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INTERVIEW

トップインタビューDE DE MOUSE('08年4月号)

美しい郷愁を誘い込むメロディ
オリエンタルに彩られた『sunset girls』の魅力

2008.04.01

昨年、1st アルバム『tide of stars』をリリース。美しい郷愁を誘い込むメロディと、先鋭的なエレクトロニカ、テクノのエッセンスを交えたトラックメイクにより、数多くのクリエイター(大沢伸一、フルカワミキ、木村カエラ、一十三十一)などに支持された"DE DE MOUSE"。2nd アルバム『sunset girls』は、メロディの力がさらに大きくなり、より広いフィールドにアピールする魅力をたたえた作品に仕上がっている。ジブリ、フュージョン、ボーイ・ミーツ・ガールといったキーワードがちりばめれた本作は、DE DE MOUSEの存在を飛躍的に高めていくことになるだろう。(interview:森 朋之)

音楽は相手がいないと成立しない

──とにかくメロディが素晴らしいアルバムだな、と。

「あ、ありがとうございます」

──あの、ポップスって好きですか?

「うん、好きですよ。というか、小さいころに意識しないまま聴いてる音楽って、わりとメロディがあったり、歌があったりするじゃないですか。影響かどうかはわからないけど、そういう音楽は記憶のどこかに残ってると思うんです。もともとはもっとかっこつけた音楽をやってたんですけど、あるタイミングで"これは自分に対して素直じゃないな"って思ったんです。そこからですね、今みたいな感じになってきたのは。テクノって言われる音楽と、ポップスの要素が交じってきたというか。」

──以前はそこまでメロディにこだわってなかった?

「むしろメロディを排除しようとしてました。高校生のときにエイフェックス・ツインを聴いて、"すごい。曲って、ここまで直感的に作っていいんだ?!"って思ったんですよ。高尚なものを求めて、"こんな音楽がアートだ"って勘違いしてて......。そういう時期って、だいたい誰にでもあると思いますけど。」

──そうですね。じゃあ、10代のころはもっと前衛的でアブストラクトな音楽を?

「そう。でね、リフレックス(・レコード/エイフェックス・ツインのリチャード・D・ジェイムスらが中心となって立ち上げられたレーベル)に、ノートの切れ端に描いた気持ち悪い絵と一緒に音源を送ったら返事が来たことがあるんですよ。可能性があるから、もっと曲を書いて来い、って。」

──おお、すごいじゃないですか!

「でも、それからいきなりリフレックスを意識しちゃって、自分らしい曲が作れなくなっちゃってグダグダしてたんです。」

──グダグダって言うと?

「CMの音楽とか、音楽系の仕事をするようになったんですよ。でも、こっちは若くて経験もないし、だんだんプレッシャーに耐えらなくて、自分から"ごめんなさい"したんです。自分のやりたいことをやる時間もなかったし。でも"ここからはもっとがんばらないと、ちゃんと音楽をやっていけない"っていうのはわかってるんだけど、どこか尻込みしちゃうというか、スランプ状態になっちゃったんです。袋小路ですよね、まさに。」

──そこで自分の方向性を見直すことになった、と。

「そうですね。エイフェックス・ツインみたいな感じでやろうと思っても、そういう方向ですごい人って世界中にいっぱいるし、直接そのジャンル好きの人から"全然甘いから"って言われたこともあって。このままでは、コア層受けする人には太刀打ちできない。それが本当に自分のやりたいことだったのか、って疑問にも思って。だったらもっとポピュラリティのある音楽をやったほうが向いてるんじゃないかって。やっぱりね、相手がいないと成立しないものなんですよね。どんなに"好きだからやってんだ、わかってもらえなくてもいいんだ"って言っても、心のどこかで"この世界のどこかに自分の音楽を理解してくれる人がいるはずだ"って思ってるはずだから。完全に自分のためにやってる人は、たぶんいないと僕は思ってます。」

──そうですよね。

「だから、その気持ちをどこまで出すか、ですよね。そういう挫折を乗り越えて、1st(『tide of stars』)があるというか。」

──なるほど。

「要はわかってなかったんですよ、自分がやりたいことと、世の中が求めていることの距離感が。でもライブの後で感想を聞いたりすると、"あのメロウな曲、良かったね"っていうのが圧倒的に多いんです。そういう経験を重ねる中で"みんなが求めてるのは、こっちなのかな"ってわかってきて、1stに関しては正直言ってどこまで反応があるかわからなかったんです。でも、思いのほか、たくさんの人が反応してくれて、それが自信につながってるところはありますね。まさか自分が、ここまでたくさんメロディを作るとは思ってなかったけど。」

DE DE MOUSEとしてやるべきこと

──今回のアルバムに関してはどうですか? 1st のリアクションを受けて、"DE DE MOUSEとしてやるべきこと"はさらに明確になってた思うんですが。

「前回は"宇宙"とか"夜"っていうイメージだったから、今回は青空だったり陽射しだったり、そういうものが感じられるアルバムにしたかったんですよ。でも実際に曲を作ってみたら、なぜか夕方っぽい雰囲気の曲が多くなってきて、それに合ったストーリーを自分で考えたんです。そこから全ての曲を作り直したから、結局は突貫工事になっちゃったんですけどね(笑)。」

──アルバムを作るにあたって、一貫したストーリーが必要だった?

「そうだったんでしょうね。"コレ!"っていう指標がないと、どうしてもアブストラクトな方向に行きがちなんですよ。アルバムの中の役割をはっきりさせて、設計図を作らないと、どこに向かいたいのかわからないような曲ばっかり出来ちゃうので......。昔、よく言われてたんですよ、何がやりたいのかわからないって(笑)。」

──グダグダ時代の反省を活かしつつ。

「そうですね。実際、ストーリーに準じた曲名と曲順になってるし。それを文字にしてリスナーに伝えるつもりはないんですけど、自分の中にはハッキリとあるんですよ。それがコンセプトになってるとは思いますね。架空のサウンドトラックっていうのはカッコ悪くてイヤなんだけど(笑)、映像は浮かびやすいんじゃないかなあ。」

──そう、タイトルと曲の雰囲気がめちゃくちゃ合ってるんですよね。『hill girl steps』も『light night dance』も、"まさにそんな感じ!"って思いました。

「そう、曲名だけですべてわかってもらえるかなって。アルバムのタイトル(『sunset girls』)も直球なんですよね。そうすると今度は、"なんのヒネりもないね"とか"単純だね"って言われちゃうんですけど。」

──いいじゃないですか、わかりやすくて(笑)。CDジャケットには女の子2人が手をつないで走ってるイラストが描かれてますよね。これも、アルバムのストーリーと重なってるんですか? "サンセットガールズ"というタイトルが示す通り。

「えっと、はい、そうですね。単純なんですよ(笑)。ボーイ・ミーツ・ガールだったり、その物語の中で少女が成長していく感じだったり。好きみたいですね、そういうのが。さっきの音楽の話もそうですけど、映画も"ちょっと難しいものがカッコいい"って時期があるじゃないですか。でも最近は、見終ったあとに"いいな"って素直に思えるものに惹かれるっていうか、そういう単純なストーリーの中に、どこまで思い入れを入れられるかっていうところですよね。」

──メルヘンっぽい要素も入ってる?

「どうですかね? 子供のころは女の子っぽいものよりも、普通にロボットとかが好きだったんですよ。かっこいい男の主人公が出てきて、どかーんと爆発するような(笑)。よくインタビューで"ジブリが好きです"って言ってるんだけど、小さい頃は別に好きじゃなかったんですよね。子供にはけっこう重くて暗い話が多いし、かっこいい男の主人公は出てこないし。」

──基本的に女の子の話ですよね、宮崎駿って。

「そう。ジブリの良さがわかってきたのは、高校生くらいになってからじゃないかな。だから今回のアルバムには、思春期くらいに好きだったものが入ってるのかもしれないですね、恥ずかしげもなく。1st って、もっと子供のときの感覚だったりするから。」

ホームセンターで薄く流れてるようなフュージョン

──すごくオリエンタルなイメージのメロディも特徴だと思うんですけど、そこは意識してました?

「ものすごく意識してました。たとえば『となりのトトロ』の『風のとおり道』みたいな感じの...。よりオリエンタルなのを求めていった時、あれはフュージョンなんだって気付いた。そういう方法は今回のアルバムにもかなり入ってますね。使ってるコードも多めだし、転調があったり、シンセソロっぽいのが入ってたり。」

──フュージョンっていう発想がめちゃくちゃおもしろいですよねえ。

「友達ともよく話してるんですよ、"そのうちフュージョンが来るだろう"って。メロウな甘いR&Bよりのフュージョンよりも、僕が好きなフュージョンは郊外のホームセンターで薄く流れてるようなのってあるじゃないですか。メロディをシンセで追ってるやつ。あれなんですよね。」

──スーパーとかでも流れてますよね。

「そうそう(笑)。ある100円ショップでリラクゼーションCDっていうのが売ってたんですよ。"エターナル"とか"パッション"とかタイトルが付いてるんだけど、中身はほとんど同じなんです(笑)。"パッション"はちょっとパーカッションとかが多めなんだけど、"エターナル"と"スフィア"は何が違うのかわかんない。」

──それ、フュージョンっぽいBGMなんですか?

「そうですね。一時期、それしか聴いてなかった時期もあって。いいんですよ、あれ。」

──(笑)ホームセンターって、子供のときの記憶に繋がっていたりするんですかね?

「まさにそうです。繋がっちゃうんですよ、どうしても。ホームセンターの端っこって、暖房が効いててもなぜか寒い、あの感じとか。あと、売り物のクッションとかベッドにドーンと寝転がってるときに聴こえてくる音楽とか...。この話をすると"君、暗いねぇ"って言われちゃうんですけど、小さい頃から、昔の写真を見るのが好きだったんですよね。自分が赤ちゃんのときの写真とか、僕が生まれる前のお父さん、お母さんの写真とかを見て、"そうか、この頃ってこんな感じだったのか。今とは違うな"だったり"ここに入ってみたいな"って思ったり。写真の中には確実に存在しているのに、今はもうなくちゃってる。それがすごく不思議だったんですよね。」

──ノスタルジックな気持ちに浸ってた?

「そうかもしれないですね。"このとき、僕はまだ生まれてない。ということは、この写真の中に入り込めたとしても、お父さんとお母さんは気付いてくれないだろうな"って思って、勝手に寂しくなったり(笑)。それはたぶん、小さい頃に見てた夢のトラウマだと思うんですけどね。」

──どんな夢なんですか?

「自分が生まれる前の世界に入り込んじゃうんですよ。"これは現実じゃない"ってわかってるんだけど、どうしたら目が覚めるのかわからなくて、すごく寂しい思いをするっていう。で、目が覚めると、隣に両親がいるでしょ? そこで"ああ、良かった"って思うんですよね。その経験をずっと引きずってるような気がしますね。」

──なるほど...。その夢の体験って、『sunset girls』のメロディにものすごく反映されてますよね。寂しさとホッとする感じと郷愁がひとつになってる。

「あ、それを感じてもらえると嬉しいです。そう思ってるのは僕だけかな、って思ってたから。」

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