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トップコラム煩悩放出 〜せきしろの考えたこと〜第13回「言葉の力~文字が情景を変える~」

3回「言葉の力~文字が情景を変える~」

第13回「言葉の力~文字が情景を変える~」

2020.02.05

煩悩放出 〜せきしろの考えたこと〜

 

 昨年話題になった言葉に「俺はAAAだぞ」というのがある。AAAの元リーダーの言葉だ。一時ワイドショーなどを賑わせていたので記憶にある方も多いことだろう。

 たとえばこの言葉をSFっぽく変えるとするなら、少しだけ言葉を加えれば良い。

 

 俺はバーチャルAAAだぞ

 俺は未来から来たAAAだぞ

 俺はパラレルワールドのAAAだぞ

 俺は別の星のAAAだぞ

 俺はタイムパトロールをしているAAAだぞ

 俺はAAAだぞ(脳に直接)

 俺はAAAだぞ(ループ空間で何度も)

 

 AAAの元リーダーがまるでSF映画の主人公のように思えてくる。同時に「俺はタイムパトロールをしているAAAだぞ」などはただの変わり者にも見えてくるがそこは気にしない。

 同様に、笑福亭仁鶴師匠のお馴染みのセリフである「四角い仁鶴がまあるくおさめまっせ」を叙情的に変えることはできるだろうか? そもそもバラエティ番組で生まれた楽しげなセリフである。それを対極とまではいかないまでも確実にかけ離れた位置にある「叙情的」にするというのだ。不可能だと感じても無理はない。

 文字ではなく実際に泣きながら「四角い仁鶴がまあるくおさめまっせ」と言うならば悲しさが生まれ、そこから叙情的になる可能性はある。さらに時折嗚咽を交えて言葉に詰まりながら言えば、さながら解散コンサート、あるいはアイドルの卒業公演のように「仁鶴頑張れー!」との声が飛び交うことだろう。

 しかし文字のみではそうはいかない。先のAAAの例のように「泣きながら」と付ければ、悲しいセリフであることが認識できるだろうし、「四角い仁鶴がまあるくおさめまっせ(泣)」「四角い仁鶴がまあるくおさめまっせ(涙)」などの表現方法を用いて泣いている状態を表現することはできるのだが、これはどこか機械的で冷たくもあり、叙情的とは別物である感が否めない。

 やはり叙情的にするなど不可能なのだろうか。いや、言葉の力を侮ってはいけない。ここで比喩の出番である。比喩が情景を浮かび上がらせ、共感を生み、感情を揺さぶり、叙情的にしてくれるのだ。

 

 まずは「四角」の部分をたとえてみよう。

 

 【A.「四角」をたとえるパターン】

 ①窓から差し込む光が作る模様のように四角い仁鶴がまあるくおさめまっせ

 ②実家にまだ飾られている表彰状のように四角い仁鶴がまあるくおさめまっせ

 ③古い映画館のスクリーンのように四角い仁鶴がまあるくおさめまっせ

 ④引き出しの奥にある出せなかった手紙のように四角い仁鶴がまあるくおさめまっせ

 ⑤シャッターに貼られた閉店のお知らせのように四角い仁鶴がまあるくおさめまっせ

 ⑥もう誰もいない教室の黒板のように四角い仁鶴がまあるくおさめまっせ

 ⑦無名の画家の絵が入っていた額縁のように四角い仁鶴がまあるくおさめまっせ

 ⑧高校最後の夏に必死に滑り込んだ一塁ベースのように四角い仁鶴がまあるくおさめまっせ

 ⑨雨で濡れた夏祭りのポスターのように四角い仁鶴がまあるくおさめまっせ

 ⑩『3才お誕生日』とラベルに書かれたVHSテープのように四角い仁鶴がまあるくおさめまっせ

 

 文字が確実に情景を変えてくれ、どこか感傷的になっている自分に気づくだろう。まさに言葉の力だ。

 同様に「まあるく」もたとえてみる。

 

 【B.「まあるく」をたとえるパターン】

 ①四角い仁鶴が公園に忘れられたボールのようにまあるくおさめまっせ

 ②四角い仁鶴が真昼の白い月のようにまあるくおさめまっせ

 ③四角い仁鶴が転校する友達がくれた宝物のビー玉のようにまあるくおさめまっせ

 ④四角い仁鶴が止まって動かない古い懐中時計の文字盤のようにまあるくおさめまっせ

 ⑤四角い仁鶴が飛ばずに消えたしゃぼんだまのようにまあるくおさめまっせ

 ⑥四角い仁鶴がおつかいをしている幼い子が握りしめていた硬貨のようにまあるくおさめまっせ

 ⑦四角い仁鶴が静かな湖に投げ入れた小石が作る波紋のようにまあるくおさめまっせ

 ⑧四角い仁鶴が最後の試合前に組む円陣のようにまあるくおさめまっせ

 ⑨四角い仁鶴が子どもが作った小さい雪だるまのようにまあるくおさめまっせ

 ⑩四角い仁鶴が幼い頃に食べた夜店のリンゴ飴のようにまあるくおさめまっせ

 

 こちらも叙情的になった。言葉の力に驚き、そして実感する瞬間だ。

 続いてAとBをランダムに組み合わせてみる。

 

 古い映画館のスクリーンのように四角い仁鶴が静かな湖に投げ入れた小石が作る波紋のようにまあるくおさめまっせ

 

 『3才お誕生日』とラベルに書かれたVHSテープのように四角い仁鶴が止まって動かない古い懐中時計の文字盤のようにまあるくおさめまっせ

 

 もはやバラエティ感は皆無となり、そこには叙情しかなくなるのである。

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