Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】布袋寅泰(2006年1月号)- すべてはロフトのステージから始まった──

すべてはロフトのステージから始まった──

2006.01.01

 1981年5月11日、布袋寅泰がBOØWYのメンバーとして新宿ロフトのステージに立ってから、今年でアーティスト活動25周年を迎える。これを記念して発表された究極のベスト・アルバム『ALL TIME SUPER BEST』は、BOØWY~COMPLEX~ソロと常にシーンの第一線に身を置き続ける彼の集大成的作品であり、すべてのファンへ感謝の気持ちを込めて贈られたメモリアル・アルバムである。日本のロックを大きく塗り替えた25年間の軌跡、そしてHOTEIにしか生み出すことのできない普遍的なビートとメロディは今後どう進化/深化していくのか、余すところなく訊いた。(interview:椎名宗之)

ベスト・アルバムはファンへの感謝の気持ち

──新宿ロフトのステージに立ってから早四半世紀の歳月が流れましたが、今の心境は?
 
布袋:0歳の子が25歳になる、もしくは5歳の子が30歳になるわけだから、結構な年月だよね。今回のベスト・アルバムを作ったきっかけは何だったのかとよく訊かれるんだけれども、何と言うのかな、時の力というのは大きなものであって、振り返るべき過去みたいなものを自分も背負ったというところもあるし、ここでもう一度自分自身を見つめ直すにはいいチャンスだったかなというのはあるよね。
 
──初回限定版のほうには、昨年3月に行なわれた愛・地球博での日本フィルハーモニー交響楽団との競演、9月に行なわれたさいたまスーパーアリーナでの“MONSTER DRIVE BIG PARTY!!!”のダイジェストDVDが収められていますが、特にオーケストラとの競演は今観ても凄くスリリングですね。
 
布袋:素晴らしいチャンスに巡り合えたと思ってるよ。振り返ってみると、つくづくそういう機会に僕は恵まれてきたと思う。これがいちシンガーだと心地の好いオケの中で気持ちを乗せて唄うしかないけど、僕も楽器弾きだからオーケストラの一員になれるんだよ。バイオリンやホルンなど、ひとつひとつの音と僕の弾くギターとが重なっていくという演奏家としての楽しみ方もできたわけで、凄く面白かったね。
 
──このベスト盤に収められた「LONELY★WILD」はサイモン・ヘイルの編曲によるオーケストラ・ヴァージョンで、このアルバムの中でもとりわけ大きな聴き所のひとつですね。
 
布袋:うん、あれは良かったね。これまで僕のオリジナル・アルバムには何曲かああいったアレンジの曲もあったけど、「LONELY★WILD」をあのオーケストラでやれたことは今回とても意義深いことだった。僕は小さい頃から母親の影響でアルゼンチン・タンゴとか世界の映画音楽とかを聴いていたし、ロックンロールに深くのめり込んでからも、リスナーとしてはジャズやクラシック、アヴァンギャルドな現代音楽までジャンルを問わず幅広く音楽を聴いてきたからね。たとえば今井美樹に書いた「PRIDE」にしても、「布袋さんがああいう優しい詞や曲を書くなんて信じられない」ってよく言われるけど(笑)、自分の中ではいろんな音楽を聴いてきたからごく自然なことなんだよ。
 
──「BAD FEELING」のあの跳ねたカッティングからはファンクの影響を強く感じるし、BOØWY時代からロックの枠に留まらない布袋さんのミクスチャー感覚は際立ってましたよね。
 
布袋:僕の中では本当にいろんな音楽が拡がっているからね。ただ、ここ数年は40の声を聞いたこともあるのかもしれないけど、“俺はまだまだロックンロールをやれるんだ、俺のビートはまだまだ尖ってるんだ”っていう意識が強くあって、この数作のアルバムではイケイケゴーゴーな布袋寅泰のニュアンスが強かったけど、今回のベスト・アルバムでまたいい意味で自分の気持ちをフラットに戻せた気がするね。ロックンロールという言葉をビートばかりに集約しないで、自分のハートの奥行きみたいに今後は表現していけたら最高だよね。
 
──ギタリストとしての才は言うまでもないことですが、今回収録された「さらば青春の光」のアンプラグド・ヴァージョンを聴くとヴォーカリストとしてもますます円熟味が増したことが判りますね。
 
布袋:ありがとうございます。
 
──それに加えてコンポーザーとして数々の名曲を生み続け、プロデューサーとしても八面六臂の活躍…と、布袋さん自身が“一人ミクスチャー”と言っても過言ではないと思うんですが(笑)。
 
布袋:今回のベスト盤では、それがひとつのいいバランスとしてまとまったね。今まではずっとアンバランスで、その中だとギタリストとしての一面が当たり前に“黒帯”なわけだよ。ヴォーカリストとしてはまだ茶色の帯って言うかね。作曲家としてもプロデューサーとしてもいろんなことを考えながらやってきたけれども、今回はそのどれを取っても布袋寅泰っていうところで楽しんでもらえる作品に仕上がったと思う。それはやっぱり、僕が感謝の気持ちで音楽を奏でようと思った瞬間からそうなったんだろうし、自分自身の力というよりは、聴いてくれる皆さんの愛情によってそうなったと僕は思ってるね。僕の歌も、ギターも、音楽も、それらを信じて愛し続けてくれた人達に向けて奏でたり唄ったりすると、心が柔らかくなるって言うかさ。今までは「オイ、俺の音楽を聴けよ!」ってドン! と突き付けるようなところもあったけど、今回は凄く優しい気持ちで向き合うことができたね。
 
──僕が布袋さんの作品にいつも感じるのは、圧倒的なポピュラリティと、それに相反する実験的な要素が見事に共存している絶妙さなんですよね。
 
布袋:オーケストラとタッグを組むにしても、ただ管楽器が鳴っていればいいというわけじゃなくて、やっぱりアレンジメントって非常に大事なんだよね。どこか実験的なものでありたいというのが僕の中には常にあるんだ。聴くと耳障りはいいアレンジだけど、たとえば「LONELY★WILD」のアレンジをやってくれたサイモン・ヘイルは、ビョークのアルバムとかでもかなりアヴァンギャルドなアレンジをやっているからね。彼が初めて指揮を執ったのは僕のアルバムだった。彼とも20年来の付き合いで、一緒にいろんなコラボレーションをやり続けながら、今回の「LONELY★WILD」でやっと2人が追い求めてきたイメージに結び付けることができた。だからこのベスト・アルバムは25年間の歴史、その中で出会ったいろんな人達との様々な想い出、ファンの皆さんやスタッフの愛情から成り立っているものであり、それと同時に、様々なミュージシャンと結び付きながら共に育んだビートとメロディ、アレンジメントの音楽であるというのが凄く大きい。数多くの方々が「このベスト・アルバム、何度聴いても飽きないです」と言って下さるんだけど、それは素直に嬉しいし、非常に音楽的なアルバムだと僕自身は思ってるね。
 
 

I'm Here、俺はここにいる

──このアルバムの中で唯一の新曲「SONG FOR US」は、町田康さんによる作詞のとても力強いナンバーですね。
 
布袋:うん。町田もINUのメンバーとして僕と同じ時期にロフトにいたはずだよね。当時はロフトで会うことはなかったけれど。彼は今回、本当に素晴らしい詞を書いてくれたと思う。この間のツアーでもステージで1曲だけご一緒してくれたんだけど、僕とオーディエンスの関係を非常に美しいと思ってくれたみたいだね。「25周年だからこんな歌詞にしてくれ」って彼に頼んだわけじゃなくて、単純に「いい曲が出来たから(歌詞を)書いてよ」ってお願いしたんだけど、まるで我々の25年間をセレブレートするような内容になっていた。優しい男だよね。
 
──そして最新のコラボレーションとしては、あのRIP SLYMEとの“MASH UP”(ジャンルの異なるアーティストがそれぞれ既存のヒット曲を持ち寄り、新たにオリジナリティのある楽曲として生み出す手法のこと)が実現したそうですが。
 
布袋:凄く面白かったよ。日本語のヒップホップはこじつけみたいなものが多いように感じていて、本当に魂から叫んでいる言葉なのかな? と思うことも正直あるんだよ。もちろん素晴らしいアーティストもたくさんいるんだろうけどね。その中でもRIP SLYMEはとても音楽的だと競演する前から思っていて、実は今回のベスト・アルバムを作っていた時から彼らと何か一緒にできないかってスタッフとも話をしていたんだ。だからこの話が来た時は是非やりたいと思ったし、向こうも僕のことを好きでいてくれて実現した。
 
──布袋さんの「BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY」とRIP SLYMEの「FUNKASTIC」を“MASH UP”して、「BATTLE FUNKASTIC」として発表されるわけですね。
 
布袋:うん。僕のビートをバックグラウンドにして彼らのラップが乗っかってくる。既存の曲でそれをやるところに面白さがあるよね。ビジネスライクなわけでは毛頭なく、僕と彼らとで何か面白いものを作ろうよっていう気持ちから始まっているからね。それがなければ一緒にスタジオに入ったって居心地も悪いだけだし、楽しくも何ともないよ。今後もいろんなアーティストとのコラボレーションを計画しているんだけど、それも意外な連中ばかりだから楽しみにしていてほしいね。
 
──2月から始まる長期ツアーもやはり、ファンへの感謝の気持ちがまずありきですか?
 
布袋:そうだね。もう本当にそれだけだよ。“サンクス・ツアー”と言ってもいいくらい。基本的にはこの『ALL TIME SUPER BEST』からの楽曲を中心として、オーケストラを連れてやるわけじゃないからアレンジもまた随分と変わっていくだろうし、25年間の軌跡の中で余りステージでやってこなかった曲…だからBOφWYの曲もリクエストが凄くあればそれに応えるかもしれない。毎日メニューが変わるようなステージになるんじゃないかな。今リストアップしているだけで30曲以上あるからね。長いツアーだけど、我々も一本一本を新鮮な気持ちでやっていきたい。やっぱりツアーが一番楽しいからね。これがやりたくて生きているところがあるから。僕は群馬の片田舎の生まれだけど、昔、エアロスミスとかCHARさんとかがツアーで小さな街に来てくれた時は嬉しかったもんね。だから僕も同じように全国の津々浦々までみんなのところへ会いに行くのが筋だと思っているし、それこそがサンクスの気持ちの表れだからね。
 
──25年間にわたって布袋さんが貫いてきた信念みたいなものはありますか?
 
布袋:自分に正直であることかな。ギターが僕を正直にしてくれるんだ。まな板に向かい合う職人さんに邪念があれば包丁で指を切ってしまうだろうし、道具っていうのは偽りの気持ちで向き合うと絶対にいい結果は出ないからね。今の自分以上のものを出そうとしてもギターがストップを掛けるし、逆に本来はもっと表現できるのにそこで諦めようとすると「それじゃダメだろ!」ってギターのほうから言ってくる。25年間、ギターと僕はそうやってずっと対話してきたし、自分の気持ちにだけは常に正直で在り続けた。何があってもイヤなことだけは絶対にやってこなかったね。
 
──それと、他の誰にも似ていないオリジナリティの創造ですよね。
 
布袋:うん、そこもずっとこだわってきたね。単純に自分の快感原則の問題だけど、人と同じことをやっても気持ちが良くない。音楽を通じて僕が一番言いたいのは“I'm Here”、“俺はここにいる、ここでこうやって生きているんだ”ということ。それを誰かに向けて声高々に叫ぶことだね。そういう自分が信じたことを貫ける素晴らしさは感じている。今さらそこから逃げてしまうなんて馬鹿馬鹿しいし、ここまで自分を高めてくれたものだから、音楽だけは死ぬまでやっていきたいと今改めて思うね。
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