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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】YMCK(2008年1月号)- 8bitサウンドが奏でるパーティー・チューン『ファミリージェネシス』リリース!

8bitサウンドが奏でるパーティー・チューン『ファミリージェネシス』リリース!

2008.01.01

8bitサウンドの楽しさ、奥深さを追求し続けるチップチューン・シーンの象徴的存在、YMCKがメジャーリリース第一弾となる『ファミリージェネシス』をリリース。メロディの良さを追求したという本作は、「8bitサウンド? チップチューン? それ何?」という人でも(めちゃくちゃ要約すると、ファミコンみたいな音を使った音楽)しっかり楽しめる、幅広い魅力を持ったポップ・アルバムに仕上がっている。(interview:森 朋之)

8bitサウンドのジュネシス(創世記)

除村武志(作曲・編曲・作詞・サウンドプロデュース・映像):よろしくお願いします(と言いながら、ファミコンのコントローラー型の名刺入れを取り出す)。

──あ、ファミコンのコントローラー。かわいいですね、それ。オリジナルですか?

除村:いや、普通に売ってますよ(笑)。コントローラー型のグッズって、けっこうあるんで。

栗原みどり(ヴォーカル・作曲):ティッシュのケースとか(笑)。

──そうなんだ。というわけで(笑)、ニューアルバムのお話を。前作『ファミリーレーシング』から2年ぶりとなるわけですが。

除村:はい、けっこう間があきましたね。制作自体もけっこうかかったし、今回はメジャーレーベルからのリリースということもあって、そのための準備もあったので。

──タイトルが『ファミリージェネシス』だから、8bitから16bitにバージョンアップしたのかと思いましたよ。

除村:“メガドライブ”('88年に発売されたゲーム機)の話ですよね。

中村智之(映像・作曲):タイトルを聞いたとき、すぐに気付いたんですけどね。メガドライブの海外バージョンが“ジェネシス”だった、っていうのは。

除村:あんまり気にしてなかったんですけど、こういう取材なんかで、けっこう指摘されて。

──みんな意外と気になってたっていう(笑)。

除村:そう、こんなに反応されるとは思ってなかったです。中村はけっこう好きだよね、16bitゲーム機。

中村:はい(笑)。でも、このアルバムとは関係ないというか。

除村:もともとの意味の“創世記”っていうことで使ってるので。今回のアルバムのコンセプトですね、それが。

栗原:壮大ですね(笑)。

除村:あの、チップ・チューンっていうのはですね、コンピュータ音楽がはじまった時期からずっと続いてきてるんですよ。その歴史みたいなものを表現しかったんですよね。多少は抽象的になるかもしれないけど、自分たちなりにそれを表現しようと思って。

──最初にまず、大きなコンセプトを決めてから作り始めたんですか?

除村:いや、曲が先ですね。メインになる曲が2、3曲揃ってから、そういう方向性が出てきて。

──その曲っていうのは…。

除村:『錆びた扉の第8天国』ですね。中村の曲なんですけど、メロディを聴いたときに“何もないところから生まれてくる”っていうイメージが浮かんできて。そこから引き伸ばしていった感じですね。

中村:僕は無心というか、何も考えないで作ったんですけどね(笑)。とにかく、いいメロディを書こうと思ってただけで。

除村:いままでにはない、切なさがあるというか。

栗原:“美しいメロディ”っていうのが、今回のもうひとつのコンセプトなんですよ。“ピコピコ、かわいい”っていうイメージを取り払っても、“いい曲だな”って感じてもらいたいなって。

──うん、今回のアルバムの一番のポイントはそこだと思いました。最初はやっぱりピコピコした音色だったり、8bitポップっていうスタイルに目が行きがちなんだけど、その根本には“いい曲が書ける”っていうことがあって。

除村:ありがとうございます。そう、最初はスタイルとか音色から入ってもらってもいいんですよ。そこから少しずつ、曲に入ってもらえれば。歌モノですからね、僕らがやってるのは。

──そうですよね。

除村:曲を作っていくプロセスでは、全部が全部、最初からチップチューンになってるわけじゃないんですよ。

栗原:3人で曲を持ち寄るんですけど、私なんかは鍵盤の弾き語りみたいなデモもあって。

懐かしいだけの音ではない

──完成した楽曲のなかにもジャズだったり60年代のポップスっぽいテイストだったり、いろんな要素が入ってますよね。きっといろんな音楽的ルーツをお持ちだと思うんですけど、チップチューンに特化しようと思ったのは、どうしてなんですか?

除村:YMCKをはじめたときは、実はチップチューンってものを知らなかったんですよ。

──あ、そうなんですか。

除村:ええ。僕が最初にやろうと思ってたのは、かわいい感じのピコピコしたテクノだったんです。そのなかにジャズの要素もあるような。で、テクノの音色を使って――808(ローランドが'80年に発売したリズムマシン、TR-808)とかアナログシンセとか――曲を作ってみたんですけど、自分が思ってたものとはちょっと違ってたんですよ。もっとピコピコしてないとダメだ! って思って。そういうことを考えているうちに思い出したのが、昔、友達の家でやってたファミコンの音だったんです。そこから本格的に作りはじめて……それが2003年の春くらいかな。

──最初から手ごたえはありました? 新しいものが出来るかもしれない、というような。

除村:これはいいぞ、とは思ってましたね、ウチらのなかでは。

栗原:ただ、私は正直言って、最初の頃はよくわからなかったんですよ。これがいいのか悪いのか、人が聴いたらどう思うのか。自信が持てなかったというか。

中村:僕ははじめてデモを聴かせてもらったときに、すごい衝撃を受けたんですよね。「うわ、ファミコンの音でやってるんだ!?」って。というか、この音ってどうやって作るんだろう、とも思いましたけど。

除村:そうこうしているうちに、スウェーデンの人から「ウェブで見たよ。すごいね」ってメールが来て。何だろう?って思ったら、チップチューンのコミュニティーはけっこうすごい人だったんですよね。 そこではじめて「あ、そういうシーンがあるんだ」って知ったっていう。

──チップチューンっていう方法を自力で発見した、っていうのがすごいですね。よっぽどファミコンのサウンドが印象に残ってた、とか?

除村:さっきチラッと言いましたけど、ファミコンはずっと友達の家でやってたんですよ。自分の家はパソコンだったんで。意外に思われるかもしれないけど、当時のパソコンって、グラフィックとか音があんまり良くなかったんですよね。だから友達の家でやらせてもらってるときは、いいなあって思ってて。自分で持ってた人よりも、憧れが強いっていうのはあるかもしれないです。

──きっちり自己分析してますねぇ(笑)。ファミコンを思い切りやりたい、っていう渇望みたいなものが…。

栗原:爆発してるのかも(笑)。

──僕はいま30代半ばなんですけど、やっぱりめちゃくちゃやりまくってましたからね、ファミコン。あれがゲームの原風景になってるので、最近の高度なグラフィックにはついていけないっていうのもあったり。

除村:あ、僕も“そっち派”ですよ。中村は違うんですけど。

中村:最近の高性能マシンも好きです(笑)。新しい映像にも興味があるし。

──よく言われてることですけど、操作が複雑すぎ、“やらされてる感”があるんですよね。

中村:なるほど。たとえばレースのゲームで言うと、最近のヤツって、ホントにレーシングマシンに乗ってるような感覚があるんですよ。ゲームというよりもシミュレータに近くなってて、そういう意味では分岐してるのかもしれないですよね。

除村:うん、質が変わってきてるから、一概には何とも言えないっていう。

栗原:ゲーム評論家みたい(笑)。

──(笑)もうひとつ思うのは、ファミコンのゲームのほうがイマジネーション豊かだった、っていう話もあるでしょ? ホントにそうなのか、それとも単に…。

除村:懐かしいだけなのか、ってことですよね? それは僕もよく考えますよ。

──アルバムのなかに「思い出の奥から来た新しい音の世界」っていうフレーズもあるし。

除村:最後の曲(『フィナーレ~Welcome to the 8bit world~』)ですね。うん、まさにそういうことです。単に懐かしいだけなのか、本当に魅力が備わっているのか…そのことを問いかけてるというか。

栗原:最近、中学生くらいの人たちから「すごくいいです」っていう反応をもらうようになって。そういう世代の人たちは、“懐かしい”というのとは違うと思うんですよね。

除村:要はファミコンをやったことがないですからね。そういう反応が増えてきたことによって、確信に変わってる部分はありますね。自分たちがやってることは、懐かしさだけではない、っていう。

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