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INTERVIEW

トップインタビューよしむらひらく

希望と苦悩。8年の末に辿り着いた初の公式音源「春」で泣け

2011.05.24

よしむらひらく、23歳。これまでに100曲以上の楽曲を様々なスタイルで発表し続け、東京のインディーズシーンの中において着実に支持を築いてきたシンガーソングライターである。この度Song-CRUXよりリリースされた1st Single「春」は、"待望"としか表現の仕様が無いほどの道のりの末に辿り着いた集大成的な1曲だ。これだけでは全貌はまだまだ計り知れないが、彼の存在を知らしめるには十分過ぎるほどの説得力があり、7月に予定しているアルバムへの大きな足掛かりになる事だろう。音楽活動を始めてからずっと繰り返された、希望と苦悩の8年間。その軌跡、音楽観、そして「春」について大いに語ってもらった。この男、ひと筋縄ではいかない。(interview:シャンコウ)

ライブハウスシーンって言われるコミュニティに対する劣等感

──遂に初の全国流通盤となる1stシングル「春」がリリースされますが、率直にどんな気持ちですか?

よしむらひらく:まぁ、本当に最初に出てくる言葉としては、ようやくだなって。長かったですね。リリースの話は10代の頃からちょくちょくもらっていて、でも、どれも上手くいかなくて。今回、ようやく始まったなってところです。

──音楽活動を始めてから8年ですもんね。

8年というのは、高校の軽音部に入ってから8年って事だから、活動歴が8年っていう気持ちでは無いですけど。高校を卒業して、大学に一応入って…結局3年で辞めたんだけど、それから始めたって気持ちが強いかな。ライブハウスでやり始めたのもその頃だし。だから、本格的には5年ぐらいって俺は捉えているんだけど。

──なるほど。では、これまでの経緯を少し聞かせて下さい。高校生の時から音源を作っていたという事ですが、初めてオリジナル曲を作ったのはいつ頃ですか?

曲を初めて作ったのは高校一年の夏ぐらいですね。一歳上の先輩から当時流行っていた音楽を色々と教えてもらっていて、その先輩がオリジナル曲も作っていたりして。それに憧れて始めたような感じですね。

──最初からボーカリストとして音楽をしていたのでしょうか?

高校に入った時は軽音部でギターを弾いていて、最初の春ぐらいに一緒に組んでたバンドのメンバーにカラオケへ連れて行かれて。高校に入るまではカラオケでも歌った事が無かったんだけど。そしたら、ちょっとボーカルをやってみようよって言われて。で、その直ぐ後には曲を作り始めてたかな。

──それはその軽音部バンド用に?

あまりバンドではやって無かったかもしれないですね。コピーばかりだった気が。あまりハッキリ覚えてないけど。自分でMTRでCD-Rを焼いて友達に配るぐらいの事はしてたけど、オリジナルをライブでやる機会はあまり無かったかな。

──コピーではあるけどバンドを組んでいながら、オリジナルをシンガー・ソングライターとして作っていたのは何故でしょう?

単純に、人前で大々的に「これ俺の曲です」って歌う自信が無かったんだと思う。それが一番大きいかな。

──とは言え、CD-Rを焼いて友達には配っていたんですよね?

いや、軽音部っていうすごく閉鎖されたコミュニティの中でやってた事だから、そんなに反応みたいなのは無かったし。仲の良い友達とかは褒めてくれてたけど。

──ライブハウスにはいつから?

よしむらひらくの名前で初めてライブハウスでライブをやったのは高校三年生の夏ぐらいですかね。その頃ちょくちょく関わっていた某レコード会社の方が新宿MARZを紹介してくれて。歌ったのは2曲だけなんですけど、MARZの内輪のパーティーみたいな感じで。いきなりそんな場所に放り込まれてもさ、全然良い感じでパフォーマンスが出来る訳も無くて。新宿のあの辺り行くのは初めてだったから、帰り道で一人でギター持ちながら道に迷って、悲惨な気持ちでしたね。音楽辞めようかと思ったもん(笑)。でも、その頃はしょっちゅう音楽を辞めようと思ってた。

──それでも何とか今まで辞めずに来られたと…

最初は紹介をしてもらったんだけど、結局ライブハウスの人と直接コンタクトを取るようになってから、「俺の音楽ってもしかしたら良いのかもしれない」って思えるようになったり。高三の後半ぐらいに送ったデモテープが、くるりの佐藤さんがやってる「NOISE McCARTNEY」のWEB連載で紹介されたり。そういう事もあって、大学なんて行かないで音楽だけで食ってくんだってすげー短絡的に考えてたけど。結果から見てみれば5年掛かった訳ですよね。

──高校生で「NOISE McCARTNEY」で紹介されたりしたら、勘違いはしちゃいますよね。ひらくさんの活動で特徴的だなって思った事が一つありまして。活動初期から自主企画を頻繁に開催してますよね。シンガー・ソングライターがバンドをたくさん呼んで企画をする事ってあまり無いような気がするのですが、どんな思いがあったのですか?

ああ、あんまり考えた事が無かったな…。でも、バンドマンたちによるライブハウスシーンって言われるコミュニティに対する劣等感みたいなものがあったと思うんですよね。やっぱり、俺自身がそういうバンドの音楽を聴くのが好きで、憧れもあって、でも自分がその仲間に入れないし、全然ロックじゃないっていう。そういう仲間に入れてもらえない感じが寂しくて自分でイベントを組んでたんじゃないかな。

──ただ、仲間には入れない感はありつつも、そういうバンド達からの支持は確かにありましたよね?

俺って輪の中に入って行くというよりは、輪の中にいるバンドのそれぞれ一人一人と関わっていく感じがあって。だから、シーン全体から支持されるというよりは、その一人一人仲の良い人が色んな所にいるって感じだったかな。今でもそうだし。それは、Far Franceとかとの高校の頃からの繋がりが大きかったと思う。Far Franceは先にどんどんリリースもして、友達が増えていって、彼らにくっついて俺自身の友達も増えて行ったってのもあるし。ただ、何かどっかしらで、ここは俺の居場所じゃないなって思ってたんじゃないかな。

──居場所は未だに分からないですよね?

そうですね。売れるしかねーって感じです。

言葉で説明出来ちゃったら音楽やる意味無いでしょ

──高校生で初めて音源を作って、以降もCD-R作品を量産されてましたよね。アルバム三部作、ライブ盤、弾き語りなどなど。10作品以上という事ですが。

何でだろうね(笑)。分かんないや。ちゃんと後まで残った初めての音源は高校を卒業する春ですかね。進学校だったから友達が受験で皆がわーわーやってる中、曲を作って録音して、で、三月の卒業前に完成させたって感じだったな。

──その間、何度かレコード会社からのリリースの話はあったとは思うのですが、そこに至らなかったのはどうしでしょうか?

はい、ありましたね。全部逃げ出したけど。自分自身が未熟だなっていうのもあったし、その人と上手くやれないなってのもあったし。単純に自分自身の音楽に対して迷いがあったのかな。すごく自信が無かった、っていうのが一番簡単な言い方なのかな。ずっとグルグルグルグルしてた。五年間。一貫して迷ってた。今は、ようやくリリースって事で、それだけで安心してるかな。なんの流通も無しにこのまま音楽を辞めて行くのかなって思ってたけど、それだけは避けられたなって。あと、今はすごく自信に満ちあふれてる。

──自信を得たきっかけはなんだったんでしょうか?

実際は、いつも少しずつ前進はしてたんだけど…本当にそれは少しずつで。でも、今回リリースするって発表した時に、知ってる人達からも、知らない人達からも、すごい反応はあって。それでもう、本当に一気に気持ちがガラッと変わったかな。全然違う。今までと。

──となると、かなり最近の事ですよね。サポートメンバーも何度か変わってきてますが、そこに対してのこだわり、今のメンバーに落ち着いていたのはどんな点からなのでしょうか?

一人一人との出会いがあって、今のメンバーの骨が集まったのがだいたい2009年で。その年の夏に最初にレコーディングしたCD-Rがすごく良いものが出来て、好評だったし。何だろうな…今まで色々なバンド編成をやって来て、どれもこれもすごい素敵だったんだけど、半年ぐらいやると自分とバンドの間に違和感が出てきちゃうっていうのが、10代ぐらいの頃からずっとあって。子供が出来て辞めるとか、メンバーの都合とかもあったり。でも今はすごく安定してるかな。皆音楽がメインの人達。今までサポートしてくれた人達は、仕事があったり、大学に行ってたり、って中で一緒に間を縫ってやってくれていたんだけど、今のメンバーの人達は音楽で生きて行くって気持ちの中でやってる人だけだから、それが大きいのかな。うん。メンバーにはすごく助けられてますね。

──やはりバンドという編成にはこだわりたい?

そうですね、単純にバンドものが好きだから。シンガー・ソングライターで好きな人って、逆にあまりパッと思い浮かばないんですよね。好きなバンドは直ぐに出てくるけど。

──個人的にも考えている事なのですが、バンドと違ってシンガー・ソングライターは自分の音楽を人に紹介し辛いものだなと思っていて。ライブやパフォーマンスが云々とか、ジャンルを組み合わせて伝えるとか、なかなか出来ないですよね。ひらくさん自身で自己分析するとどんなシンガー・ソングライターだと思いますか?

ああ、結構そういう話にはなりますね。今までは面倒臭くなって説明から逃げる時にいつも使ってたのが「言葉で説明出来ちゃったら音楽やる意味無いでしょ」みたいな。トンチみたいな話なんだけど。でも、実際によく考えてみても本当にその通りだなって思っていて。何て言うのかな、精神性一発ですかね。スタイルとか無いし。だから、「俺だよ」としか言いようが無い。

──その“精神性”とは?

それもやっぱりすごく複雑ですね。人間には色んな感情が同時に存在してて、それを限定して表現するんじゃなくて、寂しいも、楽しいも、全部一緒に常にあるんだよって事を言いたいのかな。だから、音像もその時々で違うというよりは、どの曲をやっても自分の音になる気がする。それはやっぱり、自分の中で存在している感情のバランスっていうものが揺れはするんだけど、でも、何だろうな…こうだって決める事は無い。だから、こういう質問された時にも、それはこうなんですって言葉でハッキリと説明出来るものでは無いんだよな、やっぱり。だから、正に今おっしゃったシンガー・ソングライターとしての音楽の説明の難しさっていうのはモロにそうですね。それとは、ずっと付き合ってきてますね。なんか、そういうのは顔を見ればだいたい分かるんじゃないかなって俺は思うんだけどな。だから、聞いて来られると、空気読めじゃないけど、こんな感じだよって言ってるないつも。ちょっと暴力的ではあるけど。

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1st single「春」

[発売日] 2011.5.11(水)
[収録曲] 1.春
[料金] 200円(税込み)
[品番] RTSC-020
[レーベル] Song-CRUX

TOWER RECORDSにて販売

1st mini album『はじめなかおわり』2011.7.6(水)発売(※詳細後日発表)

LIVE INFOライブ情報

2011.7.6(水)@下北沢SHELTER
"よしむらひらく 1st mini album「はじめなかおわり」発売記念イベント"

2011.5.28(土)@愛知 幡豆郡吉良町三河湾リゾートリンクス海岸特設会場"Rock on the Rock 2011"
2011.5.31(火)@代官山 晴れたら空に豆まいて
2011.6.5(日)@渋谷O-Nest
2011.6.19(日)@吉祥寺Planet K

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