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INTERVIEW

トップインタビューa flood of circle

異形の獣たちがうごめく異空の動物園へようこそ

2010.09.17

タフになったボクサー体型のアルバム

──『Human License』はもとより、『Black Magic Fun Club』や『Chameleon Baby』は手拍子を使ったダンサブルなナンバーだし、『ロストワールド・エレジー』は跳ねるリズムが特徴的だし、そういったサウンドの軽快さが哲学的なテーマのアク抜きをする役目も果たしていますね。

S:“判らせたい”というよりも“届けたい”という気持ちでやってますからね。『Human License』にトライバルなリズムを入れたのもそんな理由からですし。やっぱりライヴでやる時には踊って楽しんで欲しいし、僕らも楽しみたいし、それを共有できるのが本来ダンス・ミュージックであるロックンロールなんです。『Chameleon Baby』はコードや一音一音をなるべくオールド・ロックンロールみたいにしたんですよ。

──『Chameleon Baby』は、ブルースの更新を続けたフラッドが一周してまた剥き出しのロックンロールと対峙した感がありますよね。

S:そうだと思います。去年のゴタゴタを経て、自分たちはやっぱりブルースに根差したロックンロールをやるのが正解なんだというレヴェルまで来れたんですよ。だからこそ『Chameleon Baby』みたいなストレートなロックンロールをやれたんだと思います。

──愛の意味を問う『ロストワールド・エレジー』もヘヴィなテーマを扱っていますね。

S:もの凄く真面目に書きましたね。曲は割と自由な感じですけど、歌詞は遊びの要素が一番少ないかもしれない。ただ、青臭いと思えることのほうが正直で誠実な気がして、必要以上に格好つけないようにしたんですよ。ブルースをルーツにしたロックをやりながら、恥ずかしげもなく青臭いことを唄えるのは自分たちくらいだと思うんです。サウンドに偏って雰囲気だけで書いてるような歌詞が僕は凄くイヤで、どれだけ格好悪くてもそこに自分の意思やメッセージを入れたいんですよね。

──『コインランドリー・ブルース』の冒頭は、佐々木さんの弾き語りの後ろで実際にコインランドリーにいるような音が流れていますね。

S:あれは石井(康崇)がスタジオの近くにあるコインランドリーで録ってきた音なんですよ(笑)。

──深夜に独り、コインランドリーで溜まった洗濯物と向き合うのはブルースの悲哀を感じますよね(笑)。

S:実際にコインランドリーでシーツを洗ってる時に作った曲なんです。たまたまアコギを持っていて、誰もいないから弾いちゃえと思って(笑)。コインランドリーで洗濯をすると、汚れ物ばかりじゃなく自分のモヤモヤした気持ちまで洗い流せたり、こびり付いた先入観を落とせるんですよね。

──曲調自体は、フラッドが従来志向しているブルージーな世界ですが、溜めの効いた適宜なアレンジが冴えていますね。

S:最初は弾き語りでブルーノートの入ってるコードを押さえ続けるだけの曲だったんですけど、ダイナミズムをどう出すかに主軸を置いたアレンジにしたんですよ。この手の曲調にしてはドラムがうるさいし、ストリングスが似合うメロディなんだけど絶対に入れたくなかった。ミディアム・テンポだからこそバンドの今のテーゼがはっきり出た曲ですね。

──ロックンロールのダイナミズムを打ち出すという明確な目標があれば、アレンジの詰めは余り手こずらなかったのでは?

S:手間取らなかったと言えばウソになりますね。ダイナミズムの解釈も3人それぞれですから。僕はこの『ZOOMANITY』がタフになったボクサー体型のアルバムだと感じていて、3人が“ロックンロールとはこういうものなんじゃないか?”という思いをぶつけ合ったからこそ脂肪を削ぎ落とせたと思うんです。かなり言い合いもしたし、3人が確たる主張を持ったまま歩み寄って世界を共有できたと言うか。

“不変”と“普遍”を兼ね備えたブルース

──『Black Magic Fun Club』みたいに込み入った展開の曲はアレンジに手間取りそうですけど。

S:あれは展開を変えるところがどうしてもやりたかっただけで、それほどでもないんです。時間が掛かったのは『百鬼夜行』ですかね。あの曲の最初と最後に入ってる怪談っぽいドラムは僕が必要以上にこだわっちゃって、ナベちゃんに「もうイヤだ」って言われるまで叩いてもらったんですよ(笑)。

──『百鬼夜行』の肉感的な大きなうねりは、紆余曲折を経た今のフラッドだからこそ生み出し得たものじゃないですか。

S:あのドライヴ感は最近やっとできてきましたね。それは3人が曲の世界観をちゃんと共有できたのもあるし、曽根さんと一緒にやって“これで行ける”と思えた自信もあります。音楽はリズムとメロディと和音で成り立つものだし、余計なものを削ぎ落とせばそれだけに専念するしかないんですよね。

──削ぎ落とした分、各パートが過剰に弾きまくる『Silent Noise=Avante-gard Punk』みたいな曲もありますよね。

S:あれは特にベースが辛いですね。16音符を機械みたいな異常な速さで弾くので、石井の手がパンパンになってましたから。竿を弾く人間の気持ちが判らないナベちゃんだからこそ出来た曲ですね(笑)。僕がギタリストの視点でアドバイスをするんですけど、ナベちゃんもギターを持ってるから、凄く歪だけど彼なりのコード進行を作ってくるんですよ。それが逆に面白かったりするんです。

──『最後の晩餐』で“胃もたれしそうな愚痴”や“泣き言まじりの毒”を喜んで飲み食いするのは、自分自身の中に潜む悪魔みたいな存在ですか。

S:そうですね。自分の中にいる悪魔との葛藤っていうのが最初にナベちゃんが言っていたコンセプトなんですけど、それじゃ硬いから面白おかしく歌詞を書いたんですよ。ナベちゃんとセッションするようになった初めての曲で、凄く面白かったですね。

──自分の中のストレスに自分で栄養を与えるディナー・パーティーという設定は、ストーリーテラーとしての面目躍如ですよね。

S:100人いたら100通りの解釈があるんじゃなくて、ひとつのメッセージをストレートに伝えたいんですよ。そのためにはユーモアを交えた力の抜けた部分も大事なんですよね。谷川俊太郎さんとか詩人の方は凄いことを言っているのに全然力の入ってない感じがするし、難しい言葉は何ひとつ使ってない。そういうのが大事なんだなと思って。

──そもそもブルースは日々の生活から湧き出る感情を歌にしたものだし、そんな高尚なものじゃないですからね。

S:そうなんですよね。僕は子供の頃から引越が多くて、故郷もないし幼馴染みもいないんですよ。そんな生きてる実感のない僕の生活の中で一番リアルに感じられて救われたのがブルースだったんです。そこに立ち返るだけで正直な気持ちになれるし、変わらないという意味でも“不変”だし、すべてのものに当てはまるという意味でも“普遍”なんです。そういう自分の原点やロックンロールという音楽的な武器、それを通じて伝えたいことが整理されてきたから、今は凄く晴れやかな気持ちなんですよ。

──ここ数年でバンドの在り方がフライ級からバンタム級まで一気に駆け抜けた感じですけど、次に目指すはフェザー級ですか。

S:ロックンロール・バンドとしての照準はこの『ZOOMANITY』で定まったので、今はひたすら筋力を付けたいですね。11月の赤坂BLITZでは隆々とした筋肉を見せつけたいです(笑)。

──“逆説の行進”が“物の怪の徘徊”に変わってもフラッドが牽引するロックンロール・パレードはまだまだ賑々しく続きそうですね。

S:そうですね。お客さんはもちろん、スタッフや対バンも巻き込みながら。パレードに参加してくれる人たちへの感謝は忘れず、その気持ちを新曲やツアーで返したいですね。

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3rd Album
ZOOMANITY

【初回限定盤:DVD付】Speedstar VIZL-397/3,150yen (tax in)
◇DVD収録内容:『Human License』music clip/パラドックス・ムービー『博士の異常な愛情〜Ghost』(監督:沖田修一)他
【通常盤】Speedstar VICL-63657/2,800yen (tax in)
2010.9.15 SPOUT OUT

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01. Open The Gate -session #4-
02. 百鬼夜行
03. フェルディナン・グリフォン・サーカス
04. Silent Noise=Avante-gard Punk
05. Black Magic Fun Club
06. Chameleon Baby
07. Human License
08. ロストワールド・エレジー
09. コインランドリー・ブルース
10. 最後の晩餐
11. (Don't) Close The Gate -session #5-

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