Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューAKIRA & SEIJI(HARISS)×TAXMAN & JIM(THE BAWDIES)

純真なロックンロールが教えてくれる“粋”と“意気”

2010.09.16

 かの大投手・桑田真澄は"1000本ノック"に代表される日本野球界特有の精神主義・根性主義を真っ向から否定し、捕れる球を確実に捕る"TEN本ノック"なる基本練習こそが重要だと説いた。いわく、1日10本のノック練習で上達しないようならば、100本やろうが1000本やろうが上達は見込めないと。基本に忠実に、ルーツに立ち返りながら新たな価値観を見いだすこと。ロックンロールの歴史を紐解けば、その黎明期の音楽が今日を生きる僕らに教えてくれることが山のようにあるのが判る。基本練習を疎かにすればウルトラCなど成し得ないのと同様に、シンプルな3コードを軽視した者はいずれロックンロールの女神に愛想を尽かされることだろう。
 HARISSとTHE BAWDIESは共にロックンロールの源流となるルーツ・ミュージックをこよなく愛し、それを血肉化し、強固なオリジナリティを加味しながら今に伝える稀有な2バンドである。オールディーズ・バット・ゴールディーズの音楽に対する限りない愛情が新たな創造の糧となること、ロックンロールとは型にハマらず自由に楽しむべきダンス・ミュージックであること、そしてルーツに立ち返る姿勢がオリジナリティの確立において"急がば回れ"であることを本稿の両者の対話から窺い知ることができるはずだ。さぁ、五感を研ぎ澄ませて、考えるな、感じろ!(interview:椎名宗之)

アコースティックになると曲の本質が見えてくる

──かれこれもうどれくらい交流を育んでいるんですか。

AKIRA:最初に対バンで会ったのは3、4年前?
JIM:いや、もう5年は経つんじゃないですか?
TAXMAN:こういうふうにちゃんと話ができるようになったのは、HARISSとBAWDIESとBABYSの3組で関東近郊ミニ・ツアーをやった時ですよね。
SEIJI:そうだね。埼玉かどこかで、JIMがPコートのポケットに手を入れながらビールを呑んでる様が格好良くて、凄く印象に残ってるよ(笑)。音楽的には"こんなに若いのに、こんなにシブいロックンロールをやってるんだ..."と思って、凄く驚いたね。
AKIRA:mF247っていう配信サイトにHARISSもBAWDIESも登録していたことがあって、そこで初めてBAWDIESを聴いたんだよね。もの凄く黒っぽいのに、これがホントに若い日本人なのか!? と思ったよ。見た目と音楽に凄いギャップがあるなと思ったのが最初の印象だった。あの頃はエラいピチピチしてたよね?(笑)
JIM:だって、当時はまだ22とかですもん。今や27になりましたからね。
SEIJI:俺、今の今まで、2人ともまだ20代の前半くらいなのかと思ってたよ(笑)。
AKIRA:そりゃ俺も40を超えるわけだよな(笑)。
SEIJI:俺は今夜の0時を過ぎたらきっかり40になりますよ(笑)。
TAXMAN:マジっすか!? じゃあ今夜は0時まで呑み続けてお祝いしましょう!(笑)
──ひとまずこの対談を済ませてからにしましょう(笑)。TAXMANさんとJIMさんのHARISSの第一印象は?

TAXMAN:当時はルーツがしっかりしたバンドと一緒にやらせてもらう機会が少なくて、そんな中で出会ったHARISSは凄く格好いいなと思いましたね。ウッドベースも独特だし。
JIM:ヘンな意味じゃなくて、凄いヘンだなと思いましたね(笑)。4人とも個が立ってるのに、バンドとして交わるとちゃんとHARISSになるって言うか。
TAXMAN:同じギタリストとして、SEIJIさんとAKIRAさんのプレイにグッと来る部分も多いですね。2人がユニゾンするところも格好いいし、純粋にギターの音がメチャクチャ好きですね。凄く気持ちいい場所で鳴らしてくれるんですよ。
JIM:音もそうなんですけど、フレーズもまた凄いんですよね。ルーツを消化した上で曲に見合ったフレーズになってるし、そこにHARISSらしさがちゃんと出てるんですよ。僕らはもう、単なるHARISSのファンなんで(笑)。
──そんなHARISSのギター・サウンドの妙は、今回発表されるアコースティック・アルバム『Re:BIRTHDAY』でも存分に堪能できますよね。アコースティック・サウンドという剥き出しの体でも充分にロックだし、HARISSの楽曲が如何にポップかが如実に伝わると思うんですよ。

JIM:僕も全く同じ感想なんです。アコースティック・サウンドになったことで曲のメロディアスさがより際立ったし、余計に身体に入ってきやすくなった気がしますね。
SEIJI:AKIRA君の作るメロディが活きてきたんじゃないかな。通常のバンド形態よりも歌が前に出たし、HARISS独特のいいメロディが際立ったと思う。特に『LADY BIRD』は5年間やってきたメンバーですら再認識する部分があったからね。散歩してる時にふと頭の中で流れてくるほどのいいメロディだったんだな、って。
JIM:1曲目の『LOVE SAVE US』のイントロからアコギの音が凄い格好いいんですよね。音もメッチャいいし、ロックンロールだし。
TAXMAN:僕らも今年アコースティック・ツアーをやって、曲の本質みたいなものが再確認できたんですよ。それ以降、いつものバンド形態で演奏する時に意識が変わった部分があったんです。
SEIJI:ボ・ディドリーのピック・スクラッチは戸を開ける音をイメージしてるらしくて、俺はそういう奏法が好きなんだよね。だから、曲のイメージに合わせてどんなギターを使うか、どんなサウンドにするかは凄く気を遣う。エレキなら勢い任せで行けばいいけど、アコギの場合は曲の進路を決めて、如何に歌を聴きやすくするかを考えなくちゃいけない。
JIM:僕はスライド・ギターも弾くんですけど、あれは黒人のシャウトをギターで表現したいがために生まれたものらしいんです。そういう話を聞くと、演奏するにも気持ちの入り方や意識が自ずと変わりますよね。

シェルターでのライヴ音源を収録したことの意義

──『Re:BIRTHDAY』では楽曲に合わせてギターを使い分けたりもしたんですか。

SEIJI:アコギ以外にクラシック・ギターを使ったりしました。『LADY BIRD』は『ROCKIN' BROADWAY』という映画でAKIRA君が弾き語るシーンがあって、そのイメージが最初にあったからアコギよりも胸に響くクラシック・ギターがいいかなと思って。一本一本の指弾きが心に染み入るだろうし。

──今話に出た『ROCKIN' BROADWAY』なる映画は、AKIRAさんが主演を果たしたロックンロール・ムーヴィーとのことで。

AKIRA:『ROCKIN' BROADWAY』っていうのは群馬県内で10年以上行なわれているイヴェントのタイトルなんです。ルーツ・ミュージックを主に置いたそのイヴェントが10周年を迎えて、今まで出演してきたバンドのライヴ映像を記録として残したいと。その合間にストーリーを挟み込んだ映画なんですよ。僕は音楽の夢に破れたサラリーマンという役所で、演技らしい演技はしてないですね(笑)。監督のDJ TERRYさんに言われるがままで(笑)。
──HARISSとBAWDIESのライヴ映像も盛り込まれているんですよね。

JIM:それと、ROYの小芝居も見られます(笑)。
TAXMAN:小芝居と言うか、茶番と言うか(笑)。
──一方、BAWDIESは忙殺スケジュールの合間を縫って『JUST BE COOL』という一撃必殺のシングルをリリースしますね。

TAXMAN:僕らは一年中ライヴをやっていて、ツアーの合間に新曲を作ることが多いんですよ。そのやり方ならライヴで得たものやその時の気持ち、今の勢いをダイレクトに詰め込められるんですよね。その中でも、今回の『JUST BE COOL』はコンセプトがしっかりしていて、新しい試みができた手応えがあるんですよ。
JIM:その試みというのは、"勢いだけじゃないよ!?"ってことなんですよ。ここ数年、転がり続けてきた歩みを一度止めてみて、今一度自分たちの足元を見直そうと。このまま転がり続けるとどこへ向かうか判らなくなるし、方向を定めてからまた転がっていこうと思って。
TAXMAN:だからこそ、カップリングにシェルターでのライヴ音源を入れてみたんです。シェルターは学生の頃から聖地みたいな所で、僕らが好きだったメロコアのバンドはみんなシェルターでライヴをやっていて、いつか自分たちもそのステージに立ちたいと思った。実際にバンドを始めて出られるようになったんですけど、ここ最近はご無沙汰だったんですよ。だから今回のツアー前半のファイナルはシェルターでやりたかったし、やってみたらライヴの生っぽさを一番感じられる場所なのを改めて実感したんです。そういう臨場感のある音をもっとたくさんの人に聴いて欲しいし、自分たちの原点に立ち返る意味でもシェルターの音源を入れてみようと思ったんですよね。
JIM:やっぱり、シェルターっていうのがいいですよね。当日にライヴの音を録るのは事前に聞いていたけど、ライヴが始まればそんなことも忘れちゃうし、ギター・ソロで前に出ればお客さんがネックに触ってきたりもするわけですよ。そうすると収録された音がダメになるのは判ってるんだけど、それでも前に出ちゃう。
SEIJI:それでいいんだよね。それがライヴハウスの醍醐味だしさ。
JIM:だから、そういう音になってます。けっこう雑です(笑)。

つぼみが開き始めたのを感じる『JUST BE COOL』

──HARISSのお2人は『JUST BE COOL』を聴いて如何でしたか。

AKIRA:1955年にビル・ヘイリーが登場して1962年にビートルズがデビューするまでが本物のロックンロールだという自分の中での基準があって、BAWDIESはその時代の音を体現している数少ないバンドだと思うんですよ。『JUST BE COOL』然り、『HOT DOG』然り、ルーツに根差した姿勢が一貫してあると思うんです。俺はロカビリー上がりだし、ルーツを大切にしながらそれを現代っぽく表現しているので、BAWDIESの活躍は端で見ていて小気味いいんですよね。
SEIJI:俺は『JUST BE COOL』を聴いて、可能性のつぼみが開き始めたのを感じました。開こうとしてるんだなっていうライヴも見たし、何かが新しく始まる予感がします。ビートも効いてきたし、人を踊らせる能力に長けてきたのを感じるし、着々と成長していますよね。
AKIRA:あと、BAWDIESは初期の音楽性のままメジャーでやれてるのが凄くいいなと思う。俺がHARISSの前にやってたSIDE-ONEは生粋のロカビリー・バンドで、アンダーグラウンドとメジャーの垣根で悪戦苦闘していたんですよ。メジャーに向けて聴きやすい音楽にしてみたり、切磋してダメになったバンドもたくさんいる中で、BAWDIESはアンダーグラウンドの佇まいのまま時代を掴んだと思うんです。可能性を凄く感じるし、まだまだ頑張ってもらいたいんですよね。
──メジャー進出後のBAWDIESはルーツ・ミュージックを礎としながらも、作品を追うごとに着々とオリジナリティを構築していったのを感じますね。

TAXMAN:ルーツ・ミュージックに衝撃を受けて以降の僕らは今の音楽には一切目もくれず、ひたすらルーツ・ミュージックにこだわってきたんです。インディーズの頃もオリジナリティは出さずに、まずはルーツ・ミュージックをそのまま体現しようとしました。それをある程度消化できてからオリジナリティを徐々に出していこうと思ったんですね。ただ、オリジナリティを出すと本質がブレるんじゃないかという恐れもあって、なかなか出し切れない状態だったんですよ。でも、メジャーのタイミングでLOVE PSYCHEDELICOのNAOKIさんにプロデュースをお願いして、そこでオリジナリティの出し方を学べたんですよね。NAOKIさんもルーツ・ミュージックありきの方で、僕らのやってることを凄く理解してくれたんです。「それだけルーツにこだわってやってきたんだから、今は何をやってもブレることはないよ」とNAOKIさんに言われて自信が付いたんですよ。音楽の幅が広がってきたのを感じるのは最近ですね。SEIJIさんが言う通り、つぼみが開きかけてきた実感は自分でもあります。『JUST BE COOL』は『HOT DOG』よりもオリジナリティを出せたと思うし。
AKIRA:誰もが時代を掴めるわけじゃないし、BAWDIESは選ばれたバンドだと思うよ。あとはどれだけ個性を身に付けるかなんじゃないかな。
TAXMAN:時代を掴んでるかどうかはよく判らないんですけど、僕らが初めてSONICSを聴いた時の衝撃を同世代にも伝えたいという一心でやってますね。僕らがこれだけ衝撃を受けたんだから、みんなにも絶対伝わるはずだっていう一心で。ちょっとずつですけど、今の中高生は僕らの音楽を聴いてからルーツを聴くようになってるみたいなんですよ。そういう話を聞くと、今の時代にフィットしつつあるのかな? とは思いますけどね。
SEIJI:それだけの支持を得たのは、純粋にBAWDIESのライヴが格好いいからだよ。絶対にそう。俺たちもそう思われたくてやってるしね。もう10年くらい前だけど、俺のライヴを見てギターを始めたっていう人がわざわざ会いに来てくれたことがあるんだよ。それはホントに嬉しかったし、そうなるのが夢だった。BAWDIESはもうすでにそういう憧れられる位置に立ってるんだと思う。TAXMANもJIMも、「俺はこういうギターを弾くぜ!」っていうスタイルが確立されれば今以上に旨味が出てくるよ。

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