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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】吉村秀樹×名越由貴夫(2010年3月号)- 憂色に包まれた12ヶ月の物語、失われた一篇の歌が加わり遂に完結──

憂色に包まれた12ヶ月の物語、失われた一篇の歌が加わり遂に完結──

2010.03.01

雲が動いているような音像の捉え方

──『Cinderella V.A』に収録されていた『1月』を“完全盤”仕様の音にして最後に繋げる作業も一筋縄では行かなかったんじゃないですか。

吉村:そこはみんなで試行錯誤してね。何て言うか、新しい『1月』もあれはあれで良かったなぁって思う。何とも言えない切ない感じがあってさ。

名越:『Cinderella V.A』の『1月』は、曲の後半が別テイクだったんだよね。マスタリングで別ミックスのテイクをくっつけたんだよ。でも、今回改めて『1月』をTDしたのを通して聴いてみたら、これはそのままのほうが良かったんじゃないかと思ってね。だから、収録曲の中で大きく変化したのは『1月』ってことになるのかな。解体して縫いつけてたのを裸のまま出すわけだから。

吉村:当時は何を迷ってたんだろうね?

名越:判らない(笑)。当時のマスタリングで繋げたやつは物語として綺麗に連なってるんだけど、元々の繋がってるほうは演奏も一貫してやってるわけだし、エモーショナルな感じが強いんだよね。

吉村:『1月』は、イントロでジョン・レノンをやりたかったわけ。ギターでこんな鐘の音が出るんだ!? なんて思ってさ(笑)。

──『マザー』ですね。『1月』なのに何故か除夜の鐘みたいな音で(笑)。ちなみに、収録曲の中で最初に出来たのは『1月』だったんですか。

吉村:いや、『1月』だった気もするけど…『8月』のほうが先だったんじゃないかな。モードの変わる瞬間が『8月』だったのは確かだね。『1月』は『Cinderella V.A』の流れの中で構想を練った曲で、『8月』が出来た時点で12ヶ月をテーマとしたアルバムにしようと思ったんだよ。多分、漠然と芸術家に憧れてたんじゃない?

──今さらな話ですが、『kocorono』のプロデュースを名越さんに依頼したのは、やはりコーパス・グラインダーズで育んだ盟友関係からですか。

吉村:始まりはコーパスだよね。ゼロの話を聞いてると、名越君と一緒にやりたいんだけどちょっとズレてくみたいな感じがあって、それで名越君から俺のところへ心の擦り寄せが来てね。名越君に対しては特別な感情があって、音の感覚って言うのかなぁ…ギターとベースの中間の感覚っていうのがあるし、ジミ・ヘンドリックスに対しての捉え方もみんなと全然違ったしね。

名越:ああ、そんなことも話したね。俺がジミヘンを好きな部分って、たとえばウッドストックとかでガンガン弾いてるんじゃなくて、スタジオ録音でテープ・エコーを掛けて逆回転させたりする静の部分なんだよ。そこがふたりとも好きだったんだよね。

吉村:名越君の雲が動いてるような音像の捉え方も好きだし、コーパスの時のあの追い込み方は凄かったね。アメリカでやったライヴで、ギターじゃないし、ベースじゃないし…もうホントに何をやってるか判らなかった。悪魔が斧を振り回してるみたいで、とにかくもの凄かったんだよ。

名越:意外とあそこで一番冷静だったのはゼロだったよね(笑)。

吉村:俺はショボーンとしてるし、大地(大介)はバカみたいだし(笑)、その中で名越君がギターもベースも超越した音を掻き鳴らしてね。あれをもう一度やれって言われても二度とできないでしょ?

名越:うん、できない。でも、ギターを超越しているって部分はブッチャーズだって前からそうだしね。ヨウちゃんの歪んだ音を聴くと、ギターの領域を飛び越えようとしてるのが判るよ。

──両者の性格も似た部分が多いんですか。

吉村:いや、似てはいないよね。認め合う部分は多いけど。

名越:タイプは全然違うね。ただ、ブッチャーズもやってるエンジニアの日下(貴世志)君から「一音のタッチが似てる」って言われたことがあるよ。

──あと、おふたりはCHARAさんの『タイムマシーン』を共作したことでも知られていますよね。

吉村:こないだテープの発掘作業をしてた時、『タイムマシーン』のボツになった一番最初のテイクが出てきたんだよ。あれね、今聴いたら凄くいい。

名越:ああ、そう? 俺はそれ、持ってないな。

吉村:凄く素直で、寂しくて、とにかく心に響くんだよ。

──吉村さんは名越さんのことを“神様”と呼んでいたし、音楽的資質に惹かれ合った両者の関係性はやはり特殊なもののように感じますね。

吉村:何なんだろうなぁ…名越君は優しいのかな。俺自身は野性だと思ってるんだけど、それをちゃんと拾ってくれるからね。やっぱり優しいんだと思う。

──リマスターの作業中は言葉少なげでしたけど、“これは違うな”という音に対しておふたりの表情が同じタイミングで曇ったのが印象深かったんですよね(笑)。

名越:よく見てたね(笑)。

吉村:遠慮しながらも直して欲しいところを安藤さんに伝えると、名越君が後からぽつり、「そうだよね」って言ってたね(笑)。

名越:ただ、そういう部分を具体的にどうすれば良くなるのかは探すのがけっこう大変だった。抽象的な言葉で伝えると、人によって捉え方も違うしね。かと言って、具体的に何キロヘルツで…って安藤さんに伝えるのは何となく失礼な気がして。実際そこまで判らないしね。だから、「ギターの上のザラッとした感じとスネアの上の響きをもうちょっと…」みたいに曖昧な表現をしていたのが時間の掛かった要因のひとつではあるんだけどね。キングの自社スタジオじゃなかったら金額的に大変なことになってたと思う(笑)。

吉村:安藤さんもちゃんと俺達の意気に応えてくれるんだよね。「もうお前ら来ないでくれ」って言われるくらいのことをお願いしてるのに、安藤さんの背中から愛情を感じる瞬間が多々あったんだよ。みんなが一丸となって『kocorono』に取り組んで、みんなの愛情が積み重なっていくのを体感できたのは良かったな。その感動は最初の設計図以上のものだったね。

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