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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】ASPARAGUS(2007年10月号)- 3ピースのポケット・シンフォニーが奏でる胸を打つメロディの"最高峰"(MONT BLANC)

3ピースのポケット・シンフォニーが奏でる胸を打つメロディの“最高峰”(MONT BLANC)

2007.10.01

当時、その圧倒的なヴォリューム感と尋常ではない楽曲のクォリティの高さに誰しもが驚嘆し、万雷の拍手をもって称えられたダブル・アルバム『KAPPA I』『KAPPA II』の発表から早3年半。遂に、遂に、ASPARAGUSが通算4作目となるフル・アルバム『MONT BLANC』〈モンブラン〉を完成させた。昨年末の山下潤一郎の脱退という思いがけぬピンチを原 直央(ex.SHORT CIRCUIT)の加入によって好機に転じさせた彼らは、歩みを止めることなく志向する至上のメロディを際限なく追い求め、より雄大な眺望が開ける山頂を目指した。常に進化を続ける彼らが頂上を踏み締めるのはまだまだ先になるだろうが、現時点で表現し得る珠玉の楽曲がこの『MONT BLANC』には収められている。声高な主張を粋としないメンバーは飄々とした語り口で煙に巻くけれども、本作がバンド史上、いや日本のロックの潮流から見ても金字塔的作品であることは疑いの余地がない。原の加入によってバンドは歯切れの良さと逞しさを格段に増し、定評のあるメロディアスかつメランコリックな楽曲の数々はその純度を更に増した。前作発表から3年半という期間にメンバーが培ったあらゆる経験が滋養となっている本作には、高級万年筆のような気高さも、栗をふんだんに使ったケーキのようなとろける甘さとまろみもある。そして何より、アルプス山脈の最高峰のように雄大なスケールを感じさせ、銀色に輝く嶺のように美しい。(interview:椎名宗之)

いい曲を作っていい演奏をすればそれでいいと思った

──今年の初頭、BEAT CRUSADERSとのスプリット・アルバム『NIGHT ON THE PLANET』を発表する際のインタビューでは、新作に関して「“最後の5分のベタ踏み”の段階、今はちょうどその残り3分を切ったところかな?」なんて話をされていましたけど…。

渡邊 忍(vo, g):かなりベタ踏みしましたねぇ。レコーディングに入る1週間くらい前に何とか曲が出来上がった感じで。

一瀬正和(ds, cho):いや、2日前に最後の1曲が出来たんだよ。だって、1週間を切って最後の4曲を作ったんだから。

渡邊:ああ、そうだったね(笑)。

──確か、6月初旬の3P3Bのメールマガジンで忍さんが「アルバムに向けて曲作りをしてます」と悠長なことを書いていたような気がするんですけど(笑)。

一瀬:7月の頭から1ヶ月弱をレコーディングに充てたんですけど、6月の15日を越えた辺りから、ダーッと本気モードになっていったんですよ。それまで曲は半分くらいはあったけど、忍が(木村)カエラちゃんのツアーに参加したり、バンド本体の活動以外にも色々あったりして。

──前作『KAPPA I』『KAPPA II』は2枚同時リリースという凄まじいヴォリュームで、クォリティも尋常ではなく高かっただけに、それを越える作品作りは相当なプレッシャーがあったんじゃないですか。

一瀬:そういう意識はみんな余りなかったんじゃないですかね。もちろん、バンドとして常に成長していきたいと思ってるから、前のアルバムよりもいいものを作ろうっていうごく当たり前のことは考えていましたけど。単純にいい曲を作って、いい演奏をして形にすればそれでいいでしょ? って思ってましたね。だからそんなに気負いもないし、今回もアルバムのコンセプトはないし。

──本作『MONT BLANC』の発表に至るまでには、オリジナル・ベーシストの山下潤一郎さんがバンドを脱退するという思いがけぬ事態も起こりましたが。

渡邊:そうですね。BEAT CRUSADERSとのスプリット・ツアーが控えてる時に潤君が辞めて、「どうしようか?」って一瀬と話して。で、ちょうどSHORT CIRCUITが解散してたわけですよ。そこで直央に電話して「最近何やってるんだ?」って訊いたら、「テレビばかり見てる」って言うので、だったら出て来いや、と。そういう感じでした(笑)。

──直央さんの他にベーシストの候補はいたんですか。

一瀬:最初から直央の顔が頭に浮かんでましたね。すでにツアーが決まっちゃってるから結構アップアップだったんですけど、直央が快く引き受けてくれて。去年の7月にSHORT CIRCUITが解散して、直央が自分の活動をしていこうとしてるところを邪魔してやろうかと(笑)。でも、直央が何事にも一生懸命やるヤツなのはよく知ってたし、無理なく楽しんでくれると思った。まぁ、俺達は運がいいなと思いましたよね。メジャー的な活動をしてるバンドならともかく、普通、3ピースっていう最小編成のバンドの中でベーシストが交替したら、すぐにはレコーディングなんてできないですから。ラッキーなことに、バンドが固まれたのが凄く早かったんですよ。俺はもうちょっと時間が掛かると思ったんだけど。

──3P3Bレーベルのファンからすると、直央さんが加入したことで、名うての面子が集ったスーパー・バンドっぽい趣きが増したんじゃないかと思いますけど。

原 直央(b, cho):
いや、そんなことないと思いますよ。メンバーが替わるっていうのは、ASPARAGUSの場合は1/3がなくなるわけで、バンドにとって凄く大きなことじゃないですか? ファンの立場からすると、後任が誰になろうとそう簡単には受け容れられることじゃないだろうし。

──ASPARAGUSに誘われたのは、直央さんとしては次にやることを模索していた時期だったんですよね。

原:ええ。去年の7月以降は漫然と過ごしていて、自分のやりたいことがまだ具体的には見えてなかった頃だったんです。何かやっていればもう少し考えたのかもしれないけど、ASPARAGUSに誘われた時は、とにかくツアーが目前に迫ってましたからね。

原 直央の加入が及ぼしたバンドへの好作用

01_ap01.jpg──勝手知ったる仲だけに、ASPARAGUSの曲にはすぐに馴染めたんじゃないですか。

原:曲自体はよく知ってましたからね。ただ、いざ弾いてみるとコード進行が凄く複雑で大変でしたけど(笑)。でも、初めてスタジオに入ってみんなで音を合わせた時は、純粋に凄く楽しかったんですよ。

渡邊:うん、最初から手応えは充分ありましたよ。

一瀬:あと、人が替わるんだからそれはそれで楽しもうっていう意識が忍と俺の中ではありましたね。限られた時間の中で直央が凄く一生懸命ASPARAGUSの曲を覚えてきてくれたから、むしろこっちがプレッシャーだったんですよ。もっとちゃんとやらなきゃな、って思った。だから、直央が入ってバンドが締まりましたよね。それまでは“こんなところでいいだろう”っていう甘えがどこかにあったんだけど、こっちが甘えたら直央に対して失礼だし。リハには何度も入って、集中してやりましたね。毎晩練習して、毎晩一緒にメシを食って。お陰で随分と太りましたけど(笑)。

原:自分がベーシストであるという意識がそれまでは余りなかったんですけど、そういう部分の自覚がもっと必要なんだなと最初は思いましたね。曲に対するアプローチもそれまでとは全然違ったし、自分で作った曲を自分で演奏するのとはまた全然違ったし…。

──ベーシストが替わるっていうのは、同じリズム隊としてバンドの屋台骨を支えるドラマーにはとりわけ死活問題だったんじゃないかと思いますが。

一瀬:でも、ASPARAGUSの場合は3人で骨組みを成してるって感じなんですよ。ベースが骨だけじゃダメで、ギターに寄り添ってないといけないし、逆にギターもリズムを支えなくちゃいけなかったりする。骨組みという意味では、ベースもギターも一緒なんです。普通のバンドで言うリズム隊の絡みをそれほど突き詰めてないのかもしれないですね。ドラムのキックとベースが噛み合うようにしたりとか、余りそっちに特化すると、ライヴでのダイナミックスとか生々しさが削がれてしまう気がするんですよ。

──今年の3月にSHIBUYA O-EASTでBEAT CRUSADERSとのライヴを観て、着実にソリッド感が増したプレイと精悍な佇まいに思わず小躍りしたくなったんですよね。直央さんがASPARAGUSに加入したことが間違いなくプラスに作用しているのが実感できて。直央さんは背も高いし、凄く絵になるなとも思ったし。

一瀬:そうですね、無駄にでかいですからね(笑)。

渡邊:直央は水泳をやってたから、肩幅が異常に広いんですよ。朝になるとたまにムクんじゃって、玄関に当たって出られなくなったりしますから(笑)。

一瀬:機材が入口から搬入できなかった荒井 注のカラオケボックスじゃないんだからさ(笑)。

──直央さん加入後初のレコーディングは、先行シングルの「HONESTY」になるんでしたっけ?

渡邊:オリジナル曲でレコーディングしたのは「HONESTY」なんですけど、その前にHUSKING BEEのトリビュート・アルバム(「ロバの口真似」をカヴァー)があったんですよ。

原:オリジナルに関しては、曲作りの段階から凄く刺激的だったし、純粋に楽しめましたよ。“大変だな…”っていう意識は余りなかったですね。

渡邊:元々、バンド自体が余りストイックに行く重たい感じでもないから、割と自然に溶け込めたんじゃないですかね。

──でも、新作の曲作りがままならない状況が続くと、バンドの空気は穏やかでも、スタジオの空気は徐々に重たくなっていった気がするんですけど(笑)。

渡邊:まぁ、確かに焦りは感じましたけどね(笑)。

原:忍君が作品を作る過程でそういう話はいつも聞いてたし、その部分は自分でもよく判るっていうか(笑)。

渡邊:SHORT CIRCUITだっていつもギリギリだったしね(笑)。

一瀬:忍は凄く大変でしたよね。一番忙しい上に曲を書かなきゃいけなかったわけだから。スタジオに籠もって曲が出来るのを待ってると、忍が「半分出来た!」って俺に聴かせようとして、「やっぱりやめた!」ってもう一度籠もったりしたこともありましたね。その2時間後には、完成させておきながら全部捨てたりとかもあったし。

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3P3B Ltd. XQDA-1002/3P3B-53

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