もっと酷いバンドにしよう
──イノマーさんは、最近では「イノマー万博」っていう企画もやってますが、これは「無名の新人バンドを発掘してやろう」みたいな気持ちがあるんですか。
イノマー:「発掘してやろう」みたいないやらしい気持ちよりも、若い友達と知り合いたいっていう感じですね。面白い人はいっぱいいるから。2月11日にラママでこのライブ盤のレコ発ライブをやるんだけど、その日もAPRICOTと、でぶコーネリアスっていう今大好きな若いバンドに友情出演っていう形で出てもらうんですよ。だからオレの出会いの場というか、ハッテン場みたいなもんですよ。最近は男と付き合ってる方が楽でいいですから。もう恋愛とか愛とか恋とかどうでもいいっていう感覚になりましたね、それだったらもうホモになろうと(笑)。男同士でバカ話してる方が楽しいですからね。
──しかし最近、付き合う相手がどんどん低年齢化してますよね
イノマー:普通にライブ行ったりすると、高校生に「よー、イノマー」とか言われてますからね(笑)。
──小学生と遊ぶ中学生みたいなもんですよね。
イノマー:同年代に相手にされないから(笑)。……イヤだな、それ。でも、確かに同い年とかに友達いないな……オノチンくらいだもんな。同窓会とかも誘われないし、……もう40だもんな。ヤバいな、初恋の同級生とかももうババァですもんね。
──もう熟女ビデオの年代ですからね。同級生の男も「レオン」とか読んでるんじゃないですか。
イノマー:ああ、チョイ悪オヤジ。まあ、オレもチョイ悪ですけどね。肝臓とか相当悪くなってますからね。ガンガンも腰悪いし、オノチンも内蔵とか結構キてるから、チョイ悪バンドですよ。
──このアルバムもチョイ悪なアルバムですしね。
イノマー:……しかしこのアルバム、誰が何のためにいつ聴くのかわからないですよね。彼女が来た時にかける訳にもいかないし、車の中で流すような音楽でもないし、家族と一緒に聴くでもないし……。ホントに一人でベッドの中でヘッドホンしてこっそり聴くとかしかないですよね。しかもよしゃあいいのに変に長いですからね。
──ジャケットも全裸の男たちですからね。
イノマー:ボクのヘアーも出てますね、ちょっと。
──もうそれ、部屋に置いておくのすらキツイですよ。
イノマー:今までは実はボクも大人として、「これは作品であると同時に商品だ」っていう気持ちもあったんで、ジャケットは必ずイラストにして買いやすいように……とか色々考えてたんですけど、もうどーでも良くなりましたね。ハードルを思いっ切り上げて、それで精鋭たちが残ってくれればいいかなと。もうマスに訴える気はさらさらないですね。
──CD屋のレジとかカワイイ女の子がいたりするじゃないですか。そこにコレを持って行くのはセクハラですよ。
イノマー:でも、それぐらいの十字架を背負った上で、買って聴いて欲しいですよね。やっぱり恥ずかしい物を買うっていう行為をやっていかないと。これからもどんどん買いづらくして行こうかなと思いますね。100万枚とか売れるバンドはそういう事を気にするべきだと思うけど、そうじゃないバンドは、無茶苦茶な事やった方がいいですよ。もう、もっと酷いバンドにしようと思ってますからね。これから体力も落ちてくるし、見た目も老いていって、……歳をとるって事は、知識とか色んなことは増えていくのかも知れないけど、生物としては落ち目ですからね。もう、カッコイイ事だとかオシャレな事だとかスマートな物を求めちゃダメだと思うんですよ。逆に病気とか借金とか色々抱えながらバンドを無理矢理やって行った方が面白いんじゃないですかね。そっちの方が濃い物を出せる気がするし。腹に人工肛門つけて歌うっていうのもいいじゃないですか。「バンド=音楽をやる」っていう理念で考えていったら、絶対何年かやってたら煮詰まっちゃうから。ただ中年が三人集まって単なる悪のりをやってるって考えれば長続きするんじゃないですかね。もう素人の一発芸みたいなもんだから。まあ、ロフトレコードには悪いけど、まだまだ付き合ってもらいますよ(笑)。ルーフトップをご覧の皆さんも、このアルバムを買うのは恥ずかしいかも知れないけど、人間時々は「自分に辱めを与える」っていうプレイも必要だと思います。是非、アマゾン.comとかで買わないでCD屋のレジに持って行って下さい!