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十七回 「All Along the Watchtower」のカバーならバーバラ・キースが一番好き

第六十七回 「All Along the Watchtower」のカバーならバーバラ・キースが一番好き

2020.11.11

想い出の音楽番外地 戌井昭人

 
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 10月28日に、拙著、『壺の中にはなにもない』という小説が発売されました。3年ぶりの新刊です。内容は、木偶の坊で趣味の男が、他人をムカつかせながら成長していく、なんのメッセージもない話です。どうぞ皆様読んでみてください。主人公の男は、本も読まないし、映画も見ない、音楽も聴かないのだけど、唯一、サザンオールスターズの『熱い胸さわぎ』を持っていて、その中の「茅ヶ崎に背をむけて」が大好きという設定なのですが、すでに、『熱い胸さわぎ』はここで紹介していました。
 
 でもって、音楽を小説の中で使っている、己の作品を思い返してみると、『鮒のためいき』と『どんぶり』という小説がありました。『鮒のためいき』は森進一の「女のため息」、『どんぶり』はボブ・ディランの「見張塔からずっと」を使っています。どちらも初期の作品で、最初の頃は、自分の好きな音楽などを頻繁に小説に組み込んでいたようです。
 それにしても、「見張塔からずっと」、原題「All Along the Watchtower」ですが、これ歌詞が、なにを言っているのかよくわからないけれど、とんでもなく格好良くて、これぞ、ボブ・ディランといった感じなのです。道化師と泥棒が話をしていて、「人生なんて冗談みてえだと思っている奴がいる。でも……」というところがあって、ここを小説に使いました。
 
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 でもって、この曲、ボブ・ディランよりも、もしかしたらジミ・ヘンドリックスが唄っているほうが有名かもしれません。もちろんジミ・ヘンドリックスのも格好いいけれど、わたしが一番好きなのは、Barbara Keith(バーバラ・キース)という女性が唄ったもので、『Barbara Keith』というアルバムに入っています。名前とアルバム名が一緒でややこしいのですが、「田中太郎」の『田中太郎』みたいな感じです。しかし、いま考えてみたら、Barbara Keithの「All Along the Watchtower」は好きだけど、彼女の他の曲を全く聴いていなくて、彼女自身のことも、全く知らないので調べてみたら、まだ御存命でした。でも、なんだか、他を掘り下げず、「All Along the Watchtower」だけでいいやと思えてきてしまうのです。
 
 ついでに「All Along the Watchtower」を、YouTubeで調べたら、なんだかいろいろな方がカバーをしていました。恐るべしYouTubeです。出てくるは出てくるは「All Along the Watchtower」のカバー、演っているのは、Allman Brothers、U2、Char、レニー・クラビッツとエリック・クラプトン、エド・シーランなんかもやっていました。やはり良い曲ってのはみんながカバーをしたがるようです。こうなったら、カラオケスナックで、よくわからないおっさんが、カタカナ英語で、「All Along the Watchtower」を唄っても、相当格好良いのではないかと思えます。恐るべし「All Along the Watchtower」、しかし、いろいろ聴いてみて、やはりBarbara Keithのカバーが相当格好良い気がします。ですから皆様、ぜひ聴いてみてください。
 

戌井昭人(いぬいあきと)1971年東京生まれ。作家。パフォーマンス集団「鉄割アルバトロスケット」で脚本担当。2008年『鮒のためいき』で小説家としてデビュー。2009年『まずいスープ』、2011年『ぴんぞろ』、2012年『ひっ』、2013年『すっぽん心中』、2014年『どろにやいと』が芥川賞候補になるがいずれも落選。『すっぽん心中』は川端康成賞になる。2016年には『のろい男 俳優・亀岡拓次』が第38回野間文芸新人賞を受賞。

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壺の中にはなにもない
戌井昭人 著

四六判 / 240ページ
本体1,400円+税
ISBN 978-4-14-005713-1
NHK出版 刊
2020年10月28日発売

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勝田繁太郎(26歳)は、働く意欲がなく、これといった趣味もなく、恋愛経験もゼロで、ただただ平穏にのんびり過ごす日常を愛する男。人に気を遣うことができず、仕事でミスをくり返してもまったく気にしないマスペースさゆえ、彼の周囲では珍事が尽きず、周囲からは疎まれている。だが、高名な陶芸家として知られる祖父だけは繁太郎の人間性に好感を持ち、彼の陶芸の才能を見出していた。陶芸への興味を引き出し、あとを継がせようと画策する祖父の思惑は果たされるのか。そして、繁太郎が成長する日は訪れるのだろうか──。破天荒な祖父との交流と、26歳にして訪れる初恋。笑って、笑って、少ししんみりして、心温まる。世のおかしみと愛すべき人々を、疾走感あふれる筆致でユーモラスに描く至極の長編大衆小説。

『Barbara Keith』

ワーナーミュージック・ジャパン

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