Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューTHE 卍('08年5月号)

ロック30年選手の猛者達が集結!
ROLLY率いる“雅楽 meets アングラ・ロック”な異次元バンド、華麗なるデビュー!

2008.05.01

日本が世界に誇るグラムロック・スター、ROLLY(vo, g)が30年もの構想期間を経て具現化させた純和製ロック・バンド、THE 卍が満を持しての本格始動! アングラ演劇と蜜月だった頃の日本のロックのいかがわしさや奇々怪々さが充満した処女作『卍』は、佐藤研二(b)と高橋"ロジャー"和久(ds)という鉄壁の巧者との火花散るインプロヴィゼーション、ロック30年選手にしか生み出し得ない円熟味に溢れたサウンド、そしてROLLY独自のユーモアの妙を存分に堪能できる1枚だ。すかんちの解散以降にROLLYが繰り広げてきた様々なプロジェクトの中でも気合いと覚悟が格段に異なるTHE 卍の身の来し方と今後の方向性について、ROLLY本人にじっくりと語り倒してもらった。(interview:椎名宗之)

30年越しのバンド構想が実現

ROLLY:(本誌を手に取りながら)これ、ロフトの雑誌なんですよね。すかんち時代を含めて、どういうわけか今までロフトとは縁がなかったんですよ。ロフトって、割とパンク系が多いライヴハウスですよね?

──今は基本的にノン・ジャンルです。それに80年代はパンク勢ばかりではなく、"関西ヘヴィメタル 東京なぐり込みGIG"というシリーズ・イヴェントに44マグナムやマリノといったバンドが出演していたこともあるんですよ。

ROLLY:あの時は僕、ロフトにいましたよ。正確に言えば客ではなく、ステージに機材を運ぶのを手伝ってました。

──えッ、そうなんですか!

ROLLY:無償のボーヤですね。デンジャー・クルー(現マーヴェリック・ディー・シー)という会社で社長をしている大石征裕さんとは同郷(大阪府高槻市)で、彼が大学生の頃から知り合いだったんです。大石さんが44マグナムやマリノの運転やプロデュースをやっていて、その縁で東京への旅行ついでにロフトに行ったんですよ。だからロフトは、行ったことはあるけど未だに出たことはないんですよね。本格的なロック・バンドしか出ちゃいけないようなイメージがロフトにはあるし、僕がやるのはいつもマガイモノみたいなロックですから(笑)。

──何を仰いますか(笑)。この度めでたくアルバムが発表されるTHE 卍は、マガイモノと極北にある本格的な音楽だと思いますよ。そのTHE 卍について今日はいろいろとお伺いしたいのですが、結成のきっかけは一昨年の7月に行なわれた『ROLLY Quattro Show』だったんですよね。

ROLLY:そうなんです。THE 卍という名前になったのはそのクアトロからですね。それ以前はROLLY名義でやっていて、最初はドラムが小畑君(小畑ポンプ、すかんちのメンバー)だったんです。ベースはずっと佐藤さんなんですけどね。THE 卍の起源を簡単にレクチャーしますと、話はほぼ30年前にまで遡るんです。僕が中学2年生の時に、友達のワカベ君にそそのかされて四人囃子のアルバムを買ったんですよ。それに凄くハマって、はっぴいえんど、あがた森魚、フラワー・トラベリン・バンド、外道といった日本のロックの黎明期を築いたバンドやミュージシャンを聴き漁るようになったんです。その中でも決定的だったのが、瀬戸龍介の『五六七〈ミロク〉』('79年発表)というアルバムを買ってしまったことで。

──琵琶や尺八、箏といった日本の伝統楽器を大胆に採り入れた作品ですね。アナログは"日の面"と"月の面"とに分かれていて。

ROLLY:そうそう、「スサノオノミコト」という曲が入っていたりね。洋楽のロックももちろん好きでよく聴いていたんですけど、そういった日本のバンドの何とも言えない気持ち悪い感じが凄く好きで、特にフラワー・トラベリン・バンドのインドとも日本とも形容し難い不気味なサウンドに魅せられていたんですよ。あと、ジョー山中が参加したクニ河内とかれのともだちの『切狂言』('70年発表)というアルバムがまた凄く気持ち悪くて大好きで、自分もいつかロック・バンドをやる時には能や狂言をテーマにしたコンセプト・アルバムを作りたいと思ったんですよね。授業中に先生の話を全く聞かずに"こんなアルバムが作りたい"ってノートにアルバムの構想を書き溜めたりもしていたんですよ。

──共にアングラ・カルチャーだった演劇とロックが蜜月にあった時代の音楽を好んでいたわけですね。

ROLLY:そうですね。と言うのも、その中学2年生から遡ることまた2年、小学6年生の時に三島由紀夫が原作の『音楽』という映画をテレビで観て衝撃を受けて、そこから寺山修司率いる天井桟敷の舞台や自主制作の8ミリ映画を観に行くようになったんですね。つまりアングラ嗜好の下地がすでにあったわけです。それで自分でもアングラ・ロックをやりたくて、高校に入ってから狂喜乱舞というバンドを作ったんですよ。それが後に猟奇納骨堂と名前を変えて、目の部分が空いた頭巾にマントというKKK団みたいな格好でライヴをやったりして。

──どう考えても異様な格好ですね(笑)。

ROLLY:ええ。でも、猟奇納骨堂は高校2年生の時に老人ホームの慰問をやったりもしたんですよ、社会福祉活動として(笑)。それは学校に新しいヴォーカル・アンプとドラムを買ってもらう名目でやったんですけど。茨木市民会館で行なわれた老人ホームの催しに出たこともあって、その時は後輩に家から電気釜を何台も持って来させてお湯を沸かして、舞台裏でみんなでドライアイスを削りまくって登場の演出に使ったんですよ。それでフラワー・トラベリン・バンドの曲を延々と演奏したら結構ウケて、先生達も凄く喜んでくれたんですよね。

純然たるロック・バンドをやりたかった

──意外ですね。ROLLYさんと言えば、クイーンやレッド・ツェッペリンといった洋楽ロックの王道を志向するイメージが強かったので。

ROLLY:高校を卒業した後はすかんちを始めましたからね。そこでは猟奇納骨堂と180度違う、ブリティッシュ・ロックにポップな歌謡曲のエッセンスを織り交ぜた音楽をやってましたし。そのすかんちが解散してソロ・プロジェクトのバンドをいろいろとやってきたんですけど、プロになるとバンドを組むこと自体がなかなか難しいんですよ。それに加えて、僕はシャンソン歌手やジャズ・シンガー、舞台役者といった顔も持っていて、すかんちの解散以降、余りに忙しくてライヴも思うようにできなかったんです。で、僕もぼちぼちいい歳なので、ここらでもう一度徹底的にロック・バンドを作って、日本全国をハイエースで回るようなライヴをやりたくなったんですよね。それには今がチャンスだなと思ったんです。50歳を超えてからハイエースで夜通し走るのもキツイし(笑)。

──なるほど(笑)。そうして始まったのがこのTHE 卍なわけですね。

ROLLY:そうなんです。ソロ・バンドではなく純然たるロック・バンドをやりたかった。要するに猟奇納骨堂をまたやろうと思ったんですよ。それで昔からの友達である小畑君に声を掛けたんですね。彼は猟奇納骨堂のメンバーではなかったものの、当時の状況をよく知ってましたから。で、2人ともベースは佐藤さんがいいと考えていて、「とにかくトリオで死ぬほどライヴをやりまくるバンドをやりたいんです」って僕から直接佐藤さんに電話したら、快くOKしてくれて。そんな経緯があって、まずはROLLY名義で横浜のclub Lizardでライヴをやったんですが、演奏中に佐藤さんのルックスやバンドのうねるグルーヴから"このバンドはTHE 卍という名前が合うな..."と直感で思ったんです。だからその舞台上で「今思い付いたけど、このバンドはTHE 卍だ!」と宣言したんですよ。

──直感なので理由らしき理由は何とも言えないでしょうけど、言い得て妙なネーミングではありますよね。

ROLLY:後付けではありますけど、文字自体がデザイン性に優れていてミステリアスだし、和風でもあり、正体不明の不気味さもロックっぽさもある。中学生の時に妄想していた、雅楽とロックの融合というヘンなことをやるにはこの名前が一番だと思ったんですよね。

──THE 卍の結成は、今のROLLYさんが中学2年生の自分に対してけじめを付ける意味合いもあったと言えそうですね。

ROLLY:うん、そうですね。すかんちとは真逆であり、言うなれば陰と陽の関係ですけど。高校を出て猟奇納骨堂の方向に突き進んでいたら、もしかしたらロフトにも出れたのかもしれない(笑)。

──まだ充分間に合いますので(笑)。去年の8月に東名阪で行なわれた『ROLLY Quattro Show2』以降は、小畑さんに代わってロジャーさんがドラムを叩くことになり。

ROLLY:ロジャーさんとはそれまで一緒にプレイしたことがなかったんですけど、初めて音合わせをした時にホントに驚いたんですよね。とにかくキレが凄くいいし、自分が子供の頃から聴いてきた洋楽ロックそのものの音だったので。もう瞬間的にしっくり来ましたよ。

──今回発表された処女作『卍』に収録された楽曲はどんなふうに生まれたんですか。

ROLLY:このアルバムに収めた曲のほとんどは、去年の2月から3月にかけてのある1週間に集中して作曲したものなんですよ。その頃、僕はザ・フーのロック・オペラ『TOMMY』に出演するべく昼の1時から夜の9時まで毎日稽古をしていたんです。僕は主人公のトミーに打ち負かされるピンボール・チャンピオンの役だったんですけど、役にのめり込んでいくうちに自分がだんだんと卍教の教祖に思えてきたんですよ。ある日、錦糸町の稽古場から自宅まで帰る車の中で「卍 Part1」のメロディを口ずさんでいたんです。家に戻るまでにはもう「卍 Part1」の全体像が頭の中に出来ていて、帰宅してすぐにそれを忘れないようにMTRに録音したんですよ。その出来がとても素晴らしかったので、その日のうちに「卍 Part2」も作曲して、朝まで作業していたらいつの間にか床で眠っていました。で、11時半には目が覚めて、また稽古場へ向かったんです。そこでまた頭の中が"卍、卍、卍、卍、卍..."でいっぱいなわけです。その日の帰りの車の中で、今度は「卍 Part3 あなたはだあれ〜別荘の怪事件〜」を頭の中で作曲して、朝までMTRに向かって録音作業をして...それでまた同じように床で寝ていたんですよ。

世にも奇妙な『卍』作曲物語

──楽曲が降りてくるのをROLLYさんが触媒となったような、憑依現象とも言うべき不思議な体験ですね。

ROLLY:『ファントム・オブ・パラダイス』という映画で、主人公が監禁されて作曲をするシーンがあるんですけど、それと似たような感じでしたね。監禁こそされなかったけど、ミュージカルの稽古という時間的拘束は常にありましたから。最初に自宅で作ったデモはほぼ音源に近い形で、しかも今回は歌詞を紙に書かなかったんですよ。普段はデモの歌詞を"ラララ..."で唄ったりするんですけど、今回は何故か車の中で明確な歌詞が唄えたんです。そんな具合に1週間で12曲を作り終えた時は真っ青で、まるで岸田森みたいな顔になってました(笑)。

──今までにそういった不思議な経験をされたことは?

ROLLY:全くなかったです。そんな経験、生まれて初めてのことですよ。『TOMMY』をやることによって、この『THE 卍』というコンセプト・アルバムがブワーッと溢れんばかりに降りてきたんですね。こんなことを続けていたら死んでしまうと思って、アルバム1枚分の曲を作ったところでひとまず作業をやめたんですよ。そのデモは絶対の自信作だと思ったので早速佐藤さんに送ったら、彼も凄く驚いていました。実際にレコーディングをしたのは、その1年後だったんですけどね。

──その1週間のうちに生まれた曲がすべてこの『THE 卍』に入っているんですか。

ROLLY:いや、1年間空いてしまったので、その間に別のレコーディングに使った曲もあります。去年、三浦理恵子さんとデュエットで出した「いかすぜ!ユニバース」は、実はTHE 卍でやろうと思っていた曲なんですよ。あと、『【俗・】さよなら絶望先生』というアニメのエンディング曲に提供した「マリオネット」もそのデモの中にあったんです。

──THE 卍というバンドの奇々怪々な世界がコンセプトとしてありつつも、「Route 171」のようにROLLYさんの実体験に基づいたと思しき曲もありますね。

ROLLY:「Route 171」の歌詞は実際にあった話なんですよ。1985年のある日の深夜2時、友達とスズキのアルト・小林麻美ヴァージョンに乗って京都から神戸に向かう国道171号線を走っていたんです。大山崎を差し掛かった頃にクイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」を友達と口ずさんでいると、300メートルくらい先にヘッドライトが人影を映し出したんですよ。で、何だと思って見たら、黒髪を振り乱した女性がそこにいて。着物ははだけて、手に靴を履いてこっちに向かって走ってきたんです(笑)。未だにあれが何だったのかよく判らないんですけど、幽霊ではなかったと思いますね。

──アルバムの中核を成すのはやはり、組曲とも言うべき「卍」のPart1〜3ですよね。

ROLLY:単純に出来た順番に並べただけなんですけどね。中学生の時に好きだったフラワー・トラベリン・バンドの「SATORI」がPart1からPart5まであったので、それを意識しました。だからホントはPart5まで行きたかったんですよ。あと、「卍 Part3 あなたはだあれ〜別荘の怪事件〜」での歌は、自分が今までシャンソンやジャズを唄ったり演劇をやってきたことが着実な効果となって表れていると思いますね。自分で言うのも何ですけど、ロック畑でこういう歌を唄える人もなかなかいないと思いますし。

──確かに、「卍 Part3 あなたはだあれ〜別荘の怪事件〜」は70年代のアングラ演劇を彷彿とさせる物語性の高い歌詞ですよね。

ROLLY:すかんちでもそういった物語性の高い曲はあったんですけど、それは割と洋風だったんですよ。この「卍 Part3 あなたはだあれ〜別荘の怪事件〜」に出てくる主人公は、僕のイメージの中では岸田今日子なんですね。それか京マチ子。緑川夫人という人物が主人公で、国際的窃盗団のボスなんです。

──ああ、まるで江戸川乱歩の『黒蜥蜴』みたいな世界ですね。

ROLLY:そう、だから美輪明宏的でもあるんです。緑川夫人が自慢の別荘でシャワーを浴びた後に、ガウンを着て部屋でワインをグラスに注いでいる。そして、今まさにグラスに口を付けようとした瞬間に気付くわけです。壁の隙間から誰かがこちらを覗いていることを。そんな緊迫したシーンから始まる、実にくだらない楽曲なんですけど(笑)。

──ヒッチコックの『裏窓』っぽいニュアンスもありますね。

ROLLY:そうですね。どっちにしても古めかしいですよね。70年代以降にも人間椅子を筆頭に陰陽座や犬神サーカス団といった演劇的要素の強いバンドが多々いますけど、THE 卍はそのどれとも違うと思いますよ。

独自のユーモア感覚こそTHE 卍の特異性

──THE 卍の場合は、先ほどからROLLYさんが挙げていた日本の古き良きロックに対する深い愛情が太い芯として一本貫かれているし、その重みが他のバンドとは一歩も二歩も抜きん出ている気がしますが。

ROLLY:重みと言うよりも、メンバーが老けてるだけなんじゃないですか(笑)。だって、もう30年も前からこういう音楽をやろうと企んでいたわけですから。和風なロックを掲げたバンドは多々あれど、そのどれとも異なる年の功があると思うんですよ。

──"ベサメムーチョ"とコーラスが入る「サボテン」やマーチ風の「卍航空隊讃歌」といったユーモア・センスは、まさに年の功が為せる技でしょうね(笑)。

ROLLY:和風ロックを突き詰めようとすると、どうしても真剣になって笑えなくなるんですよね。僕らも真剣にやっているつもりなのに、最後は必ずふざけてしまうんですよ。1曲目に入っている「ロックンロール中学生」に代表されるように、楽器を始めたばかりの小僧が楽しくて延々セッションしているようなアホな感じをやりたいんです。ロック30年選手がトリオでバンドをやる時に目指すのは、ジミヘンやブルース・ロックっぽいものだと思うんですよね。そうは行かずに、いきなり「ロックンロール中学生」みたいな曲をやるのがTHE 卍の特異性であり個性なんですよ。

──「ロックンロール中学生」が凄いのは、唐突に般若心経が唱えられるところですね(笑)。

ROLLY:あれは松明が焚いてあって、6人のお坊さんが般若心経を唱える前でバンドが演奏しているイメージですね。まぁ、とにかくイカれたバンドなので、笑ってくれたら本望と言うか。レコーディング自体は切迫した状況だったんですけどね。トラックダウンを含めて9日間で完成させたんですけど、録音自体は僅か6日間だったんです。しかも、ひとつの部屋で3人で向き合って演奏するという失敗の許されない録りでしたからね。誰かが失敗したらまた一から録り直しだったんですよ。すかんち時代は自分でギターを何本も重ねてブライアン・メイ調とかにしたりしていたんですけど、今回は1回しか弾いてないんです。つまり、バンド演奏はほぼ一発録りなんですね。

──それはやはり、THE 卍というバンドゆえのこだわりなんですよね。

ROLLY:THE 卍ゆえにですね。今まで一発録りはやったことがなかったですから。佐藤さんの強烈なベースは、ギターを重ね録りすることによってマスキングされて魅力が薄れる気がしたんですよ。だから敢えて1回しか弾かなかった。要するにライヴと同じ形式で録ったわけです。今どき珍しい、とても潔いアルバムだと思いますよ。ただ、初日は「ロックンロール中学生」「Route 171」「初恋」を録って、どれも楽しいロックンロールだったから良かったんですけど、2日目が凄くキツかったんですよ。「卍」Part1〜3、「サボテン」といった気持ち悪い曲ばかりを朝から晩まで演奏していたので、思い切り具合が悪くなったんです(笑)。夜になったらさすがに全員グッタリしてましたね。その余りに疲れ切ったところに、佐藤さんが「こういう曲がアルバムの最後に入ってたらいいんじゃないか?」って、急にピアノで軽やかな曲を弾き出したんですよ。それが最後の「good night」なんです。

──歌も佐藤さんが唄っていますね。

ROLLY:ええ。ホントはロジャーさんの唄う曲も入れる予定だったんですけど、今回は惜しくも実現しませんでした。このアルバムは通しで聴くと結構しんどいと思うので、最後にこういうすべてを洗い流すような曲が必要だったし、自分では到底作れない曲ですね。恐怖のレコーディングがようやく終わって、3人でジープに乗って夕焼けの海岸線を走っているようなイメージがありますね。爽やかな疲労感と言うか。

──ROLLYさん主導のバンドでありながら、他のメンバーのペンによる「good night」で処女作を締めることからも、これまでのソロ・ユニットとは違う、メンバーの力関係が均等な"バンド"であることが窺えますよね。

ROLLY:これまでのユニットとは全然違いますね。バンドの結束も凄く堅いし、このアルバムのトラックダウンと並行して次のアルバムをレコーディングしようとしてましたから。佐藤さんもロジャーさんもとにかく演奏が巧いし、ずば抜けてセンスがあるから話が早いんですよ。スタジオに入ってから新たに曲を作らなくてはいけない状況でも、この3人ならスムーズに事が運べるんです。

とにかくやりまくるだけやりまくる

──スタジオで書き下ろされた新曲というのは?

ROLLY:「大卍絵巻」ですね。僕は雅楽が好きで普段からよく聴いているんですけど、それがTHE 卍の原点なんです。遠くから聴こえる祭り囃子のような雅楽と言うかね。雅楽がふと聴こえてきて、近くの神社で祭りがやってるんだと思って行ってみたら、雅楽が聴こえるだけでそこには誰もいない...あるのはからくり人形だけという不気味さ。そういうものをずっと表現したかったんですね。レッド・ツェッペリンの「In The Light」という曲は実は凄く雅楽に似ていて、雅楽とレッド・ツェッペリンを組み合わせたものを「大卍絵巻」でやろうと思ったんですよね。それで佐藤さんはチェロ、僕はハーディ・ガーディ(胴の下端にあるハンドルで回転させ、弦を擦って演奏する楽器)を弾いてるんです。関ヶ原の戦場で矢が突き刺さった屍があちこちに転がっていて、月明かりが射す中に煙が立ち込め、卍型のUFOが飛来するというイメージだけ2人に伝えて、後は即興で一発録りしました。

──なるほど。雅楽とロックにはどこか不穏な空気や不気味さという共通項があったわけですね(笑)。

ROLLY:雅楽とブラック・サバスにも共通項を感じますしね。THE 卍のテーマは恐怖なんですよ。恐怖なんだけど根がアホなので、どこか笑えてしまう部分があるんです。

──「甘い誘惑」という曲は一見爽やかなアコースティック・ナンバーなんですけど、やっぱりどこか気持ち悪いんですよね(笑)。

ROLLY:そうですよね。それと、「I Love Me (Great Me!)」はマルベリーズというバンドのカヴァー曲で、僕はマルベリーズを日本一のナルシスト・ロック・バンドと呼んでいるんです。オリジナルを聴いたら余りに最高で、是非カヴァーしたいと彼らに伝えたんですよ。彼らの酷く下世話な感覚に自分と同じ匂いを感じたんですね。笑える要素もちゃんとあったし。

──でも、今どきここまで徹頭徹尾ロックであることにこだわり抜いたアルバムも珍しいし、純粋にとても聴き応えのある内容だと思いますよ。

ROLLY:そう言って頂けると嬉しいですね。今はレコーディング技術も凄く発達してるし、どんなバンドでもある程度ハイファイな音を構築できるんですよ。そこを我々は敢えて昔気質なロック・バンドのレコーディング方法と音質に際限までこだわったので、凄く音圧のある今風のサウンドに慣れた人はスカスカに感じるかもしれないけど、気に入ってもらえたらとても嬉しいですね。まぁ、最近のJ-POPみたいに誰しもが共感できる歌詞ではないだろうし、僕の目標としては決して共感してくれるなっていうところだし(笑)、とにかくこのTHE 卍に関してはセールスのことは何も考えずにただ自由奔放にやらせてもらってますね。

──ROLLYさんがTHE 卍で体現しているのは、ロックンロールの持つある種のファンタジーを貫いていることだと言えますよね。

ROLLY:それは上手い言い方ですね。THE 卍は言ってみれば完全に自分の趣味だし、でもだからこそ純度の高いロックンロールを奏でることができると思うんです。それを小さなライヴハウスを回って対バン形式で披露したいんですよね。ワンマンでライヴをやるのも楽しいけど、それだと自分のお客さんしか来ないから広がりがない。それよりも、僕らのことをよく知らないお客さんの前でこのアホでヘンテコなロックンロールを披露して笑って欲しいわけですよ。佐藤さんがよく「仲良く10年続けるよりも、THE 卍でやれることをやり尽くしたら解散しよう」って言うんです。その潔さは凄くバンドっぽいし、このTHE 卍としての活動をやりまくるだけやりまくろうと今は思っていますね。


THE 卍

SMA Players Inc. SAPC-0002
3,150yen (tax in)
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01. ロックンロール中学生
02. Route 171
03. 大卍絵巻(序)
04. 卍 Part1
05. 卍 Part2
06. 卍 Part3 あなたはだあれ〜別荘の怪事件〜
07. 甘い誘惑
08. サボテン
09. 卍航空隊讃歌
10. 初恋
11. 大卍絵巻
12. I Love Me (Great Me!)
13. good night

LIVE INFOライブ情報

『卍』レコ発列島縦断。大卍絵巻第一巻
5月10日(土)埼玉県:HEAVEN'S ROCKさいたま新都心VJ-3
5月11日(日)千葉県:千葉LOOK
5月15日(木)栃木県:HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
5月17日(土)埼玉県:HEAVEN'S ROCK Kumagaya VJ-1
5月18日(日)茨城県:水戸LIGHT HOUSE
5月20日(火)神奈川県:F.A.D YOKOHAMA
5月24日(土)京都府:京都磔磔
5月25日(日)兵庫県:神戸WYNTERLAND
6月13日(金)宮城県:仙台LIVE HOUSE enn
6月14日(土)岩手県:盛岡Club Change WAVE
6月21日(土)長崎県:長崎DRUM Be-7
6月22日(日)福岡県:福岡ROOM
6月28日(土)北海道:札幌Sound lab mole
7月18日(金)愛知県:名古屋TOKUZO(ONE-MAN)
7月20日(日)静岡県:静岡sunash
7月21日(月・祝)大阪府:心斎橋CLUB QUATTRO(ONE-MAN)
7月22日(火)東京都:Shibuya O-EAST(ONE-MAN)

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