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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】ばちかぶり(2001年12月号)- きっとパンクってそんなにかっこいいもんじゃないですよ

きっとパンクってそんなにかっこいいもんじゃないですよ

2001.12.09

 今や出ていない日本映画はないんじゃないかというくらい俳優として活躍中の田口トモロヲ氏。その彼が組んでいた伝説のバンド・ばちかぶりをご存知だろうか。かつて80年中半から90年にかけてアグレシッブなライブパフォーマンス(脱糞・嘔吐など)と文学的な歌詞で異彩を放ち、パンクスからインテリまで魅了したといわれるばちかぶり。その活動は今でも語りぐさで、過去の音源にも高価なプレミアがつくほど。もう生で聴くことは絶対できないだろうと思っていたら、なんと突如再結成ライブが行われることに。なぜに今? その真相を田口トモロヲ氏に伺った。[text:斉藤友里子]

「そろそろ」っていつぶり?

──12月17日にばちかぶりのライブが表参道のFABで行われますが、なぜ今、再結成を?

田口:実は再結成って大袈裟なことじゃないんです。昔のメンバーからホントに久しぶり、ヘタしたら10年ぶりくらいに電話がかかってきて、「そろそろライブやらない?」って。「そろそろ」っていつぶり? って、ちょっと思ったんですけど(笑)。そうか、じゃあ他のメンバーが大丈夫ならやってみようかと。同窓会的な発想ですね。もう、いつ逢えなくなるかわかりませんから。この年になるとみんないつ死んでしまうかわからない。あと、なにが起こるかわからない世界だ、という感触もあって。それは前々から思ってましたけど、米同時多発テロでもっと感じて。今、逢える機会があるなら逢っておきたいって思いました。

──ばちかぶりから話がそれてしまいますが、伺います。あのテロをトモロヲさんはどう感じましたか?

田口:本当に驚いて、呆然としまいました。ああ、どうしたらいいんだろうって。翌日仕事現場に行っても、なんだかずっと呆然としたままでした。みんないつものように仕事をしている様子をみて「え?……い、いいの? 普通に仕事をしてて」って。

──なかなか日常生活に戻れない非現実感。感覚としてはなんだか地獄の釜がひらいたような感じなんでしょうか?

田口:いや。“地獄の釜がひらいた感じ”という比喩は使いたくないです。あれは現実の出来事ですから、観念的な考えはできません。あれは宗教戦争ですよね? そこにさらなる観念を入れてしまうことに抵抗を感じます。それに今、僕は俳優という生業の方が主になりましたが、フィクションを創る仕事ですよね。だから、どこが現実でどこが現実ではないかしっかり持っておかないといけないと思う。そうしないとフィクションを創れません。そう思って日々をおくらないと足下がグラグラしてきてしまうんです。

パンクって何

──ばちかぶりはメンバーチェンジが結構頻繁だったと思うのですが、今回のメンバーはどういった感じなんでしょう?

田口:90年にweaミュージックからメジャーデビューをしたんですけど、今回はほぼその時のメンバーです。ばちかぶりの初めからのメンバーはもう僕だけです。84年に結成した最初のばちかぶりはパンクバンド、段々即興的なパンクファンクになってきてメジャーデビューした90年頃はファンク路線でしたね。今回はというか昔はジョン・ライドンが言っていた「パンクは常に変わり続けるもの」みたいなことがしたかったんで、メンバーが変わる毎に音楽性が変化していってました。

──今回はそのパンク精神みたいなものはどうなんでしょう?

田口:実はまだミーティングしただけで、練習もしてないんですよ。全然なにをやるかまだ決まってなくて、どうするか決まってない状態です。でもやっぱり今でもパンクは好きです。

──トモロヲさんの好きなパンク、その定義ってなんなんでしょう。

田口:うーん、端的に言えばどんなことをやってもその制限はない、クサい言い方ですけど自由なものですね。僕、バンド活動を始めるのは周りに比べて非常に遅かったんです。バンドを最初に結成したのは20歳すぎたくらいですし。僕全然楽器は弾けなくて、ウクレレも指がつってだめでしたから(笑)。でもなんかやりたいとずっと思っていたんです。そこでパンクに出逢って演奏力がなくてもやる意志さえあれば表現できるんだと衝撃を受けてバンドをはじめたんです。だからパンクは僕に表現するきっかけを作ってくれた。

──初めての音楽体験はパンクだったんですか?

田口:ここで「はい、ピストルズです」と言いたいところですが、南沙織とか歌謡曲ですよ。筒美京平さんの作られた曲をよく聴いてました。

──一番影響をうけたミュージシャンは誰でしょう?

田口:キャプテン・ビーフハートとか、P.I.Lとか。色々ありますけど、やっぱりピストルズの影響は大きくあります。

きっとパンクなんてそんなにかっこいいもんじゃない

──セックスピストルズといえば再結成ライブがありましたけど、肯定派・否定派いろいろいましたよね。私なんかは後者で伝説のままでいてくれたらって方なんですが。

田口:ピストルズの再結成ライブについて僕は全く肯定してます。そのライブに行きましたけど、最前列でボコボコになってたくらいしびれました。確かに腹とかデーンと出て、言ってみれば汚いおっさんになってましたよ。でもそれを含めてかっこよかった。情けなさやしぶとさとかひっくるめて人間の全てをみせてくれたような気がしましたね。きっとパンクってそんなにかっこいいもんじゃないですよ。

──初期のばちかぶりと同時期に組まれていたガガーリンは非常にパフォーマンス性というかハプニング性の強いバンドでしたよね。炊飯ジャーに脱糞とか伝説の語りぐさですし。脱糞をよくよく考えるとぶざま行為だったりしますよね。それを正々堂々とやる精神がかっこいいわけで。

田口:しかし今思うと、若いなぁ、俺(笑)。その頃、演劇やアートとかも非常に好きでして、その好きな作家の中に自分の作品をハプニングと呼ぶアーティストがいたんです。ハプニングか、いいな、ライブでやったらどうだろうと思ったのがきっかけでパフォーマンスをやりはじめました。実はうんこするまではいきさつがあるんですよ。僕、つばがよくでるんです。歌ってるとつばが異常な程飛び散ってしまう。じゃあ、いっそのこと全部だしてしまおうかなって。つまりゲロをはいたんです(笑)。そうしたら、次にライブのあるハコの人から電話がかかってきて「あんたのとこのバンドはゲロをするそうだけど、それはやめてくれ」って言われて。それって表現弾圧じゃないですか? 「出るな」って言ってくれれば筋は通りますけど。まぁ、若かったですからカチン! ときたんです。腹ん中では「ああ、いいともゲロ以外でやってやる」と思いながら、「ゲロはしません」って返事して、結果うんこに至ったわけです。

──はははは、確かにゲロじゃない。

休み休みライブ

──今回は一体どんなライブになるんでしょう?

田口:もうおっさんですから。体力がもつ方法でライブをやりたいなと。昔のような動きのキレもないし、歌詞も覚えられないんで。いかに演奏時間が少なくできるか、考えてます(笑)。寝たきりライブはどうかな。ふとんに寝たままでてこないで、そのまま歌う。あと異様に休憩時間の長いライブとか。イスを会場に置いてその間にビデオをみせたり、トークしたり、休み休みライブ。あるいはハイジのようにブランコこぎながら歌って、ドップラー効果なんてどうでしょう(笑)。

ばちかぶりare  

田口トモロヲ(vo) 和田モナカ(b)

樋口ナオヒコ(g) 須川ヒカル(key)

八反田リコ(cho) クツノユキヒデ(per)

         小関スミタダ(ds) 山本一(sax)、他

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