Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューカトウタロウ(BEAT CRUSADERS)×永友聖也(キャプテンストライダム)('08年4月号)

泣く子も黙る世界屈指のロックンロール・バンド、AC/DC!
日本人アーティスト総勢14組による初のカヴァー・トリビュート・アルバムが堂々の完成!

2008.04.01

'73年11月の結成から35年という長きにわたって全世界に悪魔の招待状を叩き付け、そのハイ・ヴォルテージなロックンロール・ハリケーンでオーディエンスのロック魂を激しく揺さぶり続ける豪州産怪物バンド、AC/DC。素敵な問題児であり53歳にして現役のスクール・ボーイ、アンガス・ヤングの誕生日である3月31日に合わせて、日本のミュージシャン総勢14組の手によるカヴァー・トリビュート・アルバム...その名も『THUNDER TRACKS』(『THUNDERSTRUCK』に非ず!)が発表された。AC/DCの放つ地獄のロックンロールを存分に堪能できるライヴ・アルバム『LIVE』と同じ選曲、同じ曲順でカヴァーするという徹底っぷりが何とも心ニクい本作の監修を務めたのは、『地獄のハイウェイ』ならぬ『地獄のPOP示録』の体現者、異能のお面集団ことビート・クルセイダースのギタリストであるカトウタロウ。アンガスに憧れてスクール・ボーイ・ルックに身を包み、遮二無二ギブソンSGを奏でる彼を置いて、他に誰がAC/DCの放射するバッド・ボーイ・ブギの真髄を世に知らしめられるというのか!? 参加ミュージシャンのAC/DCに対する溢れんばかりの愛情が流血の叫びの如く伝わるこの『THUNDER TRACKS』を巡り、AC/DCという地獄の絆によって堅く結ばれたカトウと永友聖也(キャプテンストライダム)の両名にAC/DCの魅力を余すところなく語り倒してもらった。さァ、仲間喧嘩はやめてキャント・ストップ・ロックンロール!!(interview:椎名宗之)

衝撃だったアンガスのスクール・ボーイ姿

カトウ:永友君と最初に会ったのは"スペ中"(『熱血!スペシャ中学』)だったよね。永友君が54期生で、オレが転校生っていう設定で。2005年の秋頃だったかな。

永友:そうそう。確かその収録の前日にタロウ君がリキッドルームの楽屋までわざわざ挨拶しに来てくれたんだよね。僕らのライヴはもう終わってたんだけど(笑)。

カトウ:そうだったね(笑)。永友君とは歳も同じで、学年で言うと昭和50年組なんですよ。

──お2人とも現在32歳ということは、最初に出会ったAC/DCのアルバムはどの辺りになるんでしょう。やっぱり『LIVE』('92年発表)とか?

カトウ:オレは『THE RAZOR'S EDGE』('90年発表)ですね。曲で言うと「THUNDERSTRUCK」。あの曲で初めて音と映像がすべてリンクしました。永友君は?

永友:リアルタイムだと『BALLBREAKER』('95年発表)だね。あのアルバムに来日公演実現の署名葉書が付いてたんですけど、当時は結局来られなかったんですよね。

カトウ:その後6年掛かるとはね(笑)。

永友:ホントだね(笑)。ただ、『BALLBREAKER』の頃はそれほど熱心に聴いてなくて、本格的に好きになったのは大学に進学してからなんです。同じサークルにAC/DCのコピー・バンドがいて、彼らの演奏を学祭で観て凄く楽しい曲だなと思って。コピバンでこれだけ楽しいんだから、本物はどれだけ凄いんだろう? と思って、そこから興味を持って聴き始めたんですよね。

カトウ:オレは『YOUNG GUITAR』や『BURRN!』を見た時に"何じゃコレは!?"と思ったのが最初でした。ちょうど『THE RAZOR'S EDGE』が出る頃くらいかな、アンガス・ヤングのスクール・ボーイ姿がとにかく凄い衝撃だったんですよ。だって、"これはコミック・バンドなのか!?"と勘違いするくらいのルックスなわけじゃないですか?(笑) 当時の『YOUNG GUITAR』や『BURRN!』に出てくるバンドはもっとマッチョイズムだったり、煌びやかなイメージでしたからね。

永友:イングヴェイ・マルムスティーンやヌーノ・ベッテンコートがギター・ヒーローの時代だもんね。

カトウ:そうそう。それに比べてアンガスは、ブレザーに半ズボン姿でランドセルを背負ってるわけですよ(笑)。だから、最初はどちらかと言うとAC/DCを聴くのが後回しになってたんですよね。ただ、'91年の大晦日に東京ドームで行なわれた『FINAL COUNTDOWN』というメタリカをヘッドライナーとしたライヴを観に行ったことがあって、それに出てたサンダーのオープニングSEが「THUNDERSTRUCK」だったわけです。それがメチャクチャ格好良かった。その翌月に出た『BURRN!』のライヴ・レポートに「サンダーのSEはAC/DCの『THUNDERSTRUCK』だった」って書いてあって、AC/DCに対する認識がガラッと変わったんですよね。それと同時期に「MONEYTALKS」のPVが当時流れてて、それも凄く格好良かったんですよ。

永友:ああ、札束が降ってくるヤツだね。

カトウ:うん。それを観て、永友君と一緒で"何て楽しいんだろう!"と思って。格好イイ上に楽しいっていう。その時に聴かず嫌いは勿体ないなってホント思いましたよね。で、友達とCDを買い合いっこするわけです。

──買い合いっこ?

カトウ:ええ。中高生の頃は小遣いも少ないし、バラけても仕方ないから、バンドごとにCDを買う役割分担をするんですよ。「お前はアイアン・メイデンで、オレはAC/DCな!」っていう。

永友:ああ、そういうのあったね。僕が竹内まりや担当で、友達が中島みゆき担当でアルバムを集めてたことがあるよ(笑)。

カトウ:そりゃまた、凄く渋い話だねェ!(笑)

永友:中島みゆきのほうが圧倒的にアルバムの枚数が多いから、僕は楽だったんだけどね(笑)。

──永友さんは、当時19年振りの来日だった'01年のライヴを横浜アリーナでご覧になったんですよね。

永友:そうですね。'01年の2月20日のことでした。

カトウ:羨ましい限りです...。オレは不届き者で、当時やってたバンドのツアーがあって行けなかったんですよ...凄く悔しかった!

永友:今までに観たあらゆるライヴの中でも、ライヴが始まるまでの緊張と興奮があれほど凄まじかったものはないですね。始まってしまえばホントにアッという間だったんだけど。

カトウ:そうだったみたいだね。後追いで読んだいろんな人のブログによると、30代〜40代の年季の入ったファンが短パンにジャケット姿で何十人も集まってたんでしょ?(笑)

永友:いたいた(笑)。ライヴが始まる前に観客がムチャクチャ興奮してるあの感じは、後にも先にも味わえないかもなって思いましたね。SEでストーンズがずっと流れていて、1曲終わるごとに地鳴りのような大歓声が巻き起こるんですよ。ストーンズの曲なのにみんなで大合唱したりして(笑)。あれは異常な雰囲気でしたよ。やっぱり、19年分の期待がそこに籠もってたんでしょうね。

カトウ:19年も溜め込んでたら、凄まじいモノが放出されるでしょうね...特に男性はね(笑)。

永友:うん、もの凄く濃厚だったからね(笑)。


あの偉大なるマンネリズムに感服!

──AC/DCの楽曲はどれも似たような感じの金太郎飴状態だし、"HR/HM界のラモーンズ"みたいなところがありますよね。でも、そんな金太郎飴的な音楽をやり続けることの凄さをバンドマンのお2人なら充分に理解されていると思うんですが。

カトウ:そう、あの偉大なるマンネリズムには感服です。何て言うか、AC/DCには"裏切らない裏切り感"みたいなものがありますよね。オレ達は欲張りだからもっといろんなことにチャレンジし続けていきたいという"進化"を求める部分があるけど、AC/DCは自らの音楽性を突き詰めていく"深化"を続けてきたバンドだと思うんです。

永友:そうだね。バンドをやってる人間にはAC/DCのようなスタイルに憧れるところが必ずあると思う。誰にでもできることじゃないし。

カトウ:ヘタすると飽きられちゃうからね。でも、飽きられることを恐れずに自分達の音楽をどんどん掘り下げていく信念と潔さがAC/DCにはあるんですよ。バンドはおろか、ファンまでがどんどん深いところまで辿っていくのはホントに凄いと思いますね。

永友:ボブ・ディランのように、時代によって音楽性が全然違うのとは対極にあるわけだからね。AC/DCの変わらなさは、30年経ってようやくその凄さが判る部分もあると思う。

カトウ:AC/DCって、ウイスキーに喩えるなら"山崎"的なところがあるよね。「何も足さない、何も引かない」っていう(笑)。

──ああ、ちょっとピュア・モルトっぽいのかもしれませんね(笑)。

カトウ:つまり"ピュア・モルト・バンド"ってことですね、AC/DCは(笑)。あと、なかなか情報が入ってこないことも過小評価に繋がってる気がしますね。7年前の来日以降、情報らしき情報がドーンと入ってくることもないし、今どこで何をやっているのかが全然伝わってこない。きっとバンド自体もそういう情報を進んで出さないんだろうけど、動きが見えづらいんですよ。以前、伊藤政則さんとお会いした時に伺ったんですけど、海外のバンドは来日公演をやらないと人気に結び付かないそうなんです。ロック鑑定士の金子ヒロムさんも同じことを仰ってましたね。

永友:アメリカやヨーロッパでやるスタジアム級のツアーと同じ規模で日本でライヴをやろうと思っても、会場のキャパシティや消防法の問題もあって、余計に難しいんじゃないですかね。

カトウ:そんな状況だから、日本におけるAC/DCの評価が釈然としないのも仕方ねェかな? と思う部分も悔しながらあるんですよ。だったら、日本人がもっとAC/DCの音楽に興味を持つようになるにはどうすればイイかを考えなきゃダメだな、と。

──そうして考えた末に思い立ったのが、日本のミュージシャンによるカヴァー・トリビュート・アルバムを作ることだったわけですね。

カトウ:そういうことです。音を伝える作業を別の形でやればイイんじゃないかと思ったんですよ。AC/DCの楽曲そのものを聴かせる前に、まず自分達がカヴァーして"オレ達はこういう音楽を面白いと思ってるんだけど、どう?"って提示すれば話が早いんじゃないかって。

──この『THUNDER TRACKS』のようなアルバムを作る舵取りは、普段からアンガスのコスプレをしているカトウさん以外に適任者はいませんよね。

カトウ:そう言って頂けてホントにありとぅ〜す! こういうAC/DCの企画アルバムも日本では今までなかったですからね。オレがアンガスの格好をして認知をされているのは、多分AC/DCのロゴがファッション的に先行している部分もあると思うんです。あのロゴが独り歩きしていて、AC/DCを知らない人でもバンドのぼんやりとしたイメージがすでにインプットされているんじゃないかな。

永友:AC/DCを聴いたことがないと思しき女の子がAC/DCのTシャツを着てたりするしね。

カトウ:そうなんだよね。で、まァとにかく、去年はカタログが紙ジャケで再発されたり、貴重な映像がふんだんに盛り込まれた『PLUG ME IN』というDVDも出たりと、AC/DC再評価の気運が高まってるこの時期に『THUNDER TRACKS』を出せて凄く良かったと思います。

永友:ここでブームに乗り切らないと、また30年待たないとダメかもしれないし(笑)。

カトウ:この先30年なんて言ったら、80歳を超えるメンバーも出てくるからね(笑)。

原曲のアレンジをバラすのは至難の業

──『THUNDER TRACKS』が秀逸なのは、単純に参加ミュージシャンの好きな楽曲ばかりを収めるのではなく、『LIVE』という傑作ライヴ・アルバムと同じ選曲、同じ曲順で構成されていることなんですよね。

カトウ:ありとぅ〜っす! まず単純に、あれだけのアルバムを発表しているバンドだから、選曲するにも相当迷うと思ったんですよね。

永友:今日に至るまで1枚もベスト・アルバムを出してないしね。その代わり、『LIVE』がある種のベスト・アルバムと言えるのかもしれないけど。

カトウ:そうだね。膨大な曲数の中から絞り込んで参加をお願いしたら収拾が付かないだろうし、曲も被ると思ったんですよ。スタジオ・アルバムの魅力ももちろんたっぷりあるけど、それを上回る魅力がライヴにはあるわけだから、ベスト・アルバムとしても聴ける『LIVE』と同じ構成にすれば間違いないだろうと考えたんですよね。で、ビート・クルセイダースのメンバー全員で誰に参加して欲しいか話をしながら進めていったんです。

永友:僕はタロウ君から直接電話を貰いましたね。声を掛けてもらって凄く嬉しかったですよ。

──ビート・クルセイダースとキャプテンストライダムを筆頭に、奥田民生さん、斉藤和義さん、少年ナイフ、レイザーズ・エッジなど、よくぞこれだけ音楽的にもキャリア的にも幅広い面子が揃いましたよね。

カトウ:イイ意味でバラバラな顔触れがよくこれだけ集まってくれたなと思います。凄くヴァラエティに富んでいるし、それぞれの持ち味も十二分に出してくれている。あと、こうして曲順が並んだのを見ると、凄くイイ流れになっているんですよね。「この曲でやって下さい」ってこちらからお願いをしたわけじゃないのに。だからきっと、曲を選ぶ段階で"面子も含めて全体の流れを考えると、このタイミングで自分達の出番だから、こういうアレンジが入ったら面白いだろう"ってそれぞれが考えてくれたんじゃないかと思うんですけど...そこんとこどうすか?(笑)

永友:ははは。タロウ君が電話をくれた時に「僕達は『THUNDERSTRUCK』がやりたい」って言ったら、それはもうビート・クルセイダースが録ったと聞いて(笑)。

カトウ:1曲目の「THUNDERSTRUCK」をウチが引き受けないとダメだなと思ったんですよ。言い出しっぺが最初にやらないと全体が歪んじゃうとも思ったし。みんながやりたいと手を挙げる曲のひとつだろうけど、申し訳ないと思いつつも「スイマセン、やっちゃいました!」って言おうと決めたんです(笑)。

永友:タロウ君が言うように、流れは考えてましたよ。僕らがカヴァーした「SHOOT TO THRILL」は2曲目で、"ビート・クルセイダースならこう来るだろうな"ってサウンドをイメージしながらアレンジを考えたところはありますね。ビート・クルセイダースの「THUNDERSTRUCK」はビークル節が凄く効いているし、ビート・クルセイダースが好きなキッズにもウケるんじゃないですかね。

カトウ:正直、「THUNDERSTRUCK」のアレンジには凄く悩んだんですよ。AC/DCの元々シンプルなアレンジを一度バラすのは至難の業で、凄くデリケートなことなんですよ。

──元々がシンプルの極みと言うべきサウンドですからね。

永友:そうですね。リフで出来てる曲だから余計に難しい。

カトウ:そのリフで出来ててシンプルこの上ないっていうのが、日本で音楽的に広まっていかない理由なのかな? とも思ったんですよね。だから、メロディはコードの当て方次第で聴こえ方が全然変わってくるので、そういうことをやってみようと。一番耳に残るフレーズを抽出して、そこにどういう肉付けをしていこうかって考えたんです。要するに、曲を一度完全に骨の状態にしてみたんですよ。

永友:ああ、なるほど。そこまで徹底してやったんだ。

カトウ:うん、やってみた。でも、最初にオレが持っていったアレンジは2秒でボツになったんだけどね(笑)。

永友:僕らの「SHOOT TO THRILL」も、最初に作ったアレンジは原曲を変えようとしすぎちゃって、僕の好きなAC/DCのテイストがなくなってしまったんですよ。自分達らしさを出そうと意識しすぎたんでしょうね。

カトウ:そこは凄く難しいよね。でも、ウチはキャプテンストライダムの「SHOOT TO THRILL」を聴いて"やりやがったな!"と思いましたよ。おどろおどろしい妖怪感をしっかり出してきやがったな! って(笑)。


各人の"ブシ"が詰まったカヴァーの妙

──自称・妖怪博士の永友さんとしては面目躍如といったところですね(笑)。

永友:AC/DCはビデオを観て好きになったし、ヴィジュアルから入っていったというのがあって、とにかく楽しい音楽だというのを知ってもらいたかったんですよね。理屈抜きに踊れるし、身体で感じて楽しい音楽だというのを知って欲しくて、日本の祭り囃子の楽しさをミックスして伝えようと思ったんですよ。

カトウ:吉幾三さんの唄う「ゲゲゲの鬼太郎」みたいに"楽すィな"的テイストもちゃんとあって(笑)、やるなァ! って思ったよ。そのキャプテンストライダムのアレンジも含めて、参加してくれた各アーティストがそれぞれの"ブシ"を上手いこと入れつつ形にしていますよね。もう見事としか言い様がないですよ。ちなみに、どのアーティストのアレンジに驚きました?

──どれも甲乙は付け難いですけど...最初に聴いて"こういう解釈もアリか!"と思ったのは、タッカーさんの「YOU SHOOK ME ALL NIGHT LONG」ですかね。ああいう軽妙なラウンジ風の楽曲に生まれ変わるなんて思いもよらなかったし。

カトウ:ああ、やっぱり。あれは凄いですよね。アルバムの流れを考えて、"聴く人がこの辺で一息入れたくなるんじゃないか?"と想定しているようなショート感もあって、さすがだなと思いましたよ。タッカーさんって実はギターもメチャクチャ巧いから、ギターを入れようと思えば入れられたはずなんですよ。そこを敢えてハズしてああいうアレンジになっているのが心ニクい。

──タッカーさんと奥田民生さんは、全楽器を独りでプレイするという離れ業をやってのけているのが凄いですよね。民生さんの「WHOLE LOTTA ROSIE」のクレジットを見たら、ギターが"MALCOM OKUDA"と"ANGUS OKUDA"、ヴォーカルが"BON OKUDA"、ドラムが"PHIL OKUDA"、ベースが"MARK OKUDA"と勢揃いでしたけど(笑)。

カトウ:そうそう(笑)。斉藤和義さんもそうなんですけど、民生さんのもビックリでしたよね。皆さんに誘いの連絡を入れたのが、年末の忙しくなり始める頃だったんですよ。民生さんもそんな時期に声を掛けさせてもらったんですけど、「やるよ」と言ってくれてからの仕上がりの早さったら尋常じゃなかったんです。しかも、いざ聴いてみたら"クッソッ〜! ギターうめェしよォッ!!"って悔しくなるくらいの出来で。ギターはもちろん全部の楽器が巧いし、どの音も凄くイイんですよ。

永友:僕は『COUNTDOWN JAPAN 07/08』の楽屋でその前日に宅録したっていうMDを聴かせてもらったんですけど、民生さんのカヴァーは完全に横綱相撲でしたよね。

カトウ:ホントだよね。余りの凄さに思わずM字開脚になりましたもん!(笑)

──エレクトリック・イール・ショックが冒頭のMCまで完コピしていたのはのけ反りましたけどね(笑)。

カトウ:バカですよねェ、ホントに。「バカ!」って言われたくてやってるとしか思えませんね(笑)。あと、スクービー・ドゥーも凄く早かったんですよ。参加OKを貰った翌日の夕方には「録れたんだけど、どうしよう?」って連絡がありましたから。「どうしよう?」って、こっちが「どうしよう?」って訊きたいほどの早さだったんです(笑)。

永友:この間、MOBY(オカモト"MOBY"タクヤ)に会った時に「AC/DCのトリビュート、どう録った?」って訊いたら、「リハスタで一度原曲を聴いて構成をメモって、いきなりスクービー流にやってみた」って言ってましたよ。スクービーはバンドの色が確固としてありますけど、僕らやビート・クルセイダースは捉え所のなさがあるから今回も試行錯誤したのかもしれませんね。

カトウ:ウチらは皆欲張りで、いろんなことに手を出しちゃう節操のないところがあるからね。いつまでも子供なんです(笑)。

──フェッド・ミュージックの洒脱なアレンジも光っていますよね。

カトウ:「MONEYTALKS」がまさかあんなにそよ風系の音楽になって返ってくるとは(笑)。やっぱりセンスなんだなって思いますよね。それと、ファクトのアレンジも良かったなァ。最後にフワーッと力が抜けていく感じと言うか、ああやって爽やかに終わると、また最初から聴きたくなると思うんですよ。とにかく、どのカヴァーも"やられた!"って感じるものばかりでしたね。今までもいろんなトリビュート・アルバムに参加してきましたけど、"やられた!"って思えるのが嬉しいし、イイ刺激になるんですよね。他のアーティストのカヴァーを聴いて"クソーッ、そう来たか!"と思えたら、こっちもまた違ったことをやりたくなるんです。

永友:トリビュート・アルバムは参加アーティストの愛情に溢れたものだと思うし、他のアーティストのカヴァーでそれを感じられたら素直に嬉しいですよね。

ロックし続ける間はいつでも童心に返れる

──これはお世辞でも何でもなく、この『THUNDER TRACKS』は近年稀に見る深い愛情に満ちたトリビュート・アルバムだと思いますよ。参加した顔触れが心底AC/DCのことを大好きなのが手に取るように窺えますから。

カトウ:そう言ってもらえてホントに良かったと思います。これは永友君のキャプテンストライダムを始め、参加してくれたみんなのお陰ですよ。

──今回こうしてご自身でカヴァーしたり、他のミュージシャンがカヴァーしたものを聴いて改めて感じたAC/DCの楽曲の特徴とはどんなところでしょう。

カトウ:ただ一言、"強い"ということに尽きますね。楽曲のパンチがとにかく強いから、カヴァーしようとするとウチみたいに分解するか、その逆にこってり行くか、どちらかに振り切らないとダメなんですよね。

永友:そうなんだよね。あと、とにかくキーが高い(笑)。リフと歌の旨味が原曲にはあるので、リフの旨味を残すにはオリジナルのキーで唄うかオクターブ下げるか、どっちを取るかで凄く悩んだんですよ。結局は無理矢理唄うことにしたんですけどね。だから今回のカヴァーは、自分でも聴いたことのない歌声なんです。キャプテンストライダムでもやったことのない、僕の声のピークが記録されているんですよ。

カトウ:新境地だよね。声の出なくなったブライアン・ジョンソンが無理矢理唄い続ける感じがよく出てると思うよ(笑)。ウチはキーを変えましたけど、そういう解釈を敢えてしてみたんですよ。AC/DCって金太郎飴的ではあるけれど、実はどうにでも解釈できる懐の深いバンドですからね。

永友:そうだね。ブルースと一緒で枠組みが決まってるから、その枠組みをクリアすれば後は自由にできるんですよ。コードを3つ覚えれば中学生でも弾けるほどシンプルな楽曲なんだけど、3コードという不変の型があるからこそ自由に演奏できる。

カトウ:それと改めて思ったのは、AC/DCはズバ抜けて秀逸なダンス・ミュージックだったということ。とにかく踊れる音楽なんですよ。マルコムの奏でるリズム・ギターは凄くシーケンス的だしね。あのリフはヒップホップのサンプリングにも使えるし、テクノっぽくもあるんですよね。

──AC/DCは早すぎた人力トランス・バンドだったと言えるのかもしれませんね。

永友:そうなんですよね。AC/DCがデビューした時にピート・タウンゼントが大絶賛したらしいんですよ。ちょうどフーがシーケンスで曲作りをしていた頃だったから余計に。でも、5年も10年もAC/DCが同じことをやり続けてるから、ピート・タウンゼントも「あいつらバカじゃないか!?」って愛想を尽かしたっていう(笑)。

カトウ:エエ話や(笑)。でもね、アンガス兄弟は元々がスコットランドの生まれだから、同じ島国である日本と近い"侘・寂"の感覚があると思うんですよ。ただ楽しければイイやっていうアメリカ的なパーティー感じゃなくて、哀愁を身に宿した上でやるパーティー感って言うのかな。"辛いからこそ楽しいことをやろうぜ!"っていう感覚を感じるんですよね。それはボン・スコットがヴォーカルだった頃から一貫してそうですね。編集盤の『HIGH VOLTAGE』の1曲目である「IT'S A LONG WAY TO THE TOP (IF YOU WANNA ROCK 'N' ROLL)」でも、"ロックでトップに登り詰めるのは長く辛い道程なんだ"と唄ってるわけじゃないですか? そういうことを活動の初期からちゃんと言ってたというね。

永友:あれは凄くイイ歌詞だよね。自分達のルーツの象徴としてバグパイプが入っていて、その心意気にも泣けるよね。AC/DCの後にバグパイプを採り入れたロック・バンドってコーンくらいでしょ?

カトウ:ジョナサン・デイヴィスね。日本人はアイリッシュ・サウンドに親近感を覚えやすいと思うし、その系譜としてAC/DCの音楽に一度でも触れてみれば、誰しも気に入るポイントが絶対にあるはずなんですよ。その入口としてこの『THUNDER TRACKS』を聴いてもらえたら、こんなに嬉しいことはないですね。肩肘張らずに身を委ねてみれば、これほど"楽すィ"音楽はないはずですから。

永友:とかくヴィジュアルが先行しがちなバンドだけど、音だけ聴いてもこれだけ楽しいし、踊れるんだからね。それにあのヴィジュアルが加わるんだから、ホントに無敵ですよね。

カトウ:さらに欲を言えば、AC/DCをすでに好きな人達にこのアルバムを聴いてもらって、"この人達、普段はどんな音楽をやってるんだろう?"ってカヴァーをしてる日本のアーティスト達にも目を向けてくれたら凄く嬉しいですよね。

永友:うん、それがトリビュート・アルバムの一番幸福な形だよね。

──AC/DCを好きだという点において聴く側と演る側に何ら変わりはないし、みんな"地獄の絆"で結ばれているわけですからね(笑)。

カトウ:まァ、"仲間喧嘩はやめようぜ"ってことですね(笑)。

永友:ロックを聴く側も演る側も、ロックし続けてる間はいつでも童心に返れると思うよね。だからこそアンガスは53歳になってもスクール・ボーイ姿のままなんじゃないかな。

カトウ:凄くイイこと言った! 今の言葉、オレが言ったことにしといて下さい(笑)。


Various Artists
THUNDER TRACKS
〜TRIBUTE TO AC/DC〜

DefSTAR RECORDS
初回生産限定盤[CD+DVD]:DFCL-1453/3,000yen (tax in)

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通常盤[CD]

DFCL-1455/2,800yen (tax in)

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DISC-1:CD
01. THUNDERSTRUCK/BEAT CRUSADERS
02. SHOOT TO THRILL/キャプテンストライダム
03. BACK IN BLACK/ELECTRIC EEL SHOCK
04. WHO MADE WHO/少年ナイフ
05. HEATSEEKER/SCOOBIE DO
06. THE JACK/10-FEET
07. MONEYTALKS/Fed MUSIC
08. HELLS BELLS/斉藤和義
09. DIRTY DEEDS DONE DIRT CHEAP/SENSHO1500
10. WHOLE LOTTA ROSIE/奥田民生
11. YOU SHOOK ME ALL NIGHT LONG/TUCKER
12. HIGHWAY TO HELL/RAZORS EDGE
13. T.N.T./BLEACH
14. FOR THOSE ABOUT TO ROCK (We Salute You)/FACT
DISC-2:DVD
01. 実写版SCHOOL OF AC/DC『動く!!“AC/DCトリビア学校”』

LIVE INFOライブ情報

AC/DCトリビュート・ライヴ殺人事件
3月31日(月)新宿LOFT
出演:BEAT CRUSADERS/BLEACH/ELECTRIC EEL SHOCK/Fed MUSIC/SENSHO1500/少年ナイフ/TUCKER
OPEN 15:30/START 16:00
TICKET:advance-3,000yen (+1DRINK)/door-3,500yen (+1DRINK)
info:HIGH WAVE TOKYO 03-5464-1535

4月1日(火)SHIBUYA-AX
出演 :BEAT CRUSADERS/キャプテンストライダム/RAZORS EDGE/SCOOBIE DO
スペシャル・セッション・ゲスト:斉藤和義
OPEN 17:00/START 18:00
TICKET:advance-3,500yen (+1DRINK)
info:HIGH WAVE TOKYO 03-5464-1535

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