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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】 BRIGHT EYES(2005年2月号)- 全米を驚愕させた若き天才シンガーソングライター

全米を驚愕させた若き天才シンガーソングライター

2005.02.01

"輝く瞳"と名乗る未だ20代中盤の若者=コナー・オバーストが、今アメリカの──いや世界の音楽シーンを変えようとしている。すでに昨年の暮れ、2枚同時に発売された先行シングルはビルボードのセールス・チャートで初登場1位 2位を獲得した。年を越して先日、やはり2枚同時にリリースされたばかりの2種類のニュー・アルバムも、この記事が印刷される頃には大きな結果 を出しているはずだ。ネブラスカ州オマハという田舎町にて、仲間と始めた小さなインディー・レーベルに所属したままの状態で、ブライト・アイズは世界のスターになろうとしている。この事実は14年前にニルヴァーナが起こしたこと以上の革命的な事象として、以後のロック史に記録されるだろう。同時代を生きる者として、この「事件」を見逃してはならない。もちろん3月の来日公演も同様だ。(interview:鈴木喜之)

今はアメリカの人々が政治を見る視点に変化を必要としている時期だと思う

──前作『リフテッド』が成功したことで、マスコミから大きな注目を集めるようになりましたけれども、そういったことにはどのように対処していますか?
 
コナー:音楽を作っていく上で避けられないことだとは思っているよ。一番いいのは、そういうのは頭の隅っこに小さく追いやって、創作プロセスの邪魔にならないようにすることだね。でも僕は曲を書くことでいろいろな物事と向き合ったり、折り合いをつける性分だから、『リフテッド』以降に初めて直面 した、そういうパブリック・イメージだとかマスコミで取り扱われる自分というものを、僕なりに理解するために曲にしてみたりもしたんだ。ただ、そういうのに長くとらわれすぎるのも良くないだろうから、今後はそういうことから離れたところにある生活についての曲を書くようにするつもりだ。
 
──ここ数年間で、ソングライティングのテーマに関して、個人的なことから政治的な事象へと関心が移っているという指摘もあります。自分自身としてはどう感じていますか?
 
コナー:これまでは政治的な歌とかプロテスト・ソングとかは書いてこなかった。あんまり関心もなかったしね。でも2000年の大統領選挙の頃から、そういう社会的なこと、政治的なことに不安を感じるようになったんだ。夜も眠れなくなったりしてさ。いろいろな変化が起き始めていたし、そういうことをノートにメモするようになったんだ。周りの人々の嘘とか政府がやっていることとか、そんなことを考える機会が本当に多くなってきたんだよ。さっきも言ったように、僕は思ったことがそのまま曲に反映される性格だしね。ただ、曲にする時は、自分の政治的な考え方をそのまま直接メッセージとして出すのではなくて、そういうことが、平均的な人々の生活というか、個人にどういう影響を与えるのか? ということに焦点をあてるようにしているんだ。
 
──戦争が起きている時や、社会的な正義が行われていない時には、人々は政治的になるものだ、ということでしょうか。
 
コナー:もちろん。今はアメリカの人々が政治を見る視点に変化を必要としている時期だと思う。現在の政権についている連中が、一般 の人々が政治に関心を持ったり、直接的に政治に参加する機会を少なくしているように思うし、それはとても危険なことだよ。もっと多くの人々が理解できるようにシンプルにしなければならないし、政治は市民生活の一部だし、もっと情報を与えられて、議論にも参加しないとね。そうでないと、どんな世界に住みたいかという選択を他人に任せてしまうことになる。それは怖いことだよ。
 
──昨年の暮れ、ブルース・スプリングスティーンが提唱し、R.E.M.やパール・ジャムなど大勢のビッグ・アーティストたちが参加した“ヴォート・フォー・チェンジ・ツアー”(ブッシュ大統領の再選に反対する投票を呼びかけるライヴ・イヴェント)に参加しましたよね。感想を教えて下さい。
 
コナー:大統領選に関して、何とか関与する方法はないかと思っていたんだ。何かしたかったからね。で、R.E.M.のマイケル・スタイプに誘ってもらって、その企画に興味を持ったんだ。組織的にもしっかりしていたし、ブッシュとケリーのどちらが勝つか微妙な州に焦点を絞るという方法も理にかなっていて、大統領選の結果 に大きな影響を与えるポテンシャルが充分あるように思えたんだよ。ジャンルや世代にとらわれずに、いろいろなアーティストが参加していたのもいいと思った。それにR.E.M.とスプリングスティーンは、ずっと聴いてきたアーティストで、人間としてもミュージシャンとしても尊敬していたから、一緒にツアーを回れてとても光栄だったしエキサイティングだった。僕は、音楽とアートは単なるエンターテインメントではなくて、それ以上の何かがあると思っているんだけど、今回はまさにそうだったね。しっかりとしたメッセージがあって、観客とコミュニケーションをとって、お互いに交流できたんだ。大統領選の結果 については残念ながら悲劇的なことになってしまったわけだけれど、“ヴォート・フォー・チェンジ”に参加したことはもちろん後悔していないよ。
 

ビジネスの話が僕らの音楽作りに影響することはないんだ

──“ヴォート・フォー・チェンジ”の大きなステージでも、非常に落ち着いてパフォーマンスしているように見えましたが、全く初めての、しかも多数の観客の前で大物たちと共演していて、緊張したりはしなかったのですか?
 
コナー:最初の日はとても緊張したよ。ブルースはクールな人で、わざわざ僕の楽屋にやって来て「大丈夫だよ、一発やって来い!」って声をかけてくれて、できるだけリラックスするようにしたよ。ブルースとマイケルとは、毎晩コンサートのことを話してね。でも最初の日はやっぱり怖かったし、パニック寸前って感じだった。でも、だんだん慣れてきたんだ。ブルースとかジョン・フォガティとか、ある晩にはニール・ヤングも飛び入りしたし、そういう伝説的なアーティストを見ることが出来てすごく興奮したし、それで開眼させられたっていうか……その時までは、彼らなんか別 世界の人だと思ってて、もちろん僕よりも多くのリスナーに大きな影響を与えている存在だけれど、曲を書いて歌う、という意味では自分からそんなに遠い存在ではないんだなって思えたんだよ。
 
──なるほど、実際のオーディエンスの反応はどうでしたか?
 
コナー:良かったんじゃないかな。もちろんみんなブルースがお目当てだったとは思うけどね。ちゃんと言いたいことは伝わったと思うよ。
 
──さて、前作『リフテッド』がリリースされて以降、あなたが所属しているインディ・レーベル=サドルクリークは、小さなプライヴェート・レーベルから国際的なレーベルに変貌しましたよね。こういった状況は予想していましたか?
 
コナー:いや、特に急激な変化ではないんだ。ここまで来るのに10年以上かかって、ゆっくりと成長してきたと思ってる。カセット・テープから始めて、7インチを出して、ライヴ会場で売って、それから地元のレコード・ショップで売るようになって……。ゆっくりと少しずつ大きくなって、成功を収めて、いろんな人たちをビックリさせ続けたんじゃないかな。でも、ここまでになるとは思っていなかったし、誇りに思ってるよ。ロブ・ナンゼルを始めとするレーベルのスタッフは本当によく仕事をしてくれるし、こういう音楽をマーケティングするにあたって、非常に革新的なやり方をしていると思うな。カーシヴのティム・ケイシャーやテッド・スティーヴンス、フェイントのベイクレイ兄弟とか、素晴らしいバンド仲間やソングライターに恵まれて、本当に良かったよ。みんながお互いをサポートし合う環境があって、基本的に愛情と友情に支えられているんだ。それは音楽業界ではなかなかないことだと思うし、とてもラッキーだね。
 
──じゃあ、レーベルがスタートした時から、音楽のクォリティも保たれ続けているということですね?
 
コナー:そうだね。もちろんより多くの人が関わるようにはなったけど。毎日、1日の終わりにこう思うんだ。僕の音楽をプロモーションするのは僕の友達で、彼らは僕と僕の音楽のことが好きで仕事をしてくれている。当然のように僕も彼らのことが大好きだしね。子供の頃からずっと一緒にやってきて、もちろん成功したいとは思っているし、レコードが売れることも悪いことではないけど、それだけのためにやっているんじゃない。そういうビジネスの話が僕らの音楽作りに影響することはないんだ。それは普通 では考えられないことだと思うし、すごいことだと思う。
 
──この後もR.E.M.やフェイントと一緒にツアーを続けるんですよね。振り返ってみると、あなたは14歳の頃からツアーをしてきたわけですが、何か心がけていることはありますか?
 
コナー:できるだけバンドのメンバーとして友達を連れて行くこと。それから健康管理はもちろん大事で、ツアー・マネージャーから教えてもらったんだけど、しょうが茶がノドにいいんだよ。生のしょうがにお湯を注いで、お好みで蜂蜜を入れたり、レモンを入れたり、ちょっとアイリッシュ・ウィスキーを入れたりね。ヴォーカリストにはとにかくお勧めだよ。ツアー中はよく読書もする。実際ほとんどの読書は旅をしている間にするんだ。家に電話をしたり、友達に電話をすることもツアー中は大切だね。元気になるよ。
 
──では、好きなソングライターを教えて下さい。
 
コナー:60~70年代のフォーク・アーティスト、ボブ・ディラン、ニール・ヤング、ジャクソン・ブラウン、ジョニ・ミッチェル、レナード・コーエン。それにルイ・アームストロングも大好きだよ。兄の影響で80年代のオルタナティヴ・ミュージックは子供の頃によく聴いたね。リプレイスメンツ、ピクシーズ、キュアー、スミスに大きな影響を受けて、インディー・ロックも聴き始めた。フガジ、ペイヴメント、スーパーチャンクとか。ビョークもすごく好き。スプリングスティーン、トム・ウェイツ。あとは友達のソングライターでオマハ出身のフォーク・シンガー=サイモン・ジョイナーにはすごく大きな影響を受けたよ。そしてもちろん、ティム・ケイシャーとテッド・スティーヴンズはとても身近にいるヒーローだ。彼らの存在は、僕が音楽を始める直接的なきっかけになったし、いろんなアドバイスをもらえてラッキーだったね。
 
──最後に、もしあなたの曲がアメリカ中の学校で歌われることになるとしたら、どの曲を選びますか?
 
コナー:僕の曲は子供達にはふさわしくないと思うな(笑)。でもすごく面白い質問だね。
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