Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューamazarashi(2011年3月号)

インタビューが遂に実現!!
混沌とした現代社会への期待と不安を歌うその深意とは

2011.02.25

 2010年11月に『ワンルーム叙事詩』をリリースしたamazarashiが、早くも2011年第1弾EPとなる『アノミー』を発表する。1曲目の『アノミー』から、こんなに短期間で制作したと思えないほどの楽曲で溢れていた。彼らならではの、寓話性を帯びながらも現代社会を風刺するという視点で綴られた歌詞は一番の魅力で、感情を叩き付けるようなものもあれば、過去や現在に抗いながらも未来を見据えて必死に生きていく様が表現されたものもあり、聴く者の心を激しく揺さぶるはずだ。また、歌詞の世界を想像していく上で必要なサウンドも、これまでの彼らにはなかったアレンジが増え、今後がさらに楽しみになる1枚となった。
 Rooftopでは、2010年2月にリリースされた『0.6』の時から書き原稿で彼らを紹介しており、『ワンルーム叙事詩』リリースの際はご本人に撮影頂いた写真を掲載したが、今回遂にメールでのインタビューが実現した。歌詞以外の言葉を聞けるのは、この作品が初めてになる。これだけの作品を作り上げるamazarashiの中心人物・秋田ひろむに迫った。(interview:やまだともこ)

自分を奮い立たせる為に曲を書く

AmzFlyANoTM.jpg── インタビューは今作が初めてになりますが、ご自分の作った楽曲について問われるというのはいかがですか?
「質問にもよりますが、自分の本心を伝えるのは怖い事だと思います。でも説明するのは嫌いじゃないです。」
── まず、どうして音楽を始めようと思ったのか教えてください。
「小学六年の時に、姉が聴いていたTM NETWORKに憧れてキーボードを買ったのがきっかけです。姉自身もギターをやっていて、父もフォークギターを持っていたので、自然に始めたのだと思います。」
── バンドを始めるきっかけになった方はいらっしゃいますか?
「中学生の時ブルーハーツのコピーバンドを組んでいました。特に真島昌利の書く詩が好きで、ソロ作品含め今でも大好きです。」
── では、今作について伺います。タイトル曲の『アノミー』ですが、『アノミー』(anomie)とは社会的規範が弛緩または崩壊したときに生じる混沌状態を意味し、今の日本にも当てはまる言葉だと思いましたが、この曲は現代社会に警鐘を鳴らすという意味はあるのでしょうか?
「普段ニュース等を見ていて感じる不安や疑問を歌った歌です。特に誰に向けてのメッセージということではありません。自分なりに、その不安感の底にあるのは何かを探っている歌だと思います。」
── amazarashiの楽曲には、希望と絶望、期待と不安が混在しているように見受けられましたが、秋田さん自身もそういった感情と日々葛藤しているんですか?
「はい。自分の中に矛盾した気持は常にあります。気を緩めると全部諦めてしまいそうなので、自分を奮い立たせる為に歌を書いている気がします。」
── 歌詞を書く際に本を読んだり、映画を見たり、実際起こっている事件などから断片が浮かぶことはありますか?
「あります。今作の『アノミー』は寺山修司の『アダムとイブ、私の犯罪学』を読んだのがきっかけです。この話が現代を舞台にしたらどうなるか、というのが始まりでした。『ピアノ泥棒』はオランダで実際にあった事件のニュースをネットで見たのがきっかけです。それに妄想が加わって、僕の感情が加わり歌になりました。“どうせ野垂れ死ぬだけの、くそったれの人生。それならば〜”というフレーズが僕の気持にぴったりだったので、歌になったのだと思います。」
── ここ最近は、どんな本または映画をご覧になりましたか?
「DVDで『攻殻機動隊』シリーズ、『グラン・トリノ』『第9地区』。本だと谷川俊太郎の詩集です。」

鳥肌が立つような歌を作りたい

GirlSideFace.jpg── 以前から音のダイナミズム、そして秋田さんの歌声はamazarashiの魅力のひとつであり、想像力を増幅させます。楽曲や歌詞を書く時に気にしている点がありましたら教えてください。
「歌いたい感情がまずあって、それを表現する為の歌詞を書きたいと思っています。鳥肌が立つような歌を作りたいです。」
── 曲と歌詞で言えば、どちらが先に出来ますか?
「詩が先になることが多いですが、曲が先になることもあります。普段メモしている詩から考える事が多いのでそうなるんだと思います。」
── 以前部屋のお写真を撮って頂いた際、ギターやキーボード、パソコンが写ったものがありましたが、曲を作る時はギターの弾き語りで作っていかれるんですか?
「そうです。アコギで歌いながら作ります。たまに気分転換でキーボードで作ります。コードしか弾けませんが。」
── 前作の『ポルノ映画の看板の下で』の“生きていくのが面倒なら 死んじまうのも面倒だ”や、『ワンルーム叙事詩』の“もう全部嫌になったから この部屋に火をつけた”と強く印象的な言葉が多いですが、今作の『この街で生きている』は、これまでになくやわらかくやさしい雰囲気のある曲だと思いました。この作品に至った経緯とは?
「東京の友達に宛てた歌です。手紙を書くような気持で作りました。そういう感情がやわらかい雰囲気になったのかもしれません。同時に、自分を奮い立たせる為の歌でもあるので、とても大事な曲です。」
── こういった楽曲を通して聴き手に訴えたいことってどんなことですか? もちろんそれぞれの判断ではあると思いますが…。
「聴き手はあまり意識しないようにしています。『この街で生きている』のような対象がはっきりしているものは例外ですが、基本的に自問自答で自分のやり場のない気持の、取りあえずの落とし所を探しているんだと思います。」
── 以前から歌詞の中に「神様」という単語がよく出てきますが、秋田さんが思う「神様」とはどんなものですか?
「曲によって違いますが『アノミー』に関しては、価値観や道徳、宗教も含め現在社会の規範になっているようなもの全てを指しています。」
── どの曲も1曲に詰められた言葉の数が多いと思いますが、歌詞にしたい言葉が溢れているという状態ですか?
「歌詞になるのは一部で、その背景には書き尽くせないほどの情景があると思います。小説でもそうだと思うのですが、その一瞬の全てを書いているのではなくて、表現したい事柄に見合う必要な物を選んでいるんだと思います。僕の歌いたい事に必要な分が、歌詞の分量になっているんだと思います。」
── 毎回、CDの初回盤には詩集が付けられていますが、歌詞だけでもこれだけの情報量があるのに、さらに詩を書くことは相当な作業量だと思いますが…。
「詩を書くのはあまり辛くないです。行き詰っている時はさすがに辛いですが。詩集は、せっかく作品としてCDをリリース出来るのだから、より色んな角度から曲を楽しんで貰いたくていつも入れています。」

東京での経験があって今がある

AMZBOYTV.jpg── ところで、これまでの作品も今作でも歌詞の中に東京の地名がよく出てきますが、以前住んでいたことがあるんでしょうか?
「あります。以前、東中野と練馬に住んでいました。」
── 東京に対して、どんなイメージを持っていますか? 恨み辛みありましたら教えてください。
「住んでいた時は嫌いでしたが、今はそうでもないです。東京で挫折したので、恨みに近い感情はありましたが、今では貴重な経験をさせてもらったなと思っています。」
── 私は『おもろうてやがて悲しき東口』にも出てくる新宿で働いています。正確には新宿の百人町という日本のコリアンタウンと言われる街ですが、韓流ショップに集まる人で道路はモッシュ状態、その間を堅気ではないと思われる方々が通り抜け、近所のラブホテルには明らかに純粋とは思えないカップルが出入りし、目の前の道は毎日救急車とパトカーが行き来しています。秋田さんは、新宿のイメージとはどんなものでしょうか?
「新宿もよく行っていたので分かります。イメージはやっぱり雑多な街という感じでしょうか。田舎育ちの僕の許容範囲を超えていたので、よくわからない街という印象になってしまいました。『おもろうてやがて悲しき東口』は終電近くに酔っ払いでごった返す駅前を歩いている時に出来た曲です。こんな時に、こんな曲がヘッドフォンから流れたらいいな、と思って作りました。」
── 現在は青森にお住まいですが、今の場所から音楽を発信することが秋田さんにとって一番良い環境なんですか?
「今のところそうだと思います。大きい音も出せますし、気張らないで暮らせるので。」
── 『理想の花』に「青春」という単語がありますが、秋田さん自身の「あれは青春だった」と感じたエピソードを教えて下さい。
「今でも苦労して頑張った結果、仲間と笑い合ったりすると、これが青春じゃないか? と思うことはあります。過去の事で言えば、東京でバンドをやっていた時期がそうじゃないかと思います。丁度『さくら』や『理想の花』はその当時の事を歌っています。」
── この短期間で、リリースのペースはかなり早いように思いますが、秋田さんにとって息抜きの方法は?
「TVゲーム、インターネット、本、お笑いです。」
── 作品をリリースしていく度に反響はあると思うのですが、そういった手応えはご自身で感じていますか?
「全くないです。普段の生活の中でamazarashiの反響を聞いた事はないです。」
── 前々作にあたる『爆弾の作り方』から『夏を待っていました』が文化庁メディア芸術祭のエンターテイメント部門の優秀賞を受賞したり、YOU TUBEは20万アクセスを突破。また、MySpaceでも総合アクセスチャートの上位を記録したり、ご自分の楽曲がインターネットを通じてどんどん広まっている状況は秋田さんにとってどういう感覚なんですか?
「いまいちピンときません。どうなんでしょう? 受け入れられているのであれば、とても嬉しいんですが。」
── 秋田さんにとって“音楽”とはどんなものですか?
「取り柄です。」
── 秋田さんにとって“生きること”とはどんなことですか?
「難しいです。考えておきます。」
── 最後に、全国にはamazarashiのライブが見たいと思っている方はたくさんいると思います。秋田さん自身もライブで聴いてもらいたいという気持ちはありますか?
「はい。ライブはやりたいです。いつかやります。」

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amazarashi
アノミー

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2011.3.16 IN STORES

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1.アノミー
2.さくら
3.理想の花
4.ピアノ泥棒
5.おもろうて悲しき東口
6.この街で生きている(オフィシャルサイトにて期間限定試聴ができます)

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