢れていたと思っていて、時代は回るとはよく言いますが、渋谷系のシーンって私が知らないだけかもしれませんが、そこまで回ってきていないような気がします。

藤井:でも、そうだと思いますよ。それで、今このジャンルをやる人がいても良いと思って、俺は当時の人を憑依させてこの曲を演奏しました。

── どなたが憑依したんですか?

藤井:クージー・クワトロさんを憑依させて、ホーンのセクションは俺が鍵盤を弾いてます。

── 鍵盤なんですね。

藤井:当時の音楽に絶対に入りそうなホーンを入れたくて、エンジニアさんに相談して。それが当時聴いていた人にも伝われば良いと思うし、若い子が聴いた時に面白いと思ってくれたら嬉しいし。そういう橋渡しの世代なんじゃないかと思うんです。YouTubeとかで聴けるとしても、俺らの世代がこんなに素晴らしい音楽があるということを伝えていかないと若い子たちは知らないままになってしまうし、今はそれを伝える時期なんじゃないかなというのはありますね。影響を受けてきた上の世代のバンドも大事にしたいし、俺らのフィルターを通して若者に伝えたい。思ったのが遅いのかもしれないけれど。

── どうしてそう思うようになったんですか?

藤井:打ち上げで若いバンドと一緒になった時に、「学生時代に音速ラインをコピーしてました」とか「好きだったんです」って言ってもらうんですけど、それをいろんなところで言えよと思ったんです。

── 広めてくれよ、と。

藤井:でも振り返ってみると、自分も上の世代で好きだったバンドのことって言ってなかったんですよね。じゃあまずは自分が言わないとって。好きなものは好きだし、影響受けたところはいっぱいあるわけで、それは全部繋いでいかないともったいないということに今さらながら気付いたというか。

── 他にどんな音楽に影響を受けていたんですか?

藤井:フリッパーズギター、スパイラルライフ、プレイグス、ヴィーナス・ペーター、ベルベットクラッシュとか、もちろんもっといるんだけど、洋楽邦楽問わず。今回のアルバムはそういった俺が好きなものがいっぱい詰まってます。時間が経ってあまり聴かなくなってるバンドもいるけれど、たまに聴くと気分がその当時に戻れたりするから。「いろんな人に影響を受けたということを隠したがる人が多いのに、なんで言えるの?」って言われることもあるけれど、良いものは良いし、若い人たちにも俺らの上の世代のバンドも聴いて欲しいと思うんだよね。

── それが今のタイミングだったんですか?

藤井:ここで来たなと思います。

──今までも好きなものを混ぜていたとは思いますが。

藤井:これまでも好きなものしか詰めてこなかったけれど、ここのイントロを聴いたらあのバンドが浮かぶというのを意識的にやったのは初めてですね。それに俺らが何をやろうが音速ラインになるという自信はあって、俺らのフィルターを通して上の世代の素晴らしい音楽が聴き継がれるのが一番だし、この音はどのバンドの影響なのかなって探ってさかのぼって聴いてくれたら、すごく嬉しいですよね。

 

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from shoegaze to nowhere

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1.G.B.V
2.ありがとね(album edit)
3.Paint[]
4.変身の術
5.Lost
6.under the sun
7.傘になってよ
8.東京
9.ゆうれい
10.Bye Bye Blackbird
11.Beer can
12.彼女といえば

LIVE INFOライブ情報

GOING UNDER GROUND emotional song sesson
10月5日(土)青森QUARTER
10月6日(日)秋田Club SWINDLE

TOUR K-ROCK 2013
10月19日(土)umeda AKASO
10月24日(木)名古屋CLUB QUATTRO
10月26日(土)郡山Hip Shot Japan
11月2日(土)新木場STUDIO COAST

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